<h3><span class="strongInContent">運用期間が長い「投資信託」だから、その差は大きい！</span><span class="strongInContent"> </span></h3>
<p>この３月の法改正を受け、大手ネット証券各社は「クレカ積立」の限度額を相次いで引き上げた。クレカ積立とは、クレジットカード決済で投資信託の積立投資ができるサービスで、積立金額に応じて「ポイントが還元」される。但し、ポイント還元率は証券会社ごとに異なり、その差は決して小さくはない。今最もおトクなネット証券はどこか？　マネーライターの松岡賢治氏が解説する。</p>
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<figure id="attachment_364922" aria-describedby="caption-attachment-364922" style="width: 640px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ada2f768"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/03/125d85eb05da972bc21dcd763daccc65-1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-364922" class="wp-caption-text">「クレカ積立」の上限額が月５万円から10万円に引き上げられたが…</figcaption></figure>
<h3><span class="strongInContent">NISA「つみたて投資枠」の上限10万円分のポイント還元も</span></h3>
<p>’24年３月８日、「金融商品取引業等に関する内閣府令」が改正され、クレカ積立の上限額が月５万円から10万円に引き上げられた。今年からスタートしたNISAの「つみたて投資枠」の上限が10万円となったことに対応した措置であることは言うまでもない。これでNISAの積立額を増やす個人投資家も少なくないだろう。</p>
<p>そこで、改めて注目してほしいのがネット証券各社のクレカ積立の内容。会社によって、または決済に使うクレカによってポイント還元率は異なるからだ。さらに、投資信託の保有金額に付与される《保有ポイント》もある。できれば、最も効率的にポイントが貯まるネット証券を選びたい。</p>
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<h3><span class="strongInContent">《クレカ積立の購入ポイント》と《保有ポイント》…「オルカン」でネット証券５社の還元率を比較する</span></h3>
<p>まずは、ネット証券ごとに、年会費無料の《クレカを使ったときのポイント還元率》と《保有ポイント》をシンプルな表にまとめてみた。《保有ポイント》は、投資信託ごとに細かく設定されているので、個々の比較をするとキリがない。そのため、現在、NISAでいちばん人気のある<span class="strongInContent">『eMAXIS Slim 全世界株式（オール・カントリー）』（通称「オルカン」）</span>に投資した際の付与率とした。</p>
<figure id="attachment_364923" aria-describedby="caption-attachment-364923" style="width: 1216px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="de91de17"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/03/bb052652551396e066ed6dae5d7c509d-1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-364923" class="wp-caption-text">【主要ネット証券のポイント還元率】各社は、ライバルとの差を付けるため、あるいは見劣りを回避するために、サービス内容を様々な角度から調整している</figcaption></figure>
<p>例えば、【SBI証券】の場合、月10万円ずつ積立をすると、《積立時》に0.5％分の500ポイントを受け取れる。そして、積立後１ヵ月間の平均保有残高の0.0175％が《保有ポイント》として別途付与される、という仕組みだ。この0.0175％は年率なので１ヵ月分の付与率はおよそ0.0175％÷12ヵ月＝0.001458％となる。</p>
<p>この表を見ると、「最もおトクなのはマネックス証券」、「SBI証券と楽天証券ならSBI証券の方がお得」となるが、事はそう簡単ではない。各社は、ライバルとの差を付けるため、あるいは見劣りを回避するために、サービス内容を様々な角度から調整している。それが、どこの会社がおトクなのかを分かりづらくしている要因となっている。次に、<span class="strongInContent">この単純な表では説明しきれない、重要な補足をしていこう。</span><span class="strongInContent"> </span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="【SBI証券】よりも【楽天証券】の方がオトク？"></div>
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<h3><span class="strongInContent">実は【SBI証券】よりも【楽天証券】の方がオトク！？</span></h3>
<p>表では、【楽天証券】は保有ポイントが空欄となっているが、<span class="strongInContent">『eMAXIS Slim 全世界株式』</span>に対する保有ポイントが付かないだけで、「オールカントリー」タイプの別の投資信託には《保有ポイント》が付与される。それは<span class="strongInContent">『楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド』</span>だ。</p>
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<p><span class="strongInContent">『eMAXIS Slim 全世界株式』</span>と<span class="strongInContent">『楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド』</span>は、いずれも『MSCI オールカントリー・ワールド・インデックス （円換算ベース）』を指標としており、投資信託としての商品名が違うだけで中身は同じ商品である。【楽天証券】では、<span class="strongInContent">この『楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド』に対して、年率0.017％の《保有ポイント》を付与している</span>。</p>
<p>《保有ポイント》が0.017％だと、【SBI証券】の方がおトクに見えるが、さにあらず。『楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド』の保有コストである信託報酬は0.0561%（税込／以下同）であり、『eMAXIS Slim 全世界株式』の0.05775%よりも低い。つまり、<span class="strongInContent">《保有ポイント》を加味した実質的な保有コストは、『楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド』の0.0561%－0.017%＝0.0391%に対して、『eMAXIS Slim 全世界株式』は0.05775%－0.0175%＝0.04025%と、【楽天証券】に軍配が上がる。</span></p>
<p>まあ、このような〝ミクロレベル〟の差は騒ぎ立てるほどのことでもないが、【<span class="strongInContent">楽天証券】で『eMAXIS Slim 全世界株式』のクレカ積立をしている人は、これを機会に考え直すべき</span>だろう。積立の対象を『楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド』に変更すれば、《保有ポイント》をもらえるからだ。<span class="strongInContent">長年、『eMAXIS Slim 全世界株式』の積立をしてきた人が変更しても、問題は発生しない。中身が同じなので、積立投資の連続性は維持される</span>。</p>
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<p>【SBI証券】は、クレカ積立の限度額の引き上げ時期や、引き上げ後のポイント付与率などについては〝検討中〟なので、近々、サービス内容の変更があるかもしれない（現時点では、カードの種類によって還元率は最大５％までアップするが、５万円を超える積立額に適用される還元率はダウンする可能性が高い）。また、eMAXIS Slimシリーズは、「業界最低水準の運用コストを目指す」と謳っているため、信託報酬の引き下げなどがあり得る点には留意が必要だ。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="【auカブコム証券】は【マネックス証券】を逆転？"></div>
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<h3><span class="strongInContent">【</span><span class="strongInContent">au</span><span class="strongInContent">カブコム証券】は【マネックス証券】を逆転か！？</span></h3>
<p>SBI証券と楽天証券の“２強”に次ぐ２番手グループは、ポイント還元率では２強を上回っている。特に、【マネックス証券】は、還元率と保有ポイント付与率の合計で頭ひとつ抜けているが、限度額引き上げ後は【auカブコム証券】が有利になるケースが出てきた。</p>
<p>というのも、【マネックス証券】の1.1％は、積立額５万円以下に適用され、５万円超～７万円以下では0.6％、７万円超～10万円以下では0.2%にダウンするからだ。【auカブコム証券】は10万円まで１％が適用される。</p>
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<p>こうした条件を考慮すると、クレカ積立でもらえるポイントは、積立額６万2500円のときに【マネックス証券】と【auカブコム証券】が並ぶ。<span class="strongInContent">６万2500円未満は【マネックス証券】がおトク、６万2500円超なら【auカブコム証券】がおトク</span>、というわけだ。なお、<span class="strongInContent">マネックスカード</span>と<span class="strongInContent">au PAYカード</span>は、年会費はあるものの、クレカ積立を含む年１回の利用で無料となるので実質年会費無料のカードとした。</p>
<p>また、【PayPay証券】は、還元率を0.7％としているが、ポイント付与対象は５万円までで、５万円を超える積立分については、ポイントはつかない。マネックス証券、auカブコム証券と比較すると、見劣りするのは否めない。</p>
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<h3><span class="strongInContent">証券会社の投資信託の収益は信託報酬の３</span><span class="strongInContent">分の１</span></h3>
<p>ここで、保有ポイントの補足をしておきたい。【SBI証券】と【マネックス証券】の付与率が同じ0.0175%となっているのは偶然ではない。これが『eMAXIS Slim 全世界株式』の限界なのだ。</p>
<p>投資信託の信託報酬は保有残高に掛かるコストで、投資家が投資信託を保有する限り金融機関に支払う手数料である。一方の金融機関側からすると収益にあたる。オルカンの信託報酬は税抜だと0.0525%。これを、販売会社（＝証券会社）と運用会社、そして投資家の資金を預かる受託会社（＝信託銀行）の３つの金融機関が３等分して受け取るので、証券会社の〝取り分〟は0.0525%÷３＝0.0175%になる。</p>
<p>つまり、【<span class="strongInContent">SBI証券】と【マネックス証券】は、オルカンの売上げで得られる収益を、すべて保有ポイントとして投資家に差し出している</span>のだ。クレカ積立のポイント還元もあるので、サービスを続ける限り、オルカンは売れば売るほど赤字となる計算だ（それでもなぜサービスを続けるのかについては、過去記事の<a href="https://friday.kodansha.co.jp/article/337154" target="_blank" rel="noopener">「出遅れたドコモは巻き返せるか…赤字覚悟でも欲しい『新NISA』口座 見えてきた各社のポイント戦略」</a>を参照してほしい）。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="「ドコモマネックスホールディングス」の動向は…"></div>
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<h3><span class="strongInContent">「楽天・オールカントリー」の収益の仕組み</span></h3>
<p>【楽天証券】も事情は同じ。『楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド』の信託報酬は税抜で0.051％。３等分すると0.017％となり、保有ポイントと一致する。</p>
<p>但し、「楽天・オールカントリー」の場合、運用会社は楽天投信投資顧問なので、楽天グループとしてみれば利益を計上することが可能。逆に、楽天投信投資顧問の取り分があるからこそ、『eMAXIS Slim 全世界株式』を下回る信託報酬を実現した、ということができよう（<span class="strongInContent">『楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド』は楽天証券でのみ販売</span>）。</p>
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<h3><span class="strongInContent">いまだ音無しの構えの「ドコモマネックスホールディングス」の動向は?</span></h3>
<p>さて、’24年１月にドコモマネックスホールディングスが発足したが、まだNTTドコモと【マネックス証券】の相乗効果が出ているとは言い難い。「dカードによるクレカ積立の開始は今年夏頃」、「年内にdポイントでの保有ポイント付与」などのアナウンスはされており、早ければ５月の決算発表で、実施時期や還元率などの具体的な内容が発表される可能性はある。</p>
<p>但し、dカードでのサービスは、マネックスカードと同水準とする意向も示されており、ポイント還元の大盤振る舞いは期待できそうもない。おそらく、現在auが提供している<span class="strongInContent">『auマネ活プラン』</span>のような、新料金プランでアピールする作戦ではないだろうか。</p>
<p><span class="strongInContent">『auマネ活プラン』に加入すると、クレカ積立の還元率がau PAYカードは1.5％に、au PAY ゴールドカードは２％（初年度のみ３％）にそれぞれアップする。</span>’23年９月のスタート以降、好評を博しており、au PAY ゴールドカードの加入者も順調に増えているという。昨今のNISAの大ブームで、通信サービスと金融サービスをセットにしたプランには、利用者の大きなニーズがあることが判明している。</p>
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<p>前述したように、投資家に還元できるポイントの原資は限られている。ドコモは、新しいプランを作って、プラン自体の料金で少しでも元をとらないと、１％を超える還元率は設定しにくくなっているはずだ。</p>
<p>なお、<span class="strongInContent">【マネックス証券】は、現在、新規にNISA口座を開設した人を対象に、クレカ積立の還元率を2.2％にするというキャンペーンを行っている</span>（&#8217;24年９月末まで。積立額５万円超は<wbr></wbr>未定）。なかなか太っ腹なキャンペーンだが、投資家の期待値のハードルが上がっているのは間違いない。今夏、ドコモはどんなサービスを打ち出してくるか。内容次第では、他社にも影響が出るだろう。ライバル関係にある【auカブコム証券】は、保有ポイントで〝のりしろ〟を残しているので、この辺りにも動きがありそうだ。</p>


マネーライター、ファイナンシャルプランナー／証券会社のマーケットアナリストを経て、1996年に独立。ビジネス誌や経済誌を中心に金融、資産運用の記事を執筆。著書に『ロボアドバイザー投資１年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる！ キャッシュレス決済で絶対得する本 』。

松岡賢治

3月の法改正を受け、大手ネット証券各社は「クレカ積立」の限度額を相次いで引き上げた。しかし、ポイント還元率は証券会社ごとに異なり、その差は決して小さくはない。今最もおトクなネット証券はどこか？　

【NISA・クレカ積立】「オルカン」でポイント還元率を比較！今いちばんおトクなネット証券はどこだ

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