<p>「NISAでは何に投資すべきか？」――このテーマで必ず挙がるのは【オールカントリー】や【S&amp;P500】といったインデックスファンド。ネット記事やSNSでは、それ以外の選択肢がないかのような誉め言葉が並ぶ。しかし、そうした高評価だらけの状況で、見えにくくなっている〝弱点〟があると専門家は指摘する。</p>
<h3><span class="strongInContent">NISAのリスタートで判明した異例の「オルカン人気」</span></h3>
<p>リニューアルした『NISA』が’24年１月から始まった。早速、金融市場に大きなインパクトを与えている。国内の投資信託市場は、１月だけで１兆3107億円が流入超過に。内外の株式市場の上昇も加わり、１月末の国内公募追加型株式投信（ETF除く）の純資産総額は111兆5956億円と過去最高を更新した。</p>
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<p>資金の流入先も目を引く。資金流入額のトップは『eMAXIS Slim全世界株式（オール・カントリー）』（以下【オルカン】）で3439億円。新規設定ではなく、既存の投資信託（ファンド）の単月としては異例の大きさだ。人気化するとは予想されていたものの、前代未聞の金額といえよう。なお、第２位は『eMAXIS Slim米国株式（S&amp;P500）』2090億円と、こちらも決して引けを取らない大きさとなっている。</p>
<p>この『eMAXIS Slim』シリーズのほかにも、【全世界株式】や【S&amp;P500】のインデックスファンドは他社から販売されており、いずれもかなりの資金流入が見られる。合計すると、この２種類のインデックスファンドに、約１兆3000億円の個人の新規資金の半分以上が流れ込んでいる。</p>
<figure id="attachment_361989" aria-describedby="caption-attachment-361989" style="width: 640px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="67fd6fd6"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/03/8876e93da9dabd777d547e34eaf810b0.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-361989" class="wp-caption-text">いま見えにくくなっている【オルカン】の〝弱点〟とは…</figcaption></figure>
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<h3><span class="strongInContent">【オルカン】と【S&amp;P500】の圧倒的なパフォーマンス</span></h3>
<p>インデックスファンドとは、株価指数などの指標（＝インデックス）に連動した運用を目指す投資信託のこと。【オルカン】の指標は、その名が示すように、『MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス』で、新興国を含む世界の株式市場をカバーしたもの。そして、【S&amp;P500】は指標の名称で、米国市場の代表的な500銘柄で構成されている。</p>
<p>数あるインデックスファンドの中で、この２つが個人投資家から圧倒的な支持を受けている理由は何か。まずは、過去の運用成績の優秀さだ。【オルカン】の’24年１月末までの３年間の上昇幅は＋68％、同じく１年間では＋32％。【S&amp;P500】の方は３年間で91％、１年間ではなんと41％という記録を出している。</p>
<p>こうした高いパフォーマンスを受けて、昨年来、「NISAで投資するならオルカンかS&amp;P500」といったコメントが、あらゆるメディアとSNS上で、金融の専門家や個人投資家から〝満場一致〟で発信された。それが、「NISAを始めたいけれど何に投資していいかわからない」という層に、強く刺さったといえるだろう。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="絶好調で「弱点」が見過ごされている？"></div>
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<h3><span class="strongInContent">運用絶好調で「弱点」が見過ごされている？</span></h3>
<p>しかし、メディアやSNSでのあまりの高評価によって、インデックスファンドとしての〝弱点〟が見過ごされている側面があるという。楽天証券資産づくり研究所副所長兼ファンドアナリストの篠田尚子氏が次のように解説する。</p>
<p><span class="strongInContent">「長期の積立投資をする際、最適な投資信託のひとつであることは間違いないでしょう。しかし、万能ではありません。今後、運用が期待通りに行かない場面を乗り越えるためにも、中身をきちんと理解することが重要です」</span></p>
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<h3><span class="strongInContent">足下の運用成績は円安による「追い風参考記録」</span></h3>
<p>そこで、まず理解するべきは「本当の実力」だという。前述したように、【オルカン】と【S&amp;P500】のここ数年のパフォーマンスは圧倒的だが、篠田氏は「〝追い風参考記録〟と受け取っておきましょう」と指摘する。</p>
<p><span class="strongInContent">「【オールカントリー】や【S&amp;P500】、さらにはNYダウなど、主要な海外株式指数はここ３年間ほどで軒並み70～80％のリターンを出してますが、実はその内の50～60ポイントは円安効果によるものです。約３年前の’21年１月は１ドル＝103～104円台で、現在は148～150円前後。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">つまり、３年間で４割以上も円安になり、米ドル建てのインデックスファンドのリターンを実力以上に底上げしたのです」（篠田氏／以下同）</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>意外なことに、直近３年間をみると、現地通貨ベースなら日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)連動のインデックスファンドの方がリターンは高かったという。</p>
<p><span class="strongInContent">「為替の変動もリターンの源泉であり、外貨建て投資の醍醐味であることは否定しません。ですが、昨今の急速な円安によって過大評価されていることには注意が必要です」</span></p>
<p>今後、為替相場が落ち着き、〝追い風〟が止んでしまうと、これまでのようなパフォーマンスは期待しにくい。また、海外株式市場が下落する局面で円高・ドル安が進行すれば、損失も増幅されることになる。</p>
<figure id="attachment_362093" aria-describedby="caption-attachment-362093" style="width: 3317px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="5085cd26"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/03/96d7d1e724e4cc398f511559355487f9.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-362093" class="wp-caption-text">「主要な海外株式指数はここ３年間ほどで軒並み70～80％のリターンを出してますが、実はその内の50～60ポイントは円安効果によるものです」と篠田氏</figcaption></figure>
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<h3><span class="strongInContent">米国のハイテク大型株の時価総額増加で「分散効果は低下」へ</span></h3>
<p>次の懸念材料は「分散効果の低下」だ。冒頭に述べたように、現状、【S&amp;P500】よりも【オルカン】の方が人気は高い。それは、【S&amp;P500】が米国株だけを投資対象としているのに対して、【オルカン】は新興国を含む世界の株式市場を対象とした、「分散投資」をしている点が支持されているからだ。教科書的にいうと、投資先の金融商品や地域を分散させる分散投資は、運用のリスクを抑えることができる。しかし、【オルカン】には投資対象の偏りが目立ってきているという。</p>
<p><span class="strongInContent">「おもな投資対象国の構成比をみると、米国63％、日本６％、英国４％、フランス３％程度と、米国に大きく偏っています。その原因は、米国市場で一部の大型株の時価総額が突出して増大したためです。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">例えば、アップル、マイクロソフト、アマゾン、アルファベットの４銘柄だけで、【オルカン】全体に占める時価総額の比率は10％を超えてます。分散投資の効果が弱まっている状態といえます」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="リスクを抑えて効率的に運用したい人には…"></div>
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<p>株式の時価総額は、「株価×発行済株式数」で算出され、一般的には企業の規模を示すとされる。そして、ほとんどの株価指数は時価総額をベースにして構成される。そのため、時価総額の大きな株式市場と銘柄の構成比率は上昇し、偏りができることで、ファンドのリスクが上昇してしまう。</p>
<p><span class="strongInContent">「インデックスファンドは低コストで、効率よく分散効果が期待できる投資方法ですが、近年、分散度合いが低下している点は留意すべきです。インデックス運用の限界を示しているともいえるでしょうか」</span></p>
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<h3><span class="strongInContent">国内株の「アクティブファンド」も選択肢に</span></h3>
<p>では、そうした弱点を理解した上で、実際の投資はどうしたらよいのだろうか？</p>
<p><span class="strongInContent">「今後、少なくとも10年程度は使う予定がない余裕資金なら、【オールカントリー】や【S&amp;P500】だけに投資しても問題はないと思います。但し、その場合は、積み立てをして投資タイミングの分散を図り、長期にわたって投資を継続することで、リスクを抑制することが鉄則となります」</span></p>
<p>また、すでに【オルカン】や【S&amp;P500】の積立投資をしている人で、もう少しリスクを抑えて効率的に運用したいという人には、国内株式の「アクティブファンド」を組み合わせることを提案する。アクティブファンドは、さまざまなタイプがあるが、基本的には指標（インデックス）を上回る運用成果を目指す投資信託のことだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「日本の株式市場は、米国に比べると、アクティブファンドがインデックスに〝勝ちやすい〟マーケットです。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">個人投資家が直接為替リスクを負わなくとも、投資先の企業が為替リスクを負ってくれるという側面もあり、【オルカン】や【S&amp;P500】に組み合わせれば分散投資効果の向上が期待できるでしょう。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">アクティブファンドと聞くと、運用コストである運用管理費用がインデックスファンドよりも高いため、選択肢から外す人が少なくありません。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">しかし、コストを考慮してもインデックスを上回る成果を出しているものは何本もあります。そうした超過リターンを得られる可能性を捨ててしまうのは、もったいない」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
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<p>そこで、篠田さんに、組み合わせに向く国内株のアクティブファンドをピックアップしてもらった。組み合わせる際の投資金額は、【オルカン】や【S&amp;P500】の半分程度が目安になるという。ぜひ参考にして欲しい。</p>
<figure id="attachment_361992" aria-describedby="caption-attachment-361992" style="width: 1399px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="7fbf3803"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/03/8ecb2c4cc06cd54710d3dea805c9dce8.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-361992" class="wp-caption-text">【オルカン】【S&amp;P500】との組み合わせに向く日本株アクティブファンド（※リターンの数字は’24年１月末まで）</figcaption></figure>
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マネーライター、ファイナンシャルプランナー／証券会社のマーケットアナリストを経て、1996年に独立。ビジネス誌や経済誌を中心に金融、資産運用の記事を執筆。著書に『ロボアドバイザー投資１年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる！ キャッシュレス決済で絶対得する本 』。

松岡賢治

「NISAでは何に投資すべきか？」――このテーマで必ず挙がるのは【オールカントリー】や【S&P500】といったインデックスファンド。しかし、見えにくくなっている〝弱点〟があると専門家は指摘する。

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