浅井 秀樹

<h3><span class="strongInContent">「警備員が全治４～６週間のけが」…警察に被害届を提出した千代田区</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p>皇居に近い都心で４月11日の早朝、何とも不可解な“事件”が引き起こされた。</p>
<p>千代田区は神田警察通りの道路整備を進めており、早朝を狙って作業に入ろうとした。その際、並木のイチョウ伐採に反対する住民グループの妨害行為で、区側の従事者に負傷者が出たという。区職員は軽症、警備員が全治４～６週間のけがで、神田警察署に被害届を提出して受理されたと、区側が一方的に主張する発表文をホームページに掲載した。</p>
<p>ところが、住民側の証言はまったく異なる。住民側の関係者によると、住民側にもけが人が２人いるのに、区側のHPには触れられていない。</p>
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<p>ある住民は「私たちは工事に反対しているのでなく、工事は早く進めてほしいと思っています」と話す。並木のイチョウを残してもらえないか、話し合いたいのだという。これまでの話し合いで、区側が工事の際に事前連絡するなどと約束してきたのに、その約束も守ってもらえないような状況になり、１年ほど前から断続的に住民が協力し、夜中に現場で木守りをしてきたという。</p>
<figure id="attachment_314264" aria-describedby="caption-attachment-314264" style="width: 4000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="10644452"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/9aac787ec752cfd9e139dcf4a9046ac5.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-314264" class="wp-caption-text">第２期の工事に入った神田警察通りの道路整備。歩道拡幅などのためにイチョウを伐採し、桜並木に植え替えるなどの計画に、住民は、駐車帯の必要性はなく、イチョウ並木を残せるはずだと話す</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">住民側の証言「警備員がにやにやして、これはまずいですね」と…</span></h3>
<p>その日も住民が木守りをしていたが、早朝になり、現場を引きあげる帰り道に区役所前を通ると、不穏な動きがあった。</p>
<p><span class="strongInContent">「車が何台も停まり、人が何人もいた」（住人）</span></p>
<p>区側の様子がおかしいと気づき、仲間に連絡し、木守り現場に住人たちが集まった。</p>
<p>区側は早朝４時過ぎぐらい、現場に住民が近づけないように工事用フェンスを張った。現場には、あるテレビ局も来ていたという。屈強そうな警備員が20～30人ほどいた。</p>
<p><span class="strongInContent">「体が大きく、がっしりとした人たちが手を後ろに回し、私たちの前に立ちはだかって、ぐいぐいと押すようにつきまとってきた」（住民）</span></p>
<p>現場に駆けつけた女性も</p>
<p><span class="strongInContent">「警備員がにやにやして、これはまずいですね、これはまずいですよね、などと話してきて、すごく気持ちが悪かった」</span></p>
<p>と証言する。横にずれて警備員から離れようとすると、「警備員がわざと前に来た」とも話す。</p>
<p>区側は住民が体当たりしてきたと主張するが、住民側は、体当たりした事実はないと主張する。むしろ、住民がフェンスで押されて倒れるなど、打撲や擦過傷を負った人がいるという。</p>
<p>住民側にはスマホで現場をビデオに撮る人もいた。ビデオには、警備員が自分でゆっくりと倒れていく姿も撮影されていた。現場にいた住民には、その警備員が重傷者なのではないかと言う人もいるが、このビデオを見た住民側の関係者は「その人が重傷になったとは考えられない。重症者がいるなら、別の人でないとおかしい」と話している。</p>
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<p>現場には救急車が呼ばれ、警備員が乗せられたが、これを見た住人は、大けがをしていような感じではなく、救急車は現場に長時間停まっていたと話す。一方、住民が110番通報して駆けつけた警察官は「私たちは中立の立場であり、千代田区と住民でよく話し合ってほしい」との姿勢で、その場で事件処理することもなかったという。</p>
<figure id="attachment_314265" aria-describedby="caption-attachment-314265" style="width: 2209px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="0b67d5e6"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/fef3f670ac8f9a9c6c46f6b724a16e37.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-314265" class="wp-caption-text">工事用フェンスが張られ、その後４月27日に２本のイチョウが伐採された</figcaption></figure>
<div data-friday-nextpage-lead="神田警察通りの道路整備とは…"></div>
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<h3><span class="strongInContent">神田警察通りの道路整備とは…</span></h3>
<p>この神田警察通りの道路整備は現在、第２期の工事に入っている。歩道拡幅などのためにイチョウを伐採し、桜並木に植え替えるなどの計画になっている。</p>
<figure id="attachment_314266" aria-describedby="caption-attachment-314266" style="width: 2237px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="43ee856f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/852231575d8c4c08eec0d122e735b2b6.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-314266" class="wp-caption-text">神田警察通りのイチョウ並木。千代田区は、「他の樹種への変更を望む声が多い」というが…</figcaption></figure>
<p>区環境まちづくり部の担当者によると、現場は歩行者や自転車が通行しやすくなるように歩道部分を拡幅するなどの計画で、イチョウを残したままでは整備が難しいという。また、イチョウは大量の落ち葉の処理や、雨天時に落ち葉で滑りやすいこと、銀杏の悪臭問題もあり、「他の樹種への変更を望む声が多い」などとし、議論を経て陽光ザクラへ植え替えることにしたと説明する。</p>
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<p>一方、前任の石川雅己・区長時代には第１期の工事で住民の伐採反対などもあり、イチョウ並木を残している。これについて、区側は、第１期の区間の特殊性を挙げ、道路両側が学校や会館で駐車場需要が極めて少なく、駐車帯をなくすことで、並木を残しても歩道スペースを確保できたからと言う。</p>
<figure id="attachment_314267" aria-describedby="caption-attachment-314267" style="width: 2233px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="784ed1c8"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/05/7023effd8133be28955288a9e4657160.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-314267" class="wp-caption-text">住民の伐採反対などもあり、イチョウ並木が残された第１期の区間</figcaption></figure>
<p>これに対し、夜中の木守りを続けてきた住民は、第１期の区間と同様に第２期の区間も駐車帯の必要性はなく、イチョウ並木を残せるはずだと話す。神田警察通りのコンビニ前に停める車は短時間であるほか、多くの車は神田警察通りと直角に交わる横道に停めるからだという。「私たちは現場でずっと見ていますから」と証言する。</p>
<p>イチョウから他の樹種へ変更する声が多いと区側が主張する’19年12月のアンケート結果についても、住民などから反論が出ている。整備計画エリアの住人に約4700通を配り、回答率は14.5％と低水準だった。設問も恣意的で、イチョウ並木を残したい人も、植え替えを含めた問題解決の選択肢を選ばざるを得なくなっているなど、アンケートが巧妙にできているという指摘がある。</p>
<p>神田警察通りのイチョウ伐採問題は、今年２月の区議会で、ある区議が取り上げている。アンケート結果について、この区議は「より詳細に分析するためには選択肢と自由記入コメントを合わせて読み解く必要がありますが、 少なくとも民意は既存の街路樹保存だったということが明確に分かります」と述べている。</p>
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<p>また、この区議は２月の区議会で、こうも話している。</p>
<p><span class="strongInContent">「現在もこの寒空の下、齢（よわい）80にもなろうという高齢女性が、健康に影響が及び得るほどの寒さに震えながら木のそばに寄り添って座り込む、このようなやり方でしか訴えられない現状の姿を想像していただきたい」</span></p>
<p>千代田区という自治体には、住民と真摯に向き合って話し合おうという、心ある人がいないのだろうか。</p>


浅井秀樹

「警備員が全治４～６週間のけが」…千代田区が警察に被害届を提出した「神田警察通りのイチョウ並木」問題。ところが、住民側の証言はまったく異なる。食い違う、千代田区と住民側の証言。一体何が起きているのか。

「イチョウ伐採問題」で千代田区が被害届、「警備員がにやにやして…」住民側と食い違う不可解な中身

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