<h3><span class="strongInContent">日本の隅々までインバウンドが訪れている訳じゃない…</span></h3>
<p>コロナ後の反動と円安の影響で、日本を訪れるインバウンドの数が急増している。特に、東京や京都、大阪、福岡、札幌などでインバウンドの姿がよく目に付く。</p>
<p>日本政府観光局（JNTO）の発表によると、訪日外客数は直近の’24年３月・４月の２ヵ月連続で300万人超え。中国本土からの旅行客がまだ戻っていない中、すでにコロナ禍前の’19年より多い。国別では、韓国やインドネシア、米国などの増加に加え、４月にはフランス、イタリア、中東地域で単月過去最高を記録したという。</p>
<p>しかし、日本の隅々までインバウンドが訪れているかというと、実際そうでもない。都市部だけでも、インバウンド誘致の「勝ち組」「負け組」に、はっきりと分かれてきている。</p>
<figure id="attachment_376750" aria-describedby="caption-attachment-376750" style="width: 3858px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a52b3cc8"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/06/ad38c121ce6903e83dfb807e439d4d6d.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-376750" class="wp-caption-text">昔から、観光地や観光名所が少ないといわれてきた名古屋だが…（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
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<h3><span class="strongInContent">インバウンドが見あたらない「名古屋」…その理由を現地で聞くと</span></h3>
<p>筆者は５月半ば、名古屋を訪れた。その際、他の都市部と比べ、インバウンドの姿を見かけることが圧倒的に少ないのに気づいた。</p>
<p>例えば、４月23日にグランドオープンした「中日ビル」は、平日にもかかわらず、話題の店舗などで入場待ちができるほど大勢の人が来ていたものの、よく見ると地元の人々ばかりだった。日本一元気な商店街といわれる「大須商店街」も、大型連休時こそ日本人旅行客で賑わったと聞いたが、平日夕方はインバウンドの姿は皆無だった。</p>
<figure id="attachment_376751" aria-describedby="caption-attachment-376751" style="width: 1800px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="8be2b009"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/06/2a75133b845a15fc3302c5d1a70827ce.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-376751" class="wp-caption-text">名古屋市の大須商店街。週末や大型連休時は旅行客で賑わうが、平日は少ない。特に欧米系は皆無に近い</figcaption></figure>
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<p>名古屋で観光業に携わる人々に聞いて印象的だったのが、「インバウンド向けのPRができていない、してこなかったツケが今まさに回ってきている」との言葉だった。まず、愛知県と名古屋市のトップ同士が仲良くないのは、先の愛知県知事へのリコール運動やその後の騒動などで周知の通り。これが県と市のさまざまな連携に少なからず影響があるという。</p>
<p>また、「愛知県はまだ頑張っている、名古屋市はPRが下手」という声も聞かれる。名古屋市観光客・宿泊客動向調査（’22年）によると、名古屋に観光地としての魅力を感じない理由として、「他の観光都市と比べて観光イメージが希薄であること」（58.6％）、「魅力ある観光施設が少ないこと」（29.3％）が上位に。ちなみに、名古屋市内の人気施設は「バンテリンドームナゴヤ」（年間入場者数・約303万人）、「東山動植物園」（同・約225万人）、「名古屋港水族館」（同・約184万人）で、インバウンド向けとは言い難い施設が並ぶ。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="名古屋の７月の週末のホテル価格が…"></div>
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<h3><span class="strongInContent">名古屋の７月の週末のホテル価格は、大阪・札幌の約半額！？</span></h3>
<p>では、名古屋にインバウンドが全く来ていないかというと、実際そうでもない。中部国際空港（セントレア）が発表した’23年の年間航空旅客数（速報値）によると、国際線は257万人とコロナ後の需要回復で大幅増加し、’19年の63％の水準まで戻っている。韓国や台湾などを中心に再開し、新規就航も広がる。５月31日には、フィンエアーの名古屋－ヘルシンキ線が、週２便で運航再開した。</p>
<p>ただ、他の主要空港、羽田・成田、関西、福岡、新千歳などと比べると、まだまだ少ない。北米やオセアニアからの直行便はなく、ヨーロッパもフィンエアーが唯一で、中東路線も今はない。例えば、大阪でこの半年あまりで、ヨーロッパからの旅行者を多く見かけるようになったのは、既存のエミレーツ航空に加え、エティハド航空、ターキッシュ・エアラインズ、カタール航空と、中東系航空会社が次々就航したことが大きい。</p>
<figure id="attachment_376752" aria-describedby="caption-attachment-376752" style="width: 1800px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c161de01"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/06/2eb7c2c05b163eebdc3c357848fd0d72.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-376752" class="wp-caption-text">カタール航空の大阪（関西）－ドーハ線は’24年３月１日に再開し、毎日運航する。欧州からドーハ乗り継ぎでのインバウンド需要も非常に多いという</figcaption></figure>
<p>名古屋中心部のホテルは、７月上旬の週末で、大手ビジネスホテルチェーンだと１泊２名で１万円ほど。札幌や大阪がおおよそ２万円なのと比べると安い。一方で、「白川郷や飛騨高山などが欧米を中心としたインバウンドに人気。その拠点として名古屋の宿泊需要が少なからずある。名古屋駅で乗り換えて特急ひだに乗るインバウンドも多い」とも聞く。つまり、名古屋はインバウンドの通過点で、観光目的となっていない現状も垣間見られる。</p>
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<h3><span class="strongInContent">国際線の直行便の有無で差がでる「地方都市」</span></h3>
<p>ほかに、日本の都市部では、神戸や横浜なども、インバウンドが少なめだ。いずれも港町としての魅力はあるものの、兵庫県でインバウンドに人気が高いのが「姫路城」「神戸ビーフ」「灘五郷の日本酒」などで、神戸とエリアが異なり、わざわざ訪れる価値があるとも言い難い。横浜がある神奈川県も「高徳院（鎌倉大仏）」や「彫刻の森美術館」がある箱根方面のほうが、外国人観光客には人気が高い。</p>
<figure id="attachment_376753" aria-describedby="caption-attachment-376753" style="width: 1800px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a32084bd"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/06/31533501965dc7298bd506b098c518bc.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-376753" class="wp-caption-text">仙台空港に就航する、台湾のエバー航空（左）とスターラックス航空。仙台駅と仙台空港を結ぶ鉄道も台湾人旅行客で非常に混雑していた</figcaption></figure>
<p>インバウンドが多い街と少ない街。その１つの基準として、国際線での「直行便」の有無がある。特に、地方空港が分かりやすい。以下、主な航空会社と、定期便の就航先を挙げてみた。</p>
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<ul>
<li><span class="strongInContent">■大韓航空〈韓国〉</span></li>
<li>札幌（新千歳）、青森、東京（羽田・成田）、新潟、名古屋（中部）、小松、大阪（関西）、岡山、福岡、鹿児島、那覇</li>
<li><span class="strongInContent">■ティーウェイ航空〈韓国〉</span></li>
<li>札幌（新千歳）、東京（成田）、富山、大阪（関西）、福岡、佐賀、熊本、那覇</li>
<li><span class="strongInContent">■タイガーエア台湾〈台湾〉</span></li>
<li>旭川、札幌（新千歳）、函館、花巻、秋田、仙台、福島、茨城、東京（羽田・成田）、新潟、小松、名古屋（中部）、大阪（関西）、岡山、高知、福岡、佐賀、那覇</li>
<li><span class="strongInContent">■スターラックス航空〈台湾）</span></li>
<li>札幌（新千歳）、函館、仙台、東京（成田）、名古屋（中部）、大阪（関西）、福岡、熊本、那覇</li>
<li><span class="strongInContent">■香港エクスプレス〈香港〉</span></li>
<li>東京（羽田・成田）、名古屋（中部）、大阪（関西）、高松、福岡、鹿児島、那覇</li>
</ul>
<p>地方へ行くと、意外な都市でインバウンドが多いことがある。特に台湾人旅行客はいまや日本全国どこでもいると言えるほど見かけるが、さすがに直行便のない場所は少なめだ。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="今年の夏休みの狙い目は…"></div>
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<p>例えば、筆者が今年３月に訪れた鹿児島は、人気観光地の仙厳園や桜島などで、アジア系より欧米系の旅行者が明らかに多かった。その理由として、現地のホテルで「クルーズ船の乗客」と聞いた。他の都市に多い台湾人旅行客がいないと思ったら、鹿児島への直行便が当時まだなかった。</p>
<p>韓国・台湾など東アジアからのインバウンドは、直行便利用の短期滞在が多い。近ごろはチャーター便の運航も盛んだが、定期便かつ直行便の就航地はある程度参考になる。</p>
<figure id="attachment_376754" aria-describedby="caption-attachment-376754" style="width: 1800px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="0117a66f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/06/cae26afb6eebb3cffb7493dd4d44af8b.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-376754" class="wp-caption-text">鹿児島の城山。市内の主要観光スポットを巡回するバス（カゴシマシティービュ―）や路面電車なども外国人観光客で混んでいた</figcaption></figure>
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<h3><span class="strongInContent">今年の夏休みは「インバウンドに人気の都市を避ける」が鉄則！？</span></h3>
<p>インバウンドが多いと、国内ホテルの宿泊価格も高騰する。昨今、旅行や出張などで、国内ホテルの高さに頭を悩ませている人は多いはずだ。少しでもリーズナブルに、そして混雑から避けるには「インバウンドに人気の都市を避ける」のは、まず鉄則だろう。</p>
<p>先に挙げた就航都市はインバウンドが多く、ホテルなどがすでに高い可能性がある。大都市ならホテルの数がまだ多いが、地方都市だと数自体が少ないので、安くておなじみのホテルチェーンでも高くなりがちだ。</p>
<p>観光庁が発表する宿泊旅行統計調査（’24年２月分、第２次速報値）によると、のべ宿泊者数を’19年同月で比べた結果、都道府県別で少ないのが、<span class="strongInContent">福井（-26.9%）、秋田（-21.3%）、福島（-18.6%）、岩手（-18.4%）、山梨（-18.3%）、宮崎（-16.1%）、佐賀（-13.9%）、山形（-11.7%）</span>など。日本人との合計だが、これらの県はインバウンドも少なめと考えられる。</p>
<figure id="attachment_376755" aria-describedby="caption-attachment-376755" style="width: 1800px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="93244030"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/06/20e715b14700509d94977bc891769323.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-376755" class="wp-caption-text">北海道・稚内のノシャップ岬。日本最北端で羽田から直行便あり、自然やグルメなど魅力が多い。インバウンドはさすがに少ないが、流氷時期は団体バスで多かったという</figcaption></figure>
<p>「車でしか行きづらい場所」も、インバウンドが少なくて狙い目。地方の不便な場所へ行けば行くほど、いまだ日本語しか通じない場所も多い。あえて外国語を表記していない宿泊施設や飲食店なども少なからずある。ホテルや旅館の予約で、公式サイトが日本語のみだったり、「エクスペディア」「Booking.com」（ブッキングドットコム）など海外OTA（オンライン旅行代理店）での予約取り扱いがなかったりする宿泊施設も、インバウンドには予約しづらいので、そこで探してみるのも手だ。</p>
<p>もし車が運転できないなら、路線バスの活用もおすすめ。地方の路線バスは、言葉の壁もあってインバウンドには利用するハードルが高い。日本人だと言葉が通じるため、トラブルなどに遭ってもすぐ相談できる。</p>
<figure id="attachment_376756" aria-describedby="caption-attachment-376756" style="width: 1800px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="18e0323a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/06/277e48632596e528d9fb7f9438dd2570.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-376756" class="wp-caption-text">稚内では温泉民宿を利用。１泊２食付8000円。民宿は学生以来20年以上ぶりだったが、コスパも高くて大満足。自分の旅行スタイルをあえて変えてみるのも手</figcaption></figure>
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<p>自分の旅行スタイルを、これを機に少し変えてみるのもいいだろう。ホテルから旅館・民宿、飛行機から鉄道・バスなど、国内旅行だとある程度の応用がきく。そんな旅を通じて、新たな発見もある。</p>
<p>インバウンドが想定するのは、交通手段や宿泊先などでまず「定番」のパターンだ。その定番をあえて避けることで、旅費の節約や混雑回避ができるかもしれない。夏休みの国内旅行を計画、予約する際の参考にしてみてほしい。</p>


シカマアキ

円安の影響で日本を訪れるインバウンドの数が急増している。特に、東京や京都、大阪、福岡、札幌などでインバウンドの姿がよく目に付く。しかし、日本の隅々までインバウンドが訪れているかというと、そうでもない。

インバウンド誘致の「勝ち組」「負け組」にくっきり差…人気がない名古屋・神戸は「夏休み」の狙い目？

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