「私は所詮、ホストとしての彼しか知らなかった…」歌舞伎町から「卒業」した女性の切なすぎる実体験 | FRIDAYデジタル

「私は所詮、ホストとしての彼しか知らなかった…」歌舞伎町から「卒業」した女性の切なすぎる実体験

現役慶應大生ライターが描くぴえんなリアル 令和6年、歌舞伎町はいま……第87回

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所詮カネで結ばれた関係に過ぎないホストと客だが、別れはやはり切ないようだ
所詮カネで結ばれた関係に過ぎないホストと客だが、別れはやはり切ないようだ

先日、休学期間を含めて6年をかけてようやく慶應義塾大学の卒業式を迎えることができた筆者。慶應は卒業できてもいまだに歌舞伎町から出ることはできないのだが、歌舞伎町でも「卒業」が多発するのが3月だ。

「ホストにハマって大学を休学してたんですけど、同級生はどんどん就職先決めて、春から新生活していて。そういうのを見てたら目が覚めました」

そう語るサチカ(仮名・21)は地方出身の女子大生。入学直後は大学近辺で一人暮らしをしていたが、大学生ホストのシュン(仮名)にハマり休学。シュンと同棲するために大久保に家を借り、ホスト中心の生活を1年以上送っていた。

「私は担当に若い時間の全部を費やして、若いから大丈夫、留年くらいたいしたことないって思ってたんですけど。実際友達が卒業するってなるときついなって。

シュンも出会った頃は大学生だったけど、『本気でホストをやりたいから大学は辞める。お前も俺と一緒に本気になってほしい』って退学を勧められて。でも覚悟が決まらなくて休学にしたんですけど、マジ正解でした。彼は学歴がなくてもお金はあるけど、私は大学辞めてたらお金も学歴もないですから」

こうしてサチカはシュンから卒業することができたが、就活の息抜きに別のホストを指名し始めたという。彼女も筆者と同じく歌舞伎町は絶賛留年中の模様だ。

一方で、指名していたホストに「卒業された」女性もいる。ユイ(仮名・24)はその事実をまだ受け止めきれていない。

「指名半年くらいだったんですけど、本当に好きで。彼のために掛け持ちで夜の仕事も始めて。彼が大学生っていうのは聞いていたんですけど、夏頃に内定が決まったって言ってて。あ、これはお別れすることになるのかなって。そう覚悟しながらも、じゃあホストとしての彼の時間はできる限り一緒にいたい、って思って頑張ってました」

宣言通り、彼は2月末でホストを引退。ホストとして使っていたSNSもすべて削除されたという。

「ホストを辞めても、連絡くらいは取れるのかなって期待していた自分がいた。就職祝いとか、仕事の愚痴(ぐち)聞くとか、そういう関係ができたらいいなって勝手に思っていたんです。でも3月になって、彼の大学のリア垢(アカ)が流出したんです」

そこで突きつけられたのは彼の「リア充」な大学生活。サークルでもイケメンの先輩として後輩にモテ、休みには友人複数名と旅行。本人はアップしていなかったが、彼女らしきアカウントも同時に載せられていた。

「それを見た時は思わず泣きました。私は所詮ホストとしての彼しか知らなくて、彼の人生の本当に一時期の『バイト人生』にいた客でしかないんだなって。二度と会えないだろうし、彼はすごく真面目な子だったから歌舞伎町には戻ってこないと思う。でも新宿とか歩いたり、ホスト時代を思い出したりした時にちょっとでも私を思い出してくれたら……」

切ない話だが、「来月でホストを辞める。そしたら付き合おう」とすべての客に言ってカネを巻き上げたうえで連絡先を消して地元に帰るホストもいるので、ユイの指名ホストは誠実なほうである。

ただ、一時的にホスト業を「卒業」しても、結局歌舞伎町の外で挫折し、歌舞伎町に「出戻り」するホストも後を絶たない。業界的に締め付けが厳しいが、それ以上に厳しいのはホストを卒業した後のセカンドキャリアなのかもしれない。

本連載をまとめた新刊『ホスト!立ちんぼ!トー横!オーバードーズな人たち』(講談社)が好評発売中
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『FRIDAY』2024年3月29日号より

  • 取材・文佐々木チワワ

    ’00年、東京生まれ。小学校から高校まで都内の一貫校に通った後、慶應義塾大に進学。15歳から歌舞伎町に通っており、幅広い人脈を持つ。大学では社会学を研究していた。

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