東京都生まれ。フリーライターとして講談社、小学館、PHP研究所などの雑誌や書籍を手がける。携わった書籍は『近藤典子の片づく』寸法図鑑』（講談社）、『片付けが生んだ奇跡』（小学館）、『車いすのダンサー』（PHP研究所）など。

中川 いづみ

<h3>40代、50代の「働き盛り」で発症…ヤングケアラーの要因にも</h3>
認知症といえば高齢者の病気と思いがち。しかし、65歳未満で発症する若年性認知症の人も毎年４万人近くいるという。
「数としては、高齢者の100分の１ですが、働き盛りの人が発症するわけですから、たいへんさは高齢者が認知症になったときとは比べものにならないほど。 
40代、50代であれば子どもは高校生だったり、大学生だったりしますが、経済的な理由で学校に通えなくなるケースもありますし、最近話題になっているヤングケアラーになることもあります」
こう言うのは、メモリークリニックお茶の水院長の朝田隆医師。朝田医師のクリニックには全国から100人ほどの若年性認知症患者が通ってきているという。若年性認知症を発症するのは男女半々。
<figure id="attachment_349376" aria-describedby="caption-attachment-349376" style="width: 640px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="0ec8a266"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/8d6b62205916aedde43421e7891e9195.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349376" class="wp-caption-text">厚生労働省の調査によると、公立中学２年生の5.7％（約17人に１人）、公立の全日制高校２年生の4.1％（約24人に１人）が「世話をしている家族がいる」と回答したという</figcaption></figure>
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認知症の治療方法は確立されていないという。若くして発症しても回復する見込みはないのだろうか。
「認知症とは、神経変性疾患、脳血管疾患その他の疾患により日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状態と定義されています。 
アルツハイマー型が有名ですが、認知症の原因は70以上あると考えられています。その中には治療可能なものもあるんです」 
<figure id="attachment_349377" aria-describedby="caption-attachment-349377" style="width: 5671px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="345e52c0"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/a5e721710e1d3f2d4b9c53030cecbe2f.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349377" class="wp-caption-text">’23年８月にアルツハイマー型認知症の治療薬として承認され、年298万円（体重50㎏の人の場合）の薬価が決まった「レカネマブ」。症状の進行を緩やかにすると、世界で注目されているが、これですべての認知症の問題が解決するわけではない（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
<h3>「治療可能」な認知症もある</h3>
朝田医師によると、正常圧水頭症、甲状腺機能低下症、てんかん、そしてビタミン不足などの病気でも認知症と同じ症状が表れるのだとか。
「病気が原因になっているのかどうかは検査すればわかります」
テストをしたり、MRI検査や血液検査など、さまざまな検査を行うことで病気が判明したら、あとは手術をするなり、薬を飲むなりすれば、認知症の症状は改善する。認知症の症状が出たからといって、「もうダメだ」と絶望することはないのだ。
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「最近ではADHDも認知症の症状を表すことがわかってきました」
ADHDとは「注意欠陥多動性障害」といい、注意力が散漫で忘れ物やなくしものが多いという特徴がある。
「それまでは努力でなんとか過ごしてきたのが、40代、50代になると物忘れをしたり、不注意が目立つようになる。それで認知症ではと思って来院する方が増えています」
ADHDであれば、薬で治療することができるのだとか。
<div data-friday-nextpage-lead="あなたは大丈夫？　チェックリスト"></div>
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治療可能な認知症でなくても、早く受診することで進行を遅らせることができる。
「以下のチェックリストで３項目以上当てはまるものがあれば、専門の医療機関で診断を受けることをおすすめします」
<ul>
<li>□今何をしようとしていたか、思い出せない</li>
<li>□同じことを繰り返し言ったり、尋ねたりする</li>
<li>□人と会う約束を忘れたことがある</li>
<li>□探し物が多い</li>
<li>□やろうとしても、「まあいいか」とやめてしまう</li>
<li>□長年の趣味が楽しめなくなった</li>
<li>□外出が減った</li>
<li>□段取りが下手になった</li>
<li>□会計で小銭を使うのがめんどう</li>
<li>□今日の日付が言えない</li>
</ul>
日本老年精神医学会や日本認知症学会のHPには全国の専門医が紹介されているので、「おかしい」と思ったり、言われたら受診するといいだろう。
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<h3>65歳過ぎると、認知症の人は２倍３倍に…</h3>
とはいえ、自分はまだまだ大丈夫と思っているが、
「定年が延長され、65歳、70歳でも現役として働く時代がくると、認知症ではと思える人が職場にいるようになるでしょう」
厚生省の調査によると、65～69歳で発症する割合は2.9％だが、70～74歳では4.11％になり、75～79歳では13.6％。65～69歳では100人に３人が認知症ということになるから、けっこう身近な問題だ。本人が自覚しないうちは、ミスをカバーしたり、同僚の負担が増えるかもしれない。
「若年性認知症が問題なのは、現役世代が認知症になるからです。これから高齢化社会になると現役世代に認知症が増えてくる。たいへんな問題になると思います」
高血圧や糖尿病などの生活習慣病があると認知症になりやすいのだとか。これらが原因の場合は、早期の発見で認知症からUターンすることもできると、朝田医師は言う。若年性認知症にしても、高齢になってからの認知症にしても、「おかしいな」と思ったら受診したい。
<figure id="attachment_349379" aria-describedby="caption-attachment-349379" style="width: 3140px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="9f1e27ca"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/12/c81833a3f1340df3fc64c337356790df.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-349379" class="wp-caption-text">「認知症にも治るものがあります。おかしいと思ったら専門医を受診してください」と朝田医師</figcaption></figure>
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朝田隆　アルツハイマー病を中心に認知症疾患の基礎と臨床に携わり、脳機能画像診断の第一人者。音楽療法、絵画療法による脳機能改善効果についての調査研究のほか、運動や食事、30分以内の昼寝等生活改善による認知症予防効果を世界で初めて明らかにし注目を集める。若年性及び老年性認知症患者の有病率調査等大規模実態調査に尽力し、認知症対策推進にも貢献する。認知症患者の家族や介護、福祉関係で働く人々に向けて講演も積極的に行っている。著書に『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』（アスコム）、『認知症ってそもそも何ですか？』（Gakken）など。

中川いづみ

65歳未満で発症する「若年性認知症」の人は毎年４万人近くいるという。治療方法は確立されていないというが、発症しても回復する見込みはないのだろうか。全国から100人ほどの患者が通うクリニックの医師に聞く

「子どもが高校生なのに」定年65歳時代…現役世代の「若年性認知症」は早期治療で改善可能な場合も

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