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<p>前の記事<a href="https://friday.kodansha.co.jp/article/326735">『『仁義なき戦い』と同じ構造だった…殺し屋とジャニーズ所属アイドルの「悲しすぎる共通点」』</a></p>
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<p>前の記事では、屈辱をバネにして上を目指すヒットマンとアイドルの共通点を取り上げた。世間から「性加害を受けた」と見られてしまっていたジャニーズアイドル。彼らを追い込んでいる深刻な要因は他にもある。</p>
<h2>櫻井翔が涙ぐんだ「本当の理由」</h2>
<p>嵐の櫻井翔がキャスターを務めるニュース番組『news zero』でジャニー喜多川の性加害問題についてコメントし、反響を呼んだ。自らの置かれた難しい立場に言及して、以下のように発言したのだ。</p>
<figure id="attachment_327369" aria-describedby="caption-attachment-327369" style="width: 1861px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b700ab8e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/849ca60eb181fd448d86fae696bdf58e.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-327369" class="wp-caption-text">自らがコメンテーターを務める『news zero』では、性加害問題について声を震わせながら重い口を開いた</figcaption></figure>
<p><span class="strongInContent">「お伝えしたいことの一つは、憶測で傷つく人たちがいる、ということです。かつて同じジャニーズジュニアとして時間を共にしてきた大切な仲間の中には、すでにこの世界とはまったく違うところで新しい人生を歩んでいる人たちがたくさんいます。そういう人たちも含めて、あらぬ憶測を呼び、今回の問題の対象になってしまうことは、何よりも避けなくてはいけない。避けたいと……」</span></p>
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<p>時に声を詰まらせ、涙ぐみながらそう語る姿は、あまりにも痛切で衝撃的だった。</p>
<p>櫻井翔は41歳だ。13歳でジャニーズジュニアとして活動を始めてから、28年を経る。同番組のキャスターを務めて17年目である。常に冷静で理知的、よどみなくニュースを解説する彼が、これほど動揺する姿を初めて見た。</p>
<p>この発言は賛否を呼んだ。否定派としては、これによって性加害の告発者たちに対するSNS上の誹謗中傷が急増したというのだ（文春オンライン、６月14日）。櫻井が危惧する「あらぬ憶測」を呼んだのは、彼らのせいだと考えたものだろう。</p>
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<p>私は、こう思った。今回の性加害報道のはるか以前から、自身や仲間たちが件の「憶測」によって深く傷ついていたのだ。ずっとずっと負い目や屈辱にまみれていた。たまりにたまったものが噴き出した、それゆえ櫻井はあれほど動揺し、感情的なその姿をあらわにしたのだろう。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="輝かしさの裏にある「屈辱」"></div>
<h2>「ジャニー喜多川に選ばれた」ことが負い目に</h2>
<p>ジャニーズ事務所のアイドルは、違う。彼らはジャニー喜多川に選ばれた。ジャニーの演出するステージや、プロデュースする楽曲を唄い踊るその姿は、華やかで美しい。芸能界の頂点である。女性ファンの歓声が絶えず、輝かしい憧れの人気スターだ。</p>
<p>他方、ジャニー喜多川にはおぞましい性加害の噂がついて廻る。憶測が蔓延する。ジャニーズのアイドルたちがエゴサーチするとしよう。そこには口汚い中傷や、心無い嘲笑、悪罵の数々があふれている。彼らは傷つく。負い目を感じる。屈辱にまみれる。いや、噂や憶測ではない。具体的に性加害を受けたとする告発者たち（かつての彼らの仲間）が、続々と声を上げている。</p>
<p>もっとも輝かしいものと、もっとも屈辱的なもの――その両極に彼らは引き裂かれている。</p>
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<p>強い一体感と結束力、その謎もこれで解けるのではないか。彼らは選ばれたスターだ。けれど、たとえばテレビ局へ行くとしよう。周囲の視線を感じる。はたして、それは称賛と憧れだけだろうか？</p>
<p>別の事務所の男性アイドルたちと遭遇する。ライバルだ。めらめらとする。敵意を感じる。もちろん、そいつらの嫉妬もあるだろう。ジャニーズのアイドルは特別だ。しかし、あの事務所社長と……。実際にそう思われているかどうか、ではない。そう「見られている」と感じてしまう。傷や負い目が内面化する。屈辱感にまみれる。</p>
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<p><span class="strongInContent">選ばれてあることの恍惚と不安、二つ我にあり</span>（ヴェルレーヌ／太宰治）</p>
<p>ジャニーズの恍惚と屈辱――この感情がわかるのは自分たちだけだ。彼らは結束する。周囲に壁を作る。一体となって邁進する。そう、『仁義なき戦い』の男たちが、命を賭して〝失われた男性性〟の復権を果たそうとするように。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="ジャニー氏にとって「愛」とは何か"></div>
<h2>女性ファンが共感する「ハラスメント」の視点</h2>
<p>少女たち、歳若い女性たちは、敏感にそれを察知する。かっこいい男の子や、男優や、男性アイドルはいくらでもいる。でも、違う。ジャニーズのアイドルたちは、まったく違う。光と影、誇りと屈辱に、彼らは引き裂かれている。光の中で飛翔する少年たちは、次の瞬間、真っ逆さまに闇に突き落とされる。それから、また光に向かって手を伸ばし、懸命に翔ぼうとする。その姿に感動する。</p>
<figure id="attachment_327371" aria-describedby="caption-attachment-327371" style="width: 1280px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f09bb0a8"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/425464277ab3a6562971f4745b28950b-1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-327371" class="wp-caption-text">生前のジャニー氏もまた、光と影の二面性を抱えていた</figcaption></figure>
<p>若くあること、女であること、それは称賛され、まぶしく見られ、その実、好奇の視線と、性的な搾取と、日々のハラスメントを受け続けることだ。そんな引き裂かれた女たちは、ジャニーズのアイドルと共振する。</p>
<p>私はジャニー喜多川に訊いてみたい。今ではもう、叶わぬことと知りながら。</p>
<p>ジャニーさん、あなたの人生とは何だったのか？　少年を愛することを志向する男性としては、夢のような一生だったかもしれない。しかし、今、それは性加害として厳しく糾弾されている。</p>
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<p>あなたは、いったいどう思っているだろうか？　いや、そんな声など届かない場所へとすでに旅立ってしまったけれど。</p>
<p>それでも訊いてみたい。</p>
<p>ジャニーさん、あなたが事務所のアイドルたちを誰よりも愛していたことは、間違いない。しかし、あなたにとって「愛」とは何か？　アイドルとは？　プロデュースとは？</p>
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<p>答えが返ってくることはない、とわかっているけれど、それでも、じっと耳を澄ませていたい。あなたの声を聞き取るようにして、文章を綴っていきたいと思うのだ。</p>


中森明夫

近藤裕介、川上孝夫

櫻井翔はジャニー喜多川社長による性加害問題について、声を震わせながら口を開いた。事務所社長による性加害という異常な事態を招いた裏には、「歪んだ愛」の噴出があった。

【櫻井翔が涙ぐんだ最大の要因】歪んだ形での噴出も…ジャニー喜多川の激しすぎる「愛」が生んだ悲劇

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