1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマに関するコラムを様々な媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』（太田出版）など。

田幸 和歌子

<h3>山﨑賢人主演作・草彅剛主演作…２つの大作に重要な役どころで出演</h3>
この春、山﨑賢人主演×佐藤嗣麻子監督の『陰陽師０』と、草彅剛主演×白石和彌監督の『碁盤斬り』という２つの大作に重要な役どころで出演している國村隼。国際派俳優で、とぼけた味わいの「おっちゃん」からコワモテのヤクザ、医師や普通の父親などまで幅広く演じる名優だが、実は意外にも「天然ボケ」なのだという。そんな彼に作品選びのこと、共演者のこと、芝居のことをたっぷり語ってもらった。
<figure id="attachment_372884" aria-describedby="caption-attachment-372884" style="width: 4096px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c3575b64"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/05/22858a3c24028cf2e39461d897915785.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-372884" class="wp-caption-text">実は意外にも「天然ボケ」なのだという國村隼さん</figcaption></figure>
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――『陰陽師０』と『碁盤斬り』は全く異なるジャンルの作品ながら、どちらも主人公を見守る・導く、時に対峙する役どころですね。出演の決め手はどんなことでしたか。
國村隼（以下　國村）　基本どんなお仕事をお受けするときも、ベースになるのは脚本で、どんな世界でどんな感性かということは一番気にします。 
そういう意味ではどちらの作品も非常に面白いんですが、別の要素もあります。例えば『陰陽師０』の場合、佐藤嗣麻子監督とは金城武君と一緒にやった『K-20 怪人二十面相・伝』（’08年）に続いて今回２回目になるんですね。 
嗣麻子さんとはすごく波長も合うし、嗣麻子さんは陰陽師とか呪術の世界が大好きで詳しい人だから、そういう人が作るなら面白いな、と。夢枕獏さんの小説の世界に至るまでの若き日の安倍晴明をやるということにも興味を持ちました。 
一方、『碁盤斬り』も本がすごく面白く、もともと川島雄三監督の『幕末太陽傳』が大好きで、これが同じように落語ベースのいろんなエピソードを１つにまとめている面白い世界観の作品なんです。だから是非やってみたかったんですね。 
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<h3>山﨑賢人さんの印象は…「ちょっと浮世離れした感じで」</h3>
――『陰陽師０』で晴明を演じた山﨑賢人さんには、どんな印象を持ちましたか。
國村　以前も親子役など、何度か共演しているので、役者としてのお互いの感じや距離感はわかっていて、改めて何か考えることなくお互いのキャラクターを現場でぶつけ合う、一緒にコラボするような感じでしたね。
――山﨑さんの魅力はどんなところでしょうか。
國村　この晴明という人も、彼自身も、ちょっと浮世離れした感じを持っているんですね。彼はコミックベースの作品をたくさんやられていて、似合うでしょう？　ああいう存在感を出せる俳優さんって、彼以外にあまり知らないんですよ。彼はいろいろできる人ですが、ちょっと浮世離れした面白さと現実感を良いバランスで持っているなと思います。
――舞台挨拶でも天然ぶりで会場を盛り上げていらっしゃいました。
國村　（笑）。彼は現場でも自分自身の素の部分を隠そうとしない、飾ろうと一切しないんです。僕自身もどっちかというとそういう人が好きなんですよ。 
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<h3>草彅剛さんは…「自分の世界にしっかり入っていると感じることが多いですね」 </h3>
――飾らない・作らないということでは、『碁盤斬り』主演の草彅剛さんにもそうしたイメージがあります。
國村　草彅さんの場合は、飾らないけど、どこか自分自身をあまりさらけ出さないところもあるようです。現場でも草彅さんのほうからいろいろ喋りかけてきてくれるときもありますが、自分の世界にしっかり入っていると感じることが多いですね。 
――『碁盤斬り』ではそんな草彅さんと碁盤を挟んで対峙するやりとりが見どころの一つですね。言葉を介してではなく、打ち合いによって、心情の変化や関係性の変化などが見えてくる面白さがありました。
國村　碁盤を挟んで対局する者同士というと、例えば「碁敵（ごがたき／同じ程度の力量で、いつも買ったり負けたりしている囲碁の相手。好敵手）」という言葉がありますよね。 
同じ盤面で争うものでも「将棋敵」とか「チェス敵」とかはない。碁は、白と黒の石で陣地取りをする、ある意味ものすごくシンプルな世界なんですよね。 
そんな中、草彅さん扮する柳田格之進という浪人と僕が演じている萬屋源兵衛は、親友ともライバルとも最初は違うんですが、碁を打つことでお互いの人間性の部分に深く踏み込んだところで結ばれる関係性なんです。そこにはある種の強さがあるだろうし、お互い影響し合う関係性であろうと。 
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――草彅さんは、國村さんとのラブストーリーとおっしゃっていますもんね（笑）。
國村　源兵衛さんは格之進に一発でインスパイアされちゃいますからね（笑）。 
格之進は侍で、自分の中に１つしっかりしたものを持っているからこそ、今は貧しく浪人であってもそこから源兵衛は受け取れるものがあるんでしょう。実際、物語も落語がベースにありながら、彼自身の世界がどんどん変わっていく。 亡くなった妻のための復讐モノであり、彼の成長物語でもあるんですね。
――落語とハードボイルドは、いずれも人情モノとして、実は相性がいいんだと思いました。
國村　碁盤を挟んだやりとりで、格之進の心がどんどん変わっていって、人の心の機微みたいなことに反応するようになる。最後、彼がある選択をするわけですが、そこに至る心情の変化が大きな魅力になっているんじゃないかと思います。
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――実は國村さんはこの作品で、笑いや愛らしさを担う役柄でもありますね（笑）。
國村　実は白石監督も撮影しているときに「ここ（終盤）は大変な芝居かな、ここでとぼけた味を出すのはなかなか難しいだろうなと思ったけど、國村さんがおやりになるのを見て、これで良いんだと思った」とおっしゃっていました（笑）。 
頭の中は碁の勝負でいっぱいで、でも漏れる漏れる……というとき、頭の中からポンと大事なことが抜けてしまうようなことはあるな、と。 
白石監督は理詰めで突き詰めていくタイプでありながら、そういう役者の思いがけないパフォーマンスもちゃんと受け入れてくれる方なのが嬉しいですね。 
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<h3>「人から言わせると僕は、結構な天然らしいですよ（笑）」</h3>
――落語ベースなだけに、源兵衛さんの天然ボケが光りますが、國村さんご自身にも天然ボケなところはありますか。
國村　自覚はあまりないんですが、人から言わせると僕は、結構な天然らしいですよ（笑）。ちゃんとツッコミのタチ（性質）の人から言わせると、「（天然だと）自覚くらいは持って動け」と言われることが結構ありますから（笑）。 
<figure id="attachment_372886" aria-describedby="caption-attachment-372886" style="width: 4666px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f6384085"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/05/39206ba0f505a5c5dd1f9fee47feea83.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-372886" class="wp-caption-text">「ぜひ、碁盤を挟んだ草彅君との、そのときどきのリズムの違いなども楽しんでほしいですね」と國村隼さん</figcaption></figure>
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――それは意外です（笑）。そう思うと、『碁盤斬り』で碁盤を挟んで対峙された草彅さんとも相通じるところがありますか。
國村　どうやろ。彼はわりとしっかりしているんじゃないですか。
――バラエティなどで見せる天然で自由な草彅さんの印象が強いです。
國村　確かにそういう面もお持ちだと思いますけど、ただ、バラエティとかで鍛えられているだろうし、 彼はお芝居だけやっているわけじゃないので、いろんな神経の遣い方も含め、僕なんかが到底できないことをやってらっしゃると思います。
――草彅さんとはNHKの宮城発地域ドラマ『ペペロンチーノ』でも共演されていましたが、草彅さんの役者としての魅力を今回改めてどう感じましたか。
國村　やっぱり集中力ですね 。僕みたいに演りながらどっかでちょこちょこ考えて遊んだりはしないタイプですね。 
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<h3>「演りながら遊ぶ」</h3>
――「演りながら遊ぶ」というのは、ベテランの余裕でしょうか。
國村　余裕というわけではないんですけど、ずっとやってきた中で自分自身がどんどん変わっていってそうなっていることは間違いないです。 
最初は余裕がなく、自分が考えてきたものを一生懸命そこで表現しようとしていましたが、だんだんとカットからカットまでの間どうやって居ようかなと思うようになりました。 
芝居やパフォーマンスを、ある人は「リアクション」と言いますし、その要素もあると思うんですけど、僕の場合は先ず感じることやと思うんです。そのときの空気感もそうだし、カットからカットまでを何度も同じ相手と重ねていく中で、同じ状況はお互い絶対ないですから。 
まず感じることが一番大事だろうし、感じたら当然リアクションも出てくるし、そういう相手との毎回毎回異なる状況を面白がれるかどうかが今の自分の居方かな。 
でも、草彅さんの場合、集中しているときに違う要素がポンと入ってくると、出直したいという考え方なんですね。僕の場合、入り口は１つでも、出口はどこに出てくるのかわからないのが面白いと思うほうで、そうした違いも一緒にやっていて楽しめる部分ではあります。 
<div data-friday-nextpage-lead="芝居と車は似ている…"></div>
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――國村さんは車好きとしても知られていますが、インタビューでお芝居と車が似ているとおっしゃっていたこともありますね。
國村　映画を作る、エンターテインメントを作るという、モノ作りの工程は似通っているんじゃないかというのは思います。 
例えば新しい車を作ろうと思ったとき、どんな車を作るのか、ファミリーカーなのかスポーツカーなのかというところから始まり、最終値段はいくらぐらいにするんだといったいろんな要素が入って、いろんな過程を経る。 
映画を作るのも、例えば脚本は車作りにおける設計図やと思うんです。 
設計図が優れていないと、出来上がったものは高いクオリティにならない。そういう意味でも設計図のクオリティはそのまま出来上がりに反映されてくると思うんですよ。
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――優れた設計図をもとに、さらに遊んでみたくなることもありますか。
國村　日本語でのセリフというものは便利で、点とか接続詞とかが多少変わったとしても、意味やニュアンスは大きくは変わってこない。 
例えば『碁盤斬り』なら、草彅君と碁盤を挟んでやりとりするシーンで、リズムが毎回違うんですよ。リズムが違うということは、セリフの音の数が違うので、時にはそのシーンの映像に合わないときもある。 
そうすると、リズムにのっとって、例えば一部分を省いたり、接続詞を短くしたり、順序を入れ替えたりしたほうが、映像のリズムに合うときがあるんですね。 
台本に書かれていることをその通り喋ろうとすることにはあまり意味がない。『碁盤斬り』をご覧いただくときには、ぜひ碁盤を挟んだ草彅君とのそのときどきのリズムの違いなども楽しんでほしいですね。 
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田幸和歌子

アフロ（1枚目）

この春、山﨑賢人主演『陰陽師０』と、草彅剛主演『碁盤斬り』という２つの大作に重要な役どころで出演している國村隼さん。作品選びのこと、共演者のこと、芝居のことをたっぷり語ってもらった。

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