<figure id="attachment_333803" aria-describedby="caption-attachment-333803" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a76e421c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/4879bda6574e675d332aa6932ae7ff8a.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-333803" class="wp-caption-text">カメラに向かって指を突き出し、「１番を獲る」と宣言する瀬戸。取材中はどんな質問にもNGなしで応えた</figcaption></figure>
<p><span class="strongInContent">「金メダルを獲るか、それ以外か。手堅いレースはしない。来年のパリ五輪では、そのどちらかでいい」</span></p>
<p>そう断言する瀬戸大也（29）の言葉には大舞台に懸ける思いがにじみ出ていた。</p>
<p>７月に福岡で行われた『世界水泳選手権』で、瀬戸は男子400ｍ個人メドレーで銅メダルを獲得した。日本競泳陣が獲得した二つのメダルのうちの一つで、復活を印象付けたが、その表情は晴れない。</p>
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<p><span class="strongInContent">「優勝にまったくかすりもしない泳ぎで、落ち込みました。もちろん見える形としてメダルが獲れたのは最低限よかった。ただ、パリ五輪に向け、自己ベストと銀メダル以上という目標を立てて挑んだけれど、そこからはかけ離れていることにショックを受けました。一つだけポジティブな面をあげるなら、パリ五輪の前に失敗できてよかったってことくらいです」</span></p>
<p>競泳日本のエースには世界水泳の銅メダルはあってないようなもの。過去、世界選手権では４個の金メダルを獲ったが五輪ではゼロ。だからこそ瀬戸は″五輪での１番″に強いこだわりを抱いている。</p>
<p>そこには不倫スキャンダル（’20年）や無冠に終わった東京五輪（’21年）から、３年という歳月をかけ、自身への戒（いまし）めと復活に懸ける思いが見え隠れする。</p>
<p><span class="strongInContent">「あの時の僕はすごく自分勝手で、強気な部分もあって普段の生活も乱れていました。調子に乗っていましたし、仮にあのタイミングで記事が出なくても、絶対に何かしらのトラブルが出ていたと思います。スキャンダルのあと、妻（馬淵優佳・28）とは、まず競技に集中できる環境を作ろうと話し合いました」</span></p>
<p>元飛び込み日本代表の馬淵は’21年12月に競技復帰を表明。互いにトレーニングに集中するため、生活拠点も別々に移し、それ以来、別居生活を続けている。家族が揃うのは週末だけだ。</p>
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<p><span class="strongInContent">「当時は『アンジャッシュ』渡部さん（建・50）の豊洲市場でのバイトが報じられて。自分って何ができるんだろうと考えさせられました。何ヵ月も自分を見つめ直す中で、やっぱり自分は水泳しかないって思ったんです。すべて失った僕ですが、水泳だけがこびりついていたんです」</span></p>
<p>そこには「五輪でメダルを獲りたい」という強い思いがあった。どん底から世界の頂点を目指し、再び歩み始めた瀬戸。復活を懸け、’22年から師事したのが厳しい指導で知られる加藤健志コーチだった。一日の練習は８時間にも及び、終わるのは夜10時。家と練習場を往復する日々を、１年半も続けた。</p>
<p><span class="strongInContent">「復帰に向けて加藤コーチとは、これ以上にない強度で練習を続け、競技に対する考え方も学びました。これからは作り上げた土台に、自分の強みをどう足していくか。パリ五輪までもう１年しかありません。いまは自分にとって効果的な練習を積み重ねることを重視しています」</span></p>
<p>そもそも泳ぎに関しては”天才”と呼ばれた男だ。天性の才能の持ち主にしかわからない領域があるはずで、「今後は自分の感性を大事にしていきたい」と話す。</p>
<p><span class="strongInContent">「勝つためには一発に賭けた練習が必要です。一言で言うなら爆発力。自分の得意な、序盤からぶっ飛ばすレースができるようにしないといけない。そうしないと、金メダルは狙えないと思います」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="父として迎える五輪"></div>
<h2>父として迎える五輪</h2>
<p>聞いてみたかったのが、不祥事の後、精神的にも追い込まれながらも過酷な練習に耐え、ここまでやってこられた理由についてだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「もちろん家族の支えは大きい。今回の世界水泳でメダルを獲ったあと、妻には『獲れてよかったんじゃない。でも調子に乗ったらあかんで』って言われました。昔から毎回言われているんですが、いまでは聞くたびに身が引き締まります」</span></p>
<p>馬淵はすでにパリ五輪出場の見込みがなく、引退の可能性もあるという。そうなれば、今後は家族揃っての生活をスタートさせる予定だ。</p>
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<p><span class="strongInContent">「たとえば合宿に妻や子供を連れてきて、一緒に過ごすのもいいなと思っています。子供たちにもいろんな世界を見せてあげたい」</span></p>
<p>そう言うと、瀬戸は家族に訪れたある変化について語ってくれた。</p>
<p><span class="strongInContent">「そういえば５歳と３歳の娘が、世界水泳のあとから水泳教室に通い始めたんです。お姉ちゃんは『世界水泳と五輪に出る』って言うんです（笑）。下の子は最初、水が怖いって言っていたんですけれど、お姉ちゃんを見てたらやりたくなったみたいで、最近始めました」</span></p>
<p>子供たちは父の泳ぐ姿を見て、感化された。</p>
<p><span class="strongInContent">「生で泳ぐ姿を見ると、やっぱり影響されると思うんです。自分もそうでしたから。やりたいことをやらせてあげたいので、基本はあまり口を挟（はさ）まないですね。むしろ妻のほうがいろいろ言いそう。<br>
指導は別として、僕は子供だけにはいつまでも絶対に負けたくないですね。自分がトップ選手じゃなくなる日がきても、マスターズなどで競技を続けて、どれだけ齢（とし）をとっても負けません（笑）」</span></p>
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<p>30歳で迎えるパリ五輪。メンタル面も、３年前から大きく変化した。スキャンダル以前は周囲も声を掛けにくいほど尖（とが）っていたというが、「最近は後輩ともよく飯に行きます」と語るように、周りに目を向けられるようになった。</p>
<p>水泳連盟の内紛にも、自分の考えを貫いている。世界水泳後、一部の選手がＳＮＳで連盟の強化体制を批判。北島康介らを指導した平井伯昌コーチ（60）が内部情報を暴露するなど、混乱が続いている。</p>
<p><span class="strongInContent">「原因の一つに選手がコーチ陣の経験を超えてしまっているというのはある。それをどうしていくかは、話し合っていかなければならないです」</span></p>
<p>選手として、人間として大きく成長し、３度目の大舞台を迎える瀬戸。悲願達成には、世界記録保持者の”怪物”レオン・マルシャン（21）らが立ちはだかるが、本人は真っ直ぐに頂点を見据える。</p>
<p><span class="strongInContent">「パリ五輪まであと１年ですが、今は幸せを感じています。ただ、金メダリストはまだ達成していない僕の夢です。五輪という冠のついた大会で金メダルを獲らないまま終わるのは、自分のプライドが許さない。絶対に成し遂げるので、ぜひ期待してください」</span></p>
<p>そう言うと、瀬戸は笑顔を見せた。パリ五輪で金メダルを首に掛ける父の勇姿を家族に見せるため、残り１年、ラストスパートをかける。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="瀬戸の未公開カット…！"></div>
<figure id="attachment_333799" aria-describedby="caption-attachment-333799" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="de179b54"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/8fe3d29e76e4c883d5dc89648e406e11.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-333799" class="wp-caption-text">序盤のバタフライから積極的に攻めるのが瀬戸の強み。パリ五輪までの１年は、勝負勘を磨くために全力を注ぐ</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_333800" aria-describedby="caption-attachment-333800" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="772a4ad2"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/d3d23d5afa3ef676293bab271ff522c1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-333800" class="wp-caption-text">世界水泳ではマルシャンと７秒差がつくも「五輪は一発勝負。勝機は十分」と語る。瀬戸は最後までポジティブだった</figcaption></figure>
<figure id="attachment_333801" aria-describedby="caption-attachment-333801" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b41dd8a0"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/37bac2ec51f84c683b6e8cb2383a6ddb.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-333801" class="wp-caption-text">本誌未掲載カット　瀬戸大也･競泳日本代表　あのときすべてを失い､ 水泳だけが僕にこびりついていた</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_333802" aria-describedby="caption-attachment-333802" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="2e535066"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/a5471a4b638933446881459353079b06.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-333802" class="wp-caption-text">本誌未掲載カット　瀬戸大也･競泳日本代表　あのときすべてを失い､ 水泳だけが僕にこびりついていた</figcaption></figure>
<p>『FRIDAY』2023年10月6日号より</p>


金明昱(キム・ミョンウ) （スポーツライター）

濱﨑慎治（1枚目）　ゲッティイメージズ（2～3枚目）

不倫スキャンダル、無冠に終わった東京五輪…今目指すのは来年のパリ五輪で金メダルを獲ること。復活の道を歩みだした「競泳日本代表・瀬戸大也」。スキャンダルから３年、何を思い水泳と家族と向き合ってきたのか。

《瀬戸大也･競泳日本代表インタビュー》あのときすべてを失い､水泳だけが僕にこびりついていた

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