残すべきか撤去するべきか ルポ3.11「震災遺構」の8年
フォトルポルタージュ いまだに答えの出ない国民的課題
陸前高田 奇跡の一本松
枯死状態で保存
大津波に耐えながらも長時間、海水に没したため枯死。現在は心棒を通し防腐作業を施した形で自立している
2011
2019
「震災遺構を残すか壊すかは、本当に難しい問題です。私も被災地のひとつである岩手県大槌に赴きましたが、あの傷ついた庁舎は結局、撤去されることになりました。時間が経つことで、自然とどれが残るかは決まってくるものなのでしょう」
岩手県花巻の出身である宗教学者・山折哲雄氏はこう語る。震災から8年。時の流れは様々な変化をもたらしている。
「震災直後は、死者を悼む言葉(挽歌(ばんか))しかありませんでした。しかし8年が経ち、親族を失い悲しみに耐えながら日々を過ごす人々の心情は、いつまでも愛しているよ、という思い(相聞歌(そうもんか))へと変わってきたように感じるのです」(山折氏)
それが時間というものかもしれない。
南三陸 防災対策庁舎
’31年まで県が管理
’13年度中に解体される予定だったが、震災遺構保存の動きにより県が’31年まで管理することに。以後はまだ未定
2011
2019
気仙沼 第18共徳丸
解体撤去
市街地に打ち上がった大型漁船。保存の声もあったが市民の7割の支持で’13年9月から解体撤去され、今は更地に
2011
2019
- 撮影:佐藤浩視(2019)、濱﨑慎治(2011陸前高田、気仙沼)、小檜山毅彦(2011南三陸)