浅井 秀樹

<h3><span class="strongInContent">日テレ案を千代田区が後押しする形で進められてきた再開発計画</span></h3>
<p>日本テレビが千代田区二番町の旧本社跡地に高層ビルを建てる計画に、地元の反対もあり、番狂わせが起きている。千代田区がこの建物の高さ制限を60メートルから90メートルに緩和しようとしたのだが、３月30日に行われた区都市計画審議会の会合で異論が相次ぎ、採決を見送ったのだ。</p>
<p>「推進派関係者は昨年度末までに決めてほしかったのではないか」と審議会メンバーの小枝すみ子区議はみている。</p>
<p>小枝区議によると、会合では建物の高さ制限を緩和する合理性のほか、なぜ住民合意ができていないのかなど、問題点の指摘が相次いだ。ひとまず、審議会では学識経験者などが７月までに問題点を議論することとなったという。</p>
<p>これまで、建物の高さ制限を90メートルに緩和するなどの再開発計画は、日テレ案を区が後押しする形で進められてきた。地元・二番町などは、日テレやその関連会社の関係者で潤う商店街などが、日テレ案を歓迎しているとみられてきた。しかし、３月半ば、地元のグロービス経営大学院の堀義人学長が町会の意思決定のあり方に異議をとなえ、東京地裁に司法判断を求めて提訴したのだ。</p>
<figure id="attachment_305015" aria-describedby="caption-attachment-305015" style="width: 4589px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="05f05266"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/aflo_96619841.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-305015" class="wp-caption-text">再開発計画は、日テレ案を区が後押しする形で進められてきた（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">地元住民は反対票が圧倒的に多かったが…</span></h3>
<p>区が３月に募集した意見書では、日テレ沿道住民のうち賛成275に対し、反対658。対象は一～六番町、麹町３、４丁目の住民たちだ。さらに、二番町の住民に限っても、賛成64に対し、反対90と、いずれも反対票が圧倒的に多かった。</p>
<p>ところが、通勤・通学者などにも対象を広げると、賛成2872と、反対1088を大きく上回っている。利害関係人として小枝さんは「開発したい側の人が意見書を出しているなら、住民以外の意見は別書きにするべきだ」と主張する。しかも、住民以外で、どんな人たちが賛成票を投じているのかの詳細が不透明だ。</p>
<h3><span class="strongInContent">何が問題なのか…</span></h3>
<p>そもそもこの論争では、計画のポイントが何なのか、わかりにくくなっている。地元の“商工関係者”にとっては、日テレが高層ビルを建てることで、にぎわいが期待できる。一方、“地元住民”は高さ制限を1.5倍に緩和することで空が奪われる。</p>
<p>本来は区が双方の意見をくみ取り、合意形成を促す立場なのだが、この計画に「地域課題の解決」が盛り込まれることで、開発計画の促進に区も前のめりになっているように見えてしまう。</p>
<p>「地域課題」とは、このエリアには地下鉄から地上へ階段しかないため、そのバリアフリー化や、広場の確保や歩道の拡張などを行う必要があるということだ。</p>
<p>地元住民で組織する「番町の町並みを守る会」は高さ制限60メートルを守れと主張する。建物高が90メートルと60メートルとでは、確保できる広場が2500平米、2200平米と差が出るが、守る会では多少狭くなっても、十分な広さを確保できるとしている。</p>
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<h3><span class="strongInContent">日テレ側の言い分</span></h3>
<p>区は昨年11月、地権者向けに二番町の地区計画変更について説明会を開催した。高さ制限緩和の問題に関して、日テレや区が質問に対して詳しく説明している。</p>
<p>その議事録によると、日テレは「企業として経済活動をしていくうえで、バランスをとるための90メートルという高さ」と主張。地域貢献と事業性とのバランスに関しては「ボランティアではないので株主に説明できるような事業性の担保の説明が必要」と説明。</p>
<p>そのうえで、「地域課題の解決を考える場合には、50メートル、60メートルでは難しいのが正直なところ」と主張しているが、60メートルの場合でも「通常のビルに設置するエレベーターはできるものと考える」としており、バリアフリー化の解決には60メートルでも問題ないとみられる。一方、建物のセットバックについては、60メートルの場合、「日テレ通りから４メートルのセットバックで建物が建ち、昔の日テレ通りのような状態になる」と説明している。</p>
<figure id="attachment_305016" aria-describedby="caption-attachment-305016" style="width: 640px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1fbbc4d8"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/22169434_s.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-305016" class="wp-caption-text">日テレの旧社屋があった麹町「日本テレビ通り」</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">千代田区の立場</span></h3>
<p>千代田区は「民間の施設で課題の解決を行い、公共施設として位置付けるので、容積緩和などを制度として導いている」と説明。運用基準に照らして、日テレ案の「容積率700%は妥当」とし、「容積率700％とすると90メートルという関係性である」と主張する。つまり、運用基準にそった容積率からも、高さ90メートルが妥当と導かれるというのだ。</p>
<p>区地域町づくり課の担当者は「計画地が都の再開発等促進区に該当し、容積率770％という運用基準がある」と強調する。これまでいくつかの住民の意思表示で、反対意見が上回ってきたことに対しては「拮抗している」とするだけで、住民の声にも耳を傾けるというより、運用基準にそって容積率を確保するように推進していく姿勢に見えてしまう。</p>
<h3><span class="strongInContent">「地域課題の解決のため」…</span></h3>
<p>話が複雑になっているようにみえるが、結局、確保できる広場はどの程度がいいのか、日テレ通りの歩道は従来通りでもいいのか、というのがポイントになる。つまり、日テレ案のように建物の高さを90メートルにして歩道等の公共スペースを広げるか、守る会が主張するように高さ制限60メートルを維持しながら、ほどほどの広さでもよしとするのかだ。</p>
<p>そこはまさに、地元の人たちが意見を出し合って決めていくべきものだろう。ところが、区は論点を「地域課題の解決のため」とひとまとめにして、高さ制限緩和の問題を目立たせないようにしながら、計画推進をもくろんでいるように見えてしまうのだ。</p>
<p>３月30日の審議会では、都市計画が専門の委員から、このまま計画を推進して訴訟になると、千代田区が持ちこたえられなく恐れがあるとの趣旨の発言があったという。この発言で推進派を含め、小枝区議は「審議会の雰囲気が変わった」と感じたという。</p>
<p>小枝区議は、区の審議の進め方が、都市計画法が定める手続きなどに合致していない部分がいくつかあると指摘する。法令の順守という観点で、問題があるのではないかとみている。</p>
<p>千代田区はいま、４月23日投票の区議会議員選挙モードに入った。守る会は区議候補へのアンケート結果を公表し、計画への賛否を区議選の争点の一つにしたいと考えている。７月までに学識経験者などが、どんな議論の結果を審議会に示すのか、目が離せない。</p>


浅井秀樹

日本テレビが千代田区二番町の旧本社跡地に高層ビルを建てる計画に、地元の反対もあり、番狂わせが起きている。一体何が…。

「日テレ」に番狂わせ！二番町の高層ビル計画に地元住民が待ったをかけた訳

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