田幸 和歌子

<h3>いつの間にか、いろいろな「手数料」が…</h3>
登場したばかりの頃は便利なシステムに思えたが、いつの間にかいろいろ“手数料”をとられるようになっているタクシー配車アプリ「GO」。
調べてみると、昨年11月14日の一般乗用旅客自動車運送事業の運賃改定に伴い、「迎車料金」がタクシー事業者ごとに変更されることになり、同時期に「アプリ手配料」なる手数料がプラスされたため、あまり話題にならなかった経緯がある。
もともと「運賃＋迎車料金420円」のところ、変更後に「運賃＋迎車料金300円〈※〉＋アプリ手配料100円〈※〉（※タクシー会社・エリアによって異なる）」になったと説明されると、利用者側にはお得になった印象すらあったかもしれない。
しかし、混雑時間帯などによって、周辺のタクシー車両に空車がない場合に優先的に手配される「優先パス手配料」（300～980円。一定ではない）や、乗務員や車種指定、空気清浄機搭載車の条件指定手数料など、気づくと様々な手数料だらけ。
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こうした改悪について、あるIT業者は「アプリの開発は基本的に、最初は無料とか赤字覚悟でやって、ある程度のシェアをとった段階で、有料化や課金に移行していくやり方。GOなどのタクシー配車アプリも何ら特殊なことではありません」と説明する。
<figure id="attachment_341229" aria-describedby="caption-attachment-341229" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="d4ddfc9f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/eb7a49bad620599a5313fa2f051b85fd.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-341229" class="wp-caption-text">便利なアプリだと思っていたけど…（PHOTO：共同通信）</figcaption></figure>
<h3>手数料はタクシー運転手には還元されていなかった…</h3>
しかし、驚くべきは、こうした手数料が運転手には還元されないこと。
都内のある個人タクシー事業者はこんな不満を打ち明ける。
「優先配車（優先パス手数料）は、実際にとると、非常に遠いところが多く、５～６キロ走らされるなんてザラ。しかも、この手数料から運転手には１円も入らず、GOアプリの会社が全部とっちゃうんですよ」 
こうしたタクシー運転手の待遇については、自交総連（全国自動車交通労働組合総連合会）副中央執行委員長の德永昌司さんもこう話す。
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「これらの手数料はアプリ会社の収益になっていて、タクシー会社もしくは乗務員さんの売り上げには反映されていません。大きな問題だと思います。 
アプリが寡占化されてくると、将来的にはタクシーの本来の公共料金運賃とは別に、アプリ会社の利用料がどんどん膨らんでいく可能性があるわけです」（德永さん） 
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<h3>配車アプリは「旅行業」！？</h3>
そもそもタクシーは公共交通機関であるため、料金を上げること自体、国土交通省の許可が必要だが、アプリの料金は各会社が勝手に決め、課金なども独自ルールで決めていいという。なぜなのか。
「GOなどのアプリは、“旅行業”として登録しているからだそうです。例えば『車は絶対見つかるけど、その分980円プラスもらいます』というのは、システム上旅行業としてOKということです」（德永さん） 
少々きな臭い話だが、そこにはタクシー配送アプリ誕生の経緯も絡んでいるようだ。自交総連書記長の髙城政利さんは言う。
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「平成26年１月に、東京ハイヤー・タクシー協会により、共通配車アプリ『スマホdeタッくん』が作られました。 
これはオリンピックに向けて、国の助成金を受けて作られた公共の配車サービスで、全てのタクシー事業者さんが加盟し、全ての人が使える良いものでしたが、突然なぜか、日本交通の川鍋一朗会長が呼びかけ人にもかかわらず『スマホdeタッくん』を一抜けし、独自のアプリ『Japan Taxi』を作ったんです」 
<figure id="attachment_341230" aria-describedby="caption-attachment-341230" style="width: 357px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="310972bb"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/51494b66b20eaec11fe501f5bdf797f4.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-341230" class="wp-caption-text">’20年５月にサービスを終了した共通配車アプリ「スマホdeタッくん」。’16年には都内のタクシー無線20グループ、対応車両台数１万2000台超が加盟していた（一般社団法人 東京ハイヤー・タクシー協会のプレスリリースより）</figcaption></figure>
ちなみに、GOは「JapanTaxi（日本交通ホールディングス系）」と「MOV（DeNA）」が統合して作られたアプリで、「JapanTaxi」は「Mobility Technologies（モビリティテクノロジーズ）」へ社名変更。GOアプリを運営する同社会長も、東京と全国のハイヤー・タクシー協会の会長も、日本交通の会長・川鍋一朗氏が務めている。
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現在、東京都内では「GO」「S.RIDE（エスライド）」「DiDi（ディディ）」と「Uber（ウーバー）Taxi」の４つが主力の配車アプリになっているが、中でも導入している会社が多いのが、GOとS.RIDEの２つだ。
「『S.RIDE（エスライド）』はGOに賛同しないタクシー事業者さんたちが、ソニーにシステムの開発依頼をして株主になってもらい、作っていますが、やはり先行企業のGOの一人勝ち状態だと聞きます。GOはトヨタもNTTも出資していますし、TVコマーシャル含めて認知度が違いますから。 
ちなみに、都内23区内では、S.RIDEは主に迎車料金500円ですが、GOは300円と価格を抑えるかわりに、手数料100円を“外付け”にしてアプリにお金が入る仕組みにしています。利用者がカードの引き落とし時に手数料を知る形ですが、そうした説明はアプリ内で書かれている、納得しましたよね？ ということなんです」（髙城さん） 
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<h3>「タクシー不足」の原因にも！？</h3>
手数料の問題だけではない。実は、近年盛んに報じられる「タクシー不足」にも、アプリの普及による弊害が出ていると德永さんは指摘する。
「アプリがない時代は、お客さんから依頼が来ると、タクシー会社もしくは無線グループの無線で呼ばれ、『空車』の車両が配車されていました。 
ところが、アプリ導入後は、アプリ専用の一部の車両が『回送板（迎車板）』を出しておき、アプリからリクエストを受けたら向かうようになっている。 
しかし、中には、アプリ専用車ではないのに、空車にもかかわらず“偽装”で『回送』表示している車両もあります。だから、『回送』で走っている車が目立っている状況なんです。 
逆に、アプリ配車専門の車両なのに、一般の乗車を受け入れていることもあります。これは問題だろうと国交省にも掛け合いましたが、３～４ヵ月後に国交省から問題ないと回答してきました。 
当初は問題だから内容を調べて指導しますという回答だったのが、どこかでコロッと変わってしまったんです」
德永さんは、「Mobility Technologies」が’23年２月２日付で発行した「迎車専用車運行ルールのご案内」を資料として提供してくれた。
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そこには確かに、こんな気になる文言が記されている。
<ul>
<li>「アプリ配車と事業者無線のみで運行（流しは原則なし）」</li>
<li>「トラブル懸念を除き、流しは原則なしで運行してください」</li>
<li>「朝６時～10時は迎車専用車で運行（その時間の通常営業NG）」</li>
<li>「配車確定したら提示している迎車板を取り下げ、メーターを迎車に入れていただき、通常通り迎車地点に向かってください」</li>
<li>「お客様が降車したら再び迎車板を掲示をお願いします」</li>
</ul>
確かに、「流しは原則なし」で、混雑する通勤時間は「迎車専用車で」運行しているのだから、駅や町中でタクシーがつかまらないわけだ。
<figure id="attachment_341231" aria-describedby="caption-attachment-341231" style="width: 2573px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="08b10d40"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/bc0aaec250eed68c3b6e6110ef3e44af.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-341231" class="wp-caption-text">11月20日からは、神奈川・埼玉・千葉・多摩エリアでも、タクシー注文時にアプリ手配料100円（税込）が追加される（公式HPより）</figcaption></figure>
<h3>利用者側のマナーの悪さも問題に…</h3>
さらに、德永さんは利用者側の行動に困惑しているという。 
「迎車の到着を待たずに、別のタクシーが来たら、手を挙げて乗ってしまう方がいるんです。しかも、キャンセルもしないから、遠くからわざわざお迎えに行っても、いつまでも待たされてしまう。 
タクシーを頻繁に利用するユーザーは、早くタクシーに乗りたいから、複数のアプリで配車リクエストをし、早く着いたほうに乗ることもあります。とりあえず配車のリクエストだけしておいて、流しのタクシーが見えたらキャンセルする人もいるらしいですよ。配車をキャンセルして、流しのタクシーに乗ったら、迎車料金はとられずに乗れるから」 
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運転手にとってはあまりにデメリットの多いタクシー配車アプリ。いっそのことアプリはやめて、従来のように乗降客数の多い駅で待つほうが効率がいい気もするが……。德永さんは溜息まじりにこう語った。
「確かに今でも、無線をとるのが嫌いで、駅中心の仕事をしている乗務員もいますし、それでも成り立ちます。しかし、アプリを導入したタクシー会社はお金がかかっているから、乗務員さんに配車のオーダーが来たら、ちゃんととれと言うじゃないですか。 
日本社会全体がデジタル化する流れの中で導入しろと言われ、ライドシェアの話まで結びつけられ、国策的にアプリを使わなきゃいけないような意識になってしまうのだと思います」

1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマに関するコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』（太田出版）、『KinKi Kids　おわりなき道』『Hey! Say! JUMP　9つのトビラが開くとき』（ともにアールズ出版）など。

田幸和歌子

登場したばかりの頃は便利なシステムに思えたが、いつの間にかいろいろ"手数料"をとられるようになっているタクシー配車アプリ「GO」。近年盛んに報じられる「タクシー不足」の原因のひとつになっているという。

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