<figure id="attachment_370219" aria-describedby="caption-attachment-370219" style="width: 2696px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="de461c65"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/04/2105daeb0d0bb24aab1ae384d1ac9f9c.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-370219" class="wp-caption-text">自衛官Aさんがある訓練の朝に配布された食事。これだけで午前中の訓練を乗り切ったのだという</figcaption></figure>
<figure id="attachment_370220" aria-describedby="caption-attachment-370220" style="width: 1944px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="292cd3d9"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/04/b19266201ca3eb2665c58f93cd56ba22.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-370220" class="wp-caption-text">自衛官Aさんが撮影した別の日の朝食。菓子パンのみで飲み物はなかったという</figcaption></figure>
<h3>食費は１日３食で978円……</h3>
<p>今年３月４日に元陸上自衛隊幹部学校主任教官の佐藤正久参議院議員（63）が参議院予算委員会で自衛隊員の食事について声をあげた。</p>
<p><span class="strongInContent">「（自衛隊員の食費は）１日３食で978円。この食材高で１日1000円もいっていません。民間企業で全寮制で１日1000円で募集して人が集まると思いますか。（中略）食堂でパンと納豆、被害総額175円を複数回とって、停職10日の処分。配食量が少なかったため、と述べているとのこと。総理、肉体労働の厳しい訓練を行う隊員にもう少し、私は食事を食べさせてあげたいと思いますよ」</span></p>
<p>佐藤議員が語った例は、’21年10月、航空自衛隊那覇基地の施設内の食堂でのこと。パンと納豆を既定量以上、複数回食べた隊員がいた。「被害総額175円」とは、パンと納豆を１回の食事の中で本来食べていい分量を超えて余分に食べた分の総額。停職処分を受けた３等空佐（40代男性）は余分に食べた理由として、「配食量が少なかった」と訴えていたという。わずか175円分、食べてしまったことが処分に発展したことで、これまで「ひもじい」と感じてきた自衛隊員は、これからも少ない食事で我慢を強いられることになっている。</p>
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<p>佐藤議員によると、自衛隊員の１日の食事代が978円に増額されたのは「水産物消費」のためだという。「水産物消費」とは、’23年９月１日の「我が国の水産物の消費拡大に向けた防衛省・自衛隊における取組について」という通達のこと。この時期、中国が東京電力福島第１原発のALPS処理水の海洋放出による食品への放射線汚染リスクを防ぐことを理由に日本の水産物輸入を停止したことを受け、自衛隊では国産海産物を積極的に消費するよう求めた文書だ。</p>
<p>ちなみにこの自衛隊の食費は未成年者の食費程度ではないかと考え、中学生を調べてみた。大阪市内の中学校の給食の日額が335円。給食は昼食だけなので、単純に３倍すると1005円となり、自衛隊とほぼ同等の値段になる。中学生の給食並みの栄養価で自衛隊員の身体能力を向上させることができるのか、疑問だ。</p>
<p>季節ごとに定期的に訓練の招集がある予備自衛官・即応予備自衛官たち（以下、予備自衛官と省略）の食事内容はさらにひもじい。予備自衛官は、ふだんは会社員や自営業、学生などの本業を持ちながら、有事や災害などの際に招集を受けて自衛官となって活動する非常勤の特別職国家公務員。本業の仕事がない休日に、訓練を自ら受けようという人たちの集まりだが、<span class="strongInContent">「国は彼らに対する敬意の欠片すらないのか」</span>と憤りを感じてしまうような食事内容なのだ。</p>
<p>自衛隊の食堂が休養日の土日に集中するため、朝は調理された料理が食べられず、弁当やパン等の粗食になりがちだ。ある予備自衛官Aさんは、朝食はおにぎり２個だけ、Bさんもある日の昼飯でオニギリ２個とウィンナー、コロッケと思われるもののみで凌ぐことを求められたという。自衛隊では以下の場合に食事が弁当やパンになる。</p>
<p>「土日祝日の朝」「食堂整備日（月に一日）」<br>
「駐屯地開放日等で弁当でないと都合が悪い日」<br>
「食中毒発生時（食堂閉鎖時）」</p>
<p>予備自衛官の１回の訓練期間は５日ほどと短く土日祝日が多いため、パンや弁当の確率がかなり上がる。粗末な食事でも我慢しようと思えばできるのだが、訓練に見合った十分な食事内容とはとても言えないだろう。</p>
<p>予備自衛官のAさんは「おかずもないが、とうとうお箸すらなくなった！」と落胆した。この写真を見た人の中には、「手を洗って食べればいいだけだ」「我慢できるだろう」と言う方々もいるのだろう。しかし彼らが自分の仕事を休んでまで国を護るための訓練に出頭している事実を忘れてはならないのではないか。</p>
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<div data-friday-nextpage-lead="大阪市の学校給食を実際見てみると……"></div>
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<figure id="attachment_370240" aria-describedby="caption-attachment-370240" style="width: 1313px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="33975d8d"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/04/833f367d618ff82e7061c47851386c2f.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-370240" class="wp-caption-text">大阪市が公表している学校給食（昼）の一例。ごはんだけでなく、豚肉のしょうが焼き、さつまいものみそ汁、切干しだいこんのゆずの香あえと自衛隊の訓練時の食事よりバラエティがある</figcaption></figure>
<figure id="attachment_370242" aria-describedby="caption-attachment-370242" style="width: 1317px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="df0a913c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/04/daf069d8ba7f5c35eeb617542bd50124.png" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-370242" class="wp-caption-text">大阪市が公表している学校給食の一例（昼）。パンにチキンレバーカツ、ケチャップ煮、ツナとキャベツのバジルソテー、オレンジだ</figcaption></figure>
<h3>業務委託しているのに自衛隊員が手伝う不思議</h3>
<p>ある幹部自衛官は「途方に暮れるしかない」と言ってこう嘆く。</p>
<p><span class="strongInContent">「関東で自衛隊が契約している食堂の外注業者は、調理員の賃金が最低賃金ギリギリなので調理員を募集しても人がなかなか集まらないそうです。その結果、駐屯地食堂に必要人数の調理員が集まらない日は自衛隊側が手伝っています。部外委託の契約なので自衛隊側が手伝ったら明確な契約（仕様書）違反です。その場合、『契約を履行できなかった』として業者に違約金を科す時もありますが、人件費を上げることに比べれば違約金を払うことは業者にとっては痛くもかゆくもない、と聞きます。業者に足元を見られているようで悔しいですが、ほかに仕事をしてくれる業者もいないので仕方ありません」</span></p>
<p>昨年９月に食堂運営会社「ホーユー」が倒産した影響を知る自衛官の家族は言う。</p>
<p><span class="strongInContent">「自衛隊（官公庁）の契約はとにかく一番安い業者を落札するので、このような『安かろう、悪かろう』に陥ります。それでも、調理されたご飯が食べられればまだいい」</span></p>
<p>外注業者が倒産してしまうようなギリギリの値段での食事内容でいいのだろうか？</p>
<div data-friday-nextpage-lead="上層部の「体面重視」の感覚"></div>
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<figure id="attachment_370223" aria-describedby="caption-attachment-370223" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="5b7149bf"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/04/9633f69a411c2990db044096cd8df136.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-370223" class="wp-caption-text">３月11日、鹿児島県沖永良部島で行われた日米共同訓練で米海兵隊員と行動する陸上自衛隊「水陸機動団」の隊員。このような厳しい訓練に耐えうる食事内容とは言えないだろう</figcaption></figure>
<h3>朝霞駐屯地が一週間、弁当だけだった時期があった理由</h3>
<p>自衛隊では災害派遣時や有事でもないのに、弁当やパンだけで一週間過ごすようなこともあったと聞いた。例えば朝霞駐屯地では、１月の東部方面隊創立64周年記念行事の準備期間の約一週間がずっと弁当だった。</p>
<p><span class="strongInContent">「創立記念行事のため、多数の部隊隊員が駐屯地に宿泊し、食堂のキャパをオーバーしてしまいました。記念行事のために食堂を会食場にすることも理由だったようです。でも外部から来た人だけでなく、朝霞駐屯地営内者ですら食堂で食べれなくなったそうです。この一週間の朝はパン、昼・夕連続弁当でした。かなりつらかったです。野菜不足で仕方なく、外出許可を受けて外で総菜を買う隊員も頻繁にいました」</span></p>
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<p>朝霞駐屯地は昨年度も複数回にわたって一週間もの間、朝はパン、昼食・夕食は弁当という日程が続いた。</p>
<p>現場の隊員の食事より行事の会食を優先する。方面総監部の上層部の体面重視の感覚が入隊者募集に大きく影響する。昔は自衛隊員の家族が「自衛隊員を目指しなさい」と縁故採用を推進した。しかし今は自衛隊員の家族が「自衛隊にだけは入るな」と止める時代だ。ご飯すら十分でない自衛隊に入隊者は来ない。</p>
<p>朝霞駐屯地の自衛官教育隊への新入隊員（自衛官候補生・一般曹候補生）は２年前が約600名、昨年が300名、今年はさらに減って一般曹候補生164人＋自衛官候補生63人で合計227人しか入隊しなかった。「終わりの始まりか」と朝霞駐屯地を知る自衛隊関係者が嘆いた。</p>
<p>今年１月30日、第213回国会での施政方針演説で岸田内閣総理大臣は<span class="strongInContent">「我が国が戦後最も厳しい安全保障環境のただ中にあることを踏まえ、防衛力の抜本的強化を着実に具体化し、自衛隊員の生活・勤務環境、処遇の向上にも取り組みます」</span>と言った。せめてご飯くらいは十分に食べることができる自衛隊にしなければ、人員不足に歯止めがかからない人的基盤の強化などは到底、望めない。</p>
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<figure id="attachment_370221" aria-describedby="caption-attachment-370221" style="width: 2039px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="fe191a89"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/04/b08afb1e4adb1d3bfa87f25dff580307.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-370221" class="wp-caption-text">Aさんとは別の場所で訓練した自衛官Bさんが撮影したある日の昼食</figcaption></figure>
<figure id="attachment_370222" aria-describedby="caption-attachment-370222" style="width: 1600px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c84cb887"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/04/66de0342822527e88a710e8fed9c56cb.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-370222" class="wp-caption-text">Aさん、Bさんとも違う場所で訓練したCさん撮影の夕飯。「久しぶりにお腹いっぱい食べた」（Cさん）というがよく見ると肉はほとんど入っておらず、野菜でお腹を満たす献立だ</figcaption></figure>


国防ジャーナリスト。関西外国語大学卒業後、フリーライターとして自衛隊や安全保障問題を中心に活動。19年刊行の著書『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。公益財団法人アパ日本再興財団主催・第十五回「真の近現代史観」懸賞論文で最優秀藤誠志賞を受賞。産経新聞社「新聞に喝！」のコラムを担当

小笠原理恵

大阪市公式HP（３，4枚目）（共同通信社（5枚目）

自衛官や、季節ごとに定期的に訓練の招集がある予備自衛官の「ひもじい」食事情が明らかになった。１日の食事代978円は、大阪市内の中学生の給食より安い。これで国を護れるのだろうか。

自衛隊員、予備自衛官１日の食事代は大阪の中学生給食以下？国を護るにはあまりに「ひもじい」食事写真

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