プーチンが学んだ「KGBスパイ式記憶術」を徹底解説!

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情報の速さが問われる現在、あらゆる国がスパイ(諜報員)を擁する組織を持つが、有名なのはアメリカの諜報機関CIA、そして旧ソビエト連邦の国家保安委員会KGB(ソ連崩壊と同時に解体。他省庁に権限を移行)だろう。特にKGBは、現在のロシア大統領ウラジーミル・プーチンが若かりし頃エージェントとして活動していた組織として知られている。彼らは複数の言語を操り、絶対に正体を掴ませない優秀な諜報員として暗躍し、映画や小説の中でも重要な役割を果たす。

彼ら諜報員は、スパイ活動を行なっていることを他者に悟られることが最大のご法度。そのため、情報収集中にその内容をメモに書き留めたりすることも難しい。得た情報を組織に持ち帰るために頼れるのは、自分の記憶力のみとなる。そんなスパイ活動の片鱗に触れながら、彼らの記憶法を学べる書籍が2月に日本で発売された。『KGBスパイ式記憶術』(カミール・グーリーイェヴ、デニス・ブーキン、岡本麻左子翻訳 水王舎刊)だ。

もともとロシアで刊行された本書では、実際にKGBで使われていた訓練方法が紹介されている。本書では、モスクワ大学で心理学を研究するシモノフという青年がKGBにスカウトされ、諜報活動に従事することになった。そのストーリーを追いながら、ひとつずつ与えられるミッションをクリアすることで、彼らの記憶法を学んでいけるという構成になっている。

心理学者でもある著者・デニスが本書で説くところによれば、記憶には「感覚記憶」「短期記憶」「長期記憶」の3種類に大別されるという。

ひとつめの「感覚記憶」は、五感による直接的な知覚情報が、その情報の元となる刺激の消失後も維持されるというもの。だがこの感覚記憶の持続時間は短く、維持できるのは0.5秒以下だといわれている。注意を向けるに値する情報は感覚記憶から「短期記憶」に移行し、数分から数時間の間、保持される。この短期記憶が使われるのは、電話番号を聞いてから、それを書き留めるペンと紙を探している間、頭の中で番号を繰り返しているときなどだ。特に重要な記憶は「短期記憶」から「長期記憶」へと移行し、何年もの間、保持される。情報が長期保存される過程は無意識に発生する。大事なことは忘れているのに、些細でとっくに忘れていそうな事柄をよく覚えていたりするのは、そのためである。

また、記憶には上記3つの分類とは別に「作業記憶」というものも存在する。これはただちに処理する情報を一時的に保持するものであり、他の作業に移ると同時に、保持されていた情報がすべて消去されるという大きな特徴がある。『KGBスパイ式記憶術』には、情報の長期保存を意識的に行えるようにする方法や、自身の作業記憶の容量を知り、それを鍛える方法が記されているのだ。

本書で繰り返し登場する「シュルテ・テーブル」がこれ。視線をあちこちのマスに動かさず、周辺視野だけを使うのがコツ。このスキルを身に着けると、観察や速読といった作業で役立つという。ページが進むにつれ、「探している数字以外の範囲も見るようにする」「7×7マスで限界に挑戦する」など、徐々に難易度が上がってくる

記憶力アップのため、本書でたびたび取り上げられているものは「シュルテ・テーブル」だ。5×5のマスに1から25までの数字がランダムに配置されている表である。この表の中心のマスに注意を固定し、周辺視野だけを使い、1から順番に数字を見つける訓練を繰り返すことで、記憶に必要な周辺視野、注意力、セルフコントロール、集中力などの精神的知覚を鍛えるスピードを上げることができるという。

記憶力を高めるためのコツもさりげなく伝授されている。まず、クリスマスといえばツリーやプレゼントが思い起こされるように、何かに関連付けられていると覚えやすい。次に想像力を視覚的に使ってイメージすることも重要となる。視覚的なイメージは、言葉や数字よりも簡単に記憶できるからだ。さらに、恐怖を覚えたときの記憶や、楽しかった記憶がなかなか薄れないように、記憶する際に感情を伴わせることも記憶力を高めるために必要になる。

数字を覚える際も、数字自体を視覚的イメージに変換すれば覚えやすくなるのだという。無意味な数字の羅列は覚えるのに骨が折れるが「数字の形に似たものをイメージするやり方」を使えば、覚えられる数は増える。例えば「0→ボール、帽子、指輪」「1→ロウソク、槍、羽根」など、数字をひとつずつイメージに置き換え、それを使ったストーリーを覚えるという方法だ。

こうした記憶術はKGBでなくとも、記憶力を鍛えるために一般的に用いられているという。記憶力日本選手権に6連覇し、記憶力グランドマスターの称号を持つ池田義博さんも、数字を覚える際にはイメージに置き換え、ストーリーを作って記憶しているという。

「僕は1時間で2000桁の数字を覚えることができますが、大会のときなどは、あらかじめ各数字にマイケル・ジャクソンやマリリン・モンローなどのキャラクターや、走る、食べる、などのアクションを紐づけておきます。そうして競技が始まると、その紐づけたものをストーリーとして覚えていく。トランプの札を覚える際も同様です。記憶を司るのは海馬ですが、そこに隣接している『扁桃体』は情動を生み出す場所。そこが刺激されると海馬も刺激を受けます。思い出などは覚えようとしなくても覚えていますよね。これはその体験をしたときに感情が紐づいたから。その仕組みを作為的に作り出すのが記憶術です」(池田さん)

さらに池田さんが日頃から“記憶力を発揮するため”に心がけていることがある。それは「運動」「感受性を大事にする」「好奇心を持ち続ける」ことだという。

「記憶を司るのは脳で、その中の扁桃体と海馬が大きな役割を果たしています。この機能を保つために脳の健康を保っておきたい。脳の神経細胞は年齢とともに死滅すると思われていましたが、昨今の研究では、増やすことができるということがわかってきました。そのために効果的なものが運動なのです。神経回路を増やすことができたり、思考や感情に関連する神経伝達物質の分泌を促す効果があります。特に有酸素運動が効果的で、僕はジョギングを日課にしています」(池田さん)

スパイ式といえど、想像よりも地味な訓練の繰り返しだということに驚くし、本書を一度読むだけでスパイ並みの記憶力を身につけられるわけではない。だが、スパイ活動の片鱗に触れながら自身の記憶力のレベルを知り、それを高める訓練方法を知ることができる。脳の体操に、繰り返し読むことをオススメしたい。そして感受性と好奇心を持ち続けること、適度な運動を続けることも忘れずに……。

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  • 取材・文高橋ユキ写真(プーチン大統領)アフロ

Photo Gallary3

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