<h3><span class="strongInContent">終わらない冬は、ない。</span></h3>
<p>’80年代後半から’90年代にかけて長く続いた「アイドル冬の時代」「アイドル氷河期」と言われた時代。そんななか始まった、テレビ東京のバラエティ番組『ASAYAN』内で開催されたオーディションの最終選考で落選した５名で結成されたグループ、それが<span class="strongInContent">モーニング娘。</span>だ。</p>
<p>番組主導のいわば企画物のようなかたちで結成され、「デビュー曲が５万枚売れなければ解散」といった、現在のライブアイドル界でも時折見受けられるミッションを番組が課し、その奮闘ぶりを視聴者が見守り応援するうちに、じわじわ人気と知名度を獲得していったパターンだ。そう、やはりアイドルとは、自分が好感を持った対象、今でいう“推し”の成長を見守り応援することで進化していくもの。その本質は「スタ誕」のころからずっと変わっていないのだ。</p>
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<figure id="attachment_361130" aria-describedby="caption-attachment-361130" style="width: 805px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="58194778"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/02/40c08b9a5419f19097e9d1b0f2587930.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-361130" class="wp-caption-text">モーニング娘。前列左から市井紗耶香、安倍なつみ、矢口真里、後列左から保田圭、飯田圭織、中澤裕子、石黒彩（’99年７月撮影／PHOTO：共同通信）</figcaption></figure>
<p>２期生が加入し『抱いてHOLD ON ME』などヒットを出したりするものの、少しずつ頭打ち感も漂い始める。そこに大きな転機が訪れる。３期生として加入した<span class="strongInContent">後藤真希</span>の存在と『LOVEマシーン』のリリースである。</p>
<p>つんく♂の手による曲を、ダンス☆マンがキャッチーなディスコサウンドに仕立てたこの曲は、そのサウンドと振り付け、そして折からのカラオケブームなども手伝い爆発的に大ヒット、ついにはミリオンセラーを記録する。その後、<span class="strongInContent">ミニモニ</span>。や<span class="strongInContent">プッチモニ</span>、<span class="strongInContent">カントリー娘</span>。、<span class="strongInContent">スマイレージ</span>など派生ユニットやグループが次々と登場、一連のグループは「ハロー！プロジェクト」という総称のもと、現在までコンスタントな人気を保ち続ける。</p>
<p>いっぽう男性アイドル界ではバラエティ番組の出演などでじわじわ人気を高めてきた<span class="strongInContent">SMAP</span>が、’94年のシングル『Hey Hey おおきに毎度あり』で初のオリコン１位を獲得以降、『がんばりましょう』『KANSHAして』とヒット曲を連発、’96年には冠番組『SMAP×SMAP』の放送もスタート、モー娘。に先駆けて国民的アイドルの座にのぼりつめた。SMAPは男性アイドルの中でも、いわゆる“王子様”感が薄く、等身大の若者のような一面も大きくウケた。</p>
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<h3><span class="strongInContent">「会いに行けるアイドル」AKB48の誕生</span></h3>
<p>’05年。いよいよテレビの力を全面的に活用しないアイドルグループが秋葉原で誕生した。そう、「会いに行けるアイドル」<span class="strongInContent">AKB48</span>の登場だ。</p>
<p>「AKB」の名は活動の拠点とする秋葉原を意味するもので、秋葉原を中心としたオタク文化への注目とリンクさせるようなご当地アイドル的な側面も持っていた。’05年12月に劇場初公演、秋葉原にある専用劇場で定期公演を繰り返し、そのキャッチフレーズの通り、ファンは劇場に行けば、お目当てのアイドルに会える。テレビや雑誌を通してではなく、ホールなどの大きなコンサート会場でもなく、身近な存在であることを徹底させ、「アイドルの親近感」は、また新たなかたちで進化した。</p>
<p>“会いに行ける”ことを土台にした、ある発明も生まれる。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="ブームから日常へ…"></div>
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<p>AKB48グループのシングルCDに封入される「イベント参加券」。これを使用することでファン・購入者はメンバーと直接握手や会話などの交流ができる「握手会」などに参加でき、お目当てのメンバーと握手し、その購入枚数分の規定の時間、二人だけのトークができる。もちろん握手会などのキャンペーンは昭和の時代から存在したが、買ったぶんだけ一緒にいられる、時間を共有できるというシステムにファン心理は大きくくすぐられ、それはCDのセールス増加に直結した。</p>
<p>さらに、AKB48グループでは“選抜”というシステムによって、センターやフロントに立つメンバーが毎回入れ替えられるというシビアな競争も盛り込まれ、同じグループ内でのメンバーをライバル的存在として可視化させた。それがそれぞれのメンバーのファンの熱狂度を生み出し、 “○○推し“という言葉の浸透とともに「応援しなくちゃ」という心理を大幅に増幅させた。</p>
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<p>その極め付きが、AKBグループが導入した「選抜総選挙」だ。ファンクラブへの加入、対象時期に発売されたシングルCDを購入することで得られる「投票券」。その得票数による順位によって、次の曲のセンターが決まるばかりでなく、グループ全体でのメンバーの順位も決められる。そしてそれはすべてファンに委ねられる形だ。地上波のゴールデンタイムでその開票は生中継されるなど、社会現象となった。</p>
<p>ライブやイベントなどと並行して行われる特典会での「チェキ」撮影も、「親近感」を形として残せるものとして爆発的に浸透。小規模のライブハウスを拠点として活動するインディー系のアイドルも続々登場、“地下アイドル”“ライブアイドル”といった名称とともにシーンは大きく拡大、冬の時代から一転、「アイドル戦国時代」と称される時代へと突入する。</p>
<h3><span class="strongInContent">ブームから日常へ　アイドル戦国時代突入</span></h3>
<p>新たな勢いを取り戻したアイドル界には次々と人気者が誕生した。</p>
<p>「週末ヒロイン」を名乗り、やがてはテレビ番組などでのタレント性の浸透と、大規模会場でのライブ活動を両立させることに成功した、<span class="strongInContent">ももいろクローバーZ</span>。「アイドルとメタルの融合」をテーマに、キュートなルックスの女性アイドルが本格的なヘビーメタルのサウンドをパフォーマンスする<span class="strongInContent">BABYMETAL</span>は、アイドルにさほど興味をもたなかった国内ロックファンのみならず、メタル人気の高い欧米でも注目を集め、坂本九以来の全米チャートTOP40入りという快挙も達成した。</p>
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<p>パンクロックのサウンドをアイドルソングに落とし込み、ライブではロックバンドのライブさながらの熱狂を生んできた<span class="strongInContent">BiS</span>と<span class="strongInContent">BiSH</span>の存在も、ライブアイドルシーンに大きな影響を与えた。BABYMETALやBiSHのように、アイドルソングはさまざまな音楽ジャンルと融合、楽曲の完成度に注目が集まる一部のアイドルは“楽曲派”という言葉でカテゴライズされることもある。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="アイドルという存在のボーダーレス化"></div>
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<p>そして令和。世界的なコロナ禍の影響で、まさに接触するイベント「握手会」の開催は一時消滅することとなったが、スマホなどによる個別のビデオ通話イベントの実施や、アクリル板のパーテーション越しでの対面など、アイドル文化は次の「冬」を迎えることなく、アイドルという存在は時代が生み出す「ブーム」から「日常」として定着した。</p>
<p>「アイドル」という存在の定義は時代とともに大きく変化した。アイドル、とくに女性アイドルは年齢という壁は確実に存在し、ある程度の年齢でアイドル活動からの引退・卒業、解散がほとんどだったが、ハロプロやAKB48グループなどはメンバーを入れ替え楽曲を歌い継いでいくことでグループとしての旬を保ち続けてきた。</p>
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<p>いっぽうで、現在は30歳でも現役アイドルであり続ける例も珍しくなく、ももクロや<span class="strongInContent">Negicco</span>のように結婚後もアイドル活動を続ける例が増えてきている。松田聖子や伊藤蘭を応援し続けるファンがその代表かもしれないが、未完成の原石が成長していく姿を見守ったり共感したりするアイドルの楽しみ方は、推しの人生そのものを応援することにも進化した。</p>
<figure id="attachment_361131" aria-describedby="caption-attachment-361131" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="3d446d9e"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/02/c404ecc53eee14a5ebcd11e989369d5e.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-361131" class="wp-caption-text">アメリカ・ロサンゼルス公演を皮切りに世界各地で開催された初の海外ツアー「THE SEISHUN TOUR」。写真は、メキシコシティで開催された「Corona Capital 2023」での公演風景（PHOTO：共同通信）</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">新しい学校のリーダーズの登場とアイドルという存在のボーダーレス化</span></h3>
<p>コロナ禍と並行して動画配信の文化も一気に発展、YouTubeや配信アプリ、さらにはTikTokなど動画に特化したSNSで人気に火がつきヒットするという「TikTok売れ」という言葉も生み出した現象はアイドル界でも例外ではない。３年前にリリースされた楽曲『オトナブルー』が突如TikTokで「首振りダンス」の振り付けとともに爆発的にバズり、紅白歌合戦に出場した<span class="strongInContent">新しい学校のリーダーズ</span>のような存在もこれからまだまだ現れるだろう。</p>
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<p>K-POP、声優、さらには２次元の世界など、「アイドル」という言葉が意味する存在のボーダーレス化はどんどん進む。“推し活”という言葉の浸透とともに、何かを推すということは当たり前の時代となった。</p>
<p>時代に合わせ進化を続ける「アイドル」という存在。さらなる次世代アイドルは、どういう形で現れるだろうか。</p>


ライター・編集・インタビュアー。学生時代よりライター活動を開始、現在はウェブや雑誌などで主にエンタメ系記事やインタビューなどを執筆。

太田サトル

共同通信

長く続いた「アイドル冬の時代」言われた時代。そんななか始まった、テレビ東京のバラエティ番組で開催されたオーディションの最終選考で落選した５名で結成されたグループ、それがモーニング娘。だ。

モー娘から新しい学校のリーダーズまで…親近感と「応援しなくちゃ」心理が生んだアイドル新時代

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