<figure id="attachment_315342" aria-describedby="caption-attachment-315342" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="15f3636d"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/6b013a105f015ea48f49ea0a6a48d21b.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-315342" class="wp-caption-text">’16年、コメダHDは東証・名証一部にダブル上場。辣腕・臼井社長（当時）は同社急拡大の基盤作りを担ってきた</figcaption></figure>
<p>カフェで満腹に――。平日の午後１時ごろ、喫茶店チェーン「コメダ珈琲店」の都内店舗を初めて訪れた本誌記者は″嬉しい誤算″を実感した。</p>
<p>ファミレスのようなボックスシートと窓際のカウンター席が並ぶ店内はほぼ満席。入り口のラックには新聞や雑誌が並び、各席に無料インターネットとコンセントが完備されている。コーヒー一杯でテレワークする若者や、昼食をとる会社員など客層はさまざまだ。</p>
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<p>本誌記者がカツパン（カツサンド）と看板スイーツのシロノワールを注文すると、10分ほどで運ばれてきた。味噌味のタレがカツによく染み込んだカツパンは、重さ500ｇぐらいで手に収まりきらないほどの迫力。直径20㎝のブリオッシュにソフトクリームが載ったシロノワール、アイスコーヒーでテーブルは埋め尽くされた。</p>
<p>東海地方の喫茶文化「モーニング」を浸透させ、全47都道府県出店を達成したコメダＨＤが好調だ。’23年２月期の決算で過去最高益の54.２億円、２期連続の更新も見込んでいる。個人経営の喫茶店が減少し、市場が縮小するなかで、喫茶店チェーンの競合が激化している。</p>
<p>コメダの店員は、オーダーを受けるとかならず「ごゆっくり」と客に声をかける。長時間ＰＣを広げていても、話し込んでいても追い出されることはない。外食チェーンの生命線である「回転率」を捨ててもやっていけるワケを、経済ジャーナリストの高井尚之氏が解説する。</p>
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<p><span class="strongInContent">「コメダは20％台という高い利益率を確保しています。ほとんどの店舗がフランチャイズのため、人件費やテナント料など販管費が低く抑えられているのが大きい。パンを自社工場で作り、コーヒーも専用工場で抽出したものを店頭で提供するため、各店で味にばらつきが少ないのも特徴です」</span></p>
<p>地元の有力チェーンに留まっていたコメダの急成長を支えたのが、「プロ経営者」臼井興胤（おきたね）氏（64）だ。日本マクドナルドＣＯＯ（最高執行責任者）、セガ代表取締役社長などを歴任した後、’13年にコメダの社長に就任。昔ながらの喫茶店の情緒を残しながらも、徹底したフランチャイズ戦略で全国進出を推し進めた。</p>
<p><span class="strongInContent">「ところが、今年５月で臼井氏は会長の座を退きました。『成長の基盤作りを終えた』という理由でしたが、今の好調を今後も維持できるかが課題。とくにフランチャイズ比率が多い企業は、ブランドイメージが低下すると成長が止まる。そこをどう乗り越えるか」（業界紙記者）</span></p>
<p>喫茶店チェーンで日系ブランドのトップを走り続けているのが「ドトール」だ。経営母体のドトール・日レスＨＤは’23年２月期決算で34.６億円の黒字。昨年末にコーヒーを224→250円へ値上げしたが、客足は鈍っていないようだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「ドトールは低価格に振り切っているところが強みです。インターネット接続やコンセントの有無は店舗によってまちまちですが、客もそこまでドトールには期待していません。一方で、新商品の開発・リリースは定期的に行っているので、目新しさはある。自分の時間を少し作りたいというニーズにうまく応えている」（フードアナリストの重盛高雄氏）</span></p>
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<h2>スタバに死角なし？</h2>
<p>低価格の喫茶店チェーンは使いやすさが命。ゼンショーＨＤが展開する「モリバコーヒー」や「カフェ・ベローチェ」は、ドトールと同じ200円台でコーヒーを提供している。ベローチェの元店長が言う。</p>
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<p><span class="strongInContent">「都内主要駅至近の店舗で働いていた時は、一日300人くらい来店していました。それでも一日の売り上げは10万円程度で、まさに薄利多売のビジネス。ランチタイムがいちばんの稼ぎ時で、あとは近隣の喫煙所が閉鎖されたために、タバコを吸うサラリーマンの需要が一定数増えました。ただ、新規客を獲得するほどの強みはなく、常連客の維持に努めていた」</span></p>
<p>格安喫茶店チェーンで頭ひとつ抜けているドトールも、近年は店舗数が伸び悩んでいる。一方、同じグループで高級路線の「星乃珈琲店」をジワジワと拡大。実は同じ経営母体である「エクセルシオールカフェ」と三本柱で、さまざまなニーズを受け止めている。</p>
<p>急成長のコメダ、多角化を進めるドトールを上回るのが、絶対王者「スターバックス」だ。ドリンクのカスタマイズやモバイルオーダーなどをいち早く取り入れ、今も週末となればどの店舗も満席だ。</p>
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<p>現在、スタバのコーヒーは350円。「タリーズコーヒー」や「カフェ・ド・クリエ」など中価格帯のチェーンはスタバに合わせるように価格設定している。</p>
<p><span class="strongInContent">「街のお店で女性がコーヒーを飲む＝おしゃれと印象付けたのはスタバが最初ではないでしょうか。入店と同時にコーヒーの香りがして『スタバに来た』と思わせる、だから値段が多少上がってもリピートする。牛丼より高いドリンクを買い求める人が絶えないのは、その居心地の良さに起因しています」（前出・重盛氏）</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="あらゆる業態が進出"></div>
<h2>あらゆる業態が進出</h2>
<p>絶対王者に死角なし――と結論づけるにはまだ早い。喫茶店チェーン業界の動向を左右するのが、コンビニ大手が手がけるセルフ式のコーヒーだ。’13年１月に始まったセブン－イレブンの「セブンカフェ」がヒット。その後ファミリーマートやローソンもシステムを改良し、100円程度で買えるコーヒーが定着した。</p>
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<p>コンビニにとってコーヒーは「オイシイ商売」だと流通業界関係者は言う。</p>
<p><span class="strongInContent">「喫茶店チェーンならコーヒーの原価率は10％前後に収めなければ経営が成り立たないが、コンビニコーヒーの原価率は約50％。店舗や人員を新たに準備する必要がないので、そのまま利益として入ってくる。利益を１杯50円と見積もると、セブンの場合、年間10億杯は売れているので、全体で毎年500億円の売り上げアップにつながっている」</span></p>
<p>コンビニコーヒーはテイクアウト前提で、回転率が高い。前出・高井氏が言う。</p>
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<p><span class="strongInContent">「コロナの収束でオフィス出勤が復活しており、フードを買う流れでコンビニコーヒーが選ばれる比率が高い。昔は『コーヒーを飲むなら喫茶店』というように、客が専門業態を選ぶケースも多かったですが、そういう時代ではなくなりました。業態の多様化で、消費者心理にも変化が生じてきています」</span></p>
<p>ファミレスや回転寿司チェーンまでもがコーヒーに注力しているように、もはや″喫茶店″に垣根はなくなった。近年需要が高まっているロードサイド形態では、すかいらーく系列の「むさしの森珈琲」が店舗を増やしている。「ジョナサン」から改装した店舗を訪れると、ファミレスよりも席間が広く取られ、ひとり席が増えている。焼き上がりまでに20分かかるリコッタパンケーキ（748円）や1000円台のガレットなど、単価が高く「ひとり時間」を楽しめるメニューが目立った。こうした高単価の″第三勢力″が、既存の喫茶店チェーンを脅（おびや）かす。</p>
<p>そして「次の黒船」が襲来するかもしれない。ある喫茶店チェーンの幹部の弁。</p>
<p><span class="strongInContent">「中国国内の店舗数でスタバを追い抜いて１位の『ラッキンコーヒー』が、今年シンガポールに初出店しました。テイクアウト専門、モバイルオーダーのみという形態が特徴的で、早晩日本にも進出するかもしれない。そうなれば、話題性は大きいです」</span></p>
<p>外資が支配するか、日系が一矢報いるか。「勝者なき戦い」は新局面を迎える。</p>
<figure id="attachment_315343" aria-describedby="caption-attachment-315343" style="width: 2564px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="04c9a111"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/cfac21613f50b2e6ed0dc5d17de830ac.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-315343" class="wp-caption-text">シロノワールはコメダの創業地で45年以上前から販売されている名物。期間限定バージョンが不定期に展開される</figcaption></figure>
<figure id="attachment_315338" aria-describedby="caption-attachment-315338" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ec80edee"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/b2379a77a2e18858c65f8366bc7163cd.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-315338" class="wp-caption-text">スターバックスの拡大は止まらない。店舗の雰囲気作りに加えて、毎シーズン新作が出ることが訴求力に繫がる</figcaption></figure>
<figure id="attachment_315344" aria-describedby="caption-attachment-315344" style="width: 2526px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="802b9b4a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/03c8f149290e68b0415207ec73701297.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-315344" class="wp-caption-text">ドトールは低価格路線を維持、広い世代に親しまれている。だが、スタバを追い抜くには大きな変革が必要になる</figcaption></figure>
<figure id="attachment_315339" aria-describedby="caption-attachment-315339" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="219b5984"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/d5b6bcd869c34ca8e60094c1a6302d43.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-315339" class="wp-caption-text">今年３月に東京・銀座の店舗をリニューアルし、イメージ刷新を図るベローチェ。コンセント席増設なども導入</figcaption></figure>
<figure id="attachment_315340" aria-describedby="caption-attachment-315340" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="7921b43b"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/8b2512b704592eeb40540a251a103e8d.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-315340" class="wp-caption-text">ルノアールは、チェーンでは最も高い価格帯で独自の需要を見込む。「昭和の喫茶店」色が今の時代にヒットする</figcaption></figure>
<figure id="attachment_315337" aria-describedby="caption-attachment-315337" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="637c7004"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/498826880ba31ae08b98935450d9a765.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-315337" class="wp-caption-text">中国のラッキンコーヒーは不正会計疑惑で失速したが、立て直しに着手。新しい黒船として日本上陸も視野に！</figcaption></figure>
<p><a href="#" data-ident_hash="854e5099"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/d98de3ccd03a0daf19912b9df60ae955.jpg" alt=""></a></p>
<figure></figure>
<p>『FRIDAY』2023年6月16・23日号より</p>


鬼怒川 毅　共同通信社　時事通信社

個人経営の喫茶店が減少し、市場が縮小するなかで、喫茶店チェーンの競合が激化している！コメダの急成長から、絶対王者のスタバ、コンビニのセルフ式コーヒー…勝者なき戦いは、新局面を迎える。

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