「対中国」重要拠点 石垣駐屯地で高まる「台湾有事」への緊張感
今年3月に開設 陸上自衛隊 約570名の精鋭部隊と最新軍備が配備された
最近、南西諸島において中国の″示威行為″が頻発している。
4月7〜9日には、空母『山東』がミサイル駆逐艦などと共に宮古島の南沖を航行。15〜16日にかけてはドンディアオ級情報収集艦1隻が大隅海峡を南西に進み、21〜22日には何と、中国軍の爆撃機2機が沖縄本島と宮古島の間を飛行した。
「これまでになかった動きです。習近平国家主席が毛沢東のようなカリスマになるには、軍事面における国民の評価が必要で、そのためには台湾統一が不可欠。日本ひいてはアメリカを武力の誇示によって牽制しながら、『台湾有事』に向けて準備を進めているとみて間違いないでしょう」(国際ジャーナリスト・山田敏弘氏)
それにしてもなぜ、4月に入って急に中国の動きが活発になったのか。背景には、習近平の悲願である「台湾統一」にとって、障壁となり得る存在が生まれたことがあるとされる。軍事ジャーナリストの菊池雅之氏が言う。
「3月16日に『陸上自衛隊石垣駐屯地』が開設されました。防衛省はこれまで、与那国島・宮古島・奄美大島に駐屯地を開設してきましたが、今回の石垣駐屯地によって南西諸島の島嶼(とうしょ)部防衛ラインが完成した形です」
石垣駐屯地には、陸自の精鋭約570名が常駐する(2枚目写真)。南西諸島の各駐屯地のなかでも、石垣島は特に重要な拠点になるという。
「ポイントとなるのは、約60名で編制される第303地対艦ミサイル中隊です。防衛省は『敵基地攻撃能力』を持つ国産巡航ミサイルの開発を予定していますが、配備までには10年近い時間がかかると言われます。そこで、″つなぎ″として、最大射程2500kmを誇る巡航ミサイル『トマホーク』を米国から購入しようとしています。その配備先として最適だとされるのが、石垣島。ここからなら、北朝鮮や中国の沿岸部にある弾道ミサイル発射基地まで届くはずです」(同前)
中国が示威行為を繰り返すのも、石垣島の重要性を認識しているからこそだろう。「台湾有事」への緊張感は、日増しに高まっている。
「FRIDAY」2023年5月12・19日号より
- PHOTO:野口卓也