藤岡 佳世

家具の角にぶつけたりすると、とんでもなく痛い思いをするのに、普段、足の小指を使っている意識はほとんどない。しかし、小指の爪が剥がれる、無くなる、米粒ぐらいに小さくなっている等、足の小指の爪になんらかのトラブルを抱えている人の話がSNS上でもけっこう多く見られる。
それどころか、近年、子供の足の小指が短くなっているという話も聞く。もしかして、足の小指は使わなさすぎて退化しているのか？　小指、爪の変形は、放っておくとどうなるのか。「日本フットケア足病医学会」理事、「足育研究会」代表理事であり、フットケアを専門とする皮膚科医、高山かおる氏に話を聞いた。
<figure id="attachment_334286" aria-describedby="caption-attachment-334286" style="width: 640px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ce503dc3"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/ab2546d5c32268bf53816d62a7d0c459.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-334286" class="wp-caption-text">小指の爪が割れる、剥がれる、無くなってしまう等、足の小指の爪にトラブルを抱えている人の話がSNS上でも話題に…</figcaption></figure>
<h3>爪が変形するのは、小指がちゃんと使えていない証拠！？</h3>
「足の小指は、基本的には、外側に行く体重を支えるといわれています。 本来であれば、小指がちゃんと踏ん張れることで、爪も踏ん張るのに役に立っているはずです。 
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‶床反力〟といいますが、体重というのは重力で地面に引かれるように入り、それに反発して地面から受ける下からの力が指に加わります。ここで指の腹をしっかり使うためには、上に蓋になるような硬いものがあった方がよくて、それが爪なんです。それによって効率よく指の先まで使うことができるわけです」（高山医師・以下同）
爪は、皮膚の一部で、皮膚の表面にある角質層が硬化したもの。手も足も、指の骨は指の先まではなく、爪が指先を保護し、指の機能を高めている。歩くときも、地面から受ける力を爪が上から支えることで、足の指で地面をつかんだり、後ろに蹴ったりできるのだ。
「ただ、そのことを感じている人はほとんどいないと思います。人間は靴を履いて歩いていますし、日本はアスファルトが整っていますので、そういう指の細かい力を感じて生活していないですよね。とくに小指はそうだと思います」 
<figure id="attachment_334288" aria-describedby="caption-attachment-334288" style="width: 640px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="d49a3e17"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/f7be3b4a277b86f4ba02db9a53ebfc3a.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-334288" class="wp-caption-text">厚くなっていたり、横を向いていたり、米粒のように小さかったり……、足の小指の爪が変形している人は、小指がちゃんと使えていない可能性がある</figcaption></figure>
爪が変形していると、指は本来の機能を果たせていないのだろうか。
「どちらかというと、そもそも力がちゃんと指に乗っていないので、爪も変形してしまうというイメージです。小指が曲がってしまうとか、小指の爪が小さくなってしまうとか、そういう事が起きているということは、小指がちゃんと使われていないことを意味します。 
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理論的には、小指が使えていないことで、力が外側に振られたときの踏ん張りが利かないはずなんです。そうすると、膝や、股関節や、腰に負担がかかったり、 姿勢を保持することがうまくいかなかったりという可能性はあります。 
たとえば、手でグーをつくるときに、小指をちょっと上げてみるだけで、あんまり力が入らないんですよ。足で、そういうことが起きているんじゃないかということですね」
確かに小指を上げてグーをつくってみると、拳にしっかりと力が入らないことがわかる。では、足の小指の爪が変形していたり、小指が曲がっている人は、足に力があまり入っていない状態で歩いていることになるのか。
「バランスが良くないという感じですね。足は土台です。そこに体重移動が起きて人は前に進めるようになっているんですが、体重移動の効率が良くないので、どこかに負担がかかるんです。そうすると、あくまで推測ですが、小指がちゃんと使えていない人は膝が悪いとか、股関節を痛めるかもしれないとか、そういうことです。 
歩くときは体重がかかとの外側から入って、小指側から親指側とローテートして指先で抜けていくように指先で地面を押す動作なので、押すときに指を全部使った方が、当然、力はたくさん使えると思います。例えばジャンプして着地するときも、４本よりは５本の方が膝のブレも少ないですよね」 
<div data-friday-nextpage-lead="子供の足の小指が短くなっている？"></div>
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<h3>退化、進化なのか？　子供の足の小指が短くなっている</h3>
靴を履く生活であまり踏ん張る必要がないためか、子供の足の小指が短くなっているという話も聞く。小指が退化しているのではないか、ともいわれているが…。
「以前、NHKの番組で、人間の足の小指は退化しかけている器官の１つだというようなことをいっていたんですね。それを聞いたときに、もしかして本当にそうなのかな、と思ったぐらい、今、小学生ですでに足の小指が曲がっているんです」
小指が曲がっているとは、どういう状態なのか。
「内側に入っていたり、爪が上を向いてなくて横を向いていたり。それは爪が曲がっているのではなくて、小指の骨が曲がっていることを意味しています。 
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それは大人になって治るものではありません。子供の頃に形成されたものは、そのままもっとひどくなって大人になっていくんです。小学生で、時すでに遅しなんですよ。骨がそういうふうにくっついてしまったら、治らないということです。 
意識しないとどんどん悪くなってしまうので、軽症のうちに見つけて、早く対応することが大事なんですね。これ以上悪くしないように、指をちゃんと使うように意識することが大事です」
人生100年時代といわれるが、重要なのは健康寿命。ずっと長く歩けるように足の健康を維持しなければならない。そのためには、指をちゃんと使う意識が肝心だという。
<figure id="attachment_334289" aria-describedby="caption-attachment-334289" style="width: 3744px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1931258a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/7555b99fa4059e0b523e56c461892e1e.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-334289" class="wp-caption-text">定番の上履きとして、多くの学校で指定や推奨されているバレーシューズ。一見履きやすそうだが、底が柔らかく、甲にゴムテープを通しただけの簡易な作りではかかとを支えられず、歩く度に脱げそうになりスリッパ履きになるという（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
<h3>立っているときも座っているときも、５本の指を地面につけるように意識する</h3>
では、足の健康を維持するためには、日常生活でどんなことに気をつければ良いのだろうか。
「爪が厚くなっている人などはヤスリをかけて、なるべく正常な形に近いように整えた方がいいんです。爪は日頃からクリーム等で保湿したり、ちょっと小指が曲がっている人とかはストレッチする習慣をつけるといいですね。 
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また、５本の指を地面につけるように意識することが大切です。座っていても体重はかかりますから、座っているときも５本の指を地面に全部つけるようにします。そういうふうに意識するだけでもずいぶん違うんです。
たとえば巻き爪の人は地面からの力を受けていないのが原因なので、指を地面につけるように座り方を変えてみると良くなったりすると思います」 
足の爪は小さくても、立ったり歩いたりするのに大事な役割を持つ部分。痛みや異常を感じたまま放っておくと、やがて歩行困難な状態を引き起こすこともある。異常を感じたら、一度皮膚科を受診して自分の症状を知り、正しいケア方法を学ぶことも必要だ。
足の指を意識するというと５本指ソックスが思い浮かぶが、実際、どのように足に良いものなのか。
「５本に分かれるだけだと、50点ぐらいですね。スポーツ用のソックスによくあるタイプで、横アーチが締まるものがいいんです。横アーチにゴムが入っていて、さらに５本に分かれていると指がよく使えます。 
指がきちんと使えるとトラブル予防、怪我予防になります。パフォーマンスが良くなるというのもありますが、それ以上に、指をきちんと５本地面につけると膝が揺れないので膝を守れるんです」
いちばんダイレクトに影響するのは膝なのだろうか。
「全部です。体は繋がっているので、腰も首も、連動している積み木みたいなものと思ってください。足が変わればその上にある関節は必ず変わってしまうので、足が変形すればそれだけ体の上の部分は変形していると思った方がいいです。小指はたぶん、いちばん最初に見える体のトラブルなんだと思います」 
<div data-friday-nextpage-lead="「上履き」のバレーシューズは実はNG!?"></div>
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<h3>指がしっかり使える靴を履くこと。「上履き」のバレーシューズは実はNG!? </h3>
靴の選び方が重要なことは確かだが、どんな点に留意するべきなのか。意外な勘違いもあるようだ。
「靴は、紐できちんと結んで、指がよく靴の中で動くものがいいんです。かかとから指の曲がるところまではしっかり固定されて、指がよく動く形の靴を選ぶことです。 
もちろん、TPOはあっていいんです。ただ、 普段の靴は、ゆるめで楽なのがいいというわけではありません。ゆるい靴というのは、横アーチを締めないので、かえって指が動かないんです。 
本当であれば、小学校等で履くバレーシューズって、いちばん良くないので。撤廃されるといいなって、すごく思っています」
’50年代から当たり前のように何十年も変わらない上履きのバレーシューズ。小学生がこれを履いて活動している時間はとても長い。しかも体育館での運動時も、そのまま履いているケースが多い。
実際、運動にも避難にも向かないとして警鐘を鳴らしている専門家は多い。さすがにもう専門家の意見を取り入れて検討されるべきだろう。
子供に限らず、現代では、足の小指の第２関節がない人が多いという話がある。これは、退化、進化といったことなのだろうか。
「そこは、ちょっとわからないですけど。実際には骨はあるんです。だけど、本来はそこで分かれているはずのものが、レントゲンを見るとくっついてしまっている人が多いんです。 

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それで、第２関節がないという話になっているのか、その、整合性はわからないですが、そうなのかなと推測はします。それを退化、進化と見るのか、小指が曲がっている子供が多いということを考えればやっぱりなんらかのトラブルと見るのか……」
小指の爪のトラブルに関しては、多くは靴の選び方に原因があり、ハイヒールや足幅に合わない窮屈な靴等で圧迫されたり、逆にゆるい靴で靴との摩擦が起こるということがある。しかし、その根本に小指の骨自体の変形がある。それが小学生からすでに起きているという。
小指を上手く使えないでいると、いずれ退化してしまうのか？　ちなみに、馬の蹄も退化して現在のようになったらしい……。
<figure id="attachment_334290" aria-describedby="caption-attachment-334290" style="width: 640px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="4471412e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/09/e58a6765f2bc282ddd3f0db21b0a6ece.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-334290" class="wp-caption-text">馬の蹄も退化して今のような形になったのだとか。馬の場合は早く走るために少しずつ進化した結果だというが、人間の指が退化する理由はどこにあるのか？</figcaption></figure>
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高山かおる（たかやま かおる）　医師・医学博士。済生会川口総合病院皮膚科主任部長、東京医科歯科大学附属病院臨床准教授。接触性皮膚炎、フットケアを専門とする。東京医科歯科大学附属病院にて足の問題を根本から解決するための装具外来、メディカルフットケア外来、歩行教室を併設するフットケア外来を開設。「100歳まで自分の足で歩ける社会」を目的に発足した「足育研究会」の代議員を務め、フットケアの啓発活動も行っている。日本フットケア足病医学会理事、日本トータルフットマネジメント協会理事。著書に『巻き爪、陥入爪、外反母趾の特効セルフケア』（マキノ出版）、『皮膚科医の教える本当に正しい足のケア』（家の光協会）

藤岡佳世

足の小指の爪になんらかのトラブルを抱えている人の話がSNS上でもけっこう多く見られる。近年、子供の足の小指が短くなっているという話も聞く。もしかして、足の小指は使わなさすぎて退化しているのか？

小指の爪が剥がれる、消える、関節の数が減る…退化か進化かー現代人の足に「いま起こっていること」

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