バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』（竹書房新書）を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版

島 右近

<figure id="attachment_329431" aria-describedby="caption-attachment-329431" style="width: 1280px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1c35376c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/a86bfa5dccb5187c5c5bc38960d18a28.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-329431" class="wp-caption-text">撮影中でも共演者やスタッフに笑顔を見せる森七菜。だが、数字的には厳しいものが……</figcaption></figure>
真夏の海を舞台に男女８人の恋愛群像劇を描いたドラマ『真夏のシンデレラ』（フジテレビ系）。緑黄色社会が歌う主題歌『サマータイムシンデレラ』と共に王道のキラキラした〝月９〟の恋愛ドラマがこの夏、帰ってきた。
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「医療・裁判・刑事」モノのローテーションを打破する〝恋愛モノ〟は月９枠では、実に’16年７月期の桐谷美玲主演『好きな人がいること』以来。しかも去年、フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞した新人脚本家・市東さやかを起用するなど、〝もう一度恋愛ドラマを復活させたい〟と考えてきたフジテレビの執念を感じさせる作品であることは間違いない。
「月９の恋愛群像劇といえば、’88年の『君の瞳をタイホする!』からスタート。トレンディドラマと呼ばれる新たな潮流をフジテレビにもたらし、その波に乗り〝純愛３部作〟である『ステキな片思い』『東京ラブストーリー』『101回目のプロポーズ』が大ヒット。
木村拓哉主演の『ロングバケーション』『ラブジェネレーション』など高視聴率ドラマを連発しました。第１回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞した坂元裕二、第２回を受賞した野島伸司。さらには北川悦吏子や中園ミホといった新進気鋭の脚本家がこれまで数珠つなぎで恋愛ドラマを描いてきました」（ワイドショー関係者）
まさに日本のドラマ史に燦然と輝く〝月９〟の恋愛ドラマ。見事復活を遂げたとはいえ、本作は〝ツッコミどころ満載〟の評価を受けている。
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「例えば、まだ好きでもない匠（神尾楓珠）が幼馴染の主人公・夏海（森七菜）にキスしてみたり、宗佑（水上恒司）と理沙（仁村紗和）がワンナイトラブに。また、７年ぶりに帰ってきた夏海の母・茜（横山めぐみ）が店のレジからお金を抜き取ろうとするなど、唐突すぎる展開に違和感を感じたネット民からのツッコミが殺到しました。
しかしそれが効を奏してか『TVer見逃し配信』では、トップクラスの再生回数を誇っています。今やツッコミを入れるドラマとしても見逃せないのが、今作の『真夏のシンデレラ』なのかもしれません」（前出・ワイドショー関係者）
<div data-friday-nextpage-lead="三角関係から〝脈絡なく〟四角関係に…"></div>
<figure id="attachment_329435" aria-describedby="caption-attachment-329435" style="width: 1445px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="3ee08df7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/08/2050d37ccbbd6a4f96f69bebdbc2b117.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-329435" class="wp-caption-text">月９ドラマ『真夏のシンデレラ』で異彩を放つ水上恒司</figcaption></figure>
その一方、第６話で魅せる夜の海でのキスシーンや、第７話では、母への思いから涙をこらえ
「辛い時こそ笑うって決めてるから」
と言う夏海に健人（間宮祥太朗）が
「泣きたい時は泣いていいんだよ」
「こうしたら誰にも見えないから」
と抱き寄せ、健人の腕の中で涙を流す夏海。こうした素敵なラブシーンにも、キュン死コメントが数多く寄せられた。
しかし第８話では、思わぬ展開が待っていた。
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「唐突にも、夏海にライバルが登場。健人の大学時代のゼミの同級生で会社の同期でもある安達皐月（山崎鉱菜）がアメリカから帰国。これまで描かれてきた夏海、健人、匠の三角関係が四角関係に発展する展開は如何なものか。最終回に向けて、ハラハラドキドキさせたいのはわかりますが安直すぎるこの展開には、正直がっかりしました」（制作会社ディレクター）
違和感を覚えるほどの予測不能な展開こそが、カタルシスを生む。そんなドラマを復活したばかりの〝月９〟の恋愛ドラマに期待するのは、やはり時期尚早なのだろうか。
「ドラマの脚本は一部の大御所を除いて、脚本家とプロデューサーがキャッチボールをしながらつくりあげていくもの。今作もオリジナル脚本とはいえ、新人脚本家がいきなり書き下ろしというわけにはいきません。
現に今作を手掛ける中野利幸プロデューサーは、第４話の放送が終わった時点でも『誰が誰とくっつくか、まだ決めていないんです。空気感を見ながら脚本を作れるのも連続ドラマならではの楽しさです』と発言。これを聞いて私は、正直違和感を覚えました」（制作会社プロデューサー）
実はトレンディドラマ全盛時代のフジテレビでは、毎回視聴率が出るたびに毎分視聴率を見ながらシナリオを変更することもしばしばおこなわれた。
「主役級でなくても出演シーンの視聴率が良かった場合は、その俳優のシーンを膨らませたり、逆に数字が獲れなかった場合はカットする。しかし、そうすると長期を見据えた伏線回収劇が描けなくなるだけでなく、ストーリー展開がどこか破綻をきたしてしまう。
しかも時間のない中、脚本を作り直して撮影するわけですから現場は大混乱。そうしたやり方を嫌がって、フジテレビを離れていったスタッフもたくさんいました」（前出・プロデューサー）
今作の制作発表会見の席で、ストーリーの結末が決まっていないことを知らされた夏海を演じる森七菜は
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「そんなことあるんだってビックリしました」
「私たちのお芝居や、視聴者のつぶやきなどでお話が変わると思うと、一挙一動が大切になりますね」
とコメントしている。期待を背負って今作のW主演に選ばれた森七菜。恋愛ドラマ復活に伴って、〝月９〟の「悪しき伝統」が蘇ることだけは、避けてほしいものだ……。

バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』（竹書房新書）を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版中

島右近（放送作家・映像プロデューサー）

近藤 裕介

7年ぶりという〝満を持して〟恋愛ドラマを復活させたフジテレビ「月９」ドラマ。森七菜＆間宮祥太朗とのW主演『真夏のシンデレラ』だが、月9の〝悪しき伝統〟が見え隠れし……

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