<p>４月中旬、チュニジアで衝撃的な事件が起きた。同国でプロサッカー選手として活躍していたニザル・イサウリ氏（35）が、バナナの購入を巡って焼身自殺したのだ。</p>
<p>原因はバナナの価格にあった。イサウリ氏がバナナを買おうとしたところ、政府の定める価格の２倍にあたる10チュニジア・ディナール（約500円）で販売されており、警察に苦情を申し立てたところ、なんとテロ行為であるとしてイサウリ氏は逮捕されてしまったのだ。</p>
<p>イサウリ氏は事件後、自身のフェイスブックに警察への非難動画をアップ。そこで<span class="strongInContent">「もう疲れた。この警察国家に今日、刑を執行してやる」</span>と宣言し、別のＳＮＳで<span class="strongInContent">「私が自身に下す判決は“焼身”に決めた」</span>と投稿した。</p>
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<p>なぜこんな悲劇が起こってしまったのか——。国際ジャーナリストの山田敏弘氏が解説する。</p>
<p><span class="strongInContent">「チュニジアの貿易赤字は約252億チュニジア・ディナール（約１兆円）と国内経済が厳しい状況にあります。新型コロナの影響で失業率も高く、物価も上がっており、インフレ苦でＩＭＦ（国際通貨基金）に19億ドルの融資を求めています。バナナすら買えないほどインフレが進んだ経済的ストレスに対して、イサウリ氏は不満を爆発させたのだと思います」</span></p>
<figure id="attachment_311377" aria-describedby="caption-attachment-311377" style="width: 441px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="56f83505"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/aflo_176900845.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-311377" class="wp-caption-text">政府に抗議デモを行うチュニジア国民。経済政策や警察への不満が限界の様子（&#8217;21年12月17日撮影）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_311690" aria-describedby="caption-attachment-311690" style="width: 440px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="3016d8e5"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/aflo_215881495.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-311690" class="wp-caption-text">焼身自殺をしたプロサッカー選手のニザル・イサウリ氏の棺を運ぶ人々。イサウリ氏の自宅前には数百人の人々が集まり、彼の死を悼んだ（’23年４月14日撮影）</figcaption></figure>
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<div data-friday-nextpage-lead="“アラブの春”再来となるのか"></div>
<p>今回の事件で思い起こされるのは、’10年に同じく警察への抗議として焼身自殺した露天商のムハンマド・ブアジジ氏（当時26歳）だ。失業中のブアジジ氏が始めた野菜の販売に対し、無許可であることを理由に警察が商品を没収したり、その容姿を嘲笑うなど、屈辱的な仕打ちを受けた。ブアジジ氏は警察に抗議するも受け入れられず、彼もガソリンをかぶって自らの身体に火をつけたのだ。</p>
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<p>この悲劇はネットを通じて全世界に広まり、チュニジアで反政府運動に火がついた。のちの“ジャスミン革命”へと発展したのである。ジャスミン革命はエジプト、リビア、イエメン、シリアなどにも拡大し、アラブ諸国の反政府運動は“アラブの春”と呼ばれた。</p>
<p><span class="strongInContent">「’10～’11年に起きたジャスミン革命でベンアリ元大統領の独裁政権は終焉。チュニジアは民主化に成功しましたが、いまだに国民は警察に不信感を持っています。独裁政権時代に秘密警察として国民を監視していたからです。アラブの春によってチュニジアのように民主化に成功した国もありますが、シリアのように内戦へと発展した国もある。</span><span class="strongInContent">今回のバナナ自殺事件がアラブの春の再来となるか……と言われたら、その可能性は低いと思います。ただ、反政府派のリーダーが逮捕されるなど、チュニジア国民の自由や民主主義が脅かされているという指摘もある。政府への不満がふたたび高まり、大規模な反政府運動に発展する可能性はありますね」（前出・山田氏）</span></p>
<figure id="attachment_311378" aria-describedby="caption-attachment-311378" style="width: 447px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6dcbd081"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/aflo_176905783.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-311378" class="wp-caption-text">チュニジア中部シディブジドにあるビルの壁には、’10年に焼身自殺を遂げたムハンマド・ブアジジ氏の巨大な肖像が掲げられている（’21年12月17日撮影）</figcaption></figure>
<p>命を懸けて民主主義を主張したイサウリ氏。チュニジアの平和が守られることを願いたい。</p>
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アフロ

４月中旬、チュニジアで衝撃的な事件が起きた。同国でプロサッカー選手として活躍していたニザル・イサウリ氏（35）が、バナナの購入を巡って焼身自殺したのだ。 原因はバナナの価格にあった。イサウリ氏がバナナ

相場の２倍の値段になっていて…「プロサッカー選手がバナナの値段に抗議して焼身自殺」していた！

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