<figure id="attachment_312135" aria-describedby="caption-attachment-312135" style="width: 1127px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="8b192ada"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/fc64a0802fe55bd33aaf3f28fb0665ee.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-312135" class="wp-caption-text">生ビール199円を売りにする鳥メロ。「ワタミ色」は薄まったが、焼き鳥居酒屋はいわば「レッドオーシャン」でもある</figcaption></figure>
<p>ひと昔前、繁華街のネオンサインの大半を占めていたのが、「ワタミ」や「モンテローザ」など、大手飲食チェーンが展開する激安居酒屋だった。</p>
<p>しかし、この業界の栄枯盛衰は急激だ。「居酒屋の帝王」と言われたワタミグループは、’21年にはすべての居酒屋ブランドから「和民」の屋号を取り外し、総合居酒屋は焼き鳥の「三代目鳥メロ」、唐揚げが売りの「ミライザカ」へ″看板替え″となった。</p>
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<p>コスパ路線を取る鳥メロは『ザ・プレミアム・モルツ』(中)を218円で提供するなど、ドリンクの低価格が特徴だ。本誌記者が平日21時ごろに都心の店舗を″覆面調査″すると、若者や主婦グループと見られる女性などで７割ほどの席が埋まっていた。店員が薦めるのは968円の「清流若どり　もも一本焼き」。チェーン居酒屋にしては高価だが、注文数は多いという。串焼きのほか一本88円からの串揚げもあり、6､7品ほど飲み食いして、会計は一人当たり2500円。ごく平均的な客単価だが、メニュー総数が多いためか、提供が遅いこともしばしばあった。</p>
<p>かように新しい試みを図るワタミだが、’19年４月に鳥メロ、ミライザカで合計約300あった店舗は、今年４月時点で189まで減少。焼き鳥居酒屋は競合が多く、目新しさを出すには難しい。</p>
<p>居酒屋離れに加えて、「新型コロナパンデミック」というＷパンチを喰らって、宴会需要は激減。″大箱″を抱える老舗チェーンは大打撃を受けている。</p>
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<p>ワタミと並ぶ巨大チェーンが、「白木屋」「魚民」など、居酒屋９ブランドを展開するモンテローザである。100席以上の大規模店が多く、客単価2500〜4000円でブランド分割をしていたのだが――。やはりコロナが直撃し、’21年に都内61店舗を閉店して以来、上がり目は見えない。モンテローザ元社員は言う。</p>
<p><span class="strongInContent">「10年前は月1000万円を売り上げる店舗も当たり前のようにありましたが、近年は激減。そこにコロナが追い討ちをかけました。モンテローザ系列はマニュアル徹底主義で効率化重視でしたが、接客やメニューの個性が売りの居酒屋に客を取られていくばかり。苦肉の策としてその時流行している居酒屋の業態に似た『山内農場』や『目利きの銀次』などを次々出店して『二匹目のドジョウ』を狙う戦略を取ったのですが、だんだんサービスの質が下がっていった。新しい業態に鞍替えするのを繰り返しているうちに、グループ全体が先細りしました」</span></p>
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<h2>家族で来られる居酒屋</h2>
<p>深夜営業や低価格、食べ・飲み放題などを打ち出し、個人経営の居酒屋と差別化を図って伸びた「デフレの申し子」たちは、総合居酒屋という形態を捨てきれず、客離れを招いている。フードジャーナリストの長浜淳之介氏は言う。</p>
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<p><span class="strongInContent">「刺身に串物や揚げ物など『なんでもある』というだけでは客が入らない時代になりました。むしろ、『注目すべき一品が何もない』というウィークポイントになってしまっている。総合居酒屋の時代は、しばらく帰ってこないでしょう」</span></p>
<p>こうした総合居酒屋を過去のものにしたのが、全品280円（税抜き）均一を売りにした「鳥貴族」だ。大ぶりの焼き鳥や本格的な釜飯、『山崎』や『響』といった、激安居酒屋では考えられなかった高級ウイスキーまでが約300円で楽しめるとあり、ここ10年で店舗数は600店超まで拡大した。だが、その鳥貴族にも逆風が吹いている。原材料高が影響し、今年５月に税込み360円均一へ値上げを実施。人気メニューも続々と販売休止になり、プレミアム感が薄まった。</p>
<p><span class="strongInContent">「鳥貴族は単一ブランドで、チェーン展開がしやすい反面、飽きられやすい。時間が経過すると成長が限られてくるのです。同社は『やきとり大吉』を運営するダイキチシステムを今年買収しました。店舗数は合計で1000を超えることになり、新たな客層を確保できるかどうかの分かれ目になりそうです」（マーケットアドバイザーの天野秀夫氏）</span></p>
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<p>激安居酒屋チェーンが濫立(らんりつ)する中で、鳥貴族のドリンク価格は分が悪い。均一価格というかつての長所が、今や足かせになっているのだ。</p>
<p>老舗が軒並み伸び悩む中、コロナ禍でも成長を遂げたチェーンがある。串カツ専門店の「串カツ田中」、そして「肉汁餃子のダンダダン」だ。東京商工リサーチの調査によると、’19年12月から’22年12月末にかけて、串カツ田中は273→317店、ダンダダンが86→127店へと店舗数を増やしている。</p>
<p>土曜日の14時ごろ、「昼飲み」を実施する串カツ田中を訪れると、店内はファミリー層で溢れていた。全席禁煙もあってか、ベビーカーに乗る幼児をあやしながら食事をする家族が目につく。お父さんは串揚げをツマミに、ハイボールをグビリ。サイコロ２個の出目でドリンクの量と価格が決まる「チンチロリン」が人気を集めているようだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「客の７割がチンチロリンに挑戦するうえに、普通にハイボールを注文するよりも単価（期待値）は高くなる」（店員）というように、″串揚げ一本足打法″でも新しい客層を呼び、稼げる構図を作ったのが串カツ田中のストロングポイントだ。</span></p>
<figure id="attachment_312136" aria-describedby="caption-attachment-312136" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b4af094e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/2f1ba62a52e566c073ae794a70e03a20.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-312136" class="wp-caption-text">人件費をかけて、店内で串打ちを続ける鳥貴族。焼き鳥の質は定評があるものの、次のヒット商品の誕生が待たれる</figcaption></figure>
<figure id="attachment_312132" aria-describedby="caption-attachment-312132" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="63a02537"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/a76b41aadffd2e6783ab5f3a2a9f8b6a.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-312132" class="wp-caption-text">串カツ田中は’18年に全席禁煙に踏み切った。当初は賛否両論あったものの、ファミリー層の獲得に効果を発揮した</figcaption></figure>
<div data-friday-nextpage-lead="一人飲みの需要を獲得"></div>
<h2>一人飲みの需要を獲得</h2>
<p>一方、ダンダダンは馬刺しやメンマなどサイドメニューはあるものの、客のほぼ全員が頼むのが、肉汁たっぷりの手作り餃子。あくまで「餃子をアテにビールを飲む」コンセプトを貫き、消費量が減少傾向にあるビールの注文を増やしている。</p>
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<p><span class="strongInContent">「串カツや肉汁餃子のように、今注目を浴びているのはワンテーマで特色があるコンセプトの居酒屋です。インパクトが残る店を客は覚えている」（前出・長浜氏）</span></p>
<p>まさにインパクト勝負！　で人気沸騰中の新規チェーンが、愛知県発祥の「新時代」だ。看板商品の揚げ鶏皮串「伝串(でんぐし)」は一本なんと50円、生ビールも190円（ともに税抜き）と、原材料高をものともしない超低価格を実現しているのだ。</p>
<p>リニューアルに成功した老舗チェーンもある。養老乃瀧グループが展開する「一軒め酒場」は客足が絶えない。都心ターミナル駅前の店舗に入ると、大衆酒場のような「コの字」カウンターのほか、コンセントが設置されたテーブル席もあり、カップルや一人飲み客が詰めかけていた。レモンサワーは209円と割安で、食事も300円前後が中心。お通しもなく″せんべろ″を楽しめる。注文の品が比較的すぐ届くため、ストレスがない。メニューを注視すると、低原価で調理の失敗が少ない揚げ物や、「〆さばのりゅうきゅう（漬け）」や「サーモンマリネ」など、保存が利く魚料理が目立つ。コストカットの努力がうかがえる。</p>
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<p>同じく、「テング酒場」を運営するテンアライドが仕掛ける「神田屋」の勢いもすさまじい。サワー類は一軒め酒場と同じく209円からで、立ち飲みブースが設置されており、一人で″ちょい飲み″に最適。ピーマンに詰めたポテトサラダやアボカドの串焼きなど目新しいメニューも多く、若い女性客で賑わっている。</p>
<p><span class="strongInContent">「十人単位の宴会が激減するかわりに、２〜３人の小規模、または一人飲みの需要が増えています。新規出店するなら小箱、と居酒屋のスモール化が顕著です」（飲食コンサルタントの三ツ井創太郎氏）</span></p>
<p>ワンテーマ居酒屋の新覇者になりそうなのが、刺身や握りをつまみながら飲める「寿司居酒屋」だ。「や台ずし」や、回転寿司の「スシロー」が運営する「杉玉」といったチェーンが、住宅街の駅前に集中展開している。実際に杉玉を訪れると、カウンター内で板前が寿司を握っている。本格的な握りを味わいながら、3000円前後で飲み食いできるのが魅力だ。</p>
<p><span class="strongInContent">「本来なら鮮魚は原価が高く、食品ロスも多い。生き残りをかけた居酒屋が肉を一押しにしているのはそうした理由もあります。その一方で、杉玉のような寿司居酒屋は貴重な″海鮮枠″として需要がある。スシローが運営しているために魚の調達や管理はお手のものでしょうし、大規模出店で利益も上げられるはずです」（Ｂ級グルメ探究家の柳生九兵衛氏）</span></p>
<p>少人数でしっぽり、リーズナブルでこだわりの肴を。激安居酒屋チェーンの新しい勢力図は、新しい「飲みニケーション」のあり方が色濃く反映されている。</p>
<h3>新時代の鶏皮串<br>
「伝串」10本550円</h3>
<figure id="attachment_312133" aria-describedby="caption-attachment-312133" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1f24fada"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/3d85ab209662b494201e824ec85f1760.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-312133" class="wp-caption-text">看板メニューが１本55円の鶏皮揚げ。スパイスの主原料は大豆で、塩分ゼロを実現している。クリスピーな食感だ</figcaption></figure>
<h3>杉玉の寿司盛り合わせ<br>
「特玉」8貫1649円</h3>
<figure id="attachment_312134" aria-describedby="caption-attachment-312134" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="be0f9cf3"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/d05542a5b0346dbab6d638d61bab188f.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-312134" class="wp-caption-text">板前が握る本格的な寿司が食べられる。スシローのネタよりも大ぶりで、シャリにはバルサミコ酢も使用</figcaption></figure>
<figure id="attachment_312131" aria-describedby="caption-attachment-312131" style="width: 2472px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c2ca6829"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/WF0602_P059.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-312131" class="wp-caption-text">※特記のない価格はすべて税込み</figcaption></figure>
<p>『FRIDAY』2023年6月2日号より</p>


時事通信社

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