「無双の二刀流」大谷翔平 識者があえて危惧する「意外なアキレス腱」
30試合で7戦4勝0敗・奪三振59&7ホーマーと絶好調!
エンゼルス・大谷翔平(28)の〝無双の二刀流〟が止まらない。
開幕から30試合を消化して打率.295、7ホーマー。投げては4勝0敗、防御率2.54で、奪三振59はアメリカン・リーグトップと絶好調(数字は5月8日現在)。
日本人初となる「サイ・ヤング賞」と「シルバースラッガー賞」のW受賞という「究極の二冠」が現実味を帯びてきた。
だが、スポーツライターの友成那智氏は「落とし穴」の存在を指摘する。
「二刀流でシーズンを通して闘う肉体的疲労は想像を絶します。実際、一昨年はシーズン終盤でヘバってしまい、9月後半以降は登板を回避しました。去年は打者のほうで疲労の影響が出て、9月11日以降、ホームランが出なくなりました」
筑波大学体育系准教授の川村卓氏は、大谷は〝弱点〟を自覚していると、見ている。
「今季の大谷は、打者が速球を狙っているときや、様子見しているときに緩いカーブでうまくストライクを取っている。〝省エネピッチング〟を心がけているように感じます。被打率が低いスイーパーを多投しているのも、少ない球数で打ち取るためだと思われます」
平均44㎝と変化量の大きいスイーパーの多投には、与四球率の倍増というデメリットがあったが、前出・友成氏は「大谷は走者が出るとギアを上げる。残塁率が84.7%、奪三振率は13.62でリーグトップです」と舌を巻いた。
疲労をメリハリのきいた投球で軽減できたとして、「ピッチングの基本となる直球に課題がある」と指摘するのは、スポーツデータ解析会社「ネクストベース」のアナリスト、山口敦士氏だ。
「フォーシームの球質に改善点があります。いわゆる〝伸びるストレート〟ではない。浮き上がってくるように打者に感じさせる縦の変化を『ホップ』成分と呼びますが、大谷選手のボールはメジャー平均を3㎝下回る38㎝しかホップしない。去年、『サイ・ヤング賞』を獲ったメッツのバーランダー投手(40)は50㎝弱でした」
ここ2〜3年、改善する素振りが見られないことから、「右ヒジが良くないのでは?」と見る向きもあるが、山口氏は「確かなのは、〝大谷投手〟にはまだ改良の余地がある、ということ」と言う。
「スイーパーなどの変化球の精度を保ったまま、浮き上がるフォーシームを投げたら、手が付けられない投手になります」
「意外なアキレス腱」は、「究極の二冠へのラストピース」でもあるのだ。

『FRIDAY』2023年5月26日号より
PHOTO:Getty Images