<h2>藤島ジュリー社長による「人間宣言」</h2>
<p>ジャニーズ事務所のアイドルの価値は、一変してしまった。その日付は、はっきりしている。&#8217;23年５月14日、午後９時――。同事務所の公式ホームページにて、藤島ジュリー景子社長が自ら登場して、動画を配信したのだ。</p>
<figure id="attachment_327260" aria-describedby="caption-attachment-327260" style="width: 2069px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c66ee73f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/ca4a9000c46db3c766e8d74de83611e1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-327260" class="wp-caption-text">謝罪を行ったジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長（同社HPより）</figcaption></figure>
<p><span class="strongInContent">「創業者ジャニー喜多川の性加害問題について、世の中を大きくお騒がせしておりますこと心よりお詫び申し上げます。何よりまず被害を訴えられている方々に対して深く、深くお詫び申し上げます」</span></p>
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<p>その言葉どおり、深々と頭を下げた。これは大変なことだ。まず、ジャニーズ事務所の社長のその顔、彼女が動いて言葉を発するその姿を初めて見た。今は亡きジャニー喜多川も、その姉のメリー喜多川も、テレビなどでまったく見たことがない。それゆえに猛烈なインパクトだった。</p>
<p>芸能界の歴史が動いた、と思う。大げさに言えば、1946年１月１日の昭和天皇の“人間宣言”を想起したものだ。</p>
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<p>もちろん、天皇陛下が人間であることは戦前・戦時中でさえ自明であったかもしれない。しかし、天皇自らが人間であることを「認めた」、「公言した」事が重要なのだ。その後、藤島ジュリー景子氏は社長を退任するに至った。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="「都市伝説」は事実だった"></div>
<h2>ジャニー氏の性加害は「確かにあった」</h2>
<p>同様に、ジャニー喜多川の性加害もはるか昔より広く語られてはいた。フォーリーブスの北公次はじめ元所属タレントらによる告白本や、一部週刊誌報道にとどまらず、実は民事裁判においても認定されている（&#8217;04年）。</p>
<figure id="attachment_327264" aria-describedby="caption-attachment-327264" style="width: 1280px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="e5d4a2a3"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/425464277ab3a6562971f4745b28950b.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-327264" class="wp-caption-text">帝国劇場の地下駐車場で車に乗り込むジャニー喜多川氏</figcaption></figure>
<p>けれど、おおやけには報じられていない。ことにテレビがまったく報道しなかった。これは大きい。インターネットの普及以前に、テレビが報じなければ、それは存在しないことも同然である。よって、ジャニー喜多川の性加害は、噂話か都市伝説の類として扱われていた。</p>
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<p>ところが、今回の謝罪動画によってそれが完全にくつがえされたのである。ジャニー喜多川の性加害は実在した。いや、先の謝罪動画と共に発表された書面（各方面からの質問に対する回答）では、当事者であるジャニー喜多川が故人であることから&lt;個別の告発内容について「事実」と認める、認めないと一言で言い切ることは容易ではなく&gt;と慎重に明言は避けている。結局はその後、記者会見において性加害の実在を認めるに至ったのだ。</p>
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<p>もちろん性加害は許されない。それは法律的にも倫理的にもアウトだろう。だが、私は事実を調査・検証するジャーナリストではない。アイドル評論家である。アイドルについての文章を書く仕事を40年近くも続けてきた。私の批評対象は女性アイドルなので、ジャニーズはいわば専門外だ。それでも今回の一件には随分と考えさせられた。本当に、これは私には何の関係もないことだろうか？</p>
<div data-friday-nextpage-lead="ジャニーズ支配の問題点"></div>
<h2>ファンもジャニー喜多川の「共犯」</h2>
<p>さまざまな意見を目にした。音楽誌の元編集長であり、作家の川崎大助氏の連続ツイート（５月15日）に注目する。ジャニー喜多川の性加害の特殊性を、氏は以下のようにまとめた。</p>
<figure id="attachment_327268" aria-describedby="caption-attachment-327268" style="width: 1172px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f8833852"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/462b35ac4a8ca79f0b5b9b15cb15129b.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-327268" class="wp-caption-text">川崎氏のTwitter（現・X）投稿より</figcaption></figure>
<p>&lt;１：未成年への性加害者本人が「加害対象」である児童や少年を「アイドル」としてプロデュースし続けていたこと。２：その「プロデュース術」が大成功して、ジャニーズ・タレントが芸能界やマスコミ、果ては政財界にまで「とてつもなく大きな支配力」を発揮し続けていたこと。３：支配力とは、すなわち「影響力」でもある。だから日本の芸能業界はもとより、若年層向け大衆文化の隅々にまで「ジャニーズ風」の美意識・価値観が蔓延し続けていた、こと&gt;</p>
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<p>その上で&lt;舞台上で輝くジャニーズ・アイドルとは、はっきりとこれは「性的捕食者」であるジャニー喜多川の「性的視線」を外面化していた&gt;とし、&lt;つまり、ジャニー喜多川の「芸能プロデュース能力」と「彼の暗い性虐待衝動」というのは、切っても切れないどころか「まったく同じ」根から発したものだったわけです。(略)そうした「彼の視線」によってコーティングされた少年たちを「みなさん、いっしょにどうですか？」とお皿に乗せて差し出したもの、これが「商品化された状態のジャニーズ・アイドル」だったわけで。そして実際問題、無数の少女ほかが「ともにテーブルを囲んだ」わけです。意味論的には。当たり前ですが、性的捕食者の視線を「共有」してしまったならば、その者らはまぎれもない「共犯者」となる&gt;</p>
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<p>これは痛烈な論だ。ジャニーズ・アイドルのファンたちもまた、ジャニー喜多川の性加害の「共犯者」だというのだから。</p>
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<p>次の記事<a href="https://friday.kodansha.co.jp/article/326730">『「このままジャニーズを存続させていいのか」東山紀之を悩ませる、ジャニーズの「根深すぎる病巣」』</a>では、アイドルとファン、プロデューサーが共犯関係を結ばざるを得なくなった「いびつな構造」について取り上げる。</p>
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中森明夫

川上孝夫（ジャニー喜多川氏）

藤島ジュリー社長がジャニー喜田川元社長による所属タレントへの性加害を認めて以来、ジャニーズ事務所のアイドルの価値は一変してしまった。だが、性加害問題には「ファンも共犯」と言える理由がある。

藤島ジュリー社長自らが登場し…ジャニーズ事務所の存在価値を揺るがした「人間宣言」の重すぎる中身

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