立命館大学卒業後、金融機関を経て、2010年株式会社ビズリーチの新規事業立ち上げに参画。法人営業や人材エージェントの新規開拓営業に携わる。その後ライターとして独立。経営者などのインタビューを数多く手掛けている。カタル代表（https://cataru.co.jp/）

井澤 梓

<figure id="attachment_349366" aria-describedby="caption-attachment-349366" style="width: 3024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="05c275a2"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/c5d85108cd82aa0f784017840a901088-rotated.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349366" class="wp-caption-text">名物「99セントピザ」は名ばかり店名となり、値上がりしていた</figcaption></figure>
<p>未曾有の円安。私たちの円は、米ドルを筆頭にあらゆる通貨に押されまくり、今やコールド負けしそうな状況である。2011年10月に史上最安値である75円台をつけたドル／円レートが、ここ最近は140〜150円で推移している。日本の生活費は圧迫されるばかりだが、アメリカはどうだろうか。</p>
<p>ニューヨークは世界で最も物費が高い都市の一つだ。ECAインターナショナルの最新調査によると、外国人駐在員にとって最も生活費が高い都市の一つだという（並ぶのはスイスとかシンガポールだって。たしかに高そう）。</p>
<p>そんなニューヨークにうっかり降り立ってしまった筆者が、悲喜こもごもの現地物価レポートをお届けする<span class="strongInContent"><em>（※以下、金額はNY滞在時に使用したクレジットカードの為替レート『１ドル／150円』をもとに算出）</em></span>。</p>
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<h2>「ケールのサラダ＆ビール一杯」のランチが8000円！</h2>
<p>レストランの高さについて数々の噂がとどろいているが、実際にメニュー表を目にするとものすごく萎える。ランチのサラダやパスタが20〜30ドルする。欧米にはシェア文化がないため、もくもくと我が高級皿と対峙することになるのも悲しい。こんなに払うなら、せめて他の食べ物も一口欲しい。ケールのサラダのみと向き合ったランチ。ビール１杯とチップで合計55ドルだ。チップは金額の20％程度が相場。掛け算を習った私は、元の価格が高ければ高いほど、チップが高くなることを知っている。2000円程度のチップを支払った。確かに笑顔でビールを注いでくれたけれど。</p>
<p>チップを合わせて約8000円――日本なら愉快な飲み会に２回行ける金額が、１時間のランチタイムで消化されてしまった。健康そうなケールを大量に食べたが、金額を見て具合が悪くなりそうになった。</p>
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<p>レストランスタッフの賃金もすごい。ニューヨーク市の雇用労働者の最低賃金は15ドル（2250円）。この時点で日本の倍じゃん…と悲しくなるが、実際は15ドルでは人が集まらず、時給30〜40ドルで募集していることがザラらしい。さらには、時給に加えてチップが支払われる。下手したら日本の日当くらいの金額を、ニューヨーカーは１時間で稼いでいるのだ。そりゃ私だって笑顔でビールを注ぐわ。</p>
<figure id="attachment_349351" aria-describedby="caption-attachment-349351" style="width: 3024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="524ae63e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/19a3f9575f90f245b6db0ca2857334c2.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349351" class="wp-caption-text">パンとかはつかなかった</figcaption></figure>
<p>ドラッグストアに売られていたお犬さまのご飯は、日本の庶民のご飯より高い。14.99ドル（2249円）だ。生類憐れみの令が再び出たのだろうか。時代は巻き戻っているのに、日本はさっぱり追いつけない。</p>
<figure id="attachment_349352" aria-describedby="caption-attachment-349352" style="width: 4032px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="dbb5f77f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/d2e0fcc534a41d40e8fa0fe4f4444d1b.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349352" class="wp-caption-text">ものすごくご飯を食べそうな大型犬が街にたくさんいた</figcaption></figure>
<p>来世はニューヨークで犬になるのも悪くないかもしれない。ブラッシュアップライフ的なことが私の身に降り掛かったら、人間よりもニューヨークの犬を優先したい。</p>
<p>食品店では、見覚えのある納豆が売られていた。３パックで2.79ドル（419円）。日本を基準に考えると高く感じるが、ニューヨークのその他食材と比較するとそこまで高くはない部類である。</p>
<figure id="attachment_349353" aria-describedby="caption-attachment-349353" style="width: 4032px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="4ed19284"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/0d2c3fe654c0d14009546927e3ce1631.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349353" class="wp-caption-text">日本食は、かなり市民権を得ている</figcaption></figure>
<p>“物価比較の覇王”こと卵パックは、10個で5.79ドル（869円）。寿司は16.75ドル（2513円）。日本なら寿司屋で大将が握った寿司ランチが食べられる金額だが、こっちは冷えたパック寿司だ。寿司は世界的にインフレしている。</p>
<figure id="attachment_349354" aria-describedby="caption-attachment-349354" style="width: 1479px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6225b6f0"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/ec0fd0b4085a0cb1297d711cebeaf6c1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349354" class="wp-caption-text">アメリカで戦えるのは、寿司と大谷翔平だけ</figcaption></figure>
<div data-friday-nextpage-lead="NYの片隅で見つけた“庶民の味方”"></div>
<p>さすがは世界一のニューヨーク。見渡すもの全てが高い。</p>
<p>屈してはならぬと、どでかいスーパーを徘徊し、安く食を凌げる方法がないかを模索することにした。</p>
<p>庶民の味方のパスタを発見した。なんと99セント！ 「伝説の剣」でも見つけたかのごとく嬉しい。毎日パスタを茹で続ければ生きていける気がしてきた。６個入りのトマトが１ドル。トマトパスタの完成だ。っていうか他に選択肢はない。頑張れば一日の食費を千円以下に抑えられることに安堵した。</p>
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<figure id="attachment_349355" aria-describedby="caption-attachment-349355" style="width: 4032px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a7bad9d8"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/298d990cac0fb06cc92a1034c680c223.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349355" class="wp-caption-text">パスタを考案したイタリア人に感謝したい</figcaption></figure>
<p>さらに庶民の味方を発見！　バナナは19セント。バナナパスタはしんどいが、朝食も確保できた。食を確保したところで、衣＆住を充実させるべく、さらに散策へ。</p>
<figure id="attachment_349356" aria-describedby="caption-attachment-349356" style="width: 4032px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="dae589f4"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/39a5f85096e24b1ec4f81fbb77d6623f.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349356" class="wp-caption-text">今回の旅で見た最も安い値札、19セント</figcaption></figure>
<p>ハーレム地区にある「ファッションセンターしまむら」のようなお店では、なんと１ドルから服が揃った。ニューヨークのしまむらでおしゃれコーデを決め込んで、日々パスタを食べよう。</p>
<figure id="attachment_349357" aria-describedby="caption-attachment-349357" style="width: 4032px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="e1bc764e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/f6774cdb52171b3237a37555b406ebd8.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349357" class="wp-caption-text">すごく頑張ればすごくおしゃれにもできそう</figcaption></figure>
<figure id="attachment_349358" aria-describedby="caption-attachment-349358" style="width: 4032px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="fe898e4b"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/dd16fc5b61b47ace13a35136bee1a78d.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349358" class="wp-caption-text">穿くには勇気がいるが、代えがたい安さ</figcaption></figure>
<p>安いものを探していたら、100均にありそうな日本語表記の商品が1.99ドル（299円）で並んでいた。日本なら100円で買えるのに…とは思うが、これらの商品もアメリカでは圧倒的に安いシロモノである。100均にありそうな文房具は、海外仕様のパッケージに包まれた途端に、値段がガツンと上がった。日本の技術と品質はすごいのに安い。ありがた悲しい。ニューヨークの地で、人生初の感情に出会えた。ありがとう、日本。</p>
<figure id="attachment_349359" aria-describedby="caption-attachment-349359" style="width: 4032px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f6c6d4c1"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/0cbf54993ce28ae95895f049081c8fc4.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349359" class="wp-caption-text">メイドインジャパンは今や、安さの象徴？</figcaption></figure>
<figure id="attachment_349360" aria-describedby="caption-attachment-349360" style="width: 4032px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="85b24c1b"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/b9d4fbc2d26c963f86a9ebf3524dfe2e.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349360" class="wp-caption-text">君たちは、100均にいてもよくない…？</figcaption></figure>
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<p>日用品の価格はどうだろうか。小さなティッシュ一箱が2.79ドルだ。日本なら５個入りパックが買えてしまう。おちおち、花粉症にもなっていられない。今年は暖冬につき、2024年の花粉は早めに飛散するという。早急に帰国し、日本で鼻水をたらそうと決めた。</p>
<p>食器洗いのスポンジは、３個パックで４〜６ドル。訪日外国人が日本の100均やディスカウントショップで狂喜乱舞する理由がわかる。</p>
<figure id="attachment_349362" aria-describedby="caption-attachment-349362" style="width: 4032px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="d7e1dca8"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/a86fbac8e219bfaf60c76784413c11c2.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349362" class="wp-caption-text">日本円換算したら食器が洗えなくなりそう</figcaption></figure>
<div data-friday-nextpage-lead="「円換算」、してはいけない"></div>
<p>財布が悲鳴を上げる顛末となりつつあるが、ニューヨーク育ちの銀行員と話す機会があったので<span class="strongInContent">「お前の財布は泣いてないのかい？」</span>と聞いてみた。</p>
<p><span class="strongInContent">「たしかに日本から来たら、円高の影響で高く感じるよね。ただ、こっちの水準で給料を貰っていたら、これが普通。そこまで高いとは感じていない」</span></p>
<p>待て待て待て、高く感じないの？　普通なの？</p>
<p>実際に物価が高いことよりも、この発言のほうがダメージがでかいかもしれん。この物価に悶え苦しんでいるのは私たちだけ……。ニューヨーカーにとっては、これが日常なのです。おそらくですが<span class="strongInContent">「地方から東京に来たら家賃も物価もやっぱちょっと高いよね〜」</span>くらいの感覚なのでしょう。</p>
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<p>ニューヨーク在住の日本人に話を聞いてみると、<span class="strongInContent">「日本円換算をしたら辛くなるので考えないようにしてる。日本にいた時より狭い部屋で家賃は70万円くらい」</span>とのこと。日本の平均月給の倍以上の金額を払っても豪邸には住めない。衣食住のうち、住だけはどうにもならなそうである。</p>
<p>驚愕したのは、街のパーキング。脅威の１時間21.21ドル（3182円）。１日の最大料金ではありませんよ。天下の港区もここではお子様扱い。加えてこのパーキング、最大料金のようなシステムはないそうで、さらなる危険をはらみます。</p>
<figure id="attachment_349364" aria-describedby="caption-attachment-349364" style="width: 4032px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1464565a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/b8713265faac54691f1899868624b685.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349364" class="wp-caption-text">理解できない高さ！</figcaption></figure>
<p>車がなくても、マンハッタンでは問題なく移動できる。このパーキングを使うのは超絶セレブだけなんだろうけど、本当に高く感じないのだろうか。ちなみに月極駐車場は余裕で10万円オーバーらしい。家やん。</p>
<p>どうでもいいけど、0.21ドルで刻むのはなんなんだ。こっちはキャッシュレス社会だから、１セントがなくてコンビニに走るようなシーンはきっとないのだけれど、日本のパーキングが１時間221円だったら私は非常に戸惑う。クレカやPayPayが使えても戸惑う。21.21ドルは戸惑いどころではない。</p>
<p>タクシー不足が加速する日本でも、導入するかしないかで話題になっている「ライドシェア」サービス、Uberがニューヨークでは定着している。</p>
<p>とにかく歩く街であるニューヨーク。2018年に訪れた際は、疲労を軽減するため、あらゆる移動にUberを活用した。しかし現在、Uberの移動はドルベースで３倍ほどになっているという。つまり円換算すると4.5倍ほどだ。これではちょっとした移動に使うことはできない。地下鉄を駆使し、ひたすら歩くことにした。しかし、地下鉄移動も高い。乗るたびに2.9ドル（435円）かかる。どのみち高い。</p>
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<p>なんとか生活費を安くする技をこの地で見出そうとあがいたが、無理だと痛感し、打ちひしがれながら帰国した。</p>
<p>しかも、悔しいことに、私がニューヨークに滞在していた時期が円安のピークで、帰国後にレートは、１ドル141円代まで円が高騰した。なんでやねん。タイミングが悪すぎる。2024年、為替はどう動くのか。円高になるという予測もあるが、ここまで見てわかるように、そもそも物価が圧倒的に違いすぎる。ニューヨークが高く感じるのは、為替の影響のみではない。どのみち高いのだ。</p>
<p>帰国後は、あらゆるものが安く感じる。千円ランチにすら感謝できる体になった。この副反応こそが、ニューヨーク旅の最大の効能だったのかもしれない。日本の物価高を嘆く人は、一旦ニューヨークに行ってみるといいかもしれない。日本の暮らしが充実するライフハックだ。全く役に立たないライフハックを一つ生み出して、私の旅が終わった。</p>


井澤梓

超円高がおさまりそうもない年末年始。世界で最も物価の高い街のひとつ、ニューヨークを訪れる日本人はどう生きるか。ケールからシャツ、文房具、パーキング、ライドシェア、ドッグフードまで最新物価を徹底調査する

99￠パスタは神！食費より萎える1時間3000円超のパーキング…愛と絶望のＮＹ最新物価レポート

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