<p>7月中旬から中断していたJ1が8月5日から再開。8月6日の浦和レッズ対横浜F・マリノスで懐かしい男が2017年以来6年ぶりとなるJリーグのピッチに立った。</p>
<p>中島翔哉（28）－－2018年夏に発足した第1次森保ジャパンで当初、エースナンバー10を背負っていたアタッカーである。</p>
<figure id="attachment_326436" aria-describedby="caption-attachment-326436" style="width: 1280px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="83d49ecb"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/b1a7ae3f501109aadb8ae436b57c3294.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-326436" class="wp-caption-text">8月9日、公開練習で汗を流す中島翔哉</figcaption></figure>
<p>後半38分に出場した元エースアタッカーには、ゴールという大きなタスクが求められた。</p>
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<p>だが、5月にトルコ1部・アンタルヤスポルで22－23シーズンを終えた後、長期オフに入っていた中島は動きが重い。左のオープンスペースにパスが出た後半44分のチャンスではボールに追いつけず、左サイドに絶好のパスが来たロスタイムの場面でもまさかのコントロールミスを犯した。まさに、地に足がついていなかったのである。</p>
<p><span class="strongInContent">「全体練習に合流したのは8月3日。2日くらいしかまともに練習していない」</span></p>
<p>本人がそう話したように、コンディションも連係面もベストの状態からは程遠いのだろう。</p>
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<p>それでも、守護神・西川周作（37）はこう太鼓判を押した。</p>
<p><span class="strongInContent">「日本の気候とJリーグの強度に慣れていけば、間違いなくポテンシャルを発揮できる。フィニッシュの能力は高く、味方を使うパスもできるんで、今までチームになかったピースかなと思います。レッズは得点力に課題を抱えているので、翔哉には結果が求められると思いますけど、強く責任感を持ってやってくれると思います」</span></p>
<p>周囲の期待値は非常に高いのだ。8月23日に29歳になる中島が再ブレイクできるか否か。それは今季Jリーグ後半戦の大きなポイントと言っていい。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="スターダムにのし上がるかと思われたが…"></div>
<p>なぜ中島がここまで注目されるのか。それはやはり、過去の代表や海外でのキャリアによるところが大きい。</p>
<figure id="attachment_326437" aria-describedby="caption-attachment-326437" style="width: 4170px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="2e925236"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/72cd076ce5ce66244a7d804ee1c4d368.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-326437" class="wp-caption-text">2019年のコパ・アメリカでは日本代表の10番を背負った</figcaption></figure>
<p>東京ヴェルディ育ちの中島は、2011年U-17ワールドカップ（W杯）や2016年リオデジャネイロ五輪に出場するなど、10代の頃から才能を高く評価されてきた。</p>
<p>2017年夏にポルトガル1部・ポルティモネンセへ移籍すると、1年目の17－18シーズンにリーグ29試合出場10ゴールという目覚ましい実績を残した。</p>
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<p>当時、代表を率いていたヴァイッド・ハリルホジッチ監督は個の打開力と決定力に秀でる小柄なテクニシャンに着目。2018年ロシアW杯直前の3月のベルギー遠征に初招集した。</p>
<p>中島はその抜擢に応え、初キャップとなったマリ戦でいきなり初得点を挙げるという衝撃的デビューを飾った。そのインパクトは絶大で、本大会滑り込みも有力視されたほどだった。</p>
<p>だが、4月にハリルホジッチ監督が電撃解任され、西野朗監督が後を引き継ぐと状況が一変。中島は選外となり、乾貴士（35）が選出された。その乾が本大会で2ゴールを挙げたのは周知の事実。中島は「悲運の男」となってしまった。ただ、当時の中島はまだ23歳。2022年カタールW杯を十分に狙える年齢だっただけに、「次の代表を担う男」と大きな期待が寄せられた。</p>
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<p>ロシアW杯の後、代表を率いた森保一監督（54）も中島を重視した1人だ。2018年～2019年にかけては中島・南野拓実（28）・堂安律（25）の2列目トリオを攻撃の中核に起用。「三銃士」「新ビッグ3」などと称され、爆発的な推進力と破壊力で見る者を魅了した。その活躍ぶりが認められ、中島は中村俊輔（45・現横浜FCコーチ）、香川真司（34）ら偉大な面々が継承してきた背番号10を託されるまでに至ったのである。</p>
<p>ところがーー第1次森保ジャパンの最初の大舞台、2019年アジアカップ（UAE）をケガで欠場したことで中島のキャリアに暗雲が立ち込める。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="カタール移籍後の「負のスパイラル」"></div>
<p>直後の同年2月には、ポルティモネンセからカタールのアルドゥハイルへ完全移籍するという驚くべきニュースも流れた。</p>
<p>ポルトガル1部にいる24歳のスター候補が、欧州5大リーグではなく、中東に赴くというのは異例中の異例。欧州の報道では移籍金3500万ユーロ（約55億円）、年俸350万ユーロ（約5億5000万円）と推定され、マネーの面では大成功だったかもしれない。ただ、キャリアダウンを不安視する声は少なくなかった。</p>
<p>それらの懸念は半年後のFCポルトへの完全移籍で払拭されたかに見えた。名門・ポルトで背番号10を託されたからだ。だが、中島はセルジオ・コンセイソン監督に求められた守備のタスクを十分にこなせず、コミュニケーションの問題も重なって、出場機会が減っていった。</p>
<figure id="attachment_326438" aria-describedby="caption-attachment-326438" style="width: 2787px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ce26815a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/591ca927b11e2b696a11a8c73d41d6df.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-326438" class="wp-caption-text">FCポルト時代の中島</figcaption></figure>
<p>同監督は選手がメディアや自チーム関係者以外と話をすることも禁じていた模様で、当時の中島は<span class="strongInContent">「チームのことは話せない」</span>と伏し目がちに言うだけだった。環境適応にかなり苦しんだのは間違いないだろう。結局、ポルトでの1年半はリーグ戦のゴールゼロ。不完全燃焼の時間を強いられた。それが響いて、代表からも徐々に遠のいていくこととなった。</p>
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<p>2021年以降はUAEのアル・アイン、ポルティモネンセ、アンタルヤスポルの3つのクラブを渡り歩き、復活の兆しを見せたポルティモネンセ時代には代表復帰を後押しする声も高まったが、森保監督が招集に踏み切ることはなかった。本人も2022年カタールW杯での活躍を思い描いた時期もあったはずだが、夢は幻となってしまったのである。</p>
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<p>こうした紆余曲折を経て、今夏、日本復帰を決意した中島。年代別代表で共闘した牲川歩見（29）、岩波拓也（29）、リオ五輪に一緒に参戦した興梠慎三（37）、日本代表でともにプレーした酒井宏樹（33）、安部裕葵（24）ら慣れ親しんだメンバーのいる浦和に加入したことで、ようやく自分らしく振舞えるようになったように見えた。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="「俺って、雨男なのかな…」"></div>
<p>8月9日の公開練習時も終始、弾けんばかりの笑みをのぞかせていた。ボール回しや戦術練習でも周囲と密に意思疎通を図り、指示を出す様子が見受けられた。適応は早そうだ。</p>
<p>充実したメンタルは練習後の取材対応時にもよく表れていた。時折、豪雨に見舞われるあいにくの天候で、「DAZN・やべっちスタジアム」の収録がスタートした瞬間も滝のような雨が降ってきた。</p>
<p><span class="strongInContent">「俺って、雨男なのかな…。（8月1日の）入団会見の日もそうだった」</span>と本人はポロリ。報道陣に突っ込まれると<span class="strongInContent">「雨男って言わないでくださいよ～」</span>と人懐こい笑顔で返した。</p>
<figure id="attachment_326439" aria-describedby="caption-attachment-326439" style="width: 1280px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="8ec71ca7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/64a5c63965ccc6adebde5fe20538e86a.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-326439" class="wp-caption-text">練習中には笑顔を見せることも</figcaption></figure>
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<p>「素の中島翔哉」を公の場で垣間見せたのは、東京Vや富山にいた時代以来ではないか。今の中島はあらゆる呪縛から解き放たれたようにも見える。</p>
<p><span class="strongInContent">「代表に関しては、僕が行きたいと言って行けるもんじゃないんで、今は特に考えてないです。浦和で前回、試合に出させてもらいましたけど、テストしている時間はないと思うんで、チームにできる限り早く貢献できればと思っています」</span></p>
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<p>本来の輝きを取り戻すためには地道な努力を積み重ねるしかない。間もなく30歳という年齢、今の欧州組のアタッカー陣を考えると、代表復帰は難しいかもしれないが、30代でブレイクし、JリーグMVPを獲得した家長昭博（37）のような例もある。中島翔哉がこの先、どんな道のりを歩むかは分からないが、口グセである「楽しいサッカー」を具現化することに集中してほしいものである。</p>


元川悦子

元川悦子（1・4枚目）、アフロ（2・3枚目）

6年ぶりに中島翔哉がJリーグの舞台へ戻ってきた。8月6日の横浜F・マリノス戦ではさっそく帰国後初出場を果たしたが、本来の動きにはまだほど遠い。代表で10番も背負った大物は復活できるのか。

動きが重くミス…スターダム目前で躓いた「森保ジャパン元10番」中島翔哉「再ブレイクの条件」

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