浅井 秀樹

<h3><span class="strongInContent">変動金利の住宅ローンは、長期債務なのにキャッシュフローが未定…</span></h3>
<p>長期金利が上昇している。日本銀行は超低金利政策を続けてきたが、今年秋に１％超を容認する姿勢に転じた。住宅ローンは返済額が金利動向に大きく左右されるため、金利が固定か変動か、ミックスか、どのような選択肢がいいのだろうか。</p>
<p><span class="strongInContent">「最近は不動産物件が高くなり、都心のマンションなら中古でも7000</span><span class="strongInContent">万～8000</span><span class="strongInContent">万円くらいはします。世帯年収が1000</span><span class="strongInContent">万円くらいでも、厳しいのではないでしょうか。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">一方、住宅ローンを組むと返済期間は35</span><span class="strongInContent">年などと長くなり、金利の違いで返済額が大きく変わります。住宅ローンは金利で選ぶことになります」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<figure id="attachment_345120" aria-describedby="caption-attachment-345120" style="width: 640px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b944cc0f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/d98c4e502a470c61df9f8c59f7dc7223.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-345120" class="wp-caption-text">「変動金利の住宅ローンは、長期債務なのにキャッシュフロー（お金の流れ）が固まっていません。冷静に考えると恐ろしいことです」と専門家</figcaption></figure>
<p>こう話すのはファイナンシャル・プランナーの有田美津子さん。住宅購入や住宅ローンなど、お金に関する相談にアドバイスしている。住宅ローンには固定金利と、市場金利の動向に左右される変動金利があり、それらを組み合わせたものもある。</p>
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<p>住宅ローンを組む際に問題となるのは、10年、20年先の経済や金利水準、さらに自分の収入や家族の状況など、よくわからないことばかり。</p>
<p>経済や金利動向をみている専門家からも<span class="strongInContent">「変動金利の住宅ローンでは、この先、利払いが増えていく可能性があり、その備えをいまのうちから考えておかないといけません」</span>（市川雅浩・三井住友ＤＳアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト）。市川さんは住宅ローンが家計に与える影響について次のようにも話している。</p>
<p><span class="strongInContent">「長期債務なのにキャッシュフロー（お金の流れ）が固まっていません。冷静に考えると恐ろしいことです」</span></p>
<p>金利が上昇していく可能性があるなか、変動金利で住宅ローンを組んでいると、利払い額がどれだけ増えるのか、予想が難しく、金利リスクにさらされることになる。</p>
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<h4><span class="strongInContent">■住宅ローンの金利形態</span></h4>
<figure id="attachment_345121" aria-describedby="caption-attachment-345121" style="width: 1348px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ecee9067"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/ee7a552129694880a7591c321124dc84.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-345121" class="wp-caption-text">住宅ローンを現在利用している回答者の６割が「変動金利」だった（三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」〈2023年〉／１万人〈20歳～69歳〉を対象とした独自アンケート調査より）</figcaption></figure>
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<h3><span class="strongInContent">現在は、圧倒的に「変動金利」がお得だけど…</span></h3>
<p>住宅ローンには、どのようなものがあり、金利水準で返済額がどれぐらい違ってくるのだろうか。住宅ローンの支払い金利水準は、借入額や期間、頭金などの条件のほか、提供する金融機関により、かなり違いがある。</p>
<p>たとえば4000万円を借りて30年間で返済するケースでみてみよう。全期間を固定金利にすると、諸費用を除く表面金利が1.6％という商品があり、単純な試算で総返済額が約4963万円、月額返済額は約16.4万円となる。</p>
<p>一方、現在は低金利が魅力の変動金利。変動金利で諸費用を除く表面金利0.169％という商品があり、仮に全期間が同じ金利なら返済額が約4102万円、月額返済額は約11.7万円。金利が上昇していき、全期間の平均金利を3.0％にすると、総返済額約5805万円、月額返済額の平均が約21.1万円になる。</p>
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<p>最近の金利はどうなっているのだろうか。長期金利の指標とされる10年もの国債で、利回りが10月末に0.955％まで上昇している。これまで日本銀行は「ゼロ金利」という超低金利に誘導する金融政策をとってきた。４月、日銀総裁に植田和男氏が就任して以降、金利の上昇を容認するかのような姿勢に少しずつ修正し始めている。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="当面は、２％が上限か‥‥"></div>
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<h3><span class="strongInContent">当面は、２％が上限か‥‥が、５年、10</span><span class="strongInContent">年と先を見通すと</span></h3>
<p>市川さんは<span class="strongInContent">「いままで無理に金利を低く抑えてきたが、物価や賃金が上がれば、長期金利も上がっていくと考えられる」</span>と言う。当面は来年の春闘で、経営側が３月半ばの集中回答日に、どのような賃上げを示すのか。</p>
<p>金融機関が日銀に預ける一部の預金にマイナス0.1％の金利を課すという「マイナス金利」が導入されている。日銀が金融機関に対して、日銀への預金で利息を支払うよりも、貸し出しに向けてほしいと意思表明している。市川さんは、春闘で一定の賃上げが示されれば、日銀がマイナス金利を解除する可能性もあるとみており、長期金利の「１％超えもあり得る」とみている。</p>
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<p>一方で、市川さんはこうも話す。</p>
<p><span class="strongInContent">「すぐに長期金利が２％になるような急騰する展開にはならないと思う。短期間に長短の金利が上昇すると混乱する。世界経済や国債の需給にそった金利の決まり方、つまり本来のあるべき姿になっていくが、長く時間がかかるだろう。日銀がゆっくりと金融正常化へ舵をとっていくのだろう」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>当面は、金利が急騰する可能性は小さいかもしれない。一方、５年、10年と先を見通すと、物価や賃金の上昇により、日銀が金利を低水準に抑え込んでいる金融政策が正常化していくとみられている。そのときは、経済活動の状況次第で、金利がもっと上がり、海外のように日本も数％程度になっていても不思議でない。</p>
<figure id="attachment_345122" aria-describedby="caption-attachment-345122" style="width: 5453px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="5602bd08"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/c03c1fe0077b8e3af68d9ec68868cc5c.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-345122" class="wp-caption-text">「いままで無理に金利を低く抑えてきたが、物価や賃金が上がれば、長期金利も上がっていくと考えられる」と専門家。直近で注目したいのは、来年の春闘だ（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">固定金利＋変動金利の「ミックスローン」で、「変動」部分を繰り上げ返済できるか…</span></h3>
<p>有田さんのところへ住宅ローンの相談にくるケースは、共働き夫婦が多いという。その場合は、夫婦でそれぞれが借り入れる「ペアローン」という方法もある。たとえば、夫婦の一方が固定金利、もう一方は変動金利で借りるとか、総借入額を夫婦で分散して負担するとか。借り入れるのが１人でも「ミックスローン」を選択して、固定金利と変動金利の部分に分けておき、金利が上昇してきたときに、変動金利の部分を先に繰り上げ返済できるといい。そのときに、繰り上げ返済する部分を、自分に合った条件のローンに借り換えるのも選択肢となる。</p>
<p><span class="strongInContent">「固定金利プラスαくらいの金利水準でみてローンを組んだとして、たとえば10</span><span class="strongInContent">年後に教育費がすごく増えた場合や、50</span><span class="strongInContent">代くらいで給与が下がった場合に、返済ができるのか考えてみるといい。金利が上昇していった場合に、変動金利の部分を繰り上げ返済できるのかなど、考えておくといい」</span></p>
<p>有田さんはこう話す。夫婦でペアローンを組む場合に、たとえばフルタイムで働いていた妻が出産の産休や子育ての時短勤務、さらには正規職員からパートになることで収入がどうなるのか。勤め先の制度や対応でも違ってくるので、妻の収入がどうなるのか、事前によく調べて、考えておくことが大切という。</p>
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<h4><span class="strongInContent">■住宅ロ―ンの借入形態（単独ローン・ペアローン）</span></h4>
<figure id="attachment_345123" aria-describedby="caption-attachment-345123" style="width: 1349px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="4a8429c9"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/11/de78afb6612b604ac79a93a8264a6736.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-345123" class="wp-caption-text">20代・30代でのペアローン利用は約２割（三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」〈2023年〉／１万人〈20歳～69歳〉を対象とした独自アンケート調査より）</figcaption></figure>
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<h3><span class="strongInContent">「何となく」はNG</span><span class="strongInContent">…まずは、お互いの資産や将来へのプランを把握したい</span></h3>
<p>有田さんのところに相談にくる夫婦の中には、夫婦間で事前によく話し合ってこないケースもあるという。夫婦それぞれの年収がどれぐらいあるのか、お互いに知らない人もいるほか、夫は妻がずっと正規社員で働いてくれると思っていると、妻のほうはいずれパートになりたいと思っていたとか。</p>
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<p>有田さんは<span class="strongInContent">「夫婦が２人で話し合ってこないことがあります。収入とか貯蓄額とか、肝心なことを話し合っていない人が少なくありません」</span>と言う。</p>
<p>金利が上昇していくときに、変動金利で住宅ローンを組んでいると、繰り上げ返済が難しい余裕のない家計は破綻してしまうことがある。固定金利や変動金利は、人によってメリット、デメリットが違ってくる。金利上昇の局面でどう行動するのか、事前にシミュレーションしておくことが大切になる。</p>


浅井秀樹

長期金利が上昇している。日本銀行は超低金利政策を続けてきたが、今年秋に１％超を容認する姿勢に転じた。金利動向に大きく左右される住宅ローンの金利は、固定か変動か、ミックスか、どのような選択肢がいいのか。

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