中川 いづみ

<h3>眠りすぎでも死亡リスクが高まる…！？　大谷選手は大丈夫なのか？</h3>
6月10日時点で、ホームラン17本、5勝をマークするなど、投打で絶好調とも思える活躍をする大谷翔平選手。先発で投げると４～５日は休むのがふつうとされるなかで大谷選手は先発しないときも打者として出場している。そんな大谷選手が何よりも大事にしているのが睡眠。最低８時間、休日には12時間眠ることもあるという。
大谷選手は「寝れば寝るだけいい」と言っているが、
「それは大谷選手にとっては、ということでしょう。アメリカで行われた調査では、死亡リスクがいちばん低いのは、７時間前後の睡眠をとっている人で、それ以下でも、それ以上でも死亡リスクが高まることが報告されています」
こう言うのは、睡眠についてさまざまな研究を行っているブレインスリープの松井大樹さん。眠りすぎでも死亡リスクが高まる！　大谷選手は大丈夫なのか？
「大谷選手の場合、日々の肉体的な負担が非常に大きいことが想像されます。彼にとって必要な睡眠時間は８～12時間ということなのでしょう。 
睡眠時間には個人差があり、年代差があります。赤ちゃんは毎日16時間ほど眠っていますし、小学生のころは10～12時間。これが徐々に減ってきて、60代以上になると６時間でも充分になります。30～40代だったら、６～８時間といったところでしょうか」
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朝、すっきり目覚め、日中も眠気に襲われなければ、自分にとって必要な睡眠時間を確保できているということ。6時間の睡眠でも問題はないという。 
「睡眠のいちばん大きな役割は、体と脳を休めることです。睡眠時には多くのホルモンが働き、細胞を生まれ変わらせ、身体機能を活発にさせるアミノ酸を作り出したりします。そのおかげで筋肉や骨は強くなり、代謝が正常化されます。日中のパフォーマンスを上げるためには、睡眠はとても大事です」 
<figure id="attachment_315645" aria-describedby="caption-attachment-315645" style="width: 8640px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a661c1b6"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/6eb1acaa18c0255e642c0dcf7d65b45e.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-315645" class="wp-caption-text">大谷選手は「寝れば寝るだけいい」と言っているけど…（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
<h3>「睡眠をおざなりにするということは、将来の自分の健康を投げ捨てているのと同じです」</h3>
いくら寝てもすっきりしない、寝足りないと感じる場合は、睡眠障害があると考えられる。その一つが無呼吸症候群。寝ているときに呼吸が止まってしまう疾患で、睡眠の質が悪い状態。
「病気が疑われるときは専門医に相談したほうがいいでしょう」
慢性的な睡眠不足も、もちろん心身に影響を与える。
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睡眠が抑制されると、脂肪細胞から分泌される「レプチン」という食欲を抑制するホルモンの分泌が減り、逆に「グレリン」という食欲を増すホルモンが増えるのだとか。睡眠不足の人はBMI値が高い、つまり太っているという報告もある。
睡眠には自律神経を整える働きもあり、不足すると、頭痛、疲労感、イライラ、肩こり、冷え性など自律神経の乱れからくる不調に陥ることがあるという。
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それだけではない。
高血圧、糖尿病などの生活習慣病、心筋梗塞や脳卒中、免疫力の低下などのリスクが増大することも、多くの研究で明らかになっている。
また、睡眠時には脳にたまった老廃物を除去されるが、マウスで実験したところ、睡眠を制限するとアルツハイマーの原因物質の一つ「アミロイドβ」がたまりやすくなったのだとか。睡眠不足はアルツハイマーになるリスクもあるようだ。
「睡眠をおざなりにするということは、将来の自分の健康を投げ捨てているのと同じです」
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<h3>週末の「寝だめ」は効果なし…寝入りばなの90分がもっとも大事 </h3>
とはいえ、しっかり眠りたいと思っていても、忙しくて思い通りの睡眠時間をとれないこともある。平日の睡眠不足は週末寝だめをすればいいのか？
スタンフォード大学で、どれだけ寝れば寝不足が解消できるのか調べたところ、普段40分の睡眠不足の人は、３週間毎日14時間ベッドに入っていなければ解消されなかったという。つまり、日ごろ７時間睡眠をとりたい人が６時間しか眠れず、週末で取り返そうというのは無理な話なのだ。
<figure id="attachment_315655" aria-describedby="caption-attachment-315655" style="width: 5616px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b450ac27"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/06/5273b221bb8b3e7c33ed8e46a25dfc2f.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-315655" class="wp-caption-text">スタンフォード大学の調査によると、普段40分の睡眠不足の人は、３週間毎日14時間ベッドに入っていなければ解消されなかったという</figcaption></figure>
では、どうすればいいのか。
「まず、睡眠の質を上げることです。８時間質の悪い睡眠をとるよりも、６時間半でも質のいい睡眠をとったほうが、効果があります」
とくに大事なのは、最初の90分。この時間帯は、睡眠全体の中でももっとも眠りが深くなりやすい時間帯であり、ここで深く眠れれば、その後の睡眠リズムも整い、自律神経やホルモンの働きもよくなるという。
「そのために大事なのが、“光”と“体温”です。強い光を見ると、睡眠を促すメラトニンというホルモンの分泌を阻害してしまいます。寝る直前まで強い光を見ていると、脳が活性化して寝つきが悪くなります。 
体温はいったん上げて、下げることが重要。そのためには寝る90分前の入浴が有効です」
入眠90分前にお風呂に入り、１時間前から間接照明などにして光を抑え、30分前になったらスマホは見ないなど、自分なりの寝る前の習慣を作り、毎日同じことを繰り返すと、体は寝る準備に入りやすくなるという。
それでも昼間眠たくなったら、昼食後30分ほど仮眠をとる。それだけで睡眠不足はかなり解消するとか。
「質のいい睡眠で日中のパフォーマンスが上がるのはアスリートだけではありません。ビジネスマンも同じです。仕事や家事、楽しみの時間に使った残りの時間が睡眠にあてられがちですが、まず自分に合った睡眠時間を確保することが大事です」
眠りたいからと、ヌートバーの食事の誘いを断ったこともあるという大谷選手。
OECDの調査によると、日本人は世界一睡眠時間が短いのだとか。彼を見習って、睡眠優先のスケジュールを考えることが、今も将来も心身ともに健康に過ごすポイントのようだ。
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ブレインスリープ　2019年創業。睡眠医学に基づいた知見と最新テクノロジーで、快適な眠りを実現するための商品開発、企業やクリニックへのコンサルティングなど、睡眠に特化したあらゆるソリューションを提供している。

中川いづみ

大谷選手が何よりも大事にしている「睡眠」。最低８時間、休日には12時間眠ることもあるという。「睡眠をおざなりにするということは、将来の自分の健康を投げ捨てているのと同じです」と専門家は言います。

大谷選手が頼る「睡眠の力」に”世界一睡眠時間が短い”日本人が学ぶこと

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