1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマに関するコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』（太田出版）など。

田幸 和歌子

<h3>「過去に例がないと思います」…どんなペースで、いつ打ったら良いのか？　</h3>
長い長い猛暑がようやく終わったら、インフルエンザ流行の時期に突入。
国立感染症研究所などによると、インフルエンザで10月８日までの１週間に医療機関を受診した患者数は、全国で１医療機関あたり999人となっており、このデータを基に推計される１週間の全国の患者数は約32万6000人という。
また、インフルエンザが今年２月から９月まで１度も収束することなく続いたのは、‘99年以降初めてという報道もあった。
もともとインフルエンザは、冬に流行るため、冬になる前にワクチンを打つのが恒例だったが、収束することなくずっと続いている場合、これからはどんなペースで、いつ打ったら良いのだろうか。池袋大谷クリニック院長の大谷義夫医師に聞いた。
「思い返していただくと、これまでも9月頃でもインフルエンザによる学級閉鎖が稀に報道されていました。沖縄では夏にも学級閉鎖はよく出ておりますし、もともと北半球は冬、南半球では日本と逆の時期に流行し、亜熱帯・熱帯地域では１年中、小規模の流行が報告されています。 
日本ではもちろん冬が流行のピークですが、夏にも、沖縄を中心に学級閉鎖が出ることは珍しいことではありません。 
ただし、今年は大流行とまではいかないものの、収束せずに流行が続いている状況から更に感染者の増加がはじまり、東京都など12都県で『注意報レベル』、沖縄県では『警報レベル』となっています。これは過去に例がないと思います」（大谷義夫医師　以下同） 
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<figure id="attachment_338006" aria-describedby="caption-attachment-338006" style="width: 3285px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a65e8cdd"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/10/3fdc6ed327f7c2cb2528897d82718199.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-338006" class="wp-caption-text">インフルエンザワクチン、今年は、いつ打てばいいのか…（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
<h3>早いほうが良い？　ワクチンの効果は、４～５ヵ月</h3>
では、収束することのないインフルエンザでは、ワクチンをいつ打てば良いのだろうか。
「正直、この先の流行については、誰もわからないと思います。もしかしたらこのまま例年の真冬のような大流行がすぐに訪れるかもしれないですし、流行のピークが例年通り１月２月になるかもしれません。 
とはいえ、これは私見ですが、ワクチンは少し早めに打つのが良いかなと思います」
その根拠として、大谷医師はこう説明する。
「例年ですと、10月は接種を希望する方に対しても、接種にはまだ少し早いとご説明して待っていただきました。現在使われているワクチンの効果が持続する期間は、４～５ヵ月と考えられています。例年ですと、10月はまだ感染者が少ないのに対し、３月はA型インフルエンザの流行からB型インフルエンザの流行にシフトして患者数も多いのです。 
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そのため、12月後半から３月末、あるいは４月上旬までをカバーできるように、なるべく11月上旬から12月上旬に接種していました。 
しかし、今年は10月中旬の段階で、かなりの流行ですから、例年より３～４週間前倒しにして、そろそろ接種を検討しても良いと思います」
そもそもなぜ今年は流行が早いのか、収束しないのかという疑問については、コロナ禍のステイホームやマスク生活により、この数年、インフルエンザの大流行がなかったことで多くの人の免疫がなくなっていること、世界中で人間が移動していることなどがよく指摘される。
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<h3>受験生は少し遅めに、年内に重要なイベントがある人は早めに…</h3>
一般的には例年より早くワクチンを打つほうが安全と言えそうだが、なかには「例外」もある。
「例えば、２月や３月に受験がある方はピークをそこに持っていくべきだと思います。ワクチンの効く期間が４～５ヵ月とすると、今打つと３月上旬で切れてしまうかもしれません。 
『だったら、途中で追加接種すればいい』と思うかもしれませんが、毎年、成人は１人１回ずつで、需要と供給のバランスが合うように生産されていますので、２回打つ人が多数いると、必要な人に行き届かなくなってしまう恐れがあります。 
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一方、受験生の中でも、例えば推薦入試などが年内にある方や年内に重要なイベントがある方は早めに接種していただくのが良いと思います。 
また、受験が続いている３月にまだ流行が続いていて、もしワクチンが余っているようでしたら、２回目の接種を検討しても良いかもしれません」 
<figure id="attachment_338007" aria-describedby="caption-attachment-338007" style="width: 3285px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="144bd09f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/10/656645121ca1e1644a4d1c50dcb45435.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-338007" class="wp-caption-text">現在使われているワクチンの効果が持続する期間は、４～５ヵ月と考えられている</figcaption></figure>
<h3>意外と知られていない「歯磨きの予防効果」</h3>
予防としてできるのは、手洗い、アルコールによる手指消毒、人混みでのマスクの装着など、これまでの基本と変わらない。ただし、コロナ禍により、マスクの正しい着け方を多くの人が覚えたことは、感染予防にとって意義のあることだと大谷医師は言う。
「他に意外と知られていないのは、歯磨きの予防効果。積極的なオーラルケアにより口腔内細菌が減ると、インフルエンザの発症が10分の１に減少するというデータが、東京歯科大学から報告されています。 
なぜかと言うと、口の中の細菌は、プロテアーゼ、ノイラミニダーゼという酵素を作りっていて、そのプロテアーゼとノイラミニダーゼは、インフルエンザウイルスが気道の細胞に侵入して増殖するのを手助けしているからです。 
つまり、口中の細菌が減れば、こうした酵素が減りますから、インフルエンザウイルスが気道に入りづらく、増殖しづらくなるのです」
また、口腔ケアは、インフルエンザだけでなく、糖尿病、心筋梗塞などの循環器疾患、誤嚥性肺炎の予防にも重要であると考えられている。
「勘違いされがちですが、誤嚥性肺炎は、食べ物や飲み物を誤嚥して肺炎になるわけではなく、口の中の細菌が夜間寝ている間に気道に落ちて肺炎を起こすもの。 
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そのため、口の中の細菌を減らしておくことには大きな意味があるのです。口腔ケアは、歯磨きだけでなくデンタルフロスも使用し、定期的に歯科検診を受けることも大切です」 
他に、お茶に多く含まれるカテキンに抗ウイルス作用があり、お茶でうがいをするとインフルエンザ予防に有効であるというデータが、静岡県立大学薬学部と伊藤園の共同研究により確認されている。
<div data-friday-nextpage-lead="医療崩壊を起こさないために…"></div>
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<h3>見直したい「医療機関へのかかり方」と「薬の使い方」 </h3>
ところで、気になるのは、医療機関で深刻な「薬不足」が起こっていること。しかも、この状況は、残念ながら今後も続くという。
「理由は、①コロナの流行で風邪薬、解熱剤、咳止めがたくさん処方されたこと、②ジェネリック（後発医薬品）会社からの供給が減少したこと。 
一部メーカーの製造不正を発端として、ジェネリックの出荷停止やメーカーの業務停止が起こり、供給が減っているからです」
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そんな中、大谷医師が勧めるのは、医療機関へのかかり方や薬の使い方の見直しだ。
「処方薬と似た成分の市販薬（要指導医薬品および一般用医薬薬）もあります。例えば咳止め薬のメジコンは、処方薬では不足していても、市販薬で中身も容量もほぼ一緒の『メジコンせき止め錠Pro』という商品があります。 
風邪薬でも、処方薬のカロナールと同じ成分で、解熱鎮痛効果のアセトアミノフェンが入っていたり、のどの痛み改善の処方薬・トランサミンと同じ成分のトラネキサム酸が入っていたり、成分量を変えて症状に合わせるように調整されていますよね。 
米国では、健康な方が風邪やインフルエンザに罹患しても、すぐには医療機関を受診しないそうです。日本のような国民皆保険制度がありませんので、医療費の自己負担が高額となってしまいますから」 
<figure id="attachment_338008" aria-describedby="caption-attachment-338008" style="width: 2896px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a491eb83"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/10/0b5ba482c7146eefa9a83e72a5b9a6ce.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-338008" class="wp-caption-text">「市販薬や市販の抗原検査キットをうまく利用して、医療崩壊が起こらないようにすることを、お一人お一人が意識してくださるとありがたいです」と大谷医師</figcaption></figure>
では、処方薬と市販薬をどのように使い分けたら良いのか。
「風邪薬などの対症療法の薬は、市販薬で十分だと思います。市販薬は副作用が出ないよう、含有量を少なく作られているとはいえ、成分が同じものはたくさんあります。 
そもそも風邪薬などの場合、処方薬と市販薬で成分は大きく異ならない一方で、大きく違うのは、支払う金額かもしれません。処方薬は健康保険適応で３割負担となることが多いのですが、市販薬では健康保険は適応されません。 
しかし、医療機関を受診すれば、時間も費やしますし、初診料もかかります。慢性疾患などで数ヵ月も内服する薬でなく、短期で内服終了する薬であれば、市販薬の方が費用が大きく増えることにはならないと思います。 
逆に、処方薬でないと手に入らないのは、コロナでしたら、基礎疾患のある方のみが使用できるファイザーのパキロビッドや、基礎疾患の有無にかかわらず使用できる塩野義製薬のゾコーバ。インフルエンザでは、タミフル、リレンザ、イナビル、ゾフルーザなどの抗ウイルス薬を使用するには処方箋が必要です。 
また、風邪ウイルスに対しては対症療法の薬しか存在しないのですが、黄色や緑の喀痰を伴う高熱を生じて、細菌性肺炎が疑われる場合には、適切に診断して抗生剤による治療が必要ですので、医療機関を受診していただいたほうが良いと考えます」 
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今は医療崩壊を起こさないためにも、「セルフメディケーション」の視点を持つことが重要だと大谷医師は言う。
「もし普通の風邪だと思われた場合には、市販薬で十分だと思いますし、市販薬をしばらく飲んで改善しない場合には医療機関を受診するのでも良いと思います。 
今は新型コロナウイルス抗原・インフルエンザウイルス抗原定性同時検査キットが市販されています。まずは自宅でキットを使用して検査し、陽性だったら医療機関にご連絡いただければ、抗ウイルス薬の処方を医師と相談できると思います。 
市販薬や市販の抗原検査キットをうまく利用して、医療崩壊が起こらないようにすることを、お一人お一人が意識してくださるとありがたいです」 
大谷 義夫（おおたに・よしお）池袋大谷クリニック院長。呼吸器内科医・医学博士。1963年東京都生まれ。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本アレルギー学会専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医。1989年群馬大学医学部卒業。九段坂病院内科医長、東京医科歯科大学呼吸器内科医局長、同大学呼吸器内科兼任睡眠制御学講座准教授、米国ミシガン大学留学などを経て、2009年に池袋大谷クリニックを開院。全国屈指の患者数を誇る呼吸器内科のスペシャリストとして、テレビ等でも情報発信を行う。著書に『絶対に休めない医師がやっている最強の体調管理』（日経BP） など多数。趣味はウォーキング。
<figure id="attachment_338009" aria-describedby="caption-attachment-338009" style="width: 2075px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="689fafd0"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/10/d7942cb9eafaffe516674a89dd6cf237.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-338009" class="wp-caption-text">大谷先生の最新著書（10月31日発売予定）。82の論文、世界の最新エビデンスが証明する「歩き方の新バイブル」、『１日１万歩を続けなさい 医者が教える医学的に正しいウォーキング』（ダイヤモンド社）</figcaption></figure>

田幸和歌子

アフロ

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