中川 いづみ

<h3><span class="strongInContent">2020年から始まった「グランドソーラーミニマム」とは？</span></h3>
<p>英ノーザンブリア大学のバレンティーナ・ザーコバ教授率いる研究チームによると、太陽の黒点活動のデータから2020年から2053年の間に「グランドソーラーミニマム」が起こり、地球に“小さな氷河期”がやってくるという。</p>
<p>グランドソーラーミニマムとは、太陽の黒点が少なくなって、太陽の活動が低下すること。これによって地球が太陽から受ける放射エネルギーが少なくなって気温が下がるというのだ。本当なのか？</p>
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<p><span class="strongInContent">「黒点が増えると太陽活動が活発になることはわかっています。地球は太陽から１㎡あたり１秒間で1362W/m<sup>2</sup>の放射エネルギーを受け取っています。しかし、黒点の増減によって変化するのはせいぜい２～４W/m<sup>2</sup>。全体の0.2～0.3％に過ぎません。黒点によって気温が上下することはありません」</span></p>
<p>こう言うのは、岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域教授の野沢徹氏。</p>
<figure id="attachment_346773" aria-describedby="caption-attachment-346773" style="width: 4200px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="d41f459f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/5b7f96a9632531d9f4ca5e12ab724190.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-346773" class="wp-caption-text">’20年から「小さな氷河期」が始まっているという説もあるが…。地球温暖化はどうなる？　写真は、カナダのニューファンドランド・ラブラドール州の氷山と氷塊（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
<p>しかし、黒点がほとんどなかった1600～1700年ごろ、地球全体が低温になり、イギリスではテムズ川が完全に凍り、オランダでも運河がほとんど凍り付いたと言われる。日本でも、冷害によって1674～1675年にかけて延宝の飢饉、1688～1704年にかけて元禄の飢饉が起こった。これは、黒点がなくなったことが原因ではないのか。</p>
<p><span class="strongInContent">「そのころ地球は現在よりも火山活動が活発な時期でした。最新の研究では、その影響だと考えられています」</span></p>
<p>大規模な火山噴火が起こると、火山ガスに含まれる二酸化硫黄が成層圏内で化学反応を起こし、硫酸の滴になる。この粒子は直径0.1ミクロンと非常に軽く、落下しにくいため、数年にわたって滞留し、太陽光が地表に届きにくくなる。</p>
<p>20世紀最大の噴火といわれる’91年に起こったフィリピンのピナツボ火山の噴火では、地球の平均気温が0.5℃下がり、回復するのに４～５年かかったとか。</p>
<figure id="attachment_346775" aria-describedby="caption-attachment-346775" style="width: 2100px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f5e025cf"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/50526cdf4dc35d944b7007b2bcbcdd8c.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-346775" class="wp-caption-text">’11年２月、アラスカで、氷河期の１万1500年前に火葬された子供の遺体が発見された。次に氷河期が来るのは3000年後と考えられている</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">氷河期は「太陽」のせいではなく、「地球の公転軌道」が変わったため…</span></h3>
<p>しかし、地球誕生以来、氷河期は何度も訪れている。それは太陽活動が不活発になったせいではないのか。</p>
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<p><span class="strongInContent">「それは太陽のせいではなく、地球の公転軌道が変わったためです」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>野沢教授によると、地球が太陽の周りを回る公転軌道は楕円だが、一定ではなく、円に近くなったり、逆にひしゃげたりするのだと言う。地球の自転軸は公転面から23度ほど傾いているが、それも22～25度の間で揺れているのだとか。このような現象から、太陽に変化はなくても、地球が受け取る放射エネルギーの量が変わり、氷床の広がり方も変わるのだという。その周期は10万年！</p>
<p><span class="strongInContent">「公転軌道を計算すれば、次の氷河期がいつ来るかはわかっています。あと3000年くらいは、今の温かい気候が続くでしょう」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="では、「温暖化」は黒点が増えたから？"></div>
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<h3><span class="strongInContent">では、「温暖化」は黒点が増えたから？</span></h3>
<p>’23年６月には黒点の数が163個と、過去20年で最高になったという報告もある。温暖化は黒点が増えたせいだという声もあるが、</p>
<p><span class="strongInContent">「’60年ごろには黒点数が270になったこともありました。過去20年で最高といっても、どうということはない。過去100年規模で考えたら、中程度の数です」</span></p>
<p>温暖化を引き起こしているのは、ほとんど人為的なものによると野沢教授は言う。<span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">「気候を変化させる人為的な要因には、二酸化炭素、オゾン、エアロゾル、土地利用の変化が考えられます。中でも大きいのは二酸化炭素です。とにかく二酸化炭素を出さない、化石燃料に依存しない生活を心がけないと、子の世代、孫の世代、その先の世代につけを回すことになります」</span></p>
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<p>いずれ太陽活動が不活発になって気温が下がるのだから、温暖化対策などしなくてもいいと唱える学者もいるが、どうやらそういうことではないらしい。</p>
<p>「数十年後の温暖化と3000年後の寒冷化。いま、どちらに備えるべきか、考えるまでもないでしょう」と、一刀両断。</p>
<figure id="attachment_346776" aria-describedby="caption-attachment-346776" style="width: 4339px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="af07e259"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/5d8ba3f17847c1529180a92bb99a9b1c.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-346776" class="wp-caption-text">気象学者の間では、黒点が温暖化や気候変動に与える影響はほとんどないと考えられている</figcaption></figure>
<p><span class="strongInContent">「カーボンニュートラルを実現するためには、一人一人が努力しなくてはいけないのに、多くの人が、誰かがなんとかしてくれると思っている。それがいちばん問題です」</span></p>
<p>無駄に電気を使わない。水を出すにも電気が使われるから、水の無駄遣いも二酸化炭素を増やすことになる。車はできるだけ使わない。</p>
<p>野沢教授は、仕事での移動は公共交通機関と決めているとか。</p>
<p><span class="strongInContent">「岡山県内は、交通の便が悪いところもありますから、驚かれることもあります」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>けれど、個人の努力でどうにかなるものだろうか。</p>
<p><span class="strongInContent">「家庭から排出される二酸化炭素量は15％。けっこう大きいんです。これが減るだけでも大きいはずです。日本には１億人以上がいますから、一人一人が努力して、火力発電所を１基減らす。そのぐらいの気運が必要だと思います」</span></p>
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<p><span class="strongInContent">野沢徹　</span>岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域教授。独立行政法人国立環境研究所を経て、現職。長期気候変動・変化に関するさまざまな観測データや、複数の気候モデルなどを総合的に解析し、太陽活動や大規模火山噴火も含めたさまざまな要因により、地球の気候がどのように変化し得るのか、また、これら複数の気候変動要因が、過去の大規模な気候変動や近年の地球温暖化にどの程度影響を及ぼしているのかを研究している。</p>


中川いづみ

イギリスの研究チームによると、太陽の黒点活動のデータから2020年から「グランドソーラーミニマム」が起こり、地球に“小さな氷河期”がやってくるという。はたして地球温暖化はどうなるのか？　

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