辻 啓子

<h3><span class="strongInContent">「シャンシャンは大人の貫禄が出てきました」</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p><span class="strongInContent">「生まれてすぐから成長を見届けてきたので、自分の子どもを留学に出すような気持ちでした」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>昨年５月のインタビューで、こう語っていたのはカメラマンの高氏貴博さんだ。高氏さんは、13年前からほぼ毎日上野動物園でパンダの写真を撮り続けているパンダウォッチャー。ブログ『毎日パンダ』で魅力あふれる写真を発信し、多くのパンダファンの目を楽しませてきた。</p>
<p>冒頭の言葉にある「自分の子ども」とは、昨年２月に中国に返還されたシャンシャンだ。高氏さんにとってシャンシャンの中国返還は、「我が娘を上野の実家から中国に留学させている」気持ち。インタビューでは、居場所が決まったら会いに行きたいとも語っていた。</p>
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<p>昨年11月８日――。ついにその日が訪れた。日中交流を促進する「中国駐東京観光代表処」主催の見学ツアーに参加し、中国ジャイアントパンダ保護研究センター「雅安碧峰峡基地」で暮らすシャンシャンと再会を果たしたのだ。</p>
<p>再会から２ヵ月経った今も興奮冷めやらぬ高氏さんに、詳しく話を聞いた。</p>
<figure id="attachment_356405" aria-describedby="caption-attachment-356405" style="width: 1500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="be993fb3"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/01/65e71a3ad87050bb8729211461ddcfbb.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-356405" class="wp-caption-text">中国での再会初日。ついにシャンシャン登場！（PHOTO：ブログ「毎日パンダ」より）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">「中国ではゆったりのんびり過ごせているように見えました」</span></h3>
<p>シャンシャンが一般に公開されたのは、中国返還から８ヵ月後の昨年10月。その間、高氏さんは、心配で仕方がなかったと当時を振り返る。</p>
<p><span class="strongInContent">「なかなか公開されなかったので、何かあったのではないか、元気で暮らせているのかと非常に気がかりでした。それだけに公開されたときは、ようやく新しい環境に慣れたのだとホッとしました」</span></p>
<p>そんななかで実現した再会のチャンスに気持ちははやったが、シャンシャンが暮らす基地までの道のりは思った以上に遠かった。</p>
<p>四川省西部の雅安市にある雅安碧峰峡パンダ基地までは、雅安最寄りの成都の空港から、列車とバスを乗り継ぎ４時間ほどかかったという。</p>
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<p>森の中にある基地は、東京ドーム15個分という広さ。60頭のパンダが自然に近い環境で飼育されており、観光客は、朝、昼、夕の餌の時間だけ、餌が用意される専用エリアで、ガラス越しに会うことができる。</p>
<p><span class="strongInContent">「初日は施設に到着してから餌交換まで時間が少しあったので、ツアー参加者と食事をして、そろそろという時間になって移動しました。“来るぞ、来るぞ”とシャッターを構えたのですが、シャンシャンがどの方向から来るのかがわからない。たぶんこっちだなと思って構えていたら、反対側から来ちゃってびっくり。感動の再会というよりは、あたふたした再会になりました（笑）」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="「任せていいと安心できました」"></div>
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<p>人里離れた場所ということもあり、観光客の姿はまばら。日本からのツアー参加者も16名と少人数だったことから高氏さんはカメラを向け続けた。シャンシャンもそれに応えるように、ゆっくりと20～30分かけて餌を食べていたという。</p>
<p><span class="strongInContent">「最初はリンゴとお団子、続いて、タケノコをむしゃむしゃと。シャンシャンにとって大好物ばかりだったので、美味しそうに食べていました。本来、主食であるはずの竹は食べずに、タケノコをかなり長く食べていましたね。日本だとタケノコは春の一時期しか食べられませんが、中国では11月でも食べ放題。それはもう幸せそうで（笑）。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">なんかもう悠々としていて、のびのびとしている印象を受けました。自然豊富な場所で、観光客も断然少ない。上野動物園で大人数の視線を受けていたシャンシャンにとっては、『なんか、人がいるな～』という程度なのでは（笑）。ゆったりのんびり過ごせているように見えました」</span></p>
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<p>久しぶりに見た“娘”は、「落ち着きのある一人前の女性」に見えて微笑ましかったとも。</p>
<p><span class="strongInContent">「以前はやんちゃな子どもといった印象が強かったシャンシャンですが、パンダにとって５～６歳という年齢は、子どもから大人になる転換期。体重も10キロほど増えたそうで、少しふっくらした印象も受けました。すっかり大人の貫禄が出てきた気がしますし、品のある素敵な女性に成長したなと思います。親ばかですが（笑）」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<figure id="attachment_356406" aria-describedby="caption-attachment-356406" style="width: 5184px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6a9f4018"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/01/3bc9d916fc73c9211bbc725596da2667.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-356406" class="wp-caption-text">再会初日に、現地報道陣に囲まれる高氏さん（PHOTO：『毎日パンダの1010日シャンシャン写真集』編集部提供）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">「任せていいと安心できました」…大事にされていることを確信</span></h3>
<p>高氏さんはツアー２日目から３日間、シャンシャンとの再会を楽しんだ。撮った写真はすぐさま整理してブログにアップ。シャンシャンファンたちは「ぱんだうじさん」（パンダファンが付けた高氏さんの愛称）からの待望の写真に大喜び。高氏さんへの感謝の気持ちをコメント欄に綴った。</p>
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<p>日本のシャンシャンファン、パンダファンたちの思いは実に熱い。中国の人はこうした“パンダ愛”をどう受け止めているのだろうか。</p>
<p><span class="strongInContent">「シャンシャンが日本を発つとき、日本のファンたちが涙を流しながら空港で見送った映像は中国でも放送されました。それもあって中国でもシャンシャンは多くの人に知られています。中国の国宝であるパンダを多くの日本人が愛してくれているということは、中国の人にとっても喜ばしいことなのだと思います」</span></p>
<p>ツアー一行が空港に到着した際には、多数の中国メディアに出迎えられ、“日本からのシャンシャン訪問団が来た”と、歓迎を受けた。連日、夜10時ごろまで取材を受けた高氏さんは、「パンダを通じて、日中の交流をしたいという中国側の熱意」を感じ取ったという。</p>
<p>そんな大忙しの３日間は、高氏さんにとって想像以上に収穫が多い時間だった。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="中国ではパンダがブームに…"></div>
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<p><span class="strongInContent">「シャンシャンは中国でもすごく大事にされているのだと実感できたことは大きかったですね。10月まで非公開だったのも、シャンシャンが新しい環境に慣れるまで、慎重に丁寧に見守ってくれていたということなのだと思います。改めて『任せていいな』と安心できました。上から目線ですみません（笑）。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">また、再会するまでは、どこか遠くの地に行ってしまったという思いがあったのですが、実際に基地に行きシャンシャンに会えたら、少しハードルが下がりました。確かに基地までは遠いのですが、着いてしまえばゆっくりシャンシャンに会えることがわかったので、心の距離は縮まりました」</span></p>
<p>「よし、また行くぞ！」と決意を新たにできた時間でもあった。今後は年に１回は基地を訪れ、シャンシャンの多くの表情を発見するのはもちろん、「欲を言えば、子どもを見たい」と、シャンシャンの子どもの誕生にも期待を寄せる。</p>
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<p>シャンシャンの中国返還の最大の目的は、パートナーを探して子どもを産み、育てることでもある。</p>
<p><span class="strongInContent">「例えば、今春の発情期にパートナーに出会えれば、最短で夏に赤ちゃん誕生、なんてこともあり得る。子どもが生まれたら、楽しみ方が何倍にも膨らみそうです」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<figure id="attachment_356407" aria-describedby="caption-attachment-356407" style="width: 1500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="5da82c14"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/01/bd74c2db2ac6d38955d9fad0e3906598.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-356407" class="wp-caption-text">再会３日目。今日もタケノコをがぶり（PHOTO：ブログ「毎日パンダ」より）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">中国ではパンダがブームに…「シャンシャンが火付け役のようでうれしいです」</span></h3>
<p>高氏さんはツアー最終日以降も中国に残り、四川省にあるほかの保護研究センターを訪問している。</p>
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<p>その一つ、「成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地」では、今、中国で大人気のメスのパンダ「和花（ホーファ）」にも会って写真に収めてきた。</p>
<p><span class="strongInContent">「これまでパンダは中国の人にとって身近な存在だからか、特別な盛り上がりは感じられなかったのですが、’21年の和花の誕生をきっかけに、急激にパンダ人気が高まりました。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">ほかにも理由はあると思いますが、和花ブームは、シャンシャンに沸いた日本に対抗して起きているようにも思います。実際、和花のライバルはシャンシャンだと言われている。シャンシャンが中国のパンダブームの火付け役になっているとしたらうれしいですね」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>ところで和花が暮らす基地は成都の中心に位置することもあり、観光客で大混雑。この日も和花目当てに訪れる人で２時間の行列ができていた。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="【最新画像満載！】中国のシャンシャン"></div>
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<p><span class="strongInContent">「シャンシャンがいる基地は山の上にあるので、訪れるのは生粋のファンだけ。マナーも紳士的なのですが、和花ちゃんがいる成都市内の基地は人が押し合いへし合いで、絶叫している人も（笑）。この違いに驚きました」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>大混雑するとはいえ、成都市内にある基地なら日本からも行きやすい。シャンシャンがアクセスのいい大都会の基地で暮らしてくれればもっと会いやすくなるはずだが、高氏さんにそう問うと、こう即答した。</p>
<p><span class="strongInContent">「シャンシャンにとっては、静かで人の少ない環境のほうが過ごしやすいはずですから、今の基地にいるほうが幸せに暮らせると思います」</span></p>
<p>子どもの幸せが最優先――。“パパうじ”の気持ちは、きっとシャンシャンに伝わっている。</p>
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<figure id="attachment_356408" aria-describedby="caption-attachment-356408" style="width: 3888px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c37c1689"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/01/2eec95e377363d0c930378b090f83f84-rotated.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-356408" class="wp-caption-text">雅安パンダ基地の入口で記念写真（PHOTO：『毎日パンダの1010日シャンシャン写真集』編集部提供）</figcaption></figure>
<p><span class="strongInContent">高氏貴博 </span>上野動物園のパンダを毎⽇撮影するカメラマン兼グラフィックデザイナー。1978年、群⾺県⽣まれ。埼⽟県在住。2011年に始めたブログ「毎⽇パンダ」が反響を呼び、テレビや新聞、雑誌など多くのメディアで話題に。ブログは毎日更新中。『毎日パンダの1010日シャンシャン写真集』『あいうえおパンダ』（青春出版社）、『毎⽇シャンシャン 2017-2021』（KADOKAWA）、『I LOVE シャンシャン︕ 保存版写真集』（エムディエヌコーポレーション）ほか著書多数。</p>
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<p><a href="https://mainichi-panda.jp/" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><span class="strongInContent">■高氏貴博さんのブログ「毎⽇パンダ」</span>はコチラ</a></p>
<p><a href="https://www.amazon.co.jp/%E6%AF%8E%E6%97%A5%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%80%E3%81%AE1010%E6%97%A5%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%B3%E5%86%99%E7%9C%9F%E9%9B%86-%E9%AB%98%E6%B0%8F%E8%B2%B4%E5%8D%9A/dp/4413113977" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><span class="strongInContent">■『毎日パンダの1010日シャンシャン写真集』</span>（青春出版社）の購入はコチラ</a></p>
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<figure id="attachment_356409" aria-describedby="caption-attachment-356409" style="width: 1500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6c10f221"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/01/17adbb8d8a354744e4aae7ed068c0905.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-356409" class="wp-caption-text">ついに雅安へ！　四川省西部の雅安市にある雅安碧峰峡パンダ基地（PHOTO：ブログ「毎日パンダ」より）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_356410" aria-describedby="caption-attachment-356410" style="width: 1500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a2f99f33"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/01/3596b9e26f562ffc54bb8b217a99b7de.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-356410" class="wp-caption-text">タケノコの皮がたまっていく（PHOTO：ブログ「毎日パンダ」より）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_356411" aria-describedby="caption-attachment-356411" style="width: 1500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b3483cc7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/01/6f5ca27645cc99c70f5c8c29d0833616.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-356411" class="wp-caption-text">シャンシャン激写中のファンたち（PHOTO：ブログ「毎日パンダ」より）</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_356414" aria-describedby="caption-attachment-356414" style="width: 2752px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="40fae508"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/01/4b79fac7825256493ecc1d0ce9ad1b08-rotated.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-356414" class="wp-caption-text">【未公開画像】舌をちろっと出した瞬間がキュートなシャンシャン（PHOTO：高氏貴博さん）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_356417" aria-describedby="caption-attachment-356417" style="width: 4128px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f5cc8556"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/01/2b8100f14374f61b4fa44eb43037b5a1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-356417" class="wp-caption-text">【未公開画像】お団子が美味しくて恍惚の表情を浮かべるシャンシャン（PHOTO：高氏貴博さん）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_356418" aria-describedby="caption-attachment-356418" style="width: 1500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="2e80c6d4"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/01/f1447c74e1903d844cb95ae950cf37b8.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-356418" class="wp-caption-text">シャンシャンのライバルだと言われている成都ジャイアントパンダ繁殖研究基地のメスのパンダ「和花（ホーファ）」（PHOTO：ブログ「毎日パンダ」より）</figcaption></figure>


辻啓子

13年前からほぼ毎日上野動物園でパンダの写真を撮り続けているパンダウォッチャー高氏さん。昨年11月８日、中国ジャイアントパンダ保護研究センターで暮らすシャンシャンと再会を果たしたのだ。

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