浅井 秀樹

<h3><span class="strongInContent">使用済みパネルの「大量廃棄問題」が喫緊の課題に…</span></h3>
<p>農村の休耕地や山間部の空き地、家の屋根や庭先など、あちこちで見かけるようになった太陽光発電パネル。国が再生可能エネルギーの導入を推進しており、’10年代に入ってパネルの設置が急拡大している。</p>
<p>太陽光発電パネルの寿命は20～30年くらいとされ、最後は産業廃棄物として「埋設処理」されることが多い。台風などの自然災害で壊れたものも廃棄物になる。今後はパネルの廃棄も増えてくるのに対し、埋設する処分場が不足すると予測されている。’40年度には年間80万トン、約4000万枚の使用済みパネルが廃棄されるとの試算もある。使用済みパネルの大量廃棄問題は喫緊の課題になっている。</p>
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<p><span class="strongInContent">太陽光発電パネルには、鉛やヒ素など「有害物質」が使用されていることもある。総務省の’17</span><span class="strongInContent">年の実態調査によると、有害物質を含有しているか未確認のまま、遮水設備のない処分場に埋め立てていたケースが見つかっている。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<figure id="attachment_333659" aria-describedby="caption-attachment-333659" style="width: 4000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="27603058"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/6ded234ba733e375fe6fd69eb75b07c8.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-333659" class="wp-caption-text">昨年末、東京都の小池百合子知事は、’25年度から新築住宅への「太陽光パネル」の設置を義務化する条例を全国で初めて制定したが…（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">「全量把握が難しく、すべてを把握できていない」と環境省</span></h3>
<p>この総務省の実態調査を受けて、情報を共有した対策・対応の「周知が進んでいる」と環境省リサイクル推進室の担当者は話す。ただ、パネルはガラスや金属などの混合物になるため、ガラスなどの単体で把握しようとする廃棄物処理法の下では「パネルとしての全量把握が難しく、すべてを把握できていない」という。</p>
<p><span class="strongInContent">使用済みパネルの処理が全量把握できていない以上、統計上で、不適切な処理や、不法投棄がどれぐらいあるのか、割り出すことは難しい。地中に埋められてしまうと、処理の実態はわからなくなる。</span></p>
<p>一方、豪雨による被害は毎年、激甚化しており、地球温暖化への対策は待ったなしとなっている。国は’12年に太陽光や風力などの発電による電力を一定期間、一定価格で買い取る再生可能エネルギーの固定価格買取制度を導入した。これがきっかけとなり、太陽光発電パネルの設置は、うなぎ上りに増えている。</p>
<figure id="attachment_333661" aria-describedby="caption-attachment-333661" style="width: 4000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="36721d50"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/8687c480bf26fb1ec277967b9d7992a0.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-333661" class="wp-caption-text">脱炭素社会の実現が急がれる中、政府による積極的な奨励もあり’10年代に入って全国で急拡大したパネルの設置。あと約10年後には大量廃棄問題に直面することになる（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">「分解してリサイクル」するのが難しい太陽光発電パネル</span></h3>
<p><span class="strongInContent">太陽光発電パネルは、電極やシリコンを何層にも重ね、強力に接着されているのが特徴だ。これを分解してリサイクルするのは難しく、埋設処理するしかなかった。最近はガラス部分とそれ以外の金属部分とに分離する処理方法を、いくつかの事業者が導入して進めている。</span></p>
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<p>しかし、</p>
<p><span class="strongInContent">「使用済みパネルから新しいパネルに再生するのは、まだ実現していない」（環境省担当者）</span></p>
<p>いわゆる<span class="strongInContent">「水平リサイクル」</span>と呼ばれるものだ。現状は、たとえばガラス部分ならガラスの素材に砕いて利用する、いわゆる<span class="strongInContent">「ダウンサイクル」</span>となっている。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="30年後には、４兆円規模の市場に"></div>
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<h3><span class="strongInContent">30</span><span class="strongInContent">年後には、４兆円規模の市場に拡大</span></h3>
<p>ところが最近、この水平リサイクルの実現に向けて、基本的な技術開発に成功した事例が出てきた。ＰＶリボーン協会（岡山県西粟倉村）の藤井尊久代表理事は「いまは初期段階」と話し、さらに技術開発を進めてコスト問題も解決し、’28年から水平リサイクルできる設備を量産したいと意気込む。</p>
<p><span class="strongInContent">現在、使用済みパネル処理の１枚当たりの引き取り費用は3500</span><span class="strongInContent">円程度。’20</span><span class="strongInContent">年には約２億7000</span><span class="strongInContent">万枚を処理したため、9450</span><span class="strongInContent">億円程度のパネル処理市場があったとみられている。&#8217;50</span><span class="strongInContent">年にはこの４、５倍の規模となり、４兆円規模の市場に拡大すると予想している。これが水平リサイクルの実現で、新たなパネルに生まれ変われば、パネルの原材料や製品そのものを中国などから輸入しなくても済むかもしれない。</span></p>
<p>ＰＶリボーン協会などが開発する水平リサイクルの技術はこんな感じだ。アルミフレームを外した使用済みパネルについて、強力な接着部分を600度以上の過熱水蒸気を利用した熱分解処理炉で、ガラス、太陽電池セル、銅線に分ける。封止剤などは熱で気化するという。このように、使用済みパネルを原材料にまで分解し、再生パネルに生まれ変わらせるという。</p>
<figure id="attachment_333662" aria-describedby="caption-attachment-333662" style="width: 3024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="4d3a8f2b"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/68d8dbb5dbc0d3c2c4e9cc5768203086-rotated.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-333662" class="wp-caption-text">技術開発を進めてコスト問題も解決し、’28年から水平リサイクルできる設備を量産したいと意気込むＰＶリボーン協会（岡山県西粟倉村）の藤井尊久代表理事。写真は、リサイクルで誕生したソーラーパネル（PHOTO： ＰＶリボーン協会提供）</figcaption></figure>
<p>いまの太陽光発電パネルは中国製が多い。</p>
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<p><span class="strongInContent">「使用済みパネルを入手して、分解し、原材料に戻し、新製品を製造するコストを低くして、中国製品に比べても安くなることを目指している」（ＰＶリボーン協会・藤井氏）</span></p>
<p>処理コストの低減が今後の大きな課題という。</p>
<p>この開発中の処理設備は、ある程度の技術力のある中小企業なら設置できるものになると、藤井さんは言う。全国各地に広まれば、使用済みパネルの大量廃棄問題が解決するかもしれない。</p>
<p><span class="strongInContent">環境省の担当者は、現状でも「処理コストが悩ましい」と話す。処理施設を設置しても、そこまで使用済みパネルを運搬する費用がばかにならないという。「地域によってはシュレッダーで粉砕して、埋め立てた方が安くつくところもある」とも話す。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
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<p><span class="strongInContent">使用済みパネルの水平リサイクル設備が全国各地にできれば、こうした運搬費用の問題も含め、大量廃棄問題は一気に解決する。ＰＶリボーン協会が目論むように、あと数年で実用化できるか、期待は膨らむ。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<figure id="attachment_333663" aria-describedby="caption-attachment-333663" style="width: 4032px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a06d6cb1"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/97875a80c3e9ab315cd39d407890a0bf.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-333663" class="wp-caption-text">リサイクル技術は、日本外国特派員協会でも発表された（PHOTO： ＰＶリボーン協会提供）</figcaption></figure>


浅井秀樹

太陽光発電パネルの寿命は20～30年くらいとされ、最後は産業廃棄物として「埋設処理」されることが多い。'40年度には年間80万トン、約4000万枚の使用済みパネルが廃棄されるとの試算もある。

迫る大量廃棄問題…「寿命20～30年の‶太陽光発電パネル〟」急がれる‶再生利用技術〟は間に合うか

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