神戸市西区の住宅街に建つアパートの一室で行われていたのは、４きょうだいによる〝異様〟とも思える惨劇だった。
事件は６月20日の深夜、西区のアパートから10㎞ほど離れた神戸市垂水区の路上で穂坂由美子さん（57）が保護されたことで発覚する。
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「路上で車椅子に座った由美子さんを通りかかった近所の男性が発見し、１１０番通報。その際、由美子さんは『自宅で殴られていた』と説明しています。後の調べできょうだいが今年３月頃から自宅内の鍵付きの押し入れに由美子さんを監禁し、鉄パイプで暴行を加えていたことが判明。警察は西区の自宅を訪れましたが、すでにもぬけの殻でした」（全国紙社会部記者）
行方を追っていた県警は22日、同市中央区・三宮のセンター街できょうだいの身柄を確保し、長女・穂坂沙喜容疑者（34）、次男の大地容疑者（32）、双子である朝美(ともみ)容疑者と朝華(あさか)容疑者（30）を母・由美子さんに対する監禁と傷害の容疑で逮捕した。しかし、悲劇はこれだけで終わらない。
<figure id="attachment_319465" aria-describedby="caption-attachment-319465" style="width: 1064px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="07af6eb7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/ae60343752f336b30ea04013059e8ff3.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-319465" class="wp-caption-text">一家の相関図</figcaption></figure>
逮捕後、沙喜容疑者を伴った捜査官が自宅近くの草むらで放置されたスーツケースを発見。中には沙喜容疑者の息子である穂坂修(ほさか・なお)ちゃん（６）が変わり果てた姿で眠っていた。
「修ちゃんの遺体はすでに一部が腐敗した状態でした。死因は外傷性ショック。遺体には少なくとも10回以上も殴打の後があり、背中一面にあざが広がっていたそうです。きょうだいたちは19日に修ちゃんを殺害後、すぐに遺体を遺棄したとみられています」（前出）
遺体を遺棄したとする同時刻、西区の近所の住民はこんなきょうだいたちを目撃していた。
「夕方５時頃だったと思います。上半身は黒ずくめでフードやキャップを被った４人組を見かけました。サングラスもかけていて、一人がスーツケースを引いていた。皆、妙に楽しそうで笑顔だったので印象に残ってます。すれ違った時に財布が落ちていたので、拾って交番に持って行きました。お巡りさんと一緒に中を確認したら『穂坂』と書かれたカードが入ってました」
<figure id="attachment_319467" aria-describedby="caption-attachment-319467" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="0d7b3179"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/0b6e981fd770ba9d7cdf319ccd6f983e.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-319467" class="wp-caption-text">修ちゃんが発見された草むら。普段はチェーンが張られており、立ち入ることができないようになっている</figcaption></figure>
<h2>障害を抱えながら、家庭のすべてを背負った長女</h2>
実母を監禁し、我が子にまで手をかけた沙喜容疑者。一方できょうだいたちが幼少期を過ごした垂水区の市営住宅では、長女として甲斐甲斐しく弟たちの面倒を見る彼女の姿が頻繁に目撃されていた。
「あの一家が異常な生活をしてたのは確かです。家はゴミ屋敷。ベランダにはゴミ袋が積まれていて、そこからゴキブリが湧いて家の中を出入りしていた。穂坂一家はペットとしてウサギを買っていて、その獣臭や糞尿の臭いもひどかった。
<figure id="attachment_319461" aria-describedby="caption-attachment-319461" style="width: 1893px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="8847d99f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/09214d7480eaaa5b314616ef9eb944dd-1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-319461" class="wp-caption-text">中学校時代の沙喜容疑者。学生時代は、支援学級へ通っていた。高校生の時には陸上大会で記録も残したが、同時期に母・由美子さんが自己破産している</figcaption></figure>
子供たちがゴミを外に捨てに行くんやけど、袋を引きずるから中の汁が垂れて近所から苦情が来る。お母さんが子供たちを残して夜に家を空けるのはしょっちゅうで、沙喜ちゃんに『お母さんはいないの？』と聞くと『出掛けてるから私がご飯を作らなあかんねん』って。よく下の弟たちに『言うこと聞いてよ！』とお願いする姿は見てました」（近所の住民）
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穂坂きょうだいは５人きょうだいで、今回逮捕された４人の他に沙喜容疑者と大地容疑者の間に長男がいる。シングルマザーの家庭で、複雑な事情を理解していたのもまた彼女だった。
「小学校の頃、沙喜ちゃんが『オジちゃんって言ってる人がおるけど、実はその人がお父さんやねん』と打ち明けていました。お母さんは子供たちを放ったらかし。夜の12時に団地の階段で上のきょうだい３人が並んで座ってて、見ると弟たちは頭から血を流してたこともあった。手も怪我で腫れて、近所の人が仕方なく手当てして。母親が鉄パイプで子供たちを叩いて警察沙汰になったこともあります。あの子たちは不幸の元に生まれた子たちなんです」（別の住民）
<div data-friday-nextpage-lead="穂坂家は自己破産。沙喜は外へ働きに"></div>
沙喜容疑者は地元中学を卒業後、養護学校へと入学。障害者の兵庫県大会では陸上競技に出場するなど活発な一面も見せていた。だが、一家の経済困窮は変わらず、沙喜容疑者が高校２年生の時、母親の由美子さんは自己破産している。
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「高校を卒業後、沙喜容疑者は通販会社やキャバクラなど職を転々。妊娠後、母親と妹２人が暮らす西区のアパートにやって来たそうです」（前出・記者）
修ちゃんを出産後は、母としての一面を持つようになる。同じ保育園に子供が通う保護者はこう語る。
「沙喜さんはクリーム色の自転車の後ろにお子さんを乗せて、よく保育園への送り迎えをしてました。園でも正式な保母さんではないものの〝お母さん先生〟としてお手伝いに励んでいました」
<figure id="attachment_319464" aria-describedby="caption-attachment-319464" style="width: 1607px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="e8159848"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/f007978aec31003f76b021d6983a2a42.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-319464" class="wp-caption-text">修ちゃんの遺体を遺棄した翌日、大阪の繁華街を歩く４人。沙喜と大地、双子の妹はそれぞれ手を握っていた</figcaption></figure>
沙喜容疑者の知人は、親子のこんな微笑ましい光景を目の当たりにしていた。
「去年の夏、沙喜さんや修君と焼き肉を食べに行ったんです。修君は年のわりには細かったけど、ご飯もしっかり食べてました。修君はアンパンマンが好きで、その時はアンパンマンのお絵描きをしたり、YouTubeで動画を見たりしてました。子供を叱ったりすることはあったけど、沙喜さんは〝優しいお母さん〟という印象です。
ただ、その時も修君はまだオムツが取れてなくて『ちょっと遅いですね』という話をしました。周囲の人は修君の発育に対して気にしてる部分もあって、知り合いが『修君を発達障害の検査に行かしてあげた方がええ』と進言したのですが、沙喜さんは『なんでやねん！』と怒っていました。その知り合いも『沙喜さんは怒ると止められない』とこぼしていました」
<h2>育児に苦戦、そして虐待へ</h2>
だが、その反面、近所の人たちは沙喜容疑者の修ちゃんに対する扱いについて違和感を抱く場面もあったという。
「お母さんが『早う、おいで！』と子供を叱ってたことはありました。子供も泣きながら彼女の後ろをついていったりして。修ちゃんが人の敷地に入って行っても何も言わなかったり、放任状態な感じでした。３年ぐらい前にも子供にリードをつけて歩かせてるのを見たことはあります。スーパーでも修ちゃんがカートを押そうとすると『触るな！』と大声で怒鳴ったりしていました」
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育児の不安を抱える中、昨年末には弟の大地容疑者も西区のアパートで同居するようになる。
<figure id="attachment_319463" aria-describedby="caption-attachment-319463" style="width: 1700px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6a78d940"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/4f3bee02684d3d365e60e52aa0696968-e1688437088965.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-319463" class="wp-caption-text">母親からの虐待から逃れるように、一度は実家を出た大地容疑者。結婚もしたが、結婚相手とは共に暮らせず、実家へ戻ってきた</figcaption></figure>
「県警は大地容疑者がやって来てから修ちゃんへの虐待が始まったとみています。実際、今年に入って修ちゃんは保育園も休みがちとなり、４月には園が修ちゃんの身体にあるあざを確認。区も家庭訪問を行っています。５月には沙喜容疑者が役所に対し『育てにくい』と修ちゃんの一時保護を希望していましたが、大地容疑者から『保護は不要』との意向が示されていました」（前出・記者）
彼なりのSOSだったのだろうか、近所の住民はこんな修君の姿を見かけていた。
「アパートの前を通ったら男の子が２階のベランダから身を乗り出すようにして『助けて！暇なんです！』」と言っていました。住民の人が『暇なら降りてきて遊ぼうか』と声をかけてました」
<figure id="attachment_319466" aria-describedby="caption-attachment-319466" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="e0fc1a9d"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/ba4e5b36b2bf121c0ae0d40a68ba90c1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-319466" class="wp-caption-text">４きょうだいと由美子さん、修ちゃんの６人が住んでいた集合住宅。家賃は６万円ほどで、他の住所者も少なくややさびれた印象だ</figcaption></figure>
家族関係、特に修君の父親についても謎は多い。
「修ちゃんの父親については戸籍情報がなく、警察も把握できていない状況。沙喜容疑者が大地容疑者に関して“男女の関係”をほのめかす供述をしています。また大地容疑者が母の由美子さんや修ちゃんだけではなく、他の家族にも暴行を加えていたとの話もあり、県警は慎重に捜査を続けています」（前出・記者）
大地容疑者の暴力に支配された穂坂一家。姉として、そして母として家族を救えなかった沙喜容疑者は今、何を思うのだろうか。

加藤慶(現場写真)

６月22日、母に対する監禁・傷害、及び長女の息子・修ちゃんの遺体を遺棄した疑いで逮捕された坂沙喜容疑者、大地容疑者、朝美容疑者、朝華容疑者の４きょうだい。本誌取材で長女の壮絶な過去が明らかとなった

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