<figure id="attachment_313926" aria-describedby="caption-attachment-313926" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1b3b3eb7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/KIN_0340.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-313926" class="wp-caption-text">中小のドラッグストアチェーンを次々と吸収合併して業界１位に上り詰めたウエルシア。都心にも店舗を増やす</figcaption></figure>
<p>大根が１本150円、豚バラ肉が１パック198円……。</p>
<p>土曜日の午後、売上高業界１位のドラッグストアチェーン「ウエルシア」の関東郊外の店舗を本誌記者が訪れると、生鮮食品コーナーが売り場を支配していた。買い物客は、陳列された野菜や肉を吟味しながら買い物カゴに商品を取っていく。特売のキッチンペーパーや洗剤をカゴいっぱいに詰め込む客の姿も見え、むしろ医薬品を買い求める向きのほうが少ないように映った。目下、ウエルシアは「薬も買えるスーパーマーケット」へと変貌を遂げている――。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>日本チェーンドラッグストア協会によると、ドラッグストアの市場規模は約８.７兆円（’22年度）。コンビニ業界を脅かす勢いで成長中だ。インバウンドやコロナ禍でマスクや消毒液などの″衛生用品特需″も追い風となり、次世代の「小売りの王」は急速に勢力を拡大しているのだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「ドラッグストア業界の伸びしろはまだあります。食品スーパーからの客の流入が見込めるのに加え、『門前薬局』と呼ばれる病院前にある小規模の調剤薬局からも客を奪取できれば、さらにシェアを拡げることができるでしょう。市場規模の10兆円突破は間違いない」（流通ジャーナリストの石橋忠子(あつこ)氏）</span></p>
<p>ドラッグストアの強みは、圧倒的なディスカウント力だ。とくに菓子や飲料は、一般的なスーパーマーケットよりも２〜３割ほど安い。なぜこの価格設定で利益を生み出せるのか。流通ジャーナリストの渡辺広明氏が解説する。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p><span class="strongInContent">「処方箋がなくても買えるＯＴＣ医薬品の粗利率が５割を超えているのが理由のひとつです。生鮮食品や日用品の特売で客を呼び、粗利率の高い医薬品を買ってもらう、というのが今のドラッグストアチェーンの主流ビジネスモデルになっています。郊外では一店舗ですべての買い物を済ませられる『ワンストップショッピング』型店舗の需要が高い。各チェーンは、そこにアジャストする形で店舗設計をしています」</span></p>
<p>薬剤師資格を持つドラッグストア元店員が続ける。</p>
<p><span class="strongInContent">「医薬品にプライベートブランド（ＰＢ）商品が浸透したことも、チェーン店の急拡大に貢献してきた。『薬が安く買える』というのは今までになかった魅力。ドラッグストア側からしても、利益率が高くてオイシイ商品といえます」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="薬剤師のヘッドハンティング"></div>
<h2>薬剤師のヘッドハンティング</h2>
<p>調剤薬局＋生鮮・日用品＋医薬品の「三段構え戦略」で業界をリードしてきたのが、前述のウエルシア、そして売上高業界２位の「ツルハドラッグ」だ。両チェーンは地方の中堅ドラッグストアチェーンのＭ＆Ａを繰り返し、巨大化を続けてきた。この２社の経営に大きな影響を与えているのが、小売業界のガリバー・イオンである。イオンは’14年にウエルシアを連結子会社化。また、ツルハの株式の約13％を握っている。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>イオンは業界９位「クスリのアオキ」の筆頭株主でもあり、「イオン薬局」を本体で運営するなど、巨大な「イオン連合軍」を展開中だ。イオン仕込みの物流を活用し、リーズナブルなＰＢ商品「トップバリュ」がウエルシアやツルハの店内にも陳列されている。</p>
<p>この連合軍が一枚岩となり、独走を続ける――と思いきや、実はグループ内でパイの奪い合いが起きている。とくに、売上高１位のウエルシアと２位のツルハで明暗が分かれ始めた。業界関係者の弁。</p>
<p><span class="strongInContent">「ツルハの’22年５月期の業績は減収減益で、他チェーンに比べて客数が落ち込みました。急速なＭ＆Ａ攻勢で店舗戦略が整わず、ツルハ同士で客を奪い合うケースも出てきてしまった。ドラッグストアチェーンは値付けが安いものの、客に訴求する″ウリ″は他にないので、いきなり成長が止まるケースもあり得る。ウエルシアも他人事ではありません」</span></p>
<p>ドラッグストアの展開に不可欠な薬剤師の確保も熾烈を極めている。大手チェーンで店長を務めていた薬剤師は言う。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p><span class="strongInContent">「数だけ見れば薬剤師は余っているのですが、調剤薬局の急増に求人が追いつかず、人手不足です。他チェーンから薬剤師をヘッドハンティングするというケースも増えています。重い荷物の品出しや深夜勤務など、ドラッグストアの店員は重労働。それならば資格を活かして稼げる調剤薬局に移るという薬剤師は多い」</span></p>
<p>ウエルシア、ツルハを猛追するのが業界３位の「コスモス薬品」だ。九州に強固な地盤を築く同チェーンは’22年５月期で31期連続増収を達成。中国・四国地方にまで進出し、地元スーパーから客を奪い、ローカル小売チェーンの再編を促すほどの影響力を示している。</p>
<p>これに対してウエルシアは合弁会社「イオンウエルシア九州」を設立し、今年４月に初出店。ツルハはＪＲ九州傘下の「ドラッグイレブン」を完全子会社化するなどして真っ向勝負を挑んでいるが、現状はコスモスに分があるようだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「コスモスの強みは、食品の安売りの徹底と、九州で築いてきた強力な物流です。他チェーンは買収で拡大したために店舗の〝飛び地〟が多く、物流網を形成しきれていない。コスモスは安定した収益を投資に回し、徐々に物流拠点を拡げています。現在は中京圏進出に注力していますが、いずれ関東、東北まで東進するでしょう」（小売・流通アナリストの中井彰人氏）</span></p>
<figure id="attachment_313923" aria-describedby="caption-attachment-313923" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="e11ed558"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/10000000000000157056_20230522184433062744_P211109000589.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-313923" class="wp-caption-text">肉や野菜など生鮮が並ぶウエルシア。品揃えはスーパーと遜色なく、一日の買い物が店内で済むのが強みだ</figcaption></figure>
<figure id="attachment_313925" aria-describedby="caption-attachment-313925" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c415d701"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/KIN_0275.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-313925" class="wp-caption-text">ツルハは’95年にイオン（当時ジャスコ）と業務・資本提携を結び現在に至る。目標の売上高１兆円まであと一歩</figcaption></figure>
<div data-friday-nextpage-lead="「都心出店」という課題"></div>
<h2>「都心出店」という課題</h2>
<p>売上高６位の「サンドラッグ」、同５位で愛知県に本拠地を置く「スギ薬局」も、課題になっているのは都市部への進出だ。郊外のロードサイド店は人口減少や高齢化の影響を免れず、いつまでも「ワンストップショッピング」に頼りきりでは先細りは確実なのだ。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>各チェーン、都市型店舗の出店に腐心しているが、人件費や家賃の高騰がネックになっている。上位チェーンが進出にも苦労している東京・大阪エリアで覇権を握っているのは、全国に３０００店舗超を有する業界４位の「マツモトキヨシ」だ（’21年にココカラファインと経営統合し、マツキヨココカラ＆カンパニーに改称）。かつての業界１位はインバウンド復活で巻き返しを図っている。</p>
<p>池袋（豊島区）の「サンシャイン60通り」に面するマツキヨは、’19年に大規模リニューアルを実施。化粧品や総合感冒薬、サプリメントなど、外国人観光客の「爆買い」で人気の商品を揃える。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>都心が外国人観光客で賑わった今年のＧＷ、本誌記者は件(くだん)のマツキヨへ向かった。一般的なドラッグストアのように雑然と商品が陳列されているのではなく、空港の免税品店のような高級感のある棚に美顔クリームやマスカラなどが並ぶ。大きな買い物袋を抱えた外国人観光客がレジに長蛇の列を作り、対応する店員は名札に英語・中国語を使えることが記されている。外国人観光客にも、「日本のドラッグストアならマツモトキヨシ」というイメージが浸透しているようだ。</p>
<p>マツキヨは業界で拡大中の生鮮にはあえて手を出さず、インバウンドを中心に都市部特化でブランドを維持している。証券アナリストの宇野沢茂樹氏は言う。</p>
<p><span class="strongInContent">「マツキヨはオンライン診療の本格化に備え、医薬品のネット注文などデジタル戦略に力を入れています。他社に先行しているのが宅配サービスで、この分野では中長期的にマツキヨがアドバンテージを握るかもしれません」</span></p>
<p>「イオン連合軍」の天下がいつまで続くかはいよいよわからなくなってきた。着実に″領土″を拡げるコスモスや、次世代の医薬品販売に一歩踏み出したマツキヨが業界地図をひっくり返す可能性は十分にある。</p>
<p>この業界のビジネスモデルは、医薬品を半ば既得権益的に販売できる部分に依るところが大きい。さるドラッグストアチェーン幹部はこう危惧する。</p>
<p><span class="strongInContent">「規制緩和でコンビニやスーパーが自由に医薬品を販売できるようになったら、我々は強みを失います。また、アマゾンが処方薬のネット販売に参入を検討しています。アマゾンの強力な配達ネットワークに対抗できるドラッグストアチェーンは見当たらない。業界構造そのものが変わってしまうのではないか」</span></p>
<p>数手先を見通せるチェーンこそが、「小売りの王」の盟主になる――。</p>
<figure id="attachment_313927" aria-describedby="caption-attachment-313927" style="width: 1562px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1549e4f1"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/KIN_0515.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-313927" class="wp-caption-text">外国人観光客でごった返す池袋・サンシャイン60通り沿いにあるマツモトキヨシ。爆買いする客が多く見られた</figcaption></figure>
<figure id="attachment_313924" aria-describedby="caption-attachment-313924" style="width: 1907px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="36546748"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/KIN_0006.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-313924" class="wp-caption-text">処方せんに対応する調剤薬局は増加の一途をたどる。病院近くの門前薬局統合でシェア拡大を狙う</figcaption></figure>
<p><a href="#" data-ident_hash="396ba0ef"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/WF0609_P059.jpg" alt=""></a></p>
<figure></figure>
<p>『FRIDAY』2023年6月9日号より</p>


鬼怒川 毅　朝日新聞社

ドラッグストアの市場規模が、コンビニ業界を脅かす勢いで成長中だ！次世代の「小売りの王」は急速に勢力を拡大している…各チェーンの戦略とは…？天下統一をするのはどの薬局に！？

【ドラッグストア大研究】コンビニより強い｢小売りの王｣熾烈競争の現場

あなたへのオススメ

【ドラッグストア大研究】 コンビニより強い｢小売りの王｣ 熾烈競争の現場

あなたへのオススメ

【ドラッグストア大研究】コンビニより強い｢小売りの王｣熾烈競争の現場