<h3><span class="strongInContent">「漬物」製造が許可制に…手作りの漬物の販売が難しくなる…</span></h3>
<p>今、漬物業界が危機に瀕している。食品衛生法改正に伴い、漬物製造が許可制となり、衛生基準を満たす施設などが必要になったことで、これまで全国各地の道の駅などに出品されてきた農家の人が自宅や作業場などで仕込んでいた手作り漬物の販売が難しくなるのだ。</p>
<p>改正法は’21年に施行。今年６月１日には経過措置期間の３年を終え、全面実施になる。</p>
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<figure id="attachment_362686" aria-describedby="caption-attachment-362686" style="width: 5760px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="124b1a12"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/03/027993642c66df0bc9abf1db6eb65db4.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-362686" class="wp-caption-text">昔ながらの「梅干し」が絶滅の危機に…その訳は</figcaption></figure>
<p>このニュースでは、廃業を決めた農家をはじめ、悲痛な声が多く取り上げられていたが、何か手立てがないのか。そう思っていたところ、１月11日にＸ（旧Twitter）で見つけたのが、以下の投稿だった。</p>
<p><span class="strongInContent">「漬物製造業許可を既に取得している／新たに取得できる場合は、もちろん販売を続けられます。しかし、漬ける設備について色々と定めがあるため、個人で自宅で漬けてたような方にとっては費用負担も多く、ハードルが高いものになります。梅ボーイズは4000万円かけて新製造所を建てました」</span></p>
<p>これは、和歌山県日高郡みなべ町の「梅ボーイズ」のリーダー、山<wbr></wbr>本将志郎さんによるつぶやきだ。</p>
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<h3><span class="strongInContent">大学院を中退し、「塩と紫蘇」で漬ける昔ながらの梅干しの研究を開始</span></h3>
<p>山本さんは５代続く梅農家で育ち、北大薬学部で研究をしていたが、農園を継いだ長男が「梅を栽培した後は、どの梅も甘い調味液で均一な味になるからやりがいが感じられない」と語ったことを機に、塩と紫蘇だけで漬ける昔ながらのシンプルな梅干しの研究を開始。大学院を中退し、梅干し屋を始めたという。</p>
<p>そもそも山本さんは今回の法改正をどうとらえているのかと聞くと、意外な答えが返ってきた。</p>
<p><span class="strongInContent">「これまでは漬物製造の届け出で良かったところ、許可制にすることで、それを厳しくしようという動きが今回の改正だと思います。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">ただ、梅干しの場合はこれまであまり聞いたことがないものの、白菜漬けや浅漬けのような塩分濃度の高くない漬物の場合、実際に食中毒が起きた事例はあるので、納得の部分もあるんです」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<h3><span class="strongInContent">専用の調理場が必要に…「最低でも150万円以上かかってしまう」</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p>届け出から許可制に変わる大きな違いは、専用の調理場を設けることが義務付けられること。具体的には、シンクが２つ必要になることと、場内にトイレが必要<wbr></wbr>になるという違いがある。これまで家のちょっとしたスペースで漬けていた人も多いため、住居と別に製造加工場を作らないと、漬けられないようになるというのが実情だ。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="日本各地の梅産地や梅文化が危機に…"></div>
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<p><span class="strongInContent">「専用の調理場を設けることについては、住居と一緒だと、ペットを飼っている場合もありますし、衛生基準はその人の感覚に左右されてしまうので、仕方ないところはあると思います。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">ただ、問題は、漬物を作っているのが、基本的に70代以上の高齢の方が大多数だということ。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">そうした中でも、例えば梅干しの場合、和歌山県は基本的に専業の梅農家ばかりなので、設備投資を頑張ろうかという人が多いですが、和歌山以外では専業でやっている人は少ないんです。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">そうした状況で、設備を変えるとなると、最低でも150万円以上かかってしまう。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">高齢者たちが150万円を設備投資に使い、その分の利益を得られるかというと、かなり厳しいと思うんですよ。実際、愛知の事業者さんなどにも話を聞きましたが、みんなもう諦めるかというムードだそうです」</span></p>
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<p>そんな中、「梅ボーイズ」にも他県から「梅を送るので、加工できませんか」という相談が来るという。完全に廃業するのではなく、製造を諦め、梅の出荷という形で和歌山の梅農家とつながる形を検討しているところもあるようだが、送料の問題もある。</p>
<figure id="attachment_362687" aria-describedby="caption-attachment-362687" style="width: 4608px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="350b3d0b"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/03/aba12ede081f74fff0bb20d2c2373c70.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-362687" class="wp-caption-text">「実は新潟や三重、愛知をはじめ、日本にはすごくたくさんの品種の梅があって、全国では全く知られていないような地域でも梅の産地として存在するんです」と山本さん</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">「僕たちが設備投資し、水道面だけ整えて共同経営という形にすれば、みんな使えるようになるんじゃないかと」</span></h3>
<p><span class="strongInContent">「実は新潟や三重、愛知をはじめ、日本にはすごくたくさんの品種の梅があって、全国では全く知られていないような地域でも梅の産地として存在するんですよ。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">そんな中、誰も設備投資をしないとなると、その地域の梅産地も梅文化もなくなってしまう。産地の漬物や文化がなくなってしまうのは問題だと思います」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>しかし、高齢者の多い産業ゆえに、諦めムードが蔓延している中、「法律に則った上でなんとかしていくしかないかな」と思ったという山本さん。今、進めているのは各地域にみんなで使える製造所を作ることだと話す。</p>
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<p><span class="strongInContent">「今回の法改正で、設備が足りず、許可が下りないという農家さんでは今後、梅の栽培だけ継続して梅を生のままJAなどに出荷する予定の方が多いんですね。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">そうすると、これまでの設備はおそらく空いてくるので、そういった設備に150万円とか200万円とかで水道面だけ整えた上で加工場にできないかと計画しています。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">大きな倉庫を持っている農家さんもいるはずなので、そこで僕たちが設備投資し、水道面だけ整えて共同経営という形にすれば、みんな使えるようになるんじゃないかと。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">その上で販路なども一緒に考えていこうと思います。やはり送料の問題もあるので、ある程度の設備があるなら、加工も自分のところでやるのが一番良いと思うんです」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="地域の梅は地域で漬けて…"></div>
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<p>実際、小田原では法改正を機に梅干し作りを辞める高齢の方がたくさんいるという相談を受け、定期的に連絡を取りつつ、一緒に組める人を探しに小田原に足を運んでいるという。</p>
<p><span class="strongInContent">「自治体によってはこの法改正に合わせて、設備投資に補助金を出すところもありますが、２分の１とかが多いですね。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">それでもありがたいことですが、70代が50％以上という農家さんの年齢を考えると、150万円かけてまで続けようという人は少ないでしょう。そもそも年齢的に銀行の融資がなかなか下りないでしょうし」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<figure id="attachment_362688" aria-describedby="caption-attachment-362688" style="width: 4496px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="32999ab4"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/03/981e1d868c6352d09dfc4bf16752b19c.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-362688" class="wp-caption-text">梅ボーイズには現在、梅を一緒に作りたいという若者などがどんどん移住してきており、若い梅農家が増えてきているという</figcaption></figure>
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<h3><span class="strongInContent">地域の梅は地域で漬けて、その地域のみんなに愛されて食べられる方がいい…</span></h3>
<p>山本さんが今、考えているのは、全国に梅干し製造所を作ること。</p>
<p><span class="strongInContent">「たいそうな設備が必要なわけではないので、廃業を考えている高齢の農家さんたちの水道まわりの設備投資をこちらが負担することで、共同経営の加工場としていきたい。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p><span class="strongInContent">和歌山に梅を送るから漬けてよという声もありますが、地域の梅は地域で漬けて、その地域のみんなに愛されて食べられる方がいいですから。今後は、クラウドファンディングで全国に製造場を建てていく予定です」</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<p>ちなみに、梅ボーイズには現在、梅を一緒に作りたいという若者などがどんどん移住してきており、若い梅農家が増えてきているという。</p>
<p>法改正で諦め、廃業しようとする高齢者たちと、「酸っぱい梅干し」を作り、自分たちのブランドとして育てていきたい若者たちの架け橋が、少しずつ作られてきているようだ。</p>
<figure id="attachment_362689" aria-describedby="caption-attachment-362689" style="width: 2048px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="df1d347d"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/03/e0bad742602a0b8699f444c9cdbe17a6.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-362689" class="wp-caption-text">３月４日には、和歌山県が主催する「プレミア和歌山」で審査員特別賞（最優秀賞）も受賞！　写真中央が山本さん</figcaption></figure>
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<p><a href="https://umenokuni.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer"><span class="strongInContent">■『梅ボーイズ』のHP</span>はコチラ</a></p>
<p><a href="https://camp-fire.jp/projects/742132/preview?token=ftwhxq73&amp;utm_campaign=cp_po_share_c_msg_mypage_projects_show" target="_blank" rel="noopener">■クラウドファンディング<span class="strongInContent">「</span><span class="strongInContent">無添加梅干しの継承！全国の梅産地に梅干し製造所をつくる！」</span>が、３月29日にスタート！</a></p>
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田幸和歌子

今、漬物業界が危機に瀕している。食品衛生法改正に伴い、漬物製造が許可制となり、これまで全国各地の道の駅などに出品されてきた農家の人が自宅や作業場などで仕込んでいた手作り漬物の販売が難しくなるのだ。

道の駅にある「農家の梅干し」が絶滅する日…日本各地の梅産地や梅文化が消滅の危機に

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