<h3><span class="strongInContent">『子供の時から利発で大物で…』そんな今までの伝説を覆すストーリーに…</span></h3>
<p>「ファンタジー大河」「BL大河」「トンチキ大河」など様々な声がある、松本潤主演のNHK大河ドラマ『どうする家康』。</p>
<p>第一話から岡田准一扮する織田信長が竹千代（家康／松本潤）に「待ってろよ竹千代……俺の白兎」と言い放ったり、第15回（４月23日放送）でも家康に再出陣を迫りつつ「よーく考えろ。乱世を終わらせるのじゃ」と耳元で囁くついでに耳を噛んだり、姉川の合戦終了後に出遅れた家康に「これからは判断を間違えるなよ、白兎」と再度耳を噛んだり。</p>
<p>また、瀬名（有村架純）奪還では、鵜殿長照の息子二人と瀬名と子供二人の人質交換が行われたという史実以外、ほぼ創作の忍者ファンタジーと化していたこともあった。</p>
<p>さらに、史実はわずかに絡めるのみで、ドラマオリジナルキャラにはたっぷり１話分の尺を使うなどの大胆な配分も話題になっている。</p>
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<p>ところで、何かと異色な家康の物語をお身内（子孫）は一体どんな気持ちで観ているのか。</p>
<p>今年１月１日に家督を継承し、德川宗家第19第当主となった德川家広さんに率直な思いを聞いた。</p>
<figure id="attachment_310471" aria-describedby="caption-attachment-310471" style="width: 1853px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="4be0443b"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-310471" class="wp-caption-text">NHK大河ドラマ『どうする家康』公式サイトより</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">“情”ではなく“知”に…本来そうあるべきところにやっと来たのかなという感じです</span></h3>
<p><span class="strongInContent">「『どうする家康』の発表は２年ぐらい前でしたが、タイトルを聞いた時は正直、嬉しくて。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">家康公には『子供の時から利発で大物で』みたいな伝説があるわけですよね。一番有名なのが今川義元公を初めて訪れた際、庭に向かって立小便をしたという話ですが、この調子で子供の時から冷静で堂々としていたという話が多かったわけです。それで、周りが心酔していたと。でも、そんなの、ありえないだろうと、ずっと思っていました。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">今のロシアによるウクライナ侵略から連想できるかもしれませんが、家康公の代の三河国、松平家というのは、周囲の大国がどんどん手を伸ばして来る弱小の国・家で、お父さんは殺されていて、自身はまだ子供みたいなものですから、どんなに立派な人であっても迷わざるを得ないわけですよ。だから、家康公の人生は苦しい選択の連続だったはずで、そこを素直に描けば、逆に観ている側は素直に家康公に感情移入しやすい内容になるだろうと。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
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<p><span class="strongInContent">しかも、脚本の古沢良太先生はパズルみたいなエンタメの脚本を書いておいでの方だというので、そこも“情”ではなく“知”に訴える話になってくると思いました。戦国時代は、何もない者でも知恵を駆使しててっぺんまで行ける可能性があった時代でしたが、そのような実情に相応しい脚本を、やっと得られたのかな、という感じですね」（德川家広さん・以下同）</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="弱気ですぐ逃げる、すぐ切れる、お腹を壊す家康像…"></div>
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<p>もともと家康というと、老獪な「狸親父」イメージが強いが、そんなイメージを覆した大河ドラマと言えば、過去に三谷幸喜脚本の『真田丸』（’16年）があった。実は家広さんが好きなのは、この『真田丸』で内野聖陽が演じた家康だという。若い頃は特に臆病で慎重で、気が小さく情けない男として描かれていたが……。</p>
<p><span class="strongInContent">「私は『真田丸』の家康公がむしろ正解だろうと思っていました。先がわからない戦国時代では、性格の悪い人の方が生き残るみたいなところも確かにあったわけですし。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">でも、家康公ファンにとっては、あの描かれ方が不満だという人も結構いたんですよ」</span></p>
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<h3><span class="strongInContent">弱気ですぐ逃げる、すぐ切れる、すぐお腹を壊す家康像…</span></h3>
<p>そうした意味で『どうする家康』の家康像は、『真田丸』での描き方にも近いといえるだろう。弱気ですぐ逃げる、すぐ切れる、すぐお腹を壊す家康像をどう見ているのだろうか。</p>
<p><span class="strongInContent">「はたして本当にそうだったかはわかりませんが、でも、もしかしてそうだったのかもな、と思わせるだけの幅はあるわけでございまして。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">家康公が仏教的な価値観も身につけていて、漢籍も読んでいたということが最近は言われるようになっていますが、当時の感覚だと中国の史書はハウツー本に近かったと思います。家康公はそれをそのまま当てはめたり、真似したりしていた可能性もあったと思います。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">これは学のない三河の衆の目には、すごいことに映ったけれども、今川家などでは案外普通だった。今川家で当時の高等教育を受け、貧しい三河に来ると、その文化ギャップが大きいということはちゃんと描かれていますよね。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
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<p><span class="strongInContent">それに、気が弱いというのも、家康公がそうだったというのではなく、北から武田が、東から今川が、西から織田が手を伸ばしてきて、危機の連続の三河の国の状況を、全部主人公個人の問題にしているのでしょう。家康公が松平家、三河の国を象徴しているわけです。『普通こういう状態だったらお腹痛くなるよね』という状況の際には、生身の人間として、本当にお腹が痛くなってしまう（笑）」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<figure id="attachment_310472" aria-describedby="caption-attachment-310472" style="width: 3360px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="82ed8c03"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/6b4bff6a03e95faae9efd1bea907dfd7.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-310472" class="wp-caption-text">「『どうする家康』の発表は２年ぐらい前でしたが、タイトルを聞いた時は正直、嬉しくて」と、今年家督を継承し、德川宗家第19第当主となった德川家広さん（PHOTO：安部まゆみ）</figcaption></figure>
<div data-friday-nextpage-lead="家康が「おままごと」をしているシーンには…"></div>
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<h3><span class="strongInContent">「わかりやすさ」と「エンタメ性」</span></h3>
<p>また、注目するのは、「わかりやすさ」と「エンタメ性」だと言う。<span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">「NHKさんもよく考えているなと思うのは、日本人の世代間ギャップが大きい中、日本史のことは何も知らない人がそれなりにいるということ。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">私自身、小学校１</span><span class="strongInContent">年から４年までアメリカ・ニューヨークで暮らしていた帰国子女なので、小中学生の頃、漢字の多い日本史の授業はものすごく苦手でした。ただ、自分ぐらいの世代までは戦前生まれの人がまだ多くて、小説を読んだり周りの人に話を聞いたりして、日本史の知識が常識として、空気のように存在してはいました。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">でも、今の20代30代だと、日本史に関しては何も知らない方もいらっしゃるでしょうし、ゲームで学んだだけという人も多いかもしれません。そうした日本の現実に即して作られているだけに、『どうする家康』は日本史を全然知らない、例えばラテンアメリカとかアフリカとか中東とかで配信されても、人気が出るのではないかと思いました」</span></p>
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<h3><span class="strongInContent">瀬名と、家康が「おままごと」をしているシーンは…</span></h3>
<p>一方、違和感や戸惑いを覚える描写、設定も多々あるようだ。その一つが、信長と家康の関係性である。</p>
<p><span class="strongInContent">「最初に発表された時に『信長と家康の友情を』とかいう報道があったんですよ。それを聞いた時、『そんなものないよ』と思いました。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">家康公は信長が嫌いだったと思いますよ。それを『友情』の話にするのかー、と心配していたのですが、それは杞憂に終わりそうです。それから、家康公が一向一揆の様子を自分で探りに行くとかは、絶対あり得ないですけれど、ドラマとしては確かに面白い」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>また、第一話で有村架純扮する瀬名と、家康がおままごとをしているシーンにも「びっくりした」と言う。</p>
<p><span class="strongInContent">「なぜかというと、普通は子役を使うところ、あの松潤さんと有村架純さんがおままごとをしていたからです。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">お二人はどう見ても子供に見えないだけに、少し不気味に感じられる描写でした」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<figure id="attachment_310473" aria-describedby="caption-attachment-310473" style="width: 3360px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="5a00f24f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/d082d6d8650a780ba8e83df33e37f6ab.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-310473" class="wp-caption-text">「一番気になるのは、豊臣秀吉（ムロツヨシ）の朝鮮出兵から天下統一に至る過程をどこまできちんと描くのかということです」と德川家広さん</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">今後の展開で気になること、期待していること</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p>さらに今後の展開で気になること、期待していることなどを語ってもらった。</p>
<p><span class="strongInContent">「一番気になるのは、豊臣秀吉（ムロツヨシ）の朝鮮出兵から天下統一に至る過程をどこまできちんと描くのかということです。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">この人（秀吉）は明らかに織田家を乗っ取っていますから、家康公が豊臣家を滅ぼしたことで、豊臣同情論が出てくるのはおかしいというのが持論です。秀吉という人を、怪物っぽく（実態通りに）描いてほしいですね。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">特に朝鮮出兵の無茶苦茶さ、大名たちの間での不人気は、きちんと描いていただけると良いと思います。秀吉の天下統一路線の果てには朝鮮出兵があり、それが大失敗に終わった後を受けて、徳川家康という人は出てきました。豊臣秀吉は、どれほど丁寧に語っても語り足りないぐらい家康を描く上で大切なんです」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
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<p><span class="strongInContent">德川</span><span class="strongInContent">家広</span>　’23年１月より、德川宗家19代当主。１月29日に記念式典「継宗の儀」を増上寺で行った。慶應義塾大学を卒業後、ミシガン大学大学院で経済学修士号を取得。財団法人国際開発高等教育機構（FASID）、国際連合食糧農業機関（FAO）のローマ本部、ベトナム支部（ハノイ）に勤務し、その後コロンビア大学大学院政治学研究科を修了し、政治学修士号を取得（国際関係論）。映画『グリーン・ゾーン』の字幕翻訳を手掛けるなど、現在は政治評論家、翻訳家、作家として活動。公益財団法人德川記念財団理事長、長崎大学国際連携研究戦略本部客員教授。久能山東照宮博物館、日光山輪王寺宝物殿では徳川家ゆかりの品々を常設展示している。</p>
<figure id="attachment_310474" aria-describedby="caption-attachment-310474" style="width: 1053px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="08154e50"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/4_about_ph01.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-310474" class="wp-caption-text">浜松の料理人、農家、杜氏が力を合わせて作ったお酒「Enshu」。「地元を象徴するような新しいお酒を作りたいというご相談を受けました。農薬をほとんど使用せず丁寧に作ったお酒で、遠州のお酒ということから私が『Enshu』 と命名させていただきました」</figcaption></figure>
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<p><a href="https://hamamatsu-pf.jp/enshu/" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><span class="strongInContent">■『Enshu』の公式HP</span>はコチラ</a></p>
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<figure id="attachment_310851" aria-describedby="caption-attachment-310851" style="width: 3360px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="79ddf1e4"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/008tkgw.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-310851" class="wp-caption-text">「特に朝鮮出兵の無茶苦茶さ、大名たちの間での不人気は、きちんと描いていただけると良いと思います」</figcaption></figure>
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1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマに関するコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』（太田出版）、『KinKi Kids　おわりなき道』『Hey! Say! JUMP　9つのトビラが開くとき』（ともにアールズ出版）など。

田幸和歌子

安部まゆみ

「ファンタジー大河」「BL大河」など様々な声がある、NHK大河ドラマ『どうする家康』。何かと異色な家康の物語をお身内（子孫）は一体どんな気持ちで観ているのか。德川家広さんに率直な思いを聞いた。

ここが好きで、ここがヘン… 何かと異色な大河ドラマ『どうする家康』を徳川家子孫はどう見たのか？

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