「本物の売れっ子とは何か?」議論が無意味に? 売掛廃止でホストたちの「頂上決戦」が始まる | FRIDAYデジタル
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「本物の売れっ子とは何か?」議論が無意味に? 売掛廃止でホストたちの「頂上決戦」が始まる

現役慶應大生ライターが描くぴえんなリアル 令和5年、歌舞伎町はいま……第79回

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来年4月に廃止を控え、「今のうち」とばかりに売掛を勧めるホストも……
来年4月に廃止を控え、「今のうち」とばかりに売掛を勧めるホストも……

ホストクラブの売掛金問題について、12月5日、新宿区長と歌舞伎町のホストクラブ13グループの各代表による話し合いが行われた。

その中で、売掛は段階的に割合を減らし、最終的に「来年4月から廃止にする」方針が明らかになった。今回参加した13グループが運営するホストクラブは、歌舞伎町にある約300店舗のうち、なんと200店舗以上にのぼる。

「ホストクラブって、マジでグループによって色があるんですよ。営業のかけ方とか、顔の系統とか。キャバクラだと六本木とか新宿とか、なんかエリアごとにイメージが変わるじゃないですか。それがホスクラだとグループって感じですね」

そう語るヒナタ(仮名・23)は自分を「Xグループ生まれZ育ち」と名乗る。

「Xグループは姫もホストも初心者っていうか。ほぼ未経験の男の子しか採用しないんですよ。私は大学の帰りに友達と行って、普通の男の子みたいなホストを指名していた。でも、慣れてくると他の店も見てみたくなるじゃないですか。それでZグループに行ったんですよ」

ヒナタはそこで、″グループの色″の違いを実感した。

「Zグループは整形顔が多くて、けっこうオラオラというか。枕営業とか色恋営業も激しいってイメージが昔からついていた。

私もそこで『育った』んですけど、指名したホストは最初に私と会った時、店の先輩に裏で『ああいうタイプは枕して色恋かけたらハマるから』って言われてたらしいです(笑)。

実際、言葉通りに初回枕からの色恋で沼って、アベ30(平均30万円)だったのが100、200って上がっていきました……」

ホストクラブは大手を「グループ店」、それ以外を「個人店」という。

「私は中堅グループ店に通ってたんですけど、担当が超大手に移籍したんですよ。今まで私が通っていた店には月に100万円使う女の子なんて少なかったから、お店に行けばキャストがほぼ全員ついてチヤホヤしてくれた。

なのに、大手では100万程度じゃ顔すら覚えてもらえない。頑張って大金を使っても、それ以上にバンバン使う女の子がいるから私も担当も輝けなくて……。今は別の個人店のホストを指名してます」(ハルカ・仮名・22)

大手は大手、個人店は個人店でそれぞれメリット&デメリットがあり、ホストも客も店舗を選んでいる。

大手に所属するホストは、自店舗での売り上げナンバーだけでなく、グループ全体のホストたちと競う「グループナンバー」に入るのを最終目標にしている。彼らにとっては、「グループランカーである」というのが最高の栄誉なのだ。

「売れてるホストほど、グループナンバーにこだわるんですよ。自店舗のホストもライバルだけど、それ以上にグループのトップに立ちたい、でもそこのライバルも歌舞伎町を盛り上げる仲間であり……。少年漫画みたいですよね」(同前)

グループのランカーは売り上げで決まるものの、細かい規定は各店舗で違う。

回収する気のない売掛で目の前の売り上げを押し上げるホストと、売掛に頼りすぎず、無理をしないスタイルで手元に現金を残す主義のホストが上位に混在していることさえある。

これが火種となり、ホストたちの中でも「本物の売れっ子とは何か」という議論が巻き起こっていた。

売掛が一律で廃止されれば、もはやこうした議論は意味をなさず、皆、同じ条件で売り上げを競い合うことになる。真の意味での「歌舞伎町のナンバーワンホスト」が決まる日が近づいている。

『FRIDAY』2023年12月29日号より

  • 取材・文佐々木チワワ

    ’00年、東京生まれ。小学校から高校まで都内の一貫校に通った後、慶應義塾大に進学。15歳から歌舞伎町に通っており、幅広い人脈を持つ。大学では歌舞伎町を含む繁華街の社会学を研究している。『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認 』(扶桑社新書)が好評発売中

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