長崎・壱岐島の海岸で、壱岐高校2年の椎名隼都さん（17）が遺体で見つかったのは、3月20日のことだった。
椎名さんは、離島への留学制度を利用して、中学2年のときに地元の茨城を離れ壱岐に来島。事件発覚後、「文春オンライン」では、椎名さんのホームステイ先の里親による虐待疑惑が報じられていた。
死因に関する発表は県警から未だなされていないが、壱岐島の島民からは、離島留学制度の問題点を指摘する声もあがっている。壱岐島に住む男性が語る。
「椎名君のことは大変心を痛めています。しかし今は、誰かを責めるというより、離島留学制度の改善を急ぐべきだと思います」
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離島留学制度は、過疎や少子化の問題を抱える離島に全国から学生を募集し、留学生として受け入れる制度だ。子供は豊かな自然や離島独特の文化のなかで、自立した生活を体験できる。壱岐島で実施されている離島留学は、小中学生を対象とした「いきっこ留学制度」（壱岐市主導）と、高校生を対象とした「離島留学制度」（長崎県主導）の2種類がある。
<figure id="attachment_307212" aria-describedby="caption-attachment-307212" style="width: 840px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="432e19eb"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/1441684f2288dfd061d0c770f2def2d5.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-307212" class="wp-caption-text">長崎県離島留学制度令和5年度生徒募集用のリーフレット</figcaption></figure>
離島留学制度にどんな問題点があるのか。
「本来、子供の教育は文科省が関わるべきものですが、離島留学は国交省が推進しています。目的は『離島の活性化』です。『自然豊かな環境で暮らせる』『視野が広がる』などを売り文句にしているが、きちんと子供の成長を考えて実施した制度とは思えません。
たとえば養子縁組では、子供が健康的に育つ環境かどうかを判断するために、里親の年収や預金額の審査があります。それなのに、離島留学の学生を受け入れるにあたって、そういった審査は一切ありません。そもそも里親が足りていないので、世帯年収が０でも、年齢が70代でも、誰でも手を挙げたら里親になれるのです」（同前）
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この男性は、多くの離島留学生と交流があったという。
「島に来る子供は、不登校であったり、家庭の事情であったり、悩みを抱える子供が多く、彼らは心身ともにケアが必要です。複数の子供を同時に見ている高齢の里親もいますが、一人ひとりに合ったケアができるのかがわかりません」
離島留学生は島に移住し、島の学校に通う。その学校にも問題点があるという。壱岐市議会議員の武原由里子氏が説明する。
「壱岐市の離島留学指定高校は壱岐高等学校です。留学生が入学可能なのは、歴史学専攻と中国語専攻の二つのコース。数学と理科の科目がないため、途中で実家に帰りたくても、理数の単位が足りないせいで転校もできません。さらに大学受験の際にも選択肢が限られてきます。これらのことについて、入学する際に学校がきちんと説明していないんです。転校が難しいため、ここに通っている子供は、簡単に『帰りたい』とは言えないでしょう……。親元を離れて暮らす子供たちの人生プランをもっと考えてあげるべきです」
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取材に応じてくれた壱岐市在住の男性は、市と教育委員会の制度改革に「真剣さを感じない」と怒りを見せた。本誌が壱岐市教育委員会に問い合わせたところ、担当者から以下の返答があった。
「現在、壱岐市では小中学生を対象とした離島留学制度『いきっこ留学制度』を見直すために第三者委員会を設置し、里親及び学生への支援体制を検討する予定です。また、制度を評価するにあたって、これまでは内部評価だけだったので、外部の目を入れようと、いまは担当者を募集しているところです。8月までに制度を見直し、今後どうしていくかを発表します。亡くなった高校生が利用していた、高校生を対象とした『離島留学制度』は長崎県主導のもので、県が引き続き検証していくと聞いています」
今春から新たに数十名の留学生が壱岐島に来島している。離島留学制度の改善をめぐる壱岐市と長崎県の動きに、引き続き注目していきたい。
<figure id="attachment_307215" aria-describedby="caption-attachment-307215" style="width: 2414px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="7ac1ec31"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/04.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-307215" class="wp-caption-text">海と絶景を堪能できる壱岐島</figcaption></figure>

長崎・壱岐島の海岸で、壱岐高校2年の椎名隼都さん（17）が遺体で見つかったのは、3月20日のことだった。 椎名さんは、離島への留学制度を利用して、中学2年のときに地元の茨城を離れ壱岐に来島。事件発覚後

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