サッカー元日本代表・岡崎慎司「燃え尽きた先に目指すものがある」肉迫インタビュー | FRIDAYデジタル

サッカー元日本代表・岡崎慎司「燃え尽きた先に目指すものがある」肉迫インタビュー

日本屈指のストライカーは出場機会が激減し、ベルギーで苦悩の日々を送っていた

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ベルギーの地で、37歳の大ベテランFW岡崎慎司(シント=トロイデンVV)が苦しいシーズンを強いられている。

今季ここまでリーグ戦19試合中5試合に途中出場しただけ(’23年12月26日時点)。カップ戦では2試合に出場し、1ゴールを奪っているものの、これほど出番が少ないシーズンは’11年2月に海外挑戦して以来、初めてだ。

「シーズンが開幕した去年の8月頃は『ストライカーとしてバンバン点を取る』というイメージを持っていました。だけど、思うように試合に絡めず、膝のケガも重なって、10月ごろまでは弱気になっていました」

’86年、兵庫県生まれ。’11年に海外挑戦して以来、ベルギーのほかにドイツ、イングランド、スペインと計7チームを渡り歩いた
’86年、兵庫県生まれ。’11年に海外挑戦して以来、ベルギーのほかにドイツ、イングランド、スペインと計7チームを渡り歩いた

そんな時、岡崎に向き合ったのが、シント=トロイデンVVで指揮を執るトルステン・フィンク監督(56)だった。日本でヴィッセル神戸を’19年度天皇杯王者へと導いた名将は、現役時代の晩年をドイツの名門であるバイエルン・ミュンヘンのセカンドチームで過ごした。そこで、のちにドイツ代表主将として活躍したフィリップ・ラーム(40)ら若手と共闘した。

「現役ラストの2年間、フィンクはラームら有望な若手と一緒にプレーした。出場機会は限られていたけど、自分の経験を彼らに伝えたようです。引退して指導者になって間もない頃、スイスのバーゼルでフィンクが指導したグラニト・ジャカ(現レバークーゼン・31)が大きく飛躍した話も聞かされた。ベテランになった今の自分の立ち位置と、当時の彼がすごく重なったんです。『今の経験を生かして欧州で監督をやりたいな』という気持ちも芽生えてきました。


間違いなく、自分は引退に向かっている。ただ、その延長線上に『監督』という目標があれば、辛い状況下にあってもモチベーションを維持できますよね。もちろんライセンスの問題もあるし、欧州でUEFAライセンスの講習を受けるなら言葉の問題もある。それでも、引退後の人生を視野に入れて、『今、辛くても選手としてやり切ろう』と割り切れたのはすごく大きいですね。試合に絡めない悔しさも含めて、全てをこの先に活かしたいと思っています」

魂は引き継がれるもの

チームメイトの鈴木彩艶(ざいおん)(21)や伊藤涼太郎(25)らと日々、同じピッチで研鑽している岡崎にしてみれば、彼らを含めた現在の日本代表の動向も気になるはずだ。

’22年カタールW杯は盟友・香川真司(C大阪・34)とともに最後まで代表入りを目指しながら落選。今は日の丸から遠ざかっている状態だが、現在の代表には遠藤航(リバプール・30)ら’18年ロシアW杯で共闘した仲間も少なくない。

「FIFAランキングを見ても分かる通り、今の代表は強いと思いますね。個々の平均値が上がっているし、W杯上位を目指せるメンツがいるなとも感じます。
両ワイドの伊東純也(スタッド・ランス・30)と三笘(薫=ブライトン・26)を活かした速いサッカーだったら、自分もフィットできる自信があります」

岡崎は「左右の槍」と言われる2人からクロスを受けて、ゴールを決めるイメージを思い浮かべていた。確かに現代表の1トップに全盛期の岡崎がいれば、代表戦通算50ゴールという数字をもっと引き上げられた可能性もあっただろう。

ゴールへ向かう貪欲さを引き継ぐ、FWの後継者候補は誰なのか……。岡崎に問うと、こんな答えが返ってきた。

「ロシアW杯後のインタビューで浅野(拓磨=ボーフム・29)が『岡崎さんの貪欲さはホントに凄かった』と言っているのを見たんですよね。あの時、自分はケガでまともに練習ができなくて、大会直前に予備登録の浅野が入るかもしれないという状況になった。それでも俺は絶対にW杯に出たかったから、気力の全てを振り絞ってアピールを続けた。最終的に自分が代表に残って、浅野が外れたわけですけど、俺の必死な姿を見て浅野が何かを感じたんだなと思いました。『魂が引き継がれるってこういうことなのか』と感じて、すごくしっくり来たんです。

浅野のことを特別にかわいがったわけではないし、『俺の意志を継いでくれ』と言ったこともないけど、魂というのは自然に引き継がれるものなんだなと。不思議な感覚を覚えました」

偉大な先人である岡崎の闘争心を受け継いだ浅野は、カタールW杯のドイツ戦で決勝弾を叩き込み、今は森保ジャパンのFWの主軸を担っている。上田綺世(フェイエノールト・25)や前田大然(セルティック・26)らも伸びているだけに、誰が’26年北中米W杯のエースになっているか分からない。だが、岡崎の50ゴールを追い越すくらいの頭抜けた点取り屋が必要なのは事実だ。

「チームが必要としている時に大事なゴールを決めて、勝利に貢献するのがFWの一番の役割。自分も『チームに貢献した』と思える回数を増やす必要がある。得点を求められる状況での起用機会が少なくて厳しいですけど、プレーヤーとして、ストライカーとして勝負し続ける一年にしたい。最後まで頑張りますよ」

完全燃焼する日まで、岡崎は持ち前の貪欲さを武器に走り続けていく。

『FRIDAY』2024年1月19日号より

  • 取材・文元川悦子

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