斉藤 さゆり

<h3>「９万〜10万円」が36.5％で最多！</h3>
税制優遇制度が見直され、１月にスタートした新NISA。資産形成を後押しするとの声もあるが、投資への関心は高まっているのだろうか。
家計診断・相談サービス「オカネコ」を運営する400Fは年明け早々の１月４～７日、全国の利用者1594人を対象に「新NISAの利用意向調査」を実施。新NISAの認知度は86.6％、利用率は37.8％という結果に。
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では、オカネコのユーザーはどんな目的で新NISAを利用しているのか。複数回答で尋ねたところ「余剰資金を増やすため」が69.9％、「老後の資金を貯めるため」が63.5％と多く、「教育、育児資金を貯めるため」が13.3％と続いた。
<figure id="attachment_359350" aria-describedby="caption-attachment-359350" style="width: 640px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="313b04a2"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/02/c4ef95891e3a5228f53b507b0345a262.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-359350" class="wp-caption-text">楽天証券の楠雄治社長は朝日新聞の取材に、新NISAの毎月の積立額を「つみたて投資枠」上限の10万円に設定している人は14％と答えている</figcaption></figure>
ファイナンシャルプランナーの大石泉さんは、この結果を次のように分析する。
「余剰資金を増やすという回答が一番多いですが、毎月の収支が黒字で、普通預金の生活口座にそのまま入れておくのはもったいないからNISAに積み立てて運用するといったところかもしれませんね。
たとえば共働きであれば、どちらかに何かあっても、途端に世帯収入がゼロになる可能性は低いです。 緊急予備資金として手元に生活費の３ヵ月から６ヵ月分、100から180万円程度あって、いざという時の当座の暮らしは何とかなるだろうと考えると、毎月の余剰金をNISAのつみたて投資枠へと考えるのは、納得できます」
新NISAでは投資額の上限は「つみたて投資枠」が年間120万円、「成長投資枠」が年間240万円で、合計360万円まで非課税で金融商品を運用できる。
オカネコ利用者の毎月の積立金額は、「９万〜10万円未満」が36.5％で最多。「５万〜６万円未満」が15.3％、「３万〜４万円未満」が10.1％と続き、毎月の平均積立金額は６万689円だった。
「毎月６万円を積み立てるとなると、たとえば手取り月収が30万円で、支出を24万円におさえて、収支が６万円という感じですね。 
物価が上昇傾向でも、臨時支出があっても常に６万円以上の黒字をキープできるのでしたら、毎月６万円の積み立ては可能かもしれないです」
ちなみに、回答者の世帯年収は「400万円未満」が28.2％で最も多い。「400万〜600万円未満」が19.1％、「600万〜800万円未満」が16.6％、「800万〜1000万円未満」が10.5%で、「1000万円以上」は15.6％だ。年収が400万円未満で、毎月５、６万円の余剰金をNISA口座に入金――そんな人もいるということか。
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「うーん、生活費を切り詰めてNISAに回している人もいるのかしらと考えてしまいます。余剰資金ならNISAで運用するのはOKだと思います。 これまで積み立てをしたことがない人は、めいっぱい投資に回して暮らしてみて、それから減額して適正価格を確定するという方法もあるかもしれません。 投資は余裕資金でというのが鉄則ですから、無理はいけません。収支の把握が大切です」
<h3>老後資金は「2000万円では足りない」…</h3>
’19年、金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループの報告書を基にマスメディアが「老後に2000万円不足する」と報じ、話題になった。だが’22年以降は、物価が上昇する中「老後資金は2000万円では足りない」との声も聞こえてくる。新NISAを利用する目的に「老後の資金を貯めるため」との回答が多いのも、公的年金に対する不信の表れかもしれない。
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「現在は、マクロ経済スライドによる調整で、賃金や物価が上昇しても年金額は物価の上昇幅ほど上がりません。この１、２年インフレが続き、老後のために何もしないでいることの不安が出てきているのだと思います。 
前述の金融庁の報告書では、高齢夫婦無職世帯の場合は毎月の赤字額が約５万円。老後を65歳からの30年間とすると、自前で準備する必要額は1800万円となる試算です。 お金に対して意識のある人は『今のような物価高が続くと５万円では足りない。自分の頃に必要な老後資金は2000万円では足りない、今の倍の4000万円だ』と考えても不思議ではない気がします」
’23年８月に日銀が発表した「資金循環の日米欧比較（’23年３月末現在）」にある家計金融資産を見ると、日本は現金・預金が54.2％で、株・投資信託が15.4％となっている。対してアメリカは現金・預金が12.6％で、株・投資信託が51.3％だ。日本人は相変わらず投資より貯蓄の傾向が強いようだが、大石さんはどう見ているのだろう。 
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「高度経済成長期の’60年代からバブル期の’90年代前半までは、預貯金の金利が５～６％という時もありました。今の80代とか90代の世代は当時、貯金に励んだのだろうと思います。 
Ｚ世代はどうでしょう。彼らが社会に出たのは、アベノミクスで株価が上がってきた頃です。世界を見るとアメリカはもっと上がっている。そういう時代に社会人になった彼らは、ITリテラシーも高く、海外情報も身近で、お金は貯金より殖やす時代だと考えているのではないでしょうか。 
今はネットやスマホから証券会社の口座を開ける時代ですし、投資へのハードルが下がっていることも若年層の実践を後押ししていると思います」
<figure id="attachment_359352" aria-describedby="caption-attachment-359352" style="width: 1920px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="fe87ed2f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/02/1edf6dbe89ec5769f10327a43295aa21.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-359352" class="wp-caption-text">オカネコ利用者の毎月の積立平均額は６万689円。意外と強気の設定だ。’23年までのNISAの積立金額に比べて３万7273円増えているという（「オカネコ 新NISAの利用意向調査」／家計診断・相談サービス「オカネコ」調べ)</figcaption></figure>
<h3>タイパを意識するＺ世代は資産形成も効率重視</h3>
金融広報中央委員会が’22年に実施した「金融リテラシー調査」の結果によると、学校や大学、勤務先で金融教育を「受ける機会があり、受けた」と回答している人は7.1％。「受ける機会はなかった」との回答は75.7％に及んだ。
金融教育がいかに不十分であるかを示すような結果だが、そんな日本でもようやく、’22年から高校の家庭科の授業で金融経済教育が必修となった。
「政府は４月に金融経済教育推進機構を立ち上げ、機構が認定するアドバイザーを企業や学校に講師派遣したり、個別相談などの業務を行ったり、金融経済教育の充実を図ろうとしています」 
その説明資料の中に興味深いデータがある。Ｚ世代の大学生を対象にしたアンケートで、「企業や職場を選ぶ際、用意してくれたら良いと思う研修は何か」との質問に対する回答で一番多いのが「資産形成・金融リテラシー研修」なのだ。 
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「Ｚ世代はタイパ（タイムパフォーマンス）を意識する傾向が特に強いと言われますが、彼らにとって資産形成も効率的にしたいことの一つなのかもしれません。
同じお金を殖やすなら効率よく運用したほうがいい。そのために金融の知識を身につけておきたい。それが職場で叶うなら最高――若い世代の意識がそんなふうに変わってきているとすれば、とても嬉しく思います」
大石泉（おおいし・いずみ）NPO法人日本FP協会認定上級ファイナンシャルプランナー CFPⓇ。キャリアコンサルタント。大学卒業後、株式会社リクルートへ入社。約15年勤務の後、’01年にFP事務所を設立。身近な新聞をつかった経済教育、キャリアデザイン、資産形成などの講座や研修を大学、企業で展開。個人向けには、客観的なファイナンシャル及びライフプランニングを提供している。

斉藤さゆり

ある家計診断・相談サービス会社の調査によると、新NISAでの毎月の積立金額は、「９万〜10万円未満」が36.5％で最多で、平均積立金額は６万689円だったという。強気の金額設定から見えてくることとは…

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