「10月に米国東部のメーン州で31人が死傷した銃乱射事件をきっかけに、アメリカでは銃の規制強化が叫ばれている。でも、違法に流通する銃の数は、米国よりもタイのほうが多いとも言われているんだ」（タイ警察関係者）
実際、首都バンコクで今年10月、凄惨な事件が起きている。日本人観光客も多く集まるショッピングモールで銃が乱射され、７人の死傷者を出した。逮捕されたのが14歳の少年だったことも判明し、さらに衝撃が走っている。
<figure id="attachment_348458" aria-describedby="caption-attachment-348458" style="width: 1280px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="4b76edb5"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/c0ac972f23fda0d3edcd0137db614076.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-348458" class="wp-caption-text">ガンショップのショーウィンドウを眺める男性客たち。銃所持の許可証の申請を代行してくれるガンショップも存在するという</figcaption></figure>
「少年は実弾が発射できるよう改造されたモデルガンを、ＳＮＳを通じ手に入れていたようだ」（同前）
東南アジア最大の銃社会・タイが抱える闇を追った――。
バンコクの老舗ショッピングセンター「ザ・オールド・サイアム・プラザ」の周辺には、数十の銃砲店が軒を連ねる。
「やっぱりグロックがかっこいい。気に入ったものがあれば買いたいです」
ショーウィンドウ越しに銃を眺めていた中年のタイ人が答えた。グロックは件（くだん）の14歳の容疑者が所持していたモデルガンと同種で最も人気がある銃の一つだ。
「フルオートで連射できるよう改造されたグロックもＳＮＳで出回っている」（前出・警察関係者）
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タイの銃所持率は100人当たり15丁と東南アジアでトップ。総数は’17年時点で1000万丁以上とも言われ、簡単に取得できるライセンスさえあれば、誰でも銃を買うことができる。
中古の銃砲店を覗くと、スミス＆ウェッソン社のＭ＆Ｐ９が約23万2000円、同社の回転式拳銃Ｍ629が約38万円で売られていた。コルト社の銃には31万2000円の値がついていた。ライフル銃も取り扱っており、ＢＡＴＴＬＥ ＡＲＭＳの「ＸＩＰＨＯＳ９」は約10万円と手ごろな値段。それだけ銃は身近な存在だ。自分の銃を持ち込める射撃場は、休日になればタイ人で賑わっている。
「郊外の軍施設に行けば、最も安いレンタル銃に弾10発が付いて160バーツ（約640円程度）から遊べます」（地元のガンマニア）
バンコク郊外の別のガンショップを訪ねると、経営者がこう明かした。
「うちには警察官も銃を買いに来ますよ。タイでは警官が所持する銃が決められておらず、好きな銃を買ってＯＫなんです。買うカネがない警官は、国から支給されるボロボロの38口径リボルバーを使うことになる」
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最新の銃を持つのが警察官のステータスだと、経営者が続ける。
「銃を持つには許可証が必要で、許可証一枚につき１丁しか所持できません。ところが銃砲店の中には一枚の許可証で何丁も警察官に売っている店がある。使わない銃を転売し、儲けている警官がいるとも聞きます。だからタイでは、許可証の枚数と実際に販売された銃の数が合わない。違法銃に加え、14歳の少年が手に入れたようなＳＮＳで購入できる密造銃を合わせたら、闇で存在する銃はどれほどなのか、想像もつきません……」
乱射事件を受け、タイでは銃のオンライン販売の規制が検討されているが、実施時期は未定。微笑みの国が抱える病巣は、とても笑えないほどに深刻だ。
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<figure id="attachment_348460" aria-describedby="caption-attachment-348460" style="width: 1280px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="d7d07d23"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/1a70a1c8309d2285226a0af53c52d294.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-348460" class="wp-caption-text">ライフルなどの品揃えも豊富。銃を購入する条件は緩いが、携帯許可証を取得しなければ銃を持ち歩けない</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_348462" aria-describedby="caption-attachment-348462" style="width: 1280px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1106a4f1"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/858cc20bf724055f81cde1380c0133e1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-348462" class="wp-caption-text">市街地にある銃砲店の内部では、拳銃がまるでアクセサリーのように、ショーケースに陳列されていた</figcaption></figure>
<figure id="attachment_348463" aria-describedby="caption-attachment-348463" style="width: 1280px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="94c9a0cd"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/0fb777da110ef7e8f2f12d1e68b9f783.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-348463" class="wp-caption-text">タイ国内の射撃場には、違法銃を持ち込んでも見逃してくれる施設が複数あるという</figcaption></figure>
<figure id="attachment_348464" aria-describedby="caption-attachment-348464" style="width: 1280px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="0ec22b23"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/4f99fd6422811d224de90a1a975fd32b.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-348464" class="wp-caption-text">若い女性がライフル射撃を行う。射撃場では老若男女様々な客の姿がみられた</figcaption></figure>
『FRIDAY』2023年12月22日号より
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加古良是（ジャーナリスト）

10月に発生した銃乱射事件の影響で、アメリカでは銃の規制強化が叫ばれるが、違法に流通する銃の数はタイの方が多いと言われている。タイの銃所持率は100人当たり15丁と東南アジアでトップ。その闇を追う……

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