30cmはある立派な角を誇るように、昼下がりの街をノッシノッシと闊歩。すぐ近くを歩いていた主婦らを飛び上がらんばかりに仰天させたのは、繁殖期を迎えたオスのエゾシカだった。
登山やハイキング中の出来事であれば心構えもできただろうが、シカが悠然と歩いていたのは、26万人が暮らす、札幌市東区の住宅街である。
<figure id="attachment_343161" aria-describedby="caption-attachment-343161" style="width: 1280px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="270201f7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/a9c7842a1fcd24e2588a6bb2bcdca1ca.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-343161" class="wp-caption-text">10月25日に札幌市東区に出没したシカ。冬に向け栄養を蓄えたのか、体格は立派。街を闊歩したのち、豊平川方面へと消えていった</figcaption></figure>
「繁殖期に当たる10月下旬以降、札幌市中心部で市街地へのシカの出没が増えています。10月24日には中央区の北大植物園へ入り込んだシカが10時間以上居座る事件もありました」（地元紙記者）
シカが出没しているのは北海道だけではない。東京都でも八王子市、日野市、府中市の河川敷をニホンジカが走り回る様子が目撃されている。酪農学園大学准教授の伊吾田(いごた)宏正氏が語る。
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「ニホンジカの生息域は広がり続けていて、環境省によると、’78〜’18年の40年間で生息域は2.7倍になっています」
シカが絶滅したとされている茨城県でも、10年前から継続的に目撃例が寄せられている。推定個体数は’20年度から’21年度の１年間で218万頭から222万頭へと増加しているという。
危惧されるのは農作物の被害だ。農水省が公表しているシカの食害は、年間61億円以上（’21年）に上るといわれる。また、人里に下りてしまうことで、電車や車と接触事故を起こすリスクも高まる。昨年はシカが関係する自動車事故だけで4400件以上が報告されており、シカとぶつかったことでドライバーが命を落とす事故も２件起きている。
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もし市街地でシカと遭遇してしまった場合、交通事故以外でも命を落とす危険がある。伊吾田氏が警告する。
「多くは人間を見ると逃げていきます。しかし、私がかつて交尾期で気が荒くなっているオスに遭遇した際、角をこちらに向けて突進してきたことがありました。走って逃げたのでケガはありませんでしたが……。島根県の施設では飼育員がシカに襲われ、死亡した事故が今年10月に起きています。遭遇した際は近づかず、冷静に距離を取ってください」
クマによる人身被害が相次いでいるなか、シカまでが……。人類は、自然界の逆襲から生き延びられるのか。
<figure id="attachment_343162" aria-describedby="caption-attachment-343162" style="width: 1280px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1f9da4c3"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/5efe6024ed3a4999745917ced45c8d3e.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-343162" class="wp-caption-text">こちらは10月24日に札幌に出没したシカ。住宅の敷地に入り込み、座り込んでしまうシーンもあった</figcaption></figure>
『FRIDAY』2023年11月24日号より

北海道新聞社、共同通信社

26万人が暮らす札幌市東区の住宅街を闊歩するのは、30cmはある立派な角を持った野生のシカだった。ニホンジカの生息域は広がり続けており、全国的に市街地へのシカの出没が増えているという。

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