年間43万人が“座り過ぎ”で死んでいる!? あなたは大丈夫? | FRIDAYデジタル

年間43万人が“座り過ぎ”で死んでいる!? あなたは大丈夫?

今、世界中の研究者が「Sitting is killing You(座ることがあなたを殺す)」と注意を喚起している

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WHO(世界保健機関)は2011年に、「“座って動かない生活”は肥満や糖尿病、高血圧、がんなどの病気を誘発し、世界で年間200万人の死因になっている」というデータを公表した。この内容を受け、2015年には世界中の研究者が集まり“座り過ぎのリスク”についての国際会議が開かれ、翌年ブラジル・サンパウロ大学の研究者から「世界中で年間43万人以上が、“座り過ぎ”が原因で死んでいる」との、より直接的な表現をした研究結果が発表された。

今、世界的に“座り過ぎ”が問題視されている
今、世界的に“座り過ぎ”が問題視されている

「座り過ぎ」とは、いったいどの程度のことをいうものなのか。デスクワークの人はどうすればいいのか。早稲田大学スポーツ科学学術院教授の岡浩一朗氏に話を聞いてみた。

1時間座ると余命は22分短くなり、1日に11時間以上座っている人は死亡リスクが40%高くなる 

2012年にこのデータを発表したのは、オーストラリアの研究機関。オーストラリアは、このデータにショックを受け、国を挙げて座り過ぎ問題に取り組んでいるという。

「座っていると、ひざも腰も曲がり、ももの裏はギュッと押されている。そんな状態が続くと血液を心臓に戻しにくくなり、一生懸命戻そうとするので血圧が高くなるような状態を引き起こします」

5分座っていると、血流速度は急速に下がり、30分座り続けると、血流速度は70%も低下するという実験結果もある。酸素も栄養も、血液によって体のすみずみまで運ばれ、老廃物も血液にのって回収される。筋肉が動かないことで足の血流が悪くなると血液循環のリズムが乱れ、血液中に老廃物の糖や脂肪があふれ出して、ドロドロの状態になる。

座ってばかりで動かない危険性として、「エコノミークラス症候群」がよくいわれるが、同様の生活習慣が長期にわたれば、血管が詰まりやすくなって、高血圧や動脈硬化がすすみ、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞のリスクが高まる。 

「体の中でいちばん大きな筋肉は太ももにある“大腿四頭筋”です。ここが動くことで筋肉にスイッチが入って糖の代謝や脂肪の分解酵素の分泌が活発になります。ところが座りっぱなしで、この筋肉が動かない状態が続くと、糖の代謝や脂肪を分解する酵素の働きが悪くなります」

糖や脂肪が分解されないのだから、当然、糖尿病や肥満、メタボリックシンドロームの危険性も高まる。“座り過ぎ”とがんの関連についても研究が進められており、2014年、アメリカの研究チームから、1日に座っている時間が4時間未満の人の死亡リスクを1とした場合、8時間以上座っている人は1.21倍になるという報告もされている。

1日4時間以下の総座位時間を基本にした場合、8時間以上の“座り過ぎ”で「がん死亡リスク」が1.21倍に
1日4時間以下の総座位時間を基本にした場合、8時間以上の“座り過ぎ”で「がん死亡リスク」が1.21倍に

できれば「30分に一度3分」、少なくても「1時間に一度5分」は立って動く

こうした報告を受けて、一部の企業では立って働ける環境作りが進められている。

「ただ立っているだけでいいわけではありません。けれど、立っていると1歩踏み出しやすくなる。確認したいことがあれば、すぐ動いて聞きに行けますよね。立って仕事をすることで、さらに活動量を上げることができるのです」

仕事中座っている時間が2時間未満の男性は、6~8時間の男性に比べて結腸がんのリスクが37%低いというオランダでの疫学研究の報告もある。

そのうえ、社員同士のコミュニケーションが活発になり、職場に活気が出て、生産性が上がるという効果もあるという。

「理想的には30分に一度立ちあがり、少しでもいいから動いてください。30分ごとがむずかしければ、1時間に一度でもかまいません。これで座り過ぎのリスクはかなり減らせます」 

どの程度動けばいいのか気になるところだが、岡先生によると、トイレに行く、お茶を入れに行く、コピーをとりに行く程度でよいのだそう。

「30分に一度、“軽い強度の歩行”と、“中程度の強度の歩行”で座り過ぎを中断したとき、血糖値がどのくらい変わるかを比較実験した結果、どちらの歩行でも効果にほとんど差はないという報告があります。また、ずっとデスクワークをしていると、夕方ものすごく疲労感を感じることがありますよね。ところが、30分に一度“立ち歩く”と、その疲労感が圧倒的に改善されたというデータもあります」

軽く歩いても、がんばって歩いても血糖値の下がり方は、それほど変わらない。ちょっと“立ち歩く”だけで食後の血糖値も下がる
軽く歩いても、がんばって歩いても血糖値の下がり方は、それほど変わらない。ちょっと“立ち歩く”だけで食後の血糖値も下がる

その場でかかとを“上げ下げ”したり、少しひざを曲げる(スクワットする)だけでもOK! 

席を離れることがむずかしいときは、デスクの前でまっすぐ立ち、背伸びするようにかかとを“上げ下げ”したり、少しひざを曲げる(スクワットする)だけでもいいという。

「仕事は座ってするものだと思っている人がいるかもしれませんが、メールは座っていなくても読めるし、資料だって立って読んだっていい。ぜひ“立つ”習慣をつけてほしいものです」 

日ごろ座ってばかりだからと、運動不足解消のために、週末スポーツクラブに行っている人もいるだろうが、

「それで座り過ぎのリスクを十分に解消できるわけではありません。朝晩少しくらい歩いても、それ以外ずっと座っていればダメ。こまめに動くことが大事です。

固定電話しかなかった時代は、電話が鳴ると電話があるところまで歩かなくてはいけなかった。でも、今は座ったままで電話に出ることができる。照明やテレビも、リモコンや語りかけるだけでつけられる。インターネットを利用すれば買い物に行かなくてもいい。便利な時代になったからこそ、“座り過ぎ”に注意しなくてはなりません」

平均寿命が世界トップと言われている日本人だが、座っている時間が世界一長いというデータもある。いくら長生きしても、健康でなければ仕方がない。今日からスマホにアラームをセットして、忘れず1時間に5分のブレイクを入れてみよう!

 岡浩一朗 早稲田大学スポーツ科学学術院教授。研究分野は健康行動科学、行動疫学。今日の日本人の身体活動(運動)不足を無理なく解消させる方法が研究テーマ。国民の健康寿命を延ばすことへの関心の高さから研究動向が注目されている。著書に「長生きしたければ座りすぎをやめなさい」(ダイヤモンド社)、「『座りすぎ』が寿命を縮める」(大修館書店)がある。

 

  • 取材・文中川いづみ写真アフロ

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