<figure id="attachment_357361" aria-describedby="caption-attachment-357361" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="6a16d2cc"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/02/faddaa71b4c05e8c44caf73b4ff50c9e.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-357361" class="wp-caption-text">’25年度の朝の連続テレビ小説『あんぱん』のヒロインをつとめる今田美桜。演じるのはやなせたかし氏の妻・小松暢氏をモデルにした朝田のぶ</figcaption></figure>
<p>ＮＨＫは２月２日、’25年度の朝の連続テレビ小説『あんぱん』のヒロインを今田美桜（26）がつとめることを発表した。今もなお、子どもたちから絶大な人気を誇る「アンパンマン」を生み出した、やなせたかしさんと暢（のぶ）夫人（ともに故人）の愛と勇気の物語。やなせさんの最後の編集者をつとめた平松利津子さんが知られざるエピソードを明かした。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<h3>運命の出会い</h3>
<p>月刊『詩とメルヘン』（サンリオ）が大好きだった平松さんがやなせさんに初めて会ったのは、’74年に開かれた「漫画家の絵本の会」の展覧会だったという。漫画家の絵本の会は、馬場のぼるさんや手塚治虫さんら10人の漫画家が結成した会で、それは東京丸善での１回目の展覧会だった。</p>
<p>新聞広告でサイン会があることを知った平松さんは、会場に駆けつけてサイン色紙をやなせさんの前に差し出した。そのとき、やなせさんはこんな言葉を返したという。</p>
<p><span class="strongInContent">「会場ではサイン色紙が売られているから、ここでは書けないんだ。後で送ってあげるから住所と色紙を置いていきなさい」</span></p>
<p>平松さんは半信半疑で色紙を預けたところ、１週間もたたないうちに絵が添えられたサイン色紙が送られてきたという。</p>
<p><span class="strongInContent">「約束をきちんと守る誠実な人柄が見えた」</span></p>
<p>それがきっかけで、二人の交流が始まった。</p>
<p><span class="strongInContent">「お手紙を出せば、かならずお返事をくださいました。私にとって生まれて初めてのAIR MAILは、ドイツの消印が押された絵はがきでした」</span></p>
<p>平松さんは、そのときの絵はがきや返事の手紙を今でも大切に保管している。</p>
<p>やなせさんは1919年２月６日、現在の東京都北区で生まれ、５歳のときに父方の故郷・高知県香美市に転居した。中学生のころに同郷の漫画家・横山隆一（よこやま・りゅういち）さんの作品を読み、「漫画家という仕事があることを知り、憧れるようになった」と語っている。</p>
<p>イラストレーターを志し、旧制東京高等工芸学校図案科（現在の千葉大学工学部）に進学。1939年、大学を卒業後は、東京田辺製薬（現在の田辺三菱製薬）に就職するが、戦争が始まり1941年に出征。21歳から26歳まで兵隊として中国に出征していた。そのときの過酷な戦争体験が、後にアンパンマンの誕生に大きな影響を与えることになる。</p>
<p>終戦後、1946年に高知新聞社に入社。『月刊高知』の編集に携わりながら、文章や漫画などを手がけた。同僚には、後に妻となる小松暢（こまつ・のぶ）さんがいた。暢さんが転職のため上京することを知ったやなせさんは、高知新聞社を退職し、暢さんの後を追って上京。翌年、二人は結婚した。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<div data-friday-nextpage-lead="売れなかったやなせさんがなぜブレイクできたのか"></div>
<div class="expapp-yahoo-paragraph-break"></div>
<figure id="attachment_357329" aria-describedby="caption-attachment-357329" style="width: 1572px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a48ce679"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/02/ccb4c762b068835d865d93ad31a7874f.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-357329" class="wp-caption-text">’13年、今でも人気のアニメ『それいけ！アンパンマン』を世に残し、94歳で逝った故・やなせたかし氏（左）との最後の編集者・平松利津子氏</figcaption></figure>
<h3>「善い人でいなさい」</h3>
<p>同年、三越に入社したやなせさんは、宣伝部でグラフィックデザイナーとしての仕事をしながら、漫画を描き始める。</p>
<p>三越百貨店の包装紙に書かれた筆記体の「mitsukoshi」の文字は、やなせさんの手によることを知る人は少ない。日本の百貨店初となるオリジナル包装紙「華ひらく」は、’50年に画家の猪熊弦一郎（いのくま・げんいちろう）氏の手によって描かれ、三越宣伝部の社員だったやなせさんが文字を書き入れた。</p>
<p><span class="strongInContent">「現在の千葉大学工学部でデザインを学んだやなせ先生だったから、猪熊先生は、『文字は君が書き入れればいいよ』と言ったと、のちにやなせ先生に聞きました」</span></p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>’53年、34歳で三越を退社し、漫画家として独立したが、「ぼくは40歳を超えてもまだ五里霧中で、挫折どころか、出発していなかった」とインタビューで語っているように、すぐに芽は出なかった。生活のために舞台の構成の仕事や、ドラマの脚本書き、童謡「手のひらを太陽に」の作詞も手がけた。取材の際にやなせさんが平松さんにこう明かしている。</p>
<p><span class="strongInContent">「この仕事はいろいろな経験をすればするほどいい。手塚治虫は大阪大学を出て医者になったが、医学の知識は漫画を描く上で役に立った。漫画を描くから漫画家じゃない。自分の経験を元に人を喜ばせようとする漫画的な精神を持つ人が、漫画家なんだとぼくは思うよ」</span></p>
<p>代表作の絵本『あんぱんまん』（フレーベル館）が出版されたのは’73年、54歳のときだった。’88年、テレビアニメ『それいけ！アンパンマン』が放映されると、瞬く間に人気を博し、やなせさんは売れっ子になった。69歳で遅咲きの花が咲いた。漫画家として独立してから、なんと25年の時間が流れていた。</p>
<p>’11年３月11日、東日本大震災が起きたとき、やなせさんは92歳になっていた。視力が低下し、断筆も考えていたそうだが、震災直後、岩手県陸前高田市の「奇跡の一本松」に支援の手をさしのべた。そこには平松さんが関わっていた。</p>
<p><span class="strongInContent">「震災から１週間たった３月18日の夜、私はやなせ先生が待つスタジオへうかがい、故郷・陸前高田市への支援をお願いしました。高田松原の約７万本の松林が大津波で消え、１本だけ残った松の話をすると、やなせ先生は残された松をご自身に重ねられ、すぐに『松の木の歌』という話をかいてくださいました。その話に合わせて歌『陸前高田の松の木』（CD）やハンカチを作ってくださり、松林再生のための苗木代や陸前高田のみんなのために使いなさい」</span>と、各1000枚を寄贈した。</p>
<p>この一本松をやなせさんは親しみをこめて「ヒョロ松」と呼び、保存のための寄付なども行うなど、さまざまな形で支援した。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>なかなか売れなかったやなせさんが、なぜ売れるようになったのか。その問いに平松さんは<span class="strongInContent">「湧き出す創作意欲と諦めない姿勢。そして、何より善き人であったこと」</span>と分析する。</p>
<p>以前、やなせさんはこんな話をしたという。</p>
<p><span class="strongInContent">「ぼくの仕事のやり方は決まっている。それはまず、人としてよい人になることを目指すこと。芸術家だからといって、周りに迷惑をかけてはいけないのです」</span></p>
<p>そのとき平松さんは、「よい人とはどんな人？」と質問。やなせさんは、<span class="strongInContent">「周りの人から、会いたいと思われる人。そういう人になれば、自然とよい作品ができる。作品がおもしろければ、買ってもらえて、暮らしていける。お金をもうけるのが主眼じゃない。人を喜ばせるのが主眼。そういう気持ちでやっていれば、結果的に報われると思う」</span>と答えたという。</p>
<p>やなせさんが言う「よい人」とは、漢字を当てると「善い人」ではないかと平松さんは解釈している。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="「成功の秘訣」についてやなせさんの自己分析は…"></div>
<div class="expapp-yahoo-paragraph-break"></div>
<figure id="attachment_357330" aria-describedby="caption-attachment-357330" style="width: 2409px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="2c3a58e7"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/02/02715a1b93d857b4afc27058b7445a74.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-357330" class="wp-caption-text">やなせ氏は、打ち合わせで複数の人で集まったときに撮影した写真に直筆の手紙を添えて平松氏に送っていた</figcaption></figure>
<p>’10年４月から「朝日小学生新聞」で連載された『やなせたかしのメルヘン絵本』の企画立案から関わり、やなせ氏が亡くなるまで携わった平松さんはこう振り返る。</p>
<p><span class="strongInContent">「連載終了後、傑作選として16話を再掲載することになりました。そこにやなせ先生と交流があった16人の証言を入れることを思いつき、声優の戸田恵子さんや歌手のドリーミング、絵本作家の葉祥明さんらに話を聞きました。お会いした人はすべて善い人であり、話す言葉からやなせ先生を心から敬愛していることを確信しました。言い換えれば、やなせ先生自身が善き人であったということです」</span></p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<p>成功の秘訣について、やなせさんはこう自己分析をしている。</p>
<p><span class="strongInContent">「ぼくに言わせれば、70％が運。20％が努力で、10％が天分。ぼくがどれだけ漫画を書いていたとしても、そのよさを発見する人、本にしたいと思う人が出てこなければ駄目なんです」</span></p>
<p>アンパンマンの絵本を世に出してくれたフレーベル館の編集者と、アニメ化に尽力した日テレのプロデューサーに対して、終生感謝を忘れていなかったという。</p>
<p>人は決して自分ひとりでは生きていけないことを知る善き人だったからこそ、神様も見捨てなかったのだろう。やなせさんの作品は永遠のいのちを宿し、時空を超えて愛され続けていく。</p>
<div data-friday-ad-slot="AD_inArticle"></div>
<figure id="attachment_357351" aria-describedby="caption-attachment-357351" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="327bc72f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/02/44c06b768435cd4d4acbc06a0922b968.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-357351" class="wp-caption-text">三越の包装紙に使われていた「mitsukoshi」はやなせ氏の直筆</figcaption></figure>
<figure id="attachment_357331" aria-describedby="caption-attachment-357331" style="width: 4037px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="d39c9e92"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/02/f45a6cc91202e6fc4e25b6bad9de0344.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-357331" class="wp-caption-text">アニメ『それいけ！アンパンマン』の原作となった初代「アンパンマン」。’69年10月、やなせたかし氏が描いた短編メルヘン集『十二の真珠』という童話のひとつに登場したものだった</figcaption></figure>
<figure id="attachment_357335" aria-describedby="caption-attachment-357335" style="width: 2094px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="dffc478a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/02/089af0534c7f2d12c62a495262a2820b.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-357335" class="wp-caption-text">アニメ『それいけ！アンパンマン』の原作が書かれた短編メルヘン集『十二の真珠』。’69年10月、やなせたかし氏が描いた</figcaption></figure>


小松寛之（１枚目）、平松氏提供（２、３，５，６枚目）、共同通信社（3枚目）

NHKは25年度の朝の連続テレビ小説『あんぱん』のヒロインを今田美桜（26）がつとめると発表した。今も子どもたちから絶大な人気を誇る「アンパンマン」生みの親、やなせたかし夫妻はどうやって出会ったのか

やなせたかし夫妻を描く来年NHK朝ドラ「あんぱん」ヒロインに今田美桜　最後の編集者が明かす秘話

あなたへのオススメ

やなせたかし夫妻を描く来年NHK朝ドラ「あんぱん」ヒロインに今田美桜 最後の編集者が明かす秘話

あなたへのオススメ

やなせたかし夫妻を描く来年NHK朝ドラ「あんぱん」ヒロインに今田美桜　最後の編集者が明かす秘話