マネーライター、ファイナンシャルプランナー／証券会社のマーケットアナリストを経て、1996年に独立。ビジネス誌や経済誌を中心に金融、資産運用の記事を執筆。著書に『ロボアドバイザー投資１年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる！ キャッシュレス決済で絶対得する本 』。

松岡 賢治

<h3><span class="strongInContent">JAL、ヤマダデンキ、北海道日本ハムファイターズ…続々と誕生する企業の「銀行サービス」</span></h3>
<p>JR東日本の銀行サービス<span class="strongInContent">【JRE BANK】</span>が話題だ。「バンク（銀行）」といっても、JR東日本は「銀行代理業者」であり、これまでJALやヤマダ電機などが提供してきた銀行サービスと同じカテゴリーに属する。では、なぜ、他社のサービスがパッとしない中、JRE BANKが注目されているのか。そもそも銀行代理業者とは何者で、どんなメリットがあるのか？　専門家が解説する。</p>
<figure id="attachment_377641" aria-describedby="caption-attachment-377641" style="width: 2023px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="89cfeb86"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/06/f3ccdd27d2000e3f9255a7e3e2c48800.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-377641" class="wp-caption-text">「新幹線の料金が４割引」…株主優待並みのサービスで、一時、受付を制限する事態になったJR東日本の【JRE BANK】（PHOTO：JRE BANKのHPより）</figcaption></figure>
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<h3><span class="strongInContent">「新幹線の料金が４割引」…鉄道会社ならではの破格のキャンペーン</span></h3>
<p>今年のGWが終わった直後、JR東日本の<span class="strongInContent">【JRE BANK】</span>が開業した。事前にサービス内容を公表しており、それが「新幹線の料金が４割引」といった、鉄道ファンはもとより、一般ユーザーにもインパクト十分の内容だったため申し込みが殺到、一時、受付を制限する事態となった。</p>
<p>「新幹線４割引」というのは『JRE BANK優待割引券』のことで、JR東日本管内の片道運賃と片道料金が４割引になる。乗車券の「運賃」だけでなく、特急券やグリーン券の「料金」も割引対象という破格の特典だ。これが、比較的低いハードルをクリアすれば年２枚もらえる。また、口座開設キャンペーンでは、こちらも緩い条件で4000ポイントがもらえるという（給与振込口座にすれば＋2000ポイント）。このほかにもさまざまな特典があり、久しぶりの〝大盤振る舞い〟の内容となっている。</p>
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<h3><span class="strongInContent">『JRE BANK』は楽天銀行の支店</span></h3>
<p>JRE BANKは、JR東日本の本体が銀行免許を取得して営業しているわけではない。傘下のビューカードが楽天銀行のプラットフォームを借りて、「銀行代理業者」となって銀行サービスを行う、というもの。したがって、実際には、楽天銀行のネット上の支店として存在することになる。現状、『JRE はやぶさ支店』『とき支店』『こまち支店』の３つだ。</p>
<p>実は、こうした銀行代理業者は、すでに何行もある。最も早く開業したのは日本航空の<span class="strongInContent">【JAL NEOBANK】</span>で’20年４月。それ以降、<span class="strongInContent">ヤマダ電機</span>や<span class="strongInContent">髙島屋</span>、<span class="strongInContent">テンプスタッフ</span>、そしてプロ野球の<span class="strongInContent">北海道日本ハムファイターズ</span>など、さまざまな業種からの参入が続き、いまでは30以上の事業者がいる。ヤマダ電機や髙島屋は、住信SBIネット銀行のプラットフォームを借りているので、住信SBIネット銀行の『JAL支店』『ヤマダネオバンク支店』として存在している。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="世界的な規模の「ネオバンク」ブーム…"></div>
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<h3><span class="strongInContent">米国、欧州、アジア…世界的な「ネオバンク」ブーム</span></h3>
<p>銀行免許を持たずに銀行サービスをおこなう企業は、海外では「ネオバンク」と呼ばれる。</p>
<p>米国では’10年頃から登場し、現在は欧州、アジア、アフリカ、中南米と全世界に広がっている。日本では、ようやく’18年に施行された改正銀行法によって認められ、JAL NEOBANKが第１号としてスタート。ここ数年で、数こそ増えていったものの、どれもいまひとつ存在感を発揮できていなかった。そして、JRE BANKが、久方ぶりのネオバンクとしての大きな話題になったというわけだ。</p>
<p>では、なぜ他のネオバンクがパッとしない中、JRE BANKが脚光を浴びたのか。理由は単純明快。前述したように、従来のネオバンクでは考えられないほど、特典の〝お得さ〟が突出していたからだ。</p>
<figure id="attachment_377642" aria-describedby="caption-attachment-377642" style="width: 7875px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b91d80a4"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/06/49ff2eb4d6d8e098e1c024d538cc8617.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-377642" class="wp-caption-text">住信SBIネット銀行と同じ金利の住宅ローンで、その借入残高に応じて最大８万マイルがもらえる【JAL NEOBANK】。今年スタートしたJAL Life Statusプログラムのポイントも付与される（PHOTO：アフロ）</figcaption></figure>
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<h3><span class="strongInContent">マイル付与、優勝すれば５万円のキャッシュバック付きの住宅ローン…ユニークなネオバンクのサービス</span></h3>
<p>これは、誤解されがちなことなのだが、ネオバンクは、プラットフォームを提供している銀行の〝下位互換〟ではない。<span class="strongInContent">預金やローン、入出金、振込・送金といった基本的なサービスは、同等の機能を備えている。その上で、事業者ごとに特色のあるサービスを打ち出している。</span></p>
<p>例えば、<span class="strongInContent">【JAL NEOBANK】</span><span class="strongInContent">であれば、住宅ローンの借入残高に応じて、最大８万マイルがもらえるという特典がある。住宅ローン金利は住信SBIネット銀行とは変わらない。</span>JALのマイラーで、JAL住宅ローンを借りた人は少なくないと聞く。京王電鉄の<span class="strongInContent">【京王NEOBANK】</span>でも、住宅ローン残高に応じて『京王ポイント』が最大12万ポイントもらえる。</p>
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<p>そして、<span class="strongInContent">【ヤマダNEOBANK】</span>では、家電や家具、EV（電気自動車）の購入資金を住宅ローンに含むことができるので、変動金利で借りれば、通常のショッピングローンよりもかなり低い金利で購入が可能となる。また、変化球としては、<span class="strongInContent">北海道日本ハムファイターズの【F NEOBANK】</span>は、「順位連動型住宅ローン」として、借入後の５年間、レギュラーシーズンの順位に連動してキャッシュバックの特典がある。１位の場合は５万円なので、５年間１位が続くと25万円がキャッシュバックされることになる。</p>
<p>このように、既存のネオバンクも、本業を活かした特典・サービスをユーザーに提供している。条件が合致する人にとっては、利用する価値はあるだろう。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="課題は「ポイント経済圏」を超えるメリット"></div>
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<h3><span class="strongInContent">「ポイント経済圏」競争で目立たないネオバンク</span></h3>
<p>だが、総じていえるのは、それなりのメリットは存在しているものの、なかなかユーザーには響かない、ということ。その背景には、銀行を含めた金融サービスが置かれた〝環境〟が大きく変わってしまった点が挙げられる。</p>
<p>昨今、ポイントサービスを基盤とした顧客の囲い込みを目指す「経済圏」競争の中、金融サービスは、勢力拡大のための有力なコンテンツ、というポジションに移行している。１つの企業が単独で特典を打ち出しても、総合力で勝る勢力圏全体で被るメリットを前にしては、霞んでしまうのだ。JRE BANKのような突き抜けた特典でもなければ、ユーザーは反応しなくなっている。</p>
<figure id="attachment_377878" aria-describedby="caption-attachment-377878" style="width: 1606px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="fa8d35e9"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2024/06/bb052652551396e066ed6dae5d7c509d-1.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-377878" class="wp-caption-text">【特典に特長があるおもなネオバンク】JRE BANKの所属銀行は楽天銀行。それ以外の所属銀行は住信SBIネット銀行</figcaption></figure>
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<h3><span class="strongInContent">既存銀行のデジタル強化でネオバンクの強みが弱まる</span></h3>
<p>別の要因もある。現在、銀行プラットフォームを一般企業に提供している銀行は、住信SBIネット銀行、楽天銀行、みんなの銀行、GMOあおぞらネット銀行と4つある。その中で、みんなの銀行は、国内初の「デジタルバンク」としての利便性をアピールし、テンプスタッフやピクシブ、イーデザイン損保といった支店を有している。</p>
<p>たしかに、それぞれの企業に関わりのあるユーザーは、入出金や振込などがしやすくなるというメリットがあるが、既存のネット銀行やメガバンクのネットバンキングが機能面で上回りつつあり、あえて口座を開設するというインセンティブが働きにくくなっている。これも、ネオバンクが埋没しやすくなっている要因だろう。</p>
<p>みんなの銀行は、親会社のふくおかフィナンシャルグループが撤退の可能性を示唆したことで、正念場を迎えている（経営陣は撤退については明確に否定）。収益の柱として位置づけていたカードローン事業の伸び悩みが指摘されているが、そもそも、若年層向けに有料の銀行サービスを提供するという、ビジネスモデルには無理があったと思われる。無料で、利便性の高いネットバンキングが可能なアプリが、いくつもあるからだ。</p>
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<h3><span class="strongInContent">銀行サービスの〝コモディティ化〟は止まらない</span></h3>
<p>ネオバンク自体は、今後も増えていくだろう。それに伴って、銀行サービスの〝コモディティ化〟（＝一般化）も進むことになる。すでに、銀行の口座開設の手続きは、スマホだけで完結できるようになっている。まるで、ポイントカードを作るような手軽さで、口座開設も解約も可能だ。ユーザーサイドとしては、お得なサービスやキャンペーンがあれば、積極的に利用するのも手だろう。</p>


松岡賢治

「新幹線の料金が4割引…JR東日本の銀行サービス『JRE BANK』が話題だ。JAL、ヤマダデンキ、日本ハムファイターズ…続々と誕生する企業の「銀行サービス」とは、どんなものなのか？メリットがあるのか

申込み殺到で受付制限も…「JR東日本の銀行」？給与の振込や住宅ローンは？メイン銀行として使える？

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