整形費用を支給!?ホストクラブの手厚い福利厚生のウラにある「量産ホスト顔」「整形沼」の悲劇 | FRIDAYデジタル

整形費用を支給!?ホストクラブの手厚い福利厚生のウラにある「量産ホスト顔」「整形沼」の悲劇

現役慶應大生ライターが描くぴえんなリアル 令和4年、歌舞伎町はいま……第68回

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新宿駅周辺を通行する広告トラックにはホストから整形外科医への感謝メッセージが
新宿駅周辺を通行する広告トラックにはホストから整形外科医への感謝メッセージが

各企業の秋入社を見据(みす)え、毎年夏から秋口は転職活動シーズンだ。転職者数は年々増加。’22年には約300万人超が転職をした。就活中の人々にとって気になるのが、各企業の福利厚生や待遇だろう。

そんななか、待遇面だけでいえば、ホストクラブは恐ろしいほどに福利厚生が充実している。

「上京費から入店後の生活費まで、全部負担してもらいましたね」

そう語るホストのアキト(仮名・20)は、2年前に富山から上京してきたという。

「地方へのスカウトも兼ねて、社員旅行で俺の地元にホストさんたちが来てたんすよ。声をかけられて、飯を奢(おご)ってもらいました。東京への交通費は支給されるし、2ヵ月間は、給料も小計売上(税金・サービス料を差し引いた金額)100%バックで、寮費も無料。ロクな仕事もしてなかったし、翌日そのまま付いて来ました」

こうした上京費用負担をしている店は珍しいわけではない。なかには面接に来るだけでも往復の交通費を負担する店もある。さらに、面接で説明を聞くだけで、交通費に5000円ほどを上乗せして支給する店も存在するという。そこまでしてでも、ホストクラブはキャストを増やしたがっているのが現状だ。

「ホストクラブは、常に人材不足ですよ」

そう語るのは歌舞伎町歴8年目のリョウスケ(仮名・27)。元ホストで、今は内勤(ホストクラブの裏方)をしている。

「たくさんスカウトしても売れる子は、ほんの一部。多くは、小計売上が月に50万円以下。彼らの日給は7000〜9000円ほどで、普通のサラリーマン以下なので、低コストなんですよ。売れたら儲かるし、売れずとも店にはある程度金が入る。総数を増やしていかないと、売れっ子は生まれませんから」(同前)

交通費の支給や家賃補助などは、一般企業にもある福利厚生だ。しかし、歌舞伎町のホストクラブはそれだけではない。

「最近は『整形手当』がある店も増えています。新入りホストは、垢(あか)抜けていないことが多いですから」(同前)

新入りをいち早く稼がせるため、店が整形費用を負担してくれるというのだ。

「リスクとして、ユーチューブやSNSで整形の過程に密着されることがある。最低の在籍&勤務期間が決まっていたり、売り上げノルマが設けられているなど、条件付きの場合が多いです」(同前)

大手ホストクラブ求人サイトで、関東圏に絞り「整形代支給・割引あり」と条件を入れて検索すると、なんと87件もヒットする。しかし、こういった整形手術を気軽にできる環境が、ホストたちに悲劇をもたらしているという。

「福利厚生だからといって飛びつくと危険です。とくに歌舞伎町御用達の整形外科で施術する時は慎重にならないと」

ホストのマサキ(仮名・26)自身、月数百万円を売り上げながらも、整形手術にハマり、ジリ貧で生活していたうちの一人だ。彼はプロテーゼ入りの鼻を指でさすりながら苦笑すると、ホストが″整形沼″にハマる仕組みを明かした。

「月収300万円のホストだと、女の子へのお礼のプレゼントやご飯代や自分の生活費で、毎月ザッと100万円ほど消えていきます。自分に貢(みつ)いでくれている女の子たちに還元するのはマナーとして当たり前。また、歌舞伎町には『稼ぐ奴は、売れっ子らしく羽振り良くいろ』という風潮があるので、雑費も多い。金銭感覚は狂っていく一方なのに売り上げが伸び続けないと不安になりますよね」

今や整形手術は、ホストにとって一種の精神安定剤になっているという。

「たいていのホストは、売り上げが伸び悩むと安易に整形に走ってしまう。ただ、整形外科医の中には店と癒着しすぎて、美の基準が″歌舞伎町″になってしまう医者もいます。歌舞伎町には世間一般のアイドル等とはまた違う美の基準があって、ホスト顔になる施術ばかりしていると、整形外科医として正しいデッサンがとれなくなる人もいるようです。

整形の福利厚生を使うなら、明確に自分の中でビジョンを持つことが大事。整形による借金と、歌舞伎町以外では通用しない量産ホスト顔のまま年老いて……ということもザラですから」(同前)

好条件に見える求人でも安易に飛びつかないほうがいいのは、一般転職でも歌舞伎町でも変わらないようだ。

佐々木チワワ
’00年、東京生まれ。小学校から高校まで都内の一貫校に通った後、慶應義塾大に進学。15歳から歌舞伎町に通っており、幅広い人脈を持つ。大学では歌舞伎町を含む繁華街の社会学を研究している。『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認 』(扶桑社新書)が好評発売中

『FRIDAY』2023年9月15・22日合併号より

  • 取材・文佐々木チワワ

    ’00年、東京生まれ。小学校から高校まで都内の一貫校に通った後、慶應義塾大に進学。15歳から歌舞伎町に通っており、幅広い人脈を持つ。大学では歌舞伎町を含む繁華街の社会学を研究している。『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認 』(扶桑社新書)が好評発売中

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