<figure id="attachment_336315" aria-describedby="caption-attachment-336315" style="width: 5820px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ea71c475"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/10/253cb0811a86f035a85462a7aad58b2d.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-336315" class="wp-caption-text">相手の激しいタックルを受けて倒されるリーチ マイケル（中央）。コロナ禍が明けて、南アフリカ、ニュージーランド、オーストラリアと定期的に対戦していたアルゼンチンとの経験値の差がW杯の大舞台で如実に表れた</figcaption></figure>
<p>フランスで行われているラグビーワールドカップ（以下Ｗ杯）。日本で行われた前回大会でベスト８に入ったラグビー日本代表（世界ランキング12位）は10月８日、最終戦で「ロス・プーマス」ことアルゼンチン代表（同９位）と対戦。善戦したものの27－39で敗れて、予選プール３位（２勝２敗）となり、次回大会の出場権を得たが大会を終えた。</p>
<p>前々大会は準々決勝に進出できなかったが予選プールは３勝１敗、前回大会は予選プール４戦全勝で史上初めてベスト８に進出したこともあり、今大会は敵地で初のベスト８なるか、と期待値は高かった。前回に続いてジェイミー・ジョセフヘッドコーチ（HC）以下のコーチ陣に率いられたものの２勝しか挙げることができず、予選プールで敗退した。その要因は３つほどあると考えられる。</p>
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<h3>①なぜ大会３ヵ月前からしか合宿ができなかったのか</h3>
<p>まずは国内リーグ（リーグワン）とうまく調整することができず、６月からしか合宿ができなかったことが遠因になった。</p>
<p>前々大会は200日を超える国内での合宿、前回大会は国内リーグを’18年中に終えて’19年になってから、南半球（ニュージーランド、豪州、南アフリカ、アルゼンチンの強豪クラブが集う）スーパーラグビーに参戦していたサンウルブズと２チーム制で強化にあたっていた。Ｗ杯前に、国内で長期合宿を重ねて強化をすることで過去２大会は結果を残していたが、’20年にコロナ禍に加え、金銭的な理由も重なり、サンウルブズを解散。今回の国内合宿は大会開幕３ヵ月前の６月からと日本代表としては遅めのスタートとなった。</p>
<p>リーグワンの開幕を１週間早めて、さらにリーグワンのリーグ戦から上位チームがトーナメントで優勝を争うプレーオフまでの期間が３週間空いていたがそこを１週間とすれば、３週間ほど早く合宿をスタートさせることができたはずだ。特にプレーオフまで３週間空いてしまったことについて、あるスポーツ紙担当記者はこう明かす。</p>
<p><span class="strongInContent">「リーグ戦は４月23日で終了して、５月13日から上位４チームによるプレーオフがはじまりました。前身のトップリーグのときも空いても１週間でしたから、スケジュールのことだけ考えれば５月６、７日に準決勝を開始してもよかった。ただその日はゴールデンウィーク最後の２日間にあたり、生中継を予定していたテレビ局が５月６、７日の試合時間帯にどうしても動かせない番組があったことも影響して、もう１週間ずらすことになったと聞いています」</span></p>
<p>それでもコーチ陣は、リーグワン期間中から代表候補選手とミニ合宿とオンラインミーティングを重ねており、「７週あればトップコンディションに持っていける」と話していたが、結局、国内５戦とアウェイでのイタリア代表戦も含めて１勝５敗。ジェイミージャパン２期目の３年間は、Ｗ杯のサモア代表戦まで一度も世界ランキング上位に勝つことはできなかった。</p>
<p>７月に国内でオールブラックスXVと対戦し、初戦は27－41で敗戦したが、アルゼンチン代表戦後の会見でジョセフHCは「我々は相手と対戦する準備ができていなかった」と調整不足を認めていた。</p>
<p>２年目を迎えたリーグワンはまだ発展途上のリーグで、人気や認知度をあげるにはテレビ局の力を借りたい気持ちがあるのは理解できる。ただ、そのことによって日本代表合宿の開始時期が遅くなってしまったのであれば、本末転倒と非難されても仕方がないだろう。</p>
<p>ただ、国内のスポーツでは野球やサッカーに比べると人気は遠く及ばず、リーグワンを盛り上げるための施策や会場の確保と日本代表が希望するスケジュールの“せめぎあい”は今後も続くだろう。だからこそ、４年後を見据えたスケジュール作成に今からでも取り組まないと同じ悲劇が繰り返されてしまう可能性はあるのだ。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="バックスリーのトライ数が大幅に減った"></div>
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<h3>②バックスリーはなぜ決定力がなかったのか</h3>
<p>２つ目はBK陣の連携が深まらず、バックスリー（両WTB、FBの３人の総称）が決定力不足に陥ったことが挙げられるだろう。日本代表の信条、DNAはアタッキングラグビーである。トニー・ブラウンコーチが指導するアタックでは、基本的にはパス、キックといったスキルを使うか、コンテストキックやターンオーバー後、カウンターでバックスリーがトライを挙げることを基本としていた。</p>
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<p>’19年大会ではターンオーバーやキックの後にトライを挙げるシーンが多く、WTB松島幸太朗が５トライ、WTB福岡堅樹が４トライを挙げた。しかし、今大会ではスピードとフィットネスで勝負したが、バックスリーが挙げたトライはチリ代表戦、アルゼンチン代表戦でWTBジョネ・ナイカブラが挙げた２トライのみだった。</p>
<p>バックスリーだけで見ると、過去３年では、フランスにチャレンジしたWTB／FB松島幸太朗こそ試合に出場と中軸だったが、Ｗ杯でレギュラークラスとして活躍したFBレメキ ロマノ ラヴァはＷ杯前まで過去３年で１試合の出場で、ケガで途中離脱したセミシ・マシレワはケガもあり今年に入るまでは２キャップ、ジョネ・ナイカブラは今年に入ってからキャップを得て、レギュラーに定着した選手だ。</p>
<p>国内でも決定力不足、ミスを重ねており、Ｗ杯本番が不安視されていた。大会に入ってから、やや修正ができたものの、結局、格下のチリ代表戦以外は３トライ以下という結果に終わった。</p>
<p>Ｗ杯で対戦するチームがイングランド代表、サモア代表、アルゼンチン代表というフィジカルの強いチームばかりだったため、フィジカル強化に重きを置いたことは理解できる。ただメンバーを固定できず、BKの連携に相対的に時間を割くことができなかったことは決定力不足につながったと言えよう。</p>
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<div data-friday-nextpage-lead="２番手、３番手選手の底上げが急務"></div>
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<figure id="attachment_336316" aria-describedby="caption-attachment-336316" style="width: 4000px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="be61c648"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/10/fdad8627161bc739f8aa6a939d1eae0c.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-336316" class="wp-caption-text">７月の強化試合前の練習を見つめるジョセフHC。十分な準備期間を捻出するスケジュールを立てていかないと今大会の反省は生きてこない</figcaption></figure>
<h3>③なぜ強度の高い試合を数多くできなかったのか</h3>
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<p>３つ目は、高い強度、インテンシティのある試合が’19年大会前より不足したことが挙げられる。’22年、トップリーグからリーグワンに国内リーグが変わった。もちろん、レベルは年々上がっているが、スーパーラグビーレベルとはまだ言いがたい。もちろんコロナ禍で、’20年、まったく日本代表が活動できなかったことも影響はあるだろう。</p>
<p>さらにサンウルブズの活動もコロナ禍で’20年の途中で終了し、スーパーラグビーの舞台で経験を積むことができなかったことも大きい。この４年間、海外でプレーした選手はFWではキャプテンNO８姫野和樹がニュージーランドのハイランダーズで１年、WTB松島幸太朗がフランスのクレルモンで２シーズンのみだった。</p>
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<p>日本代表のコーチ陣も、なんとか強度の高い試合を確保しようと、試行錯誤し’22年にはオーストラリアA代表と３試合、’23年もニュージーランドXVと２試合行ったものの、スーパーラグビーに代わる強度を多くの選手に経験させることはできなかった。またテストマッチ以外で強度の高い試合機会が得られなかったこともあり、若手の成長につながらなかったことも確かだ。</p>
<p>強化担当の藤井雄一郎ナショナルチームディレクターは<span class="strongInContent">「以前から言っているが、日本代表はベストなチームで戦わないといけないので、いろんな選手にチャンスがあるという試合はなかなか組みにくい。スーパーラグビーだったり、ジュニアの代表だったり、いろんな工夫をしながら国際経験を積ませる環境を作っていくのが一番じゃないかと思う」</span>と提言した。</p>
<p>ジョセフHCも最終戦後の会見で<span class="strongInContent">「質の高いラグビー選手がいるにもかかわらず、そのような選手を育てるための、質の高い時間がない。国内リーグ（リーグワン）は企業ラグビーです。だから、ほとんどの場合、日本のチームの２番手、３番手の選手は十分なラグビーができていない。</span></p>
<p><span class="strongInContent">だから、それを何とかする必要がある。その上で、ラグビーのプロの強度のレベルを上げる必要がある。選手たちが、毎日、トレーニングや遠征ができるような、異なる国、異なるタイプのラグビーに慣れることが必要です。南アフリカと対戦すれば、アルゼンチンとは違ったプレーをする。この２つの経験は、日本にとって大きな経験になると思う。サンウルブズのような経験は、可能な解決策の一つだと思う」</span>という話で締めた。</p>
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<p>日本代表はＷ杯に入ってから試合ごとに成長し、負けたもののアルゼンチン代表戦後に、ジョセフHCは「４年間で一番の試合をしたのでは」と言えば、４大会目のＷ杯となったFLリーチ マイケルは「出し切った」、同じく４大会目のHO堀江翔太も「悔いはない」とキッパリと言った。</p>
<p>日本代表の新しいヘッドコーチはまだ決まっていないが、今大会の経験を踏まえて、次回’27年につなげなければ、コーチや選手の頑張りだけでは、アウェイの大会で開催されるW杯ベスト８以上に進出することは難しいはずだ。</p>


W杯で史上初のベスト４進出を期待されたラグビー日本代表は予選を突破できずに敗退した。何が原因だったのか。突き詰めていくと３つの要因が浮かび上がってきた。

ラグビー人気獲得と代表強化の狭間で揺れた？日本代表がW杯で予選敗退した「３つの要因」

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