<h2>細川成也（24）<br>
中日ドラゴンズ</h2>
<figure id="attachment_319934" aria-describedby="caption-attachment-319934" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="48eabf57"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/dcd62cb5d46b0a14859849965edff27b.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-319934" class="wp-caption-text">’17年、明秀学園日立高校からDeNAに入団。当時のラミレス監督から高い評価を受けたが、打率の低さがネックで、「二軍の帝王」状態に陥っていた</figcaption></figure>
<h3>「力の抜きどころ」を覚えて中日の主砲に</h3>
<p>’22年のドラフトを経て126人の若武者が各球団の門を叩く一方で、129人に戦力外通告が言い渡された。所属球団で将来を嘱望されながら、なかなか芽が出ずにファームでくすぶったまま引退していく選手たちは多い。そんな中、トレードや戦力外、現役ドラフトで移籍したチームでチャンスをつかみ、「新天地で咲いた」男たちがいる。中日で中軸を担う細川成也(せいや)（24）がその代表的な存在だ。</p>
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<p>細川は’17年、ドラフト５位でＤｅＮＡに入団したが、昨年までの６年間でわずか６本塁打、打率.201と、首脳陣の期待に応えられていなかった。当時一軍打撃コーチを務めていた坪井智哉(ともちか)氏が話す。</p>
<p><span class="strongInContent">「ルーキーイヤーから、細川の『遠くに飛ばす力』には目を見張るものがありました。ただ、インコースの速球に対応しきれず、アウトコースの変化球にも手が出てしまうなど、バットを振り回していた。代打でチャンスを与えても３球三振で帰ってくる。スタメンで使うには難しい選手だったんです」</span></p>
<p>ところが、昨年オフの現役ドラフトで中日へ移ると、ここまで.319、10本塁打（数字は６月27日時点。以下同）の大活躍。５月には月間ＭＶＰにも輝き、シーズン前半戦途中で過去６年間の通算本塁打数、打点数、安打数を超えてしまった。「開花」の要因はどこにあるのだろうか。</p>
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<p><span class="strongInContent">「もともと、ウエイトトレーニングやスイングの練習量は球団でもトップクラス。課題はメンタルでした。ＤｅＮＡは、外野に佐野恵太（28）や筒香嘉智（31）、タイラー・オースティン（31）がいる厳しい環境でした。彼らに追いつこうと力んでしまっていたのでしょう。ところが、今シーズンの細川は、すごく楽にスイングしている。所属チームが変わったことで心境に変化があり、『力の抜きどころ、入れどころ』を覚えたのだと思います。<br>
</span></p>
<p><span class="strongInContent">先日、『チャンスが来たね』と本人にメールしたら、『これからもたくさん練習します！』と返ってきた。力みが消えて、練習量は増えたのですから、今シーズンに飛躍したのも頷けますよ」（同前）</span></p>
<p>チームはリーグ５位に沈む中、新たな主砲が中日ファンに希望を与えている。</p>
<h2>大竹耕太郎（28）<br>
阪神タイガース</h2>
<figure id="attachment_319931" aria-describedby="caption-attachment-319931" style="width: 1704px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="cfef4eab"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/cbe8cef728c5318d94fbf218349977e2.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-319931" class="wp-caption-text">’18年、早稲田大学からソフトバンクに入団。制球力に優れた軟投派投手だった。初対戦の球団にめっぽう強く、11球団との初対戦成績は９勝無敗を誇る</figcaption></figure>
<h3>ボール２個分のカットボールが効果アリ</h3>
<p>細川が「打」で花開いた男なら、阪神の大竹耕太郎（28）は、「投」で咲いた男だ。’18年、育成ドラフト４位でソフトバンクに入団。１年目にウエスタン・リーグで防御率1.87の好成績を収めて支配下登録されるも、150㎞/h台のストレートが当たり前のパ・リーグにおいて、最速145㎞/hの大竹は打ち込まれることも多く、ローテーションを守れずにいた。’18年にソフトバンクでコーチを務めていた水上善雄氏が当時を振り返る。</p>
<p><span class="strongInContent">「１年目から何度かいいピッチングをしていて、将来が楽しみな投手でした。ただ、当時は今ほどコントロールが良くなく、飛び抜けて球が速いわけでもなかった。あまり目立つところのない投手でした。また、マウンド上では覇気が感じられず、『１年目ならもっとウキウキした顔で投げればいいのに、何がつまらないんだろう』と感じましたね。ソフトバンクは選手層が厚いだけに、ちょっとでも打ち込まれると二軍、下手したら三軍に行かされる。そういうプレッシャーをマウンド上で感じていたのだと思います」</span></p>
<p>しかし、現役ドラフトで阪神に移籍するや、大竹の投球は、見違えるほどに向上した。現在、規定投球回未満ながらリーグ３位の６勝、防御率は1.13と圧倒的な成績を残している。</p>
<p><span class="strongInContent">「佐々木朗希（21）や平良海馬（23）に代表されるような速球派の投手が多いパ・リーグに比べ、セ・リーグはコントロールで勝負する技巧派の投手が通用しやすい傾向にあります。『遅球派』の大竹にとって、セの阪神への移籍が大きなチャンスになったことは間違いありません」（スポーツ紙野球担当記者）</span></p>
<p>本人の技術的な成長も、飛躍の要因だ。</p>
<p><span class="strongInContent">「変化球の精度が段違いに良くなっています。当時、『あともう少しだけ鋭い変化球があれば勝てるのに』と思っていましたが、現在は右打者の膝元にボール２個分ほど食い込んでくるカットボールや、それよりも曲がり幅の大きいスライダーをコーナーに投げ分けることができている。だからこそ、もともと武器にしていたチェンジアップや質の高いストレートが生きるんです。阪神でも投げていた星野伸之（57）のような投球術を習得しています」（前出・水上氏）</span></p>
<p>’08年以来15年ぶりに阪神を率いている岡田彰布監督（65）の存在も関係しているようで……。</p>
<p><span class="strongInContent">「早稲田大学の後輩である大竹を可愛がり、岡田マジックをかけているのではないでしょうか。岡田は、期待している選手に対して『しばらくは使うから、のんびり投げろ』みたいなことを、メディアを上手く使って伝えたり、本人に直接話したりする。好投手がひしめくソフトバンクでくすぶっていた大竹が発奮するのも頷けます」（同前）</span></p>
<p>’22年からオフの自主トレで弟子入り志願した和田毅（42）に、「まだまだ伸びる」と絶賛された大竹。師匠が獲得できなかった沢村賞受賞の日は近い。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="新庄監督のアドバイスで"></div>
<h2>田中正義（28）<br>
北海道日本ハムファイターズ</h2>
<figure id="attachment_319932" aria-describedby="caption-attachment-319932" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b9e65121"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/8f394453c440089a66f26c3a5046331e.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-319932" class="wp-caption-text">’17年、創価大学からソフトバンクに入団。高校時代から痛めていた右肩の故障に苦しんだ。日ハム移籍後は抑えで起用され、６月27日時点で13セーブ</figcaption></figure>
<h3>新庄監督のアドバイスで守護神に</h3>
<p>パ・リーグに目を移そう。日本ハムからソフトバンクへＦＡ移籍した近藤健介（29）の人的補償として、日本ハムへ移籍した田中正義(せいぎ)（28）は、「抑え」で輝きを放っている。創価大学在学時は大学日本代表のエースとして君臨。’17年に５球団競合の末、ドラフト１位でソフトバンクに入団した田中だったが、一軍登板は６年間でわずか34イニング、防御率4.25と期待に応えられなかった。</p>
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<p><span class="strongInContent">「ソフトバンクでは、肩の故障もあって本来のピッチングが出来ていなかった。そんななか、世間から『元大学ナンバーワン投手』という目で見られることに、苦しさを感じていたのではないでしょうか。正義には『無理はしちゃダメだ』と伝えていましたが、本人はすごく真面目なので、怪我をかばいつつ、無理して投げていたと思います。今の投球が正義の『真の姿』なんですが……」（’17年にソフトバンクのコーチを務めた藤井康雄氏）</span></p>
<p>前出の水上氏も、「田中のポテンシャルについては疑いの余地なし」と絶賛する。</p>
<p><span class="strongInContent">「初めて筑後（二軍球場）に彼が来た時、新聞記者たちに思わず『オレ、こいつの球を見ながら一晩中、飲んでいられるわ』ともらしてしまったほど、ものすごい回転数のストレートを投げていた。あんな真っ直(す)ぐは、元ロッテの三井雅晴さん（68）や江川卓さん（68）以外に見たことがなかった。ただ、変化球でカウントを取れなかったのが惜しかった。素晴らしいストレートがあっても、それだけでは打たれてしまうのがプロの世界です」</span></p>
<p>くすみつつあったダイヤの原石を磨き上げたのは、新庄剛志監督（51）だった。</p>
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<p><span class="strongInContent">「新庄さんは、登板時に暗い顔をしていた田中に対し、『笑顔で投げろ』とアドバイス。また、いいピッチングをすると『田中君が抑えだと安心感がある』などと、必ず褒めるんです。田中はそんな言葉に安心し、打たれても笑顔で自信をもって投げるようになった。心に余裕が生まれ、制球も安定してきた。それが現在の12セーブ、防御率２点台という成績に表れているのでしょう。これが原辰徳監督（64）率いる巨人だったら、そんな言葉はかけられないと思います」（スポーツ紙デスク）</span></p>
<p>のびのびとプレーできる環境が、田中を守護神に成長させた。</p>
<p><span class="strongInContent">「プロの世界で、いきなり飛躍的に技術が向上することはあまりない。ソフトバンク時代には敗戦処理や中継ぎなど、起用法が定まらなかったが、日ハムに移って『抑え』という役割を与えられた。少々打たれても首脳陣に期待されながら投げるようになったことで、正義は初めてやりがいを感じたのではないでしょうか。上手く褒めて、やるべきことを理解させて、実践させてみる。今の時代に合った指導で正義を操縦した新庄監督のうまさだと思います」（前出・藤井氏）</span></p>
<p>世代ナンバーワンの逸材が、かつての輝きを取り戻している。</p>
<h2>茶谷(ちゃたに)健太（25）<br>
千葉ロッテマリーンズ</h2>
<figure id="attachment_319933" aria-describedby="caption-attachment-319933" style="width: 1769px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="5eb4199c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/a03cc9e39f539b3f6b9578aa6bb35559.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-319933" class="wp-caption-text">’16年、帝京第三高校からソフトバンクに入団。ロッテには育成契約で移籍した。今シーズンは開幕一軍スタート、５月には４番を務めるなどブレイク</figcaption></figure>
<h3>天然キャラが「野球ノート」をつけた</h3>
<p>「戦力外」から這い上がった選手もいる。千葉ロッテの茶谷健太（25）は’16年にソフトバンクにドラフト４位で入団するも、’18年に戦力外通告を受け、育成再契約の打診を蹴ってロッテと育成契約した。</p>
<p><span class="strongInContent">「新人の頃から身体能力が高く、身体も大きくて当たればしっかり飛ぶ。なにより、内角を打つのがとびきりうまかった。巨人の坂本勇人（34）に引けを取らないレベルです。ただ、当時は体幹が鍛えられておらず、あまりに動きがフニャフニャだった。そして、超がつくほどの天然。糸井嘉男（41）を思い出させるほど。いくらコーチに叱咤されても、『ハ〜イ』とニコニコしてました」（前出・水上氏）</span></p>
<p>ただ、茶谷にも危機感は募っていた。</p>
<p><span class="strongInContent">「もともとはハングリーさのない子でしたが、『このままではいけない』と練習設備の整った福岡を離れてロッテへ移籍するという道を自ら選んだ。『本当に人間か』と思うほどの体力お化けでしたから、厳しい環境で練習に励めば成長が早いのは当然です」（前出・水上氏）</span></p>
<p>自らを見つめ直す時間も増えていった。</p>
<p><span class="strongInContent">「吉井理人監督（58）から、『自分を俯瞰して見られるように、日記をつけてみなさい』と言われ、それを実践したんです。本人も、『内省の時間を取ることで、ふとした瞬間に技術向上のヒントを見つけられる』と話していましたよ」（前出・記者）</span></p>
<p>ポテンシャルは充分。坂本に続く大型ショートとして、球界を沸かせてほしい。</p>
<h2>江越大賀（30）<br>
北海道日本ハムファイターズ</h2>
<figure id="attachment_319930" aria-describedby="caption-attachment-319930" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="eccd3237"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/07/806da6251ed0051fd8e6e0ba103782d6.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-319930" class="wp-caption-text">’15年、駒澤大学から阪神に入団。遠投120mを記録する強肩と広い守備範囲を、当時の金本知憲監督から絶賛された。移籍後はセンターで起用されている</figcaption></figure>
<h3>骨が折れても出場し続ける執念が結果に</h3>
<p>阪神からトレードで日本ハムへ移籍した江越大賀（30）は、交流戦で古巣に強烈な恩返しをした。阪神との３連戦に１番・センターで出場した江越は、第１戦でダメ押しの４号ソロ。ピンチの場面では強肩を発揮してランナーを刺すなど攻守で大活躍だった。</p>
<p><span class="strongInContent">「阪神時代から彼の身体能力は抜きんでていましたが、打率の低さから守備固めや代走で起用されるのがやっとでした。打席での表情にも余裕がなく、一軍投手の速いストレートに差し込まれる場面も多かった。ところが、日ハムに移籍してからは、首脳陣が我慢強くスタメンで使うようになった。正直、技術的に大きく変わったようには見えないのですが、表情に余裕も出て、要所でいい仕事をしています」（前出・藤井氏）</span></p>
<p>スタメンで使い続ければ、守備機会が増え、好プレーも増える。</p>
<p><span class="strongInContent">「走る、守る、投げるの部分では、球界トップクラスの実力です。江越もこのチャンスをものにしようと懸命。一時は右手首と左あばら骨を両方骨折していましたが、本人の希望で強行出場するほど、今シーズンに懸けています」（前出・記者）</span></p>
<p>江越が満開となる日を、阪神・日ハム両軍のファンが待っている――。</p>
<p>環境が変化するだけで、くすぶっていた選手たちが見違えるように光り輝く。そんな奇跡のようなことが、プロ野球の世界では、当たり前に起きている。</p>
<p>『FRIDAY』2023年7月14・21日号より</p>


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