元川 悦子

<p>ドイツとトルコという欧州の強豪国に４－１、４－２と快勝し、世界的評価を大きく引き上げた森保ジャパン。ドイツは９月９日の日本戦直後にハンス・フリック監督（58）を、トルコはシュテファン・クンツ監督（60）を解任した。日本は「監督キラー」として各国から恐れられることになりそうだ。</p>
<figure id="attachment_333261" aria-describedby="caption-attachment-333261" style="width: 6000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="e61ac3fa"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/fa084332af23b93d28b8acef5d4eb1cb.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-333261" class="wp-caption-text">９月12日のトルコ戦では、終始存在感を発揮した</figcaption></figure>
<p>その２連戦で眩しいほどに輝いたのが「イナズマ純也」こと30歳の伊東純也（スタッド・ランス）だ。ドイツ戦では開始11分の先制弾に加え、22分に上田綺世（25・フェイエノールト）の２点目をアシスト。トルコ戦でも日本が劣勢に陥りかけた後半頭から出場し、凄まじい速さで相手DFのPKを誘い、ダメ押し点となる４点目をゲット。勝利を決める大仕事をしてみせたのである。</p>
<p><span class="strongInContent">「自分でPKをもらったんで、絶対に自分で蹴ろうと思っていました。（会場が約４シーズン過ごしたベルギー１部）ゲンクのスタジアムでしたし」</span></p>
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<p>と、トルコ戦後に満面の笑みを浮かべた伊東。PKにはホロ苦い思い出があったそうで、本人はこう安堵していた。</p>
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<p><span class="strongInContent">「ゲンク時代、（2019年12月のベルギーカップ）アントワープ戦がPK戦になって俺が外して負けたことがあった。あれ以来、PKが嫌いっていうか、苦手な感じがあったんで、ずっと蹴ってなかったんですよね。そもそも、試合中のPKはプロになってから初めて蹴った。それをゲンクのスタジアムで決められたんで、悪い流れを断ち切れたかな。これから自信を持って蹴れるようになると思います」</span></p>
<p>代表通算ゴール12と第2次・森保ジャパン主要メンバーの中で最多ゴールを挙げている伊東。さらに得点数を伸ばしていきそうだ。</p>
<p>今や名実ともに「日本代表エース級アタッカー」と言っていい伊東だが、三笘薫（26・ブライトン）や鎌田大地（27・ラツィオ）、久保建英（22・レアル・ソシエダ）ら他の面々に比べると、注目度がやや低い印象がある。なぜか。大きいのは所属クラブの格の差ではないか。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="上位浮上は至上命題"></div>
<p>三笘は世界最高峰のイングランド・プレミアリーグ、しかも今季はUEFAヨーロッパリーグ（EL）に出場する上位クラブに在籍。鎌田や久保もUEFAチャンピオンズリーグ（CL）に参戦中。欧州５大リーグのフランスといえども、中堅クラブに在籍する伊東は印象が薄くなりがちなのかもしれない。</p>
<p><span class="strongInContent">「今季のスタッド・ランスの目標はUEFA圏内の６位以内（フランス４位までがCL、５位がEL、６位がUEFAカンファレンスリーグに参戦）。僕自身も毎試合、得点に絡むというのを目標にやってます。できたら２ケタに乗せたい」</span></p>
<p>本人は高く目標を設定しているが、容易ではない。</p>
<figure id="attachment_333265" aria-describedby="caption-attachment-333265" style="width: 1280px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f23263c1"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/9fc9d3237a1fa01b3f5cda6e0724bb24.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-333265" class="wp-caption-text">９月17日のスタッド・ブレスト29戦後、中村敬斗（右）とともに撮影に応じた</figcaption></figure>
<p>９月17日のスタッド・ブレスト29戦を見る限り、今季のスタッド・ランスはいい時間帯は押せ押せムードだが、いったんリズムを失うとズルズルと失点してしまう。前半は試合を支配していたが、後半に立て続けに２点を奪われ、１－２で逆転負け。上位浮上のチャンスを逃している。</p>
<p>伊東自身、昨季は21ゴールを挙げたフォラリン・バログン（22・モナコ）というベストパートナーとともに攻撃陣をけん引していたが、バログンらアタッカー陣の多くが移籍。新たな面々とプレーするようになったことで、連携面の難しさに直面しているという。</p>
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<p><span class="strongInContent">「チームとしてうまくいってるかって言ったら微妙。中盤から前は全員、新しい選手になったんで、コンビネーションがうまくいっていない部分が多いですね。クオリティにも問題があるかな」</span></p>
<p>朗報と言えば、同じ日本代表でプレーする若手FW中村敬斗（23）の加入だろう。８月に加わった中村が左、伊東が右と両ウイングがスタートから試合に出るケースも増えてきた。「ダブルイケメン」は日本人女性ファンからの注目度も非常に高い。</p>
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<p><span class="strongInContent">「敬斗にはいろいろ言いやすいし、連携も取りやすい」</span>と伊東も前向きに語っていたが、両サイドに展開している以上、近い距離でのパス交換やコンビプレーは出しにくいのも確か。「伊東が崩して中村がゴール」といった形もまだ具体的になっていない。そこは日本代表における三笘との関係性とはやや異なるところだ。</p>
<p>とはいえ、伊東も30歳。スタッド・ランスは若いチームだけに、彼が周囲をリードしていく立場にいる。中村敬斗ら攻撃陣との関係性向上も自身が率先して進めていかなければいけない。</p>
<p>もともとマイペースで泰然自若の男には統率役やけん引役のような仕事は不得手に見えるが、<span class="strongInContent">「俺も30だからバランスを取ってやっていかないといけない」</span>と本人は自覚を口にしていた。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="エースの座をつかむために"></div>
<p>スタッド・ランスを躍進させ、来季のUEFAの大会に出るようなことになれば、日本代表でも絶対的エースとして君臨できるだろう。それくらいの実力が彼にはある。今季のパフォーマンス次第では、遠藤航（30・リバプール）に続く、30代でのステップアップも夢ではない。</p>
<p>振り返ってみると、伊東が柏レイソルからゲンクに赴いたのは、間もなく26歳になろうという2019年２月。神奈川大学時代まで全くの無名で、Jリーグのスタートもヴァンフォーレ甲府と地味なキャリアを送っていた。</p>
<figure id="attachment_333266" aria-describedby="caption-attachment-333266" style="width: 6000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="d0d9e7db"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/5e88dc428a1869b21d1014d8e1b2a043.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-333266" class="wp-caption-text">森保ジャパン屈指のゴールゲッターとして期待がかかる</figcaption></figure>
<p>久保や堂安律（25・フライブルク）のように10代で欧州挑戦する選手も少なくない昨今の傾向を考えると、20代後半のチャレンジはどうしても遅く映る。スタートの時点からステップアップが難しい環境にはあったのだ。</p>
<p>加えて言うと、2020年からコロナ禍に突入。19－20シーズンにCLに参戦し、日本代表でもレギュラーを射止めた伊東なら、2020年夏か2021年夏に欧州５大リーグから引っ張られてもおかしくなかったが、移籍市場が停滞しているうちに30代目前に。そして結局、2022年夏にスタッド・ランスへ移籍することになったのである。</p>
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<p><span class="strongInContent">「ベルギーで最もブレイクしたのは伊東純也。あんなに成長するとは想像できなかった。彼ならビッグクラブ移籍が成立していてもおかしくなかったと思う」</span>とシント・トロイデンの立石敬之CEO（54）も語っていたが、伊東が現時点で25～26歳だったら、プレミアなどからも狙われる逸材と位置づけられていたに違いない。</p>
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<p>30代になると欧州移籍市場での価値は一気に下がると言われる。厳しい状況を打破するには、周囲を納得させるような活躍をするしかない。ドイツ・トルコ２連戦で見せたような「イナズマ純也」の圧倒的なパフォーマンスを所属クラブでも見せられれば、2024年１月の冬、あるいは2024年夏の移籍市場で大きなチャンスがつかめるかもしれない。</p>
<p><span class="strongInContent">「試合に出たら結果を出さないといけないとは常に思ってはいます。自分もまだまだ負けないように頑張ろうかなと。とくに（三笘）薫は今、一番いいプレーヤーなんで、刺激を受けますね」</span></p>
<p>本人も世界を席巻する左のウインガーと切磋琢磨しながら、もう一段階上のレベルを目指していく構えだ。</p>
<p>代表での位置づけがグングン上がっても、立ち振る舞いやマインドが変わらない伊東のような選手は珍しい。どこまでも自然体の男がトップ・オブ・トップに上り詰められるのか。真のエースになれるのか。興味深く見守っていきたい。</p>


元川悦子

9月の代表2連戦で異彩を放ったのが「イナズマ純也」の異名を取る伊東純也だ。自慢のスピードを活かして決定機を演出。クラブでもさらなる飛躍が期待されている。

「イナズマ」の煌めきでドイツ＆トルコを撃破！伊東純也が”30代選手の概念”を変える

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