<figure id="attachment_307980" aria-describedby="caption-attachment-307980" style="width: 2491px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c60958b0"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/KIN_0088.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-307980" class="wp-caption-text">池袋東口にはヤマダとビックが向かい合うようにして立ち並ぶ。西武にヨドバシが入れば、まさに「三つ巴（どもえ）」だ</figcaption></figure>
<p>「家電の街」と言えば秋葉原（千代田区）――も今は昔。市場規模７兆円を超える家電量販店業界の中心は池袋（豊島区）だ。</p>
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<p>池袋東口には、家電量販店チェーンで唯一売上高１兆円を超える&#8221;絶対王者&#8221;「ヤマダデンキ」と本社を豊島区に構える「ビックカメラ」の旗艦店や系列店がそこかしこにある。西口にもビックカメラのほか、東武百貨店に「ノジマ」が入居する。池袋電気街を歩いてみると、家電を吟味する客は各店舗をハシゴしているのがわかる。化粧品売り場にたむろする中国人観光客や、高額転売で話題になっている「ポケモンカード」の購入に列をなす人々の姿も目立った。</p>
<p>ヤマダは郊外の客をターゲットにする「ロードサイド戦略」でシェアを拡大してきた。一方で近年は都心型店舗「ＬＡＢＩ」を軸とした「レールサイド戦略」にも注力しており、池袋の日本総本店はその一丁目一番地だ。元店員は言う。</p>
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<p><span class="strongInContent">「ＬＡＢＩは、１店で一日１億円を売り上げることもあるほどの『ドル箱』。ＬＡＢＩは郊外の店舗よりも安くしていて、他社との価格競争も熾烈。他社の店頭で価格調査しては本部に報告して、価格を下げるのも店員の重要な業務です」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="新たなプレーヤーが参入"></div>
<p>下の地図のように過密な″シン・電気街″に、さらに新たなプレーヤーが参入しようとしている。西武池袋の不動産をヨドバシＨＤが取得し、「ヨドバシカメラ」を出店する可能性が浮上したのだ。</p>
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<p><span class="strongInContent">「そごう・西武の親会社であるセブン＆アイ・ＨＤは百貨店事業の再建を進めたものの、手詰まり感があった。そこで米不動産投資ファンドがヨドバシＨＤと連携して、リニューアルする計画が持ち上がっている。早ければ来年にも、西武池袋の７フロアにわたってヨドバシカメラを展開する計画があります」（全国紙経済部デスク）</span></p>
<p>ヨドバシが西武に入居すれば、１階路面に入っている『ルイ・ヴィトン』や『エルメス』など高級ブランドが撤退する可能性もある。また、百貨店を「乗っ取るような」計画を批判する動きもあった。</p>
<p><span class="strongInContent">「今年２月に亡くなった高野之夫前豊島区長（享年85）は、ヨドバシが西武の低層階に入ることに一貫して反対でした。東口の最も目立つ場所にブランド店ではなく家電量販店チェーンが入ると、街の景観を壊す恐れがあるとの考えがあってのことです」（都市計画に詳しいジャーナリストの小川裕夫氏）</span></p>
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<p>批判を承知の上で池袋に進出を目論むヨドバシ。ただでさえ家電チェーンが密集しているエリアに出店する理由はなにか。家電市場に詳しい『ＢＣＮ＋Ｒ』編集長の細田立圭志（たけし）氏は言う。</p>
<p><span class="strongInContent">「やはり、ターミナル駅の圧倒的な集客力に期待している部分はあると思います。池袋の家電量販店各店が客で賑わっているのを見ると、需要はまだ飽和していないとも言える。レールサイド戦略でノウハウを持つヨドバシは、『後出し』でも勝てる算段があるのでしょう」</span></p>
<p>実際に業界３位のヨドバシが池袋に参入すると、勢力図は大きく変化する。小売・流通アナリストの中井彰人氏が言う。</p>
<p><span class="strongInContent">「池袋はヨドバシが圧勝する可能性があります。’10年、京都の近鉄百貨店をヨドバシが買って商業施設にしたところ、客がヨドバシに一気に流れました。『ニトリ』や『ユニクロ』が同居し、利便性で他店を上回ったためです。駅直結の西武や同時に取得する西武渋谷などを合わせれば、数千億円単位の売り上げ増も見込める。売上高１兆円台の大台に乗せてくることも期待できます」</span></p>
<p>ヨドバシの通販は電球１個から送料無料で、都市部限定の「ヨドバシエクストリーム」を使えば、最短で注文当日に品物が届く。「アマゾン」に勝る利便性だ。</p>
<p><a href="#" data-ident_hash="71a266ae"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/WF0505_P055.jpg" alt=""></a></p>
<div data-friday-nextpage-lead="ヤマダが首位陥落する日"></div>
<h2>ヤマダが首位陥落する日</h2>
<p>ヨドバシの追い抜きを是が非でも阻止したいビックはどうか。</p>
<p><span class="strongInContent">「次々と買い換えるという発想から、環境にも配慮し、リペアやリユースという考えに転換する――と踏んで、ビックは中古家電の買い取りや修理に力を入れています。ただし、この分野は専門業者が多く、大きな市場になるとは考えにくい」（株式アナリストの鈴木一之氏）</span></p>
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<p>むしろ、期待が持てそうなのがインバウンドの復活だ。中国事情に詳しい家電業界関係者は言う。</p>
<p><span class="strongInContent">「中国人観光客には、ビックが圧倒的に人気です。最近の観光客は家電を買わず、化粧品や医薬品を買うケースが多く、ビックはそこの展開が充実しているからです。知識の豊富な中国人店員が多いのも人気の秘訣ですね」</span></p>
<p>２社が上がり目を見出す中で、追われる立場のヤマダは厳しい状況が続きそうだ。流通アナリストの渡辺広明氏は言う。</p>
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<p><span class="strongInContent">「ヤマダはデフレ下でメーカーを競争させて仕入れ価格を抑え、安売りすることで売り上げを伸ばしてきましたが、このモデルももう限界を感じます。人口が減り、車離れも加速しているためロードサイド店に足を運ぶ人は少なくなっていくはずです」</span></p>
<p>売上高でヨドバシとビックに肉薄するのが、業界４位のケーズデンキだ。家電量販店が急増した’90年代、北関東ではヤマダ（群馬・高崎市）、コジマ（栃木・宇都宮市）、そしてケーズ（茨城・水戸市）の３社が覇権争いを繰り広げ、「ＹＫＫ戦争」と呼ばれた。ヤマダと共にシェアを堅持しているのがケーズデンキだ。</p>
<p>ケーズデンキはマイペース経営で、徹底したロードサイド戦略を展開し、あえて池袋のような都心には出店していない。上位４社のシェアの奪い合いを「ＹＢＹＫ戦争」とするならば、「Ｋ」の逆張り戦略はどうだろうか。前出・中井氏は言う。</p>
<p><span class="strongInContent">「ケーズデンキは、巨大な商業施設の敷地内や近隣に出店して人流を増やす『コバンザメ戦略』で伸びたチェーンですが、今後の成長には懸念点もあります。ひとつは郊外の好立地に出店余地が少なくなってきていること。衣料品や飲食など他業界もロードサイド戦略に注力しているためです。もうひとつはポイントでなく『現金値引き』であること。ビックやヨドバシは店頭でポイントを貯め、ＥＣ（通販）で使ってもらうという戦略を取っていますが、現金値引きだとそれができません」</span></p>
<p>かつて売上高１位を誇った「ベスト電器」はヤマダに吸収合併、’97年に首位に躍り出た「コジマ」は’12年、ビックに買収された。栄枯盛衰激しい業界で、ヤマダが首位から陥落する可能性もある。</p>
<p>前出のヤマダ元店員が言うように、都心部の店舗は値引き競争で割安かつ、駅近で仕事帰りにも寄りやすい。あえて他店と比較してもらうことで客の流入率を上げたいというのが店側の思惑だ。付与したポイントは、ＥＣでの買い物に充ててもらい、客の囲い込みを狙う。双方ウイン－ウインの関係だからこそ、池袋のような「家電激戦地」が生まれたのだ。</p>
<p>一方、激戦地・池袋でスキ間作戦を展開しているのがノジマだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「ノジマは商業施設のワンフロアのみなど、小型展開に長けています。接客とアフターメンテナンスを重視し、他社とは違ったニーズを見出している。近年見かけなくなった『街の電気店』をアップデートしたようなポジションを確保するのではないでしょうか」（前出・中井氏）</span></p>
<p>早晩、家電チェーンの勢力図はガラリと変わるだろう。その震源地は池袋だ。</p>
<figure id="attachment_307984" aria-describedby="caption-attachment-307984" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="fb726137"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/c0278d5ca885155b9e322de7f126c8e7.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-307984" class="wp-caption-text">池袋東武に入居するノジマ。「イトーヨーカドー」など商業施設の一部に出店するケースが増えている</figcaption></figure>
<figure id="attachment_307983" aria-describedby="caption-attachment-307983" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="dedb8671"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/0d0ad4e08c13c4683791e7504bfd5e6d.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-307983" class="wp-caption-text">電気街の客は目的のコーナーにたどり着く前に足を止めることが多い。購買意欲を促進する施策がカギになる</figcaption></figure>
<p><a href="#" data-ident_hash="f78546a9"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/04/WF0505_P056.jpg" alt=""></a></p>
<figure></figure>
<figure></figure>
<p>『FRIDAY』2023年5月5日号より</p>


鬼怒川　毅

市場規模７兆円を超える家電量販店業界の中心"池袋"。その過密な電気街に新たなプレーヤーが参入しようとしている！？家電チェーンが密集しているエリアにあえて出店する理由とは…

池袋が”家電量販店チェーン”激震地になる！「ＹＢＹＫ戦争」現場ルポ

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