<figure id="attachment_327188" aria-describedby="caption-attachment-327188" style="width: 1756px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6ff8dd0e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/694211f383df5b7acab5802527361187-e1692169847330.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-327188" class="wp-caption-text">松原タニシ(41)　これまで日本全国17軒もの事故物件に住みながら、自らで新たな心霊スポットを発見し続けている。６月26日に新刊『恐い食べ物』が発売された。その中から食べ物にまつわる恐い体験を語る</figcaption></figure>
<h2>チーズ</h2>
<p>イギリス産のブルーチーズである「スティルトンチーズ」は、食べると変な夢を見るといわれている。僕はその力をお借りしてある実験を試みた。</p>
<p>それは「その洞窟の夢を見ると死ぬ」といわれている場所・島根県の猪目洞窟に行き、スティルトンチーズを摂取して寝ると、いったいどんな夢を見るのか？　という実験だ。</p>
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<p>深夜、小雨の降る中、猪目洞窟に到着。出雲大社の裏山を越えて海側に出た道の海岸沿いに、猪目洞窟はある。　ここは13体以上の古代人の人骨が発見された場所でもある。</p>
<p>本当に黄泉の国とつながっているのか？　中に入って確かめる。</p>
<p>ちょうど洞窟の真ん中あたり、天井が腰をかがめるかかがめないかぐらいの高さの位置に杭のようなものが刺さっていた。これはもしかしたら現世と黄泉の境界線を表している標ではないだろうか？　僕はこの位置にレジャーシートを敷き、寝袋にくるまった。</p>
<figure id="attachment_327174" aria-describedby="caption-attachment-327174" style="width: 1479px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1074ed64"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/addc66de61157ea5ea986f480fad35f5.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-327174" class="wp-caption-text">洞窟の中にあった謎の杭。洞窟は奥に進むほど天井が低くなっていた。また、奥には天井に大量のコウモリがいたため、最奥にたどり着けなかったという</figcaption></figure>
<p>時間も遅いので、宿に戻る時間を考えると検証時間は約１時間。定点カメラを、寝ている自分と洞窟の奥が映るような画角でセットし、何かが起きた時のためにハンディカメラもそばに置く。番組ディレクターの鎌倉監督とプロデューサーの加藤さんには車に戻ってもらい、１時間後に起こしにきてもらうようお願いした。</p>
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<p>ここからは完全に一人だ。リュックからスティルトンチーズを取り出し、食す。独特の匂いは僕には心地よく、塩味も絶妙でミルクの風味が濃厚。</p>
<p>うまいじゃないか、スティルトン！</p>
<p>これで準備は万端だ。あとは眠れるかどうかだ。まぶたを閉じる。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="奇妙な音、そして……"></div>
<p>雨の音か波の音か判別がつかない「ザザァーー」という音が耳につく。だめだ、全然寝られない。</p>
<p>〝ザザァーー</p>
<p>ザザァーー</p>
<p>ザザァーー</p>
<p>ザザァーー〞</p>
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<p>ああ、なんか髪の毛がどんどん伸びていってる気がするなぁ。なんだか体もプカプカ浮いてるような。雨水が洞窟に流れ込んできたのかなぁ。あれ？　足が動かないぞ。いや、これ足首誰かに摑まれてるよね。え、うそ、これって幽霊来た!?</p>
<figure id="attachment_327177" aria-describedby="caption-attachment-327177" style="width: 1479px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f7148e34"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/cee26c66bf81ad429a371c677075f442.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-327177" class="wp-caption-text">洞窟の中にて、睡眠前の松原氏。スティルトンチーズの他にも、当時よく眠れると話題になっていた乳酸菌飲料を飲んで実験に挑んだ。チーズは、事前に都内のチーズ専門店で購入していったという</figcaption></figure>
<p>まぶたを開けると、洞窟の外から懐中電灯の光が二つ見えた。このタイミングで鎌倉監督と加藤さんが迎えにきてしまった。ここで終わらせるともったいない。寝てるフリをしなくちゃ。懐中電灯の光と二人の人影がだんだんとこちらへ近づいてくる。ああ、これだけで実験が終わってしまうのか。……あれ、起こしにこないな。寝てるかどうかを確認してるのだろうか。</p>
<p>うっすらとまぶたを開けてみる。するとそこにはさっきまであった人影も光もない。僕はとっさにハンディカメラを手に取り、上半身を起こして洞窟の外にカメラを向けた。</p>
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<p><span class="strongInContent">「今、懐中電灯持った人が二人、こっちに近づいてきたはずなんですけど、誰もいないんですよね……。監督と加藤さんかと思ったんですが、そうじゃないとなると、今のは誰？」</span></p>
<p>カメラに声が入るように状況を説明した。ハンディカメラを置き、もう一度まぶたを閉じる。</p>
<p>………………</p>
<p>………………</p>
<p>………………</p>
<p><span class="strongInContent">「タニシくん」</span></p>
<p>うわぁ！！！</p>
<p>鎌倉監督と加藤さんだった。どうやら今度は本当に眠っていたようだ。</p>
<p>朝、鎌倉監督が僕に報告する。</p>
<p><span class="strongInContent">「昨夜撮った定点カメラの映像を一応全部チェックしたんだけど、タニシくんが起き上がってカメラを構えたっていう動きがないんだよね。ずーっと動かないまま寝てるだけの映像で、人影も光も映ってなかったよ」</span></p>
<p>え？　そんなバカな。僕はその時、確実に意識があった。じゃあ……あれは夢だったのか？　僕は猪目洞窟で寝て、猪目洞窟で人影と光を見て起きた、という夢を見ていたのか。猪目洞窟の夢、見ちゃったなぁ。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="人骨の周りに残された謎の“土”"></div>
<h2>土</h2>
<p>部屋の中はゴミ屋敷のように散らかっており、男性の姿はどこにもなかった。ホラー映画のフィギュアやガイコツの置物がひしめく二階の部屋の片隅に、人体骨格模型が寝転がっているのを見つけた。やけにリアルだなぁ、と思った瞬間、</p>
<p><span class="strongInContent">「あ、違う、これ本物だ」</span></p>
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<p>すぐさま警察に通報した。現場検証が行われたあと、遺体は回収され、部屋には大量の遺留品が残された。原状回復はとても困難な状態であり、いずれリフォームして住居か店舗として活用するつもりだが、それまでの間なら貸せますよということで、僕が１ヵ月だけ借りることになった。</p>
<figure id="attachment_327189" aria-describedby="caption-attachment-327189" style="width: 1856px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="8a469923"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/0c218ddef81bd1af93e8faa0660e31a3-e1692169893324.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-327189" class="wp-caption-text">男性の白骨遺体があった部屋は、２年前から家賃を滞納しており、連絡がつかなくなっていたという。こういった特殊清掃が入っていない状態の事故物件には、松原氏でさえめったに出会えないという</figcaption></figure>
<p>部屋にあった本棚には漫画とサブカル雑誌と頭蓋骨の模型と何かのホルマリン漬けの瓶とグロテスクなフィギュアが並び、壁には額縁に入ったコウモリやサソリやオオムカデやタランチュラの標本が飾られている。なかなかの個性的な趣味をお持ちの住人だ。冷蔵庫と本棚の間には小さなテーブルがあり、その上に男性の免許証があった。</p>
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<p>二階に上がると、使われなくなった納屋や廃墟のような独特のにおいが香り、残置物はさらにすごい。ベランダの奥にはラスボスのように鎮座するシャレコウベが部屋の中をのぞいている。そのベランダへとつながる部屋の一角に、人型サイズの土が敷かれていた。そこは男性が亡くなっていた場所だった。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="人体からできた土で野菜を栽培"></div>
<p>しかしなぜここに土があるんだろう。警察が遺体を回収したあと、臭いを消すために土を被せた？　いや、そんな話は聞いたことがない。</p>
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<p>以前、特殊清掃のアルバイトを体験した時に清掃員に聞いたことがある。警察は遺体をすべて回収するわけではない。〝持っていける〞遺体だけを回収するのだ。床に頭皮ごとへばりついた髪の毛や、浴槽でスープになった液体は回収せず、それらの処理は特殊清掃員が行う。今回の物件は特殊清掃も入っていない。警察が遺体を回収したあとの、一切何も手をつけていないそのままの状態だ。</p>
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<p>おそらく男性は家賃を滞納した２年前の時点で亡くなっていたのだろう。２年経って遺体が発見された時には骨のみの状態になっていた。だから警察が回収した遺体は骨だ。</p>
<p>では骨以外はどこへ消えた？　あ、もしかしてこの土が骨以外かも。</p>
<figure id="attachment_327178" aria-describedby="caption-attachment-327178" style="width: 3024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f61ad986"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/368302bfdea0c7d889a7c80986e225b5-rotated.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-327178" class="wp-caption-text">男性の遺体からできた土は、リンの含有量が過剰であったためその土単体では植物は芽を出さず、水にぬれるとラードのように固まってしまった。見た目は土そのものだが、埃っぽくほのかに甘い匂いがするという</figcaption></figure>
<p>男性の遺体は、ネズミやウジやゴキブリに食べられ、さらにその糞をバクテリアが分解し、２年の歳月を経て土になったのでは。彼は、人間から土になったのだ。</p>
<p><a href="#" data-ident_hash="4b108418"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/f96ca1d9a96787a76c87f152dfa8f112.jpg" alt=""></a></p>
<p><a href="https://www.amazon.co.jp/%E6%81%90%E3%81%84%E9%A3%9F%E3%81%B9%E7%89%A9-%E6%9D%BE%E5%8E%9F%E3%82%BF%E3%83%8B%E3%82%B7/dp/4576230808">松原タニシ著書『恐い食べ物』</a></p>
<figure id="attachment_327206" aria-describedby="caption-attachment-327206" style="width: 1887px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c984ae39"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/e15498c85ecc1e682d4528159ee2d374-e1692173830395.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-327206" class="wp-caption-text">数年前に、無意識のうちにえづいていることを友人に指摘され、京都の神社へ。神主からは「タニシくん、きみ(身体が霊気で)パンパンなってるわ」と言われ、お祓いをうけたという</figcaption></figure>
<figure id="attachment_327207" aria-describedby="caption-attachment-327207" style="width: 2012px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="71eaedcf"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/667cfe769e2af8a71bad831bcc4747da-e1692173844691.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-327207" class="wp-caption-text">「今まで住んだ事故物件の中でも５軒目の家がしんどかったです」と語る松原氏。心霊体験の話かと思いきや「家のクリーニングなどが行われておらず、ハウスダストやヤニ臭さがあり住みにくかった」と語った</figcaption></figure>


足立百合(インタビュー)

これまで日本全国17軒もの事故物件に住みながら、自らで新たな心霊スポットを発見し続けている松原タニシ。6月26日に新刊『恐い食べ物』が発売され、その中から食べ物にまつわる恐い体験を語る

人体骨格模型かと思ったら…！事故物件住みます芸人・松原タニシ「食べ物にまつわる恐～い体験」

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